東方種変録   作:大神 龍

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第二十八話

 迅真が鬼の村に戻ると、外を歩いていたルーミアがこちらに気付き、ダッシュで向かって来る。もちろん迅真は避けようとせず、それを正面から受け止める。

 

「迅真?どこ行ってたの?」

 

「あぁ、ちょっと今朝の天狗の所までな」

 

 不思議そうな顔でルーミアが聞いてきたので、迅真は笑顔でそう答える。すると、

 

「ふぅん…?そうなんだ?……で、何をしていたの?」

 

と、満面の笑みで聞いてくるルーミア。

 

「あぁ、それはあれだ。朝の時の戦闘の報酬を貰いに行ってた。ただ、少し予想外のが色々あって、最初に考えてたのとは別のモンになっちまったけどな。で、その報酬によって俺はもう一つやる事ができた。ってことで鳳花の所に行くぞ」

 

「むぅ。最近迅真がかまってくれない気がする……」

 

「いや、最近って、昨日この山に入ったんだから二日も経ってないし、その前は俺とお前しかいなかったんだからずっとお前の相手をしてただろうが。今はこれで我慢しとけ」

 

 迅真はそう言ってルーミアの頭を撫で、ひょい。っと持ち上げて肩に座らせる。俗にいう肩車だ。そして、ルーミアは迅真の肩に乗ると、満足そうな表情をしてそのままおとなしくなる。

 

「よし、じゃあ行くぞ」

 

「分かった~」

 

 

 

「鳳花~。家はどんな感じだ~?」

 

「見ての通りだよ。っていうか、そんなにすぐ建て直せるわけないだろうが。全焼だぞ?」

 

 いつもより声を若干低くして言う鳳花の後ろは、すでに骨組みが組まれており、家の形がしっかりと確認できる。

 

「いや、ここまで出来りゃ上出来じゃね?だってまだ3時間も経ってないだろうが」

 

 上出来どころか、ありえない速度である。さすが鬼。というか、その現状を上出来という迅真は一体…?

 

「で、何の用なんだい?出来れば手短に終わらせてほしいんだけど」

 

「出来るだけ善処する。で、内容なんだが、さっき恂覇――――天魔って言った方が良いか?」

 

「いや、恂覇で分かるからそこは問題ない」

 

「そうか。で、恂覇の家に行った時に八雲紫って奴に会ったんだよ」

 

「八雲紫?聞いたことないな。で?そいつがどうかしたのかい?」

 

「正確にはそいつの夢の方なんだけどな?」

 

「夢?」

 

「あぁ。夢だ。内容は妖怪と人間の共存できる世界。で、これをお前に話したのは」

 

「私達に協力をしろっていうのかい?」

 

「そういう事だ。それで、どうなんだ?協力してくれるか?」

 

「ん~……そうだね……よし、こうしよう。今日の夕暮れに、もう一度私達4人と戦ってくれ。今度は別々じゃなくて全員同時だ。それで勝てたら協力しようじゃないか」

 

「は?もう一度か?ん~……はぁ、仕方ないな。良いぜ、その勝負受けてやるよ。ただ、俺が勝ったら絶対協力しろよ?」

 

「あぁ、鬼に二言はないよ。じゃあ、夕暮れ時に昨日私達と戦ったところに来てくれ」

 

「分かった。じゃあまた後でな」

 

 そう言って迅真はその場を立ち去るのだった。

 

 

 

「――――んで?なんでここに戻ってくるんだよ」

 

 そう言った彼、閃鬼は、なぜか女物の着物を着ていた。意外にもそれは似合っており、パッと見女性にしか見えなかった。さきほどまで酒でも飲んでいたのだろうか、部屋の中が散らかっており、閃鬼はそれを片づけていた。

 

「いや、それは俺の荷物がここにあるからなんだが……それよりも、何があったんだよ」

 

 その不思議な服装の閃鬼に、迅真は驚きながらも表には出さず聞いてみる。

 

「……聞くな。悲しくなる」

 

 どうやら踏み込んではいけない事のようだ。顔を逸らしながら言う閃鬼を見て、迅真はそう感じる。

 

「っていうか、お前もお前で何やってるんだよって突っ込みたい所なんだが……で、お前の用事は済んだのか?」

 

 言っておくが、迅真は未だにルーミアを肩車したままである。

 

「ん?あぁ、天狗のヤツな。そっちは終わったんだが、その時もう一つ面白そうな事に首を突っ込んでお前たちも巻き込んだ。反省はしてないし後悔なんか微塵もない」

 

「は?巻き込んだってお前、ふざけんなよ!?なんでお前の勝手で俺が巻き込まれにゃならないんだよ!」

 

 思わず拳を握りしめて迅真を殴りそうになるが、理性をどうにか保たせ、なんとか殴るのを止める。

 

「ふっ。安心しろ。この契約を結ぶにはまたお前達と戦うんだ。だからお前は俺を合法的に殴れる権利を得たんだよ」

 

「なん………だと………!?」

 

 驚きのあまり一歩後ずさる閃鬼。

 

「待て、お前()って事は、俺以外にもいるって事か?」

 

「あぁ、もちろん。俺はお前、萃香、勇義、鳳花と戦うんだ。しかも、全員同時に相手取るという鬼畜の所業!」

 

「な、何だって~!?」

 

 熱く語る迅真と、それに対してオーバーなリアクションをする閃鬼。迅真の肩に乗っていたルーミアは何とも言えない気分になり、迅真の肩から降りて家の外へと出て行く。そして、その事に迅真達は気付くことなく、話を続ける。

 

「で!?それはいつやるんだ!?」

 

「それはだな……今日の夕暮れ時だ!」

 

「な!?半日近くあるじゃねぇか!?今日が昇ってからそんなに時間が経ってないんだぞ!?」

 

「これは俺が決めたんじゃない!鳳花だ!文句ならあいつに言え!」

 

「それじゃあ仕方がないな!しょうがない!なら何とかして時間をつぶさなきゃだな!」

 

「それなら良い所があるんだが、紹介してやろうか?」

 

「そ、それは一体どこなんだ!?」

 

「鳳花の家の建築。朝全焼したから今楽しそうに立て直ししてるぞ?」

 

「……あ~……まじか。家を建てるのか。それはあんまり好きじゃないんだけどな~……」

 

 さっきまでのあの熱い会話はなんだったのだろうか?と思う位に急激に冷め、閃鬼は少し考えた後、

 

「まぁ、とりあえずこの部屋を掃除した後行ってくることにするわ」

 

「おう。じゃあ、俺は荷物を取ったらまた散歩に行ってくるぜ」

 

 そう言って迅真は自分の鞄を取ると、外へと出て行き、ルーミアをつれてどこかへと歩いて行く。閃鬼はその姿を尻目に、部屋の片づけを再開するのだった。

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