東方種変録   作:大神 龍

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第十七話

 戻ると、ルーミアがドヤ顔で、鳳花が楽しそうな笑みを浮かべて待っていた。

 

「とりあえず倒してきたぞ。傷も治したから数分で起きるだろ」

 

と、なぜかぐったりしている閃鬼に萃香を預けつつ迅真が余裕たっぷりな表情と声で言うと、突然鳳花が、

 

「あっはっは!萃香を倒しちまうとは!しかも、あれでもまだ全力じゃないと見たね。あんた、相当強いじゃない

か。気に入ったよ。知ってるかもしれないが、私の名前は鳳花だ。よろしく頼むよ」

 

「よろしくな鳳花。俺の名前は薙浪迅真だ。まぁ、さっき萃香に言ったから知ってるかもしれねぇけどな。さて。次はお前と戦うんだったな。じゃあ、さっさとやろうぜ」

 

「萃香と戦った直後でもその威勢。ますます気に入ったよ。いいね。やろうじゃないか」

 

 鳳花と迅真はそう言いつつ円の中心に上がっていく。

 

 

 

「さぁ、迅真。あんたの実力、私の力と比べようじゃないか!」

 

 鳳花が肌が震えるような声を出して言う。それに対抗するように迅真は、

 

「良いぜ!倒せるものなら倒してみろよ!」

 

と、こちらも肌を震わせるほどの声を出して言う。そして、言い終わると同時に鳳花が迅真に突っ込む。

 すると突然、迅真から闇が噴き出す。それに鳳花は少し驚くが、止まることなく拳を振る。しかし、その拳は闇に止められてしまう。その感触は金属のような硬さを持っていた。

 

 瞬時にヤバい!と思った鳳花は後ろに下がる。直後、その眼前を何かが通り過ぎる。更に、避けきれたと思っていたが、距離を取った後に、鼻の付け根辺りに何か違和感を感じた。それが気になった鳳花は、そこを触ってみると、手には血がついていた。

 

「(!?まさか、さっきの攻撃か!?でも、確かに躱したはず……)」

 

 そう思いつつ前を向くと、迅真の周りに広がっていた闇がふわりと宙を浮き、月を背にするようになる。それと同時に、闇が晴れ、そこには、黒い、蝙蝠の様な骨格の羽を持っており、眼を紅く光らせた迅真が右手に身長の2倍近くはあるであろう剣を持っていた。

 

「『血禍(けっか) ダーインスレイヴ』。さぁ、SHOWTIMEだ。楽しく愉快に空を舞うがよい」

 

 迅真がそういうと同時に、音を突き破りつつ眼の紅い光が軌跡を描きながら鳳花に向かって剣を振りかぶりながら突っ込む。

 

 鳳花は、その大きく振りかぶられた剣を素早く右に移動することで避け、カウンターのように左拳を振る。しかし、その攻撃は剣から噴き出た闇によって右にいなされる。更に鳳花に追い打ちをかけるように右から頭を狙った回し蹴りが飛んでくる。これを鳳花は素早くしゃがむことで回避する。

 

 それと同時に左腕を引いた鳳花は、そのまま右拳でアッパーをする。迅真はその攻撃を剣で防ぐ。すると、グチャッ!という音と共に鳳花の右手から血が噴き出す。瞬時に鳳花は離れようと左足で剣を蹴り、距離を取り、自身の右手を見て状況を確認する

 

「(……傷が塞がらない?鬼の再生力が効いていないとでもいうのか?)」

 

 そう、右手から血が出ているだけでなく、少し前に切られた、何時もならもうすでに治っているはずの鼻の付け根の傷までもが未だに治っていない。しかし、今は考えても仕方ないと考え直した鳳花は前を向く。が、もうすでに眼前には鳳花に逆袈裟を仕掛けようとしている迅真の姿があり、鳳花はその場から動こうとするが間に合わない。直後、迅真の剣は振り抜かれ――――ガキンッ!と音がした。

 

 その音に迅真は驚き、切った場所を見るが、全くの無傷だった。

 

「(……いや、浅くだが切れてはいるのか。しかし、服すらも切れないとは思わなかったな……)」

 

 迅真はそう思いつつ逆袈裟の勢いに任せて鳳花を蹴り飛ばす。今度はドッ!という音を発しながら鳳花は飛んでいく。迅真は体勢を立て直すと同時に鳳花に突撃する。

 

 鳳花はあの剣を防ぐことができたことに驚いていた。あの剣を防いだのは鳳花の能力である。その名も『守る程度の能力』。昔、ある妖怪が名付けてくれた能力だ。範囲は鳳花の触れているモノのみだが、ほとんどの物はコレを使って防ぐ事ができる。ちなみに、本人は知らないのだが、この能力は精神的な攻撃なども防ぐ事ができる。が、鳳花は基本的にこの能力を使わない。理由は単純。『一方的な攻撃など面白くないから』だ。

 

 だが、今はこの能力に感謝している。なぜなら、先ほどの攻撃をこの能力で剣を防がなかったら、今頃そこで倒れて、二度と起き上がれなくなっていたと確信できるからである。

 

 そして、この能力と自分の運に感謝しながら鳳花は突撃してくる迅真を迎え撃つ。

 

 迅真は鳳花から少し離れた所で一度跳躍し、縦に回転しながら突っ込む。それはさながら刃の付いた円盤だった。

 

 瞬時に鳳花はその刃を白羽取りの要領で掴む。が、その掴んだ手がジュッ!という音を立てて血を噴き出す。

 

 しかし、痛みに耐えつつ鳳花はその剣をそらす。そして、それと同時に蹴りを一撃お見舞いしてから距離を取る。だが、その一撃は迅真の、どう見ても力の入っていない拳によって弾かれる。

 

「さて、そろそろ終わりにしよう。俺のタイムリミットも近いんでな」

 

 そう言う迅真の髪は金色に変わり始めており、容姿も女性寄りになっていた。

 

「なるほどね。良いだろう。決着をつけようじゃないか」

 

 鳳花は一度距離を取ってから拳を固く握り、力を溜める構えになる。そして、迅真もそれに対抗するように刃に闇を纏わせ、次の一撃に神経を研ぎ澄ませる。そして――――

 

 同時に相手に向かって突撃する。

 

 鳳花は地面を一歩。思いっきり踏みしめる。それと同時に鳳花の威圧感が増す。迅真は闇を纏った剣を水平に持ち、突貫する。鳳花がもう一歩前に出る。それで、更に威圧感が膨れ上がる。そして、鳳花が三歩目を出すと同時に二人は交差する。

 

 鳳花は三歩目が地面に着くと同時に思いっきり右拳を振るう。そして、その拳は迅真の剣に当たる。が、剣の威力は全く殺せず、鳳花が無意識に発動させていた能力で右腕は勢いよく弾かれ鳳花の喉元で剣は静止する。

 

「チェックメイト。俺の勝ちだが、文句あるか?」

 

「っはは、いや、無いね。こりゃ私の負けだ」

 

 鳳花はそう言いながら、両手を上げ降参するのだった。

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