さて。先ほど邪魔をするなと言ったくせに、迅真はまっすぐ天狗の村に向かっていた。
「いつごろ戻ろうかな……」
ぼんやりと迅真が言うのだが、そう言っている間も迅真は天狗たちの攻撃を受けていた。
「死ねぇ!」
そう言って一人のケモ耳野郎が切りかかってくるが、迅真はそれを指二本を使い白刃取りの様に受け止める。そして、そのまま腕を少しひねり、剣を折る。折った刃の破片は続いて攻撃を仕掛けようとしていた男に向かって投げられる。それは彼の足に当たり、ブチィッ!という音と共に彼は足から血を流して倒れる。
「いい加減にしてくれないか?そろそろキレるぞ?どうせなら強い奴が一人来ればいいじゃねぇか。そいつ倒せばお前らも諦めるんだろ?」
対応が面倒になってきた迅真は怒りを込めて言う。それに気圧された彼らは、数秒相談した後、すぐさまどこかへ消える。
「……どうしよう……うっかり喧嘩売っちまった……」
「迅真って結構短気だよね」
迅真の後ろから声が聞こえる。声的にルーミアだ。
「起きたのか。おはよう」
「おはよう。それと、そろそろ降ろして?さすがに恥ずかしいんだけど……」
首に捕まってるルーミアの腕が迅真のことを軽く叩く。迅真は少し物足りなさそうな顔をしたが、とりあえず降ろした。
「っと、で?なんで私はここにいるの?」
「ん?あぁ、それは鳳花に散歩してくれば?って言われたからだ。お前がいる理由は、なんとなくお前をあそこにおいて行く気にはなれなかったからだよ」
「ふ~ん。そういう事。で、ここは周りを見た感じ天狗の村……って事はあいつがいるのかな?」
あいつ?と迅真が聞くと、別になんでもないよ。と返されてしまった。
「とりあえず、現状は俺が天狗たちに喧嘩を売った感じだ。まぁ、相手がどうであれ倒せるはずだけどな」
「それを言われても困るんだけど……だって私一人で戻る訳にもいかないからね。迅真が戦い終わるまで待ってるわ」
「そうか。じゃあ、少し待っててくれ。すぐに終わらすからよ」
「あまり期待しない様に見てるね」
期待してくれても良いじゃないか。と迅真は思ったところで、天狗たちが去って行った方からまた天狗たちが帰ってくる。その中の一人は他の奴らとは桁外れの威圧感だ。しかし、閃鬼よりも弱い。
「君がこの村を襲ったっていう人間か?」
その桁外れの威圧感を持った人物――――男が迅真に向かって聞く。
「まぁ、襲ったつもりは――――ないけど、俺で合ってる。こっちからも聞くが、お前がここでの最強ってことで良いな?」
「あぁ、そうだ。皆からは天魔と呼ばれてる。で、君は私と戦うと言うのか?」
「そのつもりだが……何か問題あるか?だって、お前を倒せば誰も俺に逆らわないだろ?」
男――――天魔は少し驚いたように言うが、迅真は呆れたように言い返す。
「ふむ。確かにそうだが……なぜそのような事をするのだ?」
「理由?簡単だよ。俺はただ、邪魔されたくないだけだ。それ以上でもそれ以下でもないよ」
迅真の言葉に訝しげな表情をする天魔。
「邪魔?私たち――――いや、こやつらが君に何かしたのか?」
「俺はここをたまたま通っただけだ。それだけで殺意剥き出しで襲われるとは思わなかったけどな」
やれやれ。という感じに迅真が言うと、天魔は申し訳なさそうな顔をした後、
「それはすまなかったな。だが、無断は少しこちらとしても許しがたいのだが」
と、後半は少しむっとした表情で言ってきた。
「む。この山に入る許可とこの村に入る許可は別なのか?」
「そういうことになっている。……ん?ちょっと待て。今この山に入る許可を得たと言ったが、君は誰からその許可を得たのだ?」
「は?なんでそんな事……えっと、確か、大天狗だったかな?そう呼ばれていたはずだ」
唐突に許可をもらった人物を聞いて来るので、不思議に思い口に出しかけたが、すぐに答える。
「なるほど。君があの威圧感の正体か……うむ。分かった。私は君と戦おう」
答えると天魔はにやりと口角をあげ、そういう。
「良いのか?さっきは嫌がっているようにも聞こえたんだが?」
先ほどまで戦いたくないような雰囲気を出していた天魔が、問答の後やる気を出した事を疑問に思い聞いてみる。
「いやなに。君に興味が湧いただけだ。さて。君が勝った場合この村の出入りを自由にすることだったね。じゃあ、こちらが勝った場合、少し頼みごとを聞いてくれないか?」
「ん~……まぁ、こっちもそれで良いが、俺が勝った場合もう一つ追加させてくれ。内容は決着後だが、それでも良いか?」
迅真は少し笑いながらそう聞く。天魔はそれに対し、
「良いぞ?私は負ける気は無いからな」
と、こちらも笑いながら了承する。
「その言葉、忘れるなよ?」
迅真はそう言い、チラッとルーミアの方を見る。すぐ隣にいたルーミアは、その視線に気付くとスタスタとその場を離れる。
「取りあえず名乗っておくぜ。俺の名前は薙浪迅真だ。よろしくな」
「私は
二人は名乗り、
「では、始めよう」
という恂覇の一言で開戦した。