鳳花に勝利した迅真は、能力を解除する。すると、解除と同時に鳳花の傷がどんどん治っていった。そして、迅真の身体も徐々にではあるが元に戻っていく。
「これは……再生力が戻った?」
「少し違うな。傷が治らなかったのはあの剣の特性なんだよ。」
言われて、鳳花はふむ……と、少しあの剣について考える。と、そこでふとある事に気付く。
「そう言えば迅真。あんたの力、あいつに似ていた気がするんだが、なんでだい?」
「ん?あぁ、そりゃそうだろ。アレはルーミアの力を使ったんだから」
その話の中心人物となっているルーミアはというと、先ほどの迅真のように酒のつまみとして出されていた料理をはむはむと食べていた。
「そうなのかい?私はてっきりあいつに近いモノなのかと思ってたんだけどねぇ」
「俺の能力がそんな感じなだけだよ。教えるつもりはないけどな」
迅真は少しかったるそうに言いながらルーミアの所まで行くと、ルーミアと一緒になってつまみを食べだす。それを遠くから見つつ鳳花は、
「まぁ、たとえ何があったとしても、ルーミアが今元気に過ごせてるっていうのは良い事かな。昔のあいつと比べたら随分と幸せそうで何よりだ」
と、誰に言うでもなく呟くのだった。
ペちぺちと誰かが頬を叩いているような気がする。誰だろう?と思いつつ萃香は目を開ける。すると、目の前には閃鬼の姿が。
「おわぁぁ!?」
眼前に閃鬼がいることに驚いた萃香は飛び起きようと体を起こす。すると、当然の如く閃鬼の頭とぶつかる。
「おぐわ!」「げぅ!」
ゴンッ!という良い音と共に二人は衝撃で倒れる。
「いたた……えっと、閃鬼、大丈夫か?」
「う~……一応大丈夫ですけど、いきなり頭突きをかますのはどうかと思うんですが」
「ぐっ……そりゃあ寝起きの目の前に人が居たら驚くよ」
「あ~、それもそうですね。こりゃ俺のミスでした」
さっきの頭突きが予想以上に響いてるのか、少しふらふらしつつ閃鬼は答える。
「まぁ、それは置いとくとして、萃香姐さん。鬼子母神様と迅真の決着、着いちゃいましたよ」
「ちょ!なんで私を起こしてくれなかったんだい!?見たかったのに!!」
「怪我人は寝かせとけ。って勇義姐さんに言われましたからね」
「勇義か…!で?どっちが勝ったんだい?やっぱり鳳花様かい?」
後で勇義は一発殴る。そう決めつつ閃鬼に勝敗を聞く。そして、
「いや、迅真の圧勝です」
萃香は、は?と思わず声が出てしまった。それもそうだろう。自分が勝てなくても、鳳花は必ず勝ってくれると思っていた、ある意味憧れの人が負けたのだから。だが、萃香の中にあったのは、その憧れであった鳳花に圧勝した迅真は一体何者なのか。それが不思議で仕方なかった。
「その迅真は今どこにいるんだい?」
「どこって、後ろにいますけども?」
へ?と言いつつ振り返ると、鳳花と座った状態で取っ組み合いをしている迅真がいた。鳳花の右手には酒瓶が持たれているが、それが原因なのだろう。ちなみに、その取っ組み合いのど真ん中である迅真の足の上にルーミアがちょこんと座り、パクパクと料理を食べている。そして、少し離れた所で、迅真と鳳花を見ながら笑いつつ酒を飲んでいる勇儀がいた。
「……なんだい?あれは」
「なにって、俺には鬼子母神様が迅真に酒を飲ませようとしてるようにしか見えないんですが?」
それは萃香にも分かってはいるのだが、なんであんな状況になったのかが知りたかった。だが、とりあえず面白そうなので鳳花に加勢をしようと考える。
「閃鬼。私たちも混ざろうじゃないか」
「いや、俺は勇儀姐さんと同じように傍観してますって」
閃鬼は絶対あそこに突撃するのは嫌だ。というように全力で手を振り、拒否をする。
「なんだい。ノリが悪いねぇ。一体どうしたってんだい?」
「なんか、アレに混ざると命がいくつあっても足りないような気がするんですよ」
「ふうん。まぁ、嫌なら強要はしないさ。じゃあ、行ってくるからね」
「死なない程度に頑張ってくださいよ~」
と、手を振りながら閃鬼は萃香の事を応援する。そして、萃香は意気揚々と迅真に突撃し――――
「いい加減にしろぉ!」
とぶちぎれた迅真の一撃で鳳花と萃香は吹き飛ばされる。
「はぁ、だからやめておいた方が良いって言ったのに」
やれやれ。と呟きながら閃鬼は勇儀の元へと歩いて行く。
「ルーミア。お前、いつまで食べ続けてるんだ?」
「むぐぅ?」
口を動かしながら返事をするルーミアに迅真は少しあきれつつ、
「そろそろ眠くてさ。寝ようかと思ったんだけどお前が足の上に座ってるからどうしようかと思ってな?」
と、あくびをしながら迅真は言う。そして、ルーミアは口の中にあるモノを飲み込んでから、
「このまま寝ちゃえば?」
こいつは本気で言ってるのか?と迅真は思うが、十中八九本気だろう。正直動かすのが面倒だったのでそれはそれでいいのだが、周りにいる鳳花とかが怖いのだ。寝てる間に何をしでかすか分かったもんじゃない。だから少し離れた場所で寝たかったのだが、それをするのも面倒になるくらい眠くなってきたため、何かあってもそれは起きた時に考えようとその場で横になり、眠るのだった。