東方種変録   作:大神 龍

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第二十二話

 まず突撃して来たのは恂覇。右拳を固く握り、迅真に殴り掛かる。それに対して迅真は軌道を予測し、躱そうと体を動かす。

 

 そして、目論見通りその攻撃を避けると同時に、振りかぶったままの状態ですぐには動けない恂覇の無防備な腹を殴る。

 

 しかし、その拳はどういうわけか目標から大きく逸れ、恂覇の身体に当たらなかった。直後に恂覇はその場を離れる。

 

 迅真は攻撃が逸れたことを疑問に思い、少し実験をする。

 

 まずは近場にあった石ころを投げてみる。それは風を切りながら恂覇向かうが、この投擲も狙いから逸れ、恂覇から少し離れた所の地面に当たり、爆音を立てて砕け散る。その反動で土煙が舞うが、迅真は特に気にしていない。

 

「どうした?いきなり投擲など……まぁ良い。君から来ないならまたこちらから行くとしよう」

 

 恂覇は、言うと同時に迅真に近づくと、どこから取り出したのか、一本のナイフで迅真の事を切ろうとして来る。

 

 しかし、迅真は軽いステップでそれを躱し、口の中で紡いでいた魔法を放つ。

 

「『火炎球(ファイアーボール)』」

 

 言葉と同時に出現した、村の入り口にいた天狗を一撃で気絶させた鉄を溶かすほどの熱を持つ光り輝く球が恂覇に向かって飛んでいく。

 

 だが、その光の球も恂覇から逸れ、そのすぐ横を通ろうとしていた。その時、

 

「残念だが、それは予想通りなんだよ。『ブレイク』!」

 

 迅真がそう言いながら指を鳴らすと同時に、パンッ!という軽い音をたてて光の球は破裂し、四散する。

 

 それは避けた。と思い込んでいた恂覇にはあまりにも想定外の事で、咄嗟に対応できず、更に近くで破裂したため、破裂した球の半分近くを体に浴びる。

 

 そのダメージで動けなくなっている恂覇に、悪魔のごとき追撃が襲う。

 

「『炎の矢(フレイムアロー)』」

 

 赤い光を放つ見た目も炎のような矢が同時に何本も生成され、恂覇に向かって放たれる。

 

 こちらを見る事も敵わない恂覇は、その全ての矢をもろにくらう。

 

 ぐあぁぁぁぁッ!!と燃えながら悲鳴をあげる恂覇に、迅真は、

 

「『魔風(ディム・ウィン)』」

 

と呟く。そして、突如発生した突風に、恂覇を焼いていた火炎は吹き飛ぶ。

 

 炎を吹き飛ばされた恂覇は、ハァ、ハァ、と荒い息をたてながら倒れている。

 

「どうした?もう終わりか?」

 

 迅真が挑発すると、恂覇はゆっくりとだが、立ち上がる。

 

「まだだ……まだ私はやれる……!」

 

「そうか。じゃあ、少し怪我を治してやるよ。『ケアルガ』」

 

 言葉と同時に恂覇の傷は治っていく。

 

「……なんで回復させた?」

 

「そりゃ、まともに戦えない奴をボコボコにしてもつまらないし、何よりも面白みに欠ける。戦うなら最低でもしっかり動ける奴だけだろ?」

 

「そうか。その心意気は良いが、後悔するなよ?」

 

「するかよ。ちゃんと自分と相手の力量くらいは見極めてるっつの」

 

「そこまで言うなら私が言うことは無いな。行くぞ」

 

 恂覇は言うと同時に手に持ったナイフを投げてくる。反射的に迅真はそのナイフを見て、躱す。が、躱しきるまでなぜか(・・・)視線を外さなかったため、再び恂覇の方を向いた時には、すでに懐に潜り込まれていた。

 

「(や…ば……!!)」

 

と迅真が思った時にはすでに遅く、下から上へ、もう一つ持っていたのであろうナイフで切り裂かれる。

 

 ビチャビチャッ!という激しい音をたてながら迅真の身体から流れ出た血液が地面に当たり、辺りに飛び散る。

 

 しかし、息つく暇もなく恂覇の追撃が迅真を襲う。返す刃で恂覇は迅真を切り裂こうとする。その事に気付いてない迅真は、

 

「『爆裂陣(メガ・ブランド)』!!」

 

 同時、恂覇の足元が爆発し、その爆発に巻き込まれ、恂覇と迅真はそれぞれ別の方向へと吹き飛ばされる。

 

 咄嗟の事だったが、恂覇は瞬時に対応し、空中で静止する。怪我を負っていた迅真は、吹き飛ばされながら、呪文を唱え、

 

「『治癒(リカバリィ)』」

 

 言い終わると同時に、迅真の傷はだんだんと塞がっていくが、再生速度が遅い。そして、それと同時に迅真は地面と衝突し、ゴロゴロと転がって止まる。しかし、止まったは良いが、転がった衝撃でまた傷口が開く。

 

 迅真はまた呪文を唱え――――

 

「『リジェネ』」

 

と言うと同時に、再生速度を人間から別の存在へと入れ替える。

 

 その生物の名はトロール。再生能力は、深い傷を負っても数秒で再生できるほど。更に、『リジェネ』は再生能力を向上させるような効果を持っており、先ほど唱えた『治癒(リカバリィ)』も、ほぼ同じような効果だ。

 

 つまり、ただでさえも再生能力の高いトロールに、再生能力向上効果を持った魔法を二つも重ね掛けしたという事で、それによって得られた効果は――――

 

 ゆらり。と清雅は立ち上がる。体に負った全ての傷を、全て消し去って。

 

 ゾクリッ!と恂覇は寒気を感じた。今すぐにここを逃げなければいけない。そんな気がした。しかし、恂覇はその本能的恐怖を理性で抑え込み、再び迅真に飛び掛かる。

 

 ――――直後。

 

「『幻霧招散(スァイトフラング)』」

 

 迅真を中心にいきなり発生した霧に恂覇は飲まれる。そして、

 

「『氷結弾(フリーズ・ブリッド)』」

 

 突如出現したぼんやりと光る青白い球が恂覇に襲い掛かる。恂覇は急いでそれを躱そうとするが、この霧のせいで目測を誤り、左足に当たってしまう。着弾と同時、バキバキィッ!という音と共に恂覇の左足が凍っていく。

 

 足が凍ったことで一瞬恂覇の動きが止まった。直後。

 

「『フリーズ』!!」

 

 バキンッ!という音が聞こえたと同時、霧が凍りつき、恂覇もそのまま凍てつき、気を失ってしまうのだった。

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