東方種変録   作:大神 龍

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 本日はいつもの三倍の長さでお送りいたします!正直コラボを早くやりたいからって無理しすぎた気がします!

 ではどうぞ!



第二十九話

 迅真は、鳳花に言われた通り夕暮れ時に村へと戻ってくる。

 

 村の中にある少し開けた所に、鳳花達は横一列に並んでいた。左から順に、萃香、閃鬼、勇儀、鳳花である。そして、その周りを囲む様に鬼達がいた。ちなみに、閃鬼の服は女物から男物に戻っていた。

 

「よお。さっきと違って良い表情じゃねぇか。……準備は良いか?」

 

 軽い調子で迅真は鳳花達に声をかける。

 

「あぁ。こっちの準備は出来てるよ。今すぐ始めたいくらいにな」

 

「そうか……ふぅ。じゃ、本気を出すために結界を張るかな」

 

 迅真はそう言うと、ずっと迅真にくっ付いていたルーミアに離れてもらい、鞄の中から4枚の紙を取り出す。迅真は親指の皮を噛み千切り、血を出すと、その紙を出した血で濡らしていく。そして、ある程度染み込ませた後上空へと投げる。その紙は四方へと散らばると、周りを囲んでいた鬼より少し離れた所に落ちて行き、地面へと刺さる。それと同時に空気が少し変わった気がした。

 

「これは昔拷問用に作ったモノなんだが……少し改良してこの結界の中じゃ死ねないようにした。死ぬほどのダメージを受けたら結界の外に吹き飛ばされるが、結界の中で受けたダメージは外に行ったら消えるから安心しろ。だから……本気でかかって来いよ?」

 

 迅真はへらへらと笑いながら、しかし笑ってない眼で鳳花達を見る。

 

「くはは!最初(はな)っからそのつもりだこの野郎!今回は絶対勝ってやるからな!」

 

「そこまで舐められると鬼の面子に関わるね。この汚名を返上するにはあんたを負かすしかないだろう?」

 

「あっはは!ここまでコケにされるとは何年ぶりかな!これはほんとに負けられないねぇ!」

 

「そこまで大口叩いてあっさり負けるんじゃないよ!?さぁ、数百年ぶりの本気の喧嘩を始めようじゃないか!」

 

 閃鬼達は口々にそう言うと、戦闘態勢に移る。

 

「あぁ、戦争(ケンカ)の始まりだ!」

 

 迅真は心の底から楽しそうに笑うと、片足を上げて、思いっきり地面を踏みつける。

 

 突如、迅真の周りの地面が隆起し、閃鬼達一人一人に向かっていく。突然の事に閃鬼達は一瞬驚くが、すぐさま各々の力を使って切り抜ける。まず、隆起した地面を拳で打ち砕いた閃鬼と勇儀は、迅真に向かって一直線に突き進んでくる。

 

 そして、拳を当てられるほどの距離に近づくと、勇義は右拳を。閃鬼は左拳を使って殴りかかってくる。

 

 迅真はその攻撃を左脚を軸にした回し蹴りで二人の腕を蹴り、まだ足が宙を浮いている状態で、強引に体をひねりもう一撃叩き込む。

 

 二撃目の蹴りは勇儀が咄嗟に左手を使って防ぐが、左手に来た衝撃が、なぜか体中を駆け巡り、ダメージを増加させる。勇儀は掴んでいた足を更に強く握り、逃げられない迅真に向かって蹴りを放つ。その隣にいた閃鬼も、足が地面に着くと同時に思いっきり地面を蹴り、がら空きになっている迅真の腹目掛けて殴り掛かる。

 

 しかし、両者の攻撃は、突如現れた土の壁に阻まれて一瞬動きが止まる。直後。

 

「『爆術法(グレイボム)』!!」

 

 ズドムッ!!という音と共に勇儀と閃鬼の間の地面が爆発する。想定外の攻撃と威力に、勇儀は掴んでいた迅真の足を離して両手で自分の事をかばう。閃鬼はそのまま横に転がることで事なきを得た。

 

 迅真もその爆発に巻き込まれたが、爆発の勢いに乗って受け身を取り、こちらもダメージは無かった。しかし、周りは土煙で覆われており、誰がいるかも確認できない。直後、上から踵落としをくらいそうになる。

 

 瞬時にそれに気付いた迅真は、その足に向かって、避けるのではなく逆に殴り掛かる。ミシッ!という音がすると同時にその足を弾き飛ばすように殴り切る。

 

 踵落としをしてきた本人は土煙の中に再び姿をくらます。迅真は油断せずに辺りを警戒する。

 

 瞬間。先ほど吹き飛ばした閃鬼と勇儀が再び殴り掛かってくる。

 

 迅真は勇儀の正拳突きを下から殴り弾き飛ばす。閃鬼の上から叩きつけるような拳は勇儀の攻撃を避ける時に全力で跳び、蹴り上げて押し返す。

 

 跳び上がったことで宙を浮いた迅真に勇儀達は左右から蹴り上げて追撃をする。

 

 その攻撃を今まさに迫ってきている勇儀と閃鬼の足を足場としてもう一度跳躍する。と、迅真が跳んだ先になぜか萃香がいた。

 

 迅真はそれに驚き一瞬動きが止まる。止まって、しまう。

 

 萃香はそのタイミングを見計らったかのように殴り飛ばしてきた。迅真は少し遅れてその攻撃を両手でかばい軽減させる。

 

 吹き飛んだ先にはこれまた狙った様に鳳花が待ち構えており、溜めに溜めたであろう拳を迅真に向かって振りかぶる。勢いよく飛ばされていた迅真だが、飛ばされながらも強引に体をひねると、振りかぶっている腕に一度手を付き、軽く押す。それによって迅真は鳳花の攻撃を軽々と躱し、トン、トンと何度か跳て速度を()ぐ。

 

 そして、速度を殺し切りしっかりと地面を足に着けると、ブワッッ!!!と闇が噴き出す。

 

「ク、ククク、ハハハハハ!最っ高だ!こうでなくっちゃ面白くねぇ!さぁ!もっと楽しもうじゃねぇか!!」

 

 闇から一本の剣が生み出される。ダーインスレイヴ。鳳花と戦った時に使った傷が治らない剣。迅真はそれを片手で持ち、鳳花達に突きつける。

 

「ったく。あんたの方が私達よりよっぽど化け物なんじゃないのかい?まぁ、受けて立つけどね!」

 

 鳳花は限界まで口角をあげ、狂ったような笑みを浮かべて迅真に向かって突っ走り、勇義達もそれに続いて迅真に走り始める。

 

 迅真はズドンッッッ!!!と勢いよく地面を踏みつける。突如として地面は槍の様に鋭く尖って鳳花達に迫っていく。

 

 その槍は素早く鳳花の前に出た閃鬼が蹴り、能力を使ったのだろうか。連鎖的に槍が砕けて行く。

 

 直後、迅真の背後の空間にいくつもの穴のようなモノが出現し、その中から様々な武器が出現する。その武器は全て形が違うのだが、一つ共通することは、全て一色だという事。ただ、それはあくまでも一つの武器を構成している色なので実際には様々な色があった。そして、迅真は手をあげると、

 

「模倣版『ゲート・オブ・バ〇ロン』だ。種を明かせば紫の能力の派生であるスキマとかいうのの中に魔力、妖力、霊力で作った様々な武器を突っ込んだだけだけどな。ま。元と比べると遥かに劣る威力だが、それなりには使えるだろう、よっっ!!」

 

 思いっきり振り下ろす。同時、出現していた全ての武器が鳳花達目掛けて音速に近い速度で飛来する。

 

 鳳花はそれを一度視界に入れてから躱すという荒技に出る。この時点で迅真と鳳花の距離は50メートルも無い。人間だったら反応すら出来ずに粉微塵になっている。

 

 避けられるモノを最小限の動きで躱し、避けられないモノを拳で殴り叩き落とす。それを1秒の間に何十と繰り返し、迅真の攻撃を凌ぎ切る。

 

「む。これも耐えるか。じゃあ次だ」

 

 迅真がダーインスレイヴを地面に突き刺すと同時に迅真の周りから闇が槍のような形状を取る。

 

「行け。影の刃達」

 

 言葉と同時に音も無く槍の形状をした闇は先ほどの攻撃とは比べ物にならないほどの速度で向かっていく。

 

 驚き目を見開いた鳳花の後ろから瞬時として現れた勇儀と萃香がその槍を弾く。しかし、弾いた時にダメージを逸らしきれなかったのか、萃香と勇儀は顔をしかめる。

 

「勇儀!萃香!大丈夫か!?」

 

「大丈夫じゃないね。もう腕が使い物にならないかも」

 

「ハハ、なんだい萃香。弱音を吐くんじゃないよ。あんたが一番戦ってないんだからさ」

 

「私はそんなに丈夫じゃないの。それに今の攻撃で勇儀ももう限界近いんじゃないの?」

 

 二人とも辛そうだが、それでも、いや、それだからこそ笑みを浮かべていた。と、それを確認し前を向いた瞬間に闇の槍が再びやってくる。

 

「うらぁ!!」

 

 鳳花達が反応できずに固まっていると、背後から土の塊が飛んできて、槍を上から叩き潰す。その塊を投げた人物は、自分で投げて乗った塊から降り、

 

「っと、やっと追いついた。全く、あの槍の数は想定外だし、その後の武器の嵐もふざけんなっつうの。まぁ、追いついたから良いけどさ。じゃ、そろそろ反撃に出ましょうか。鳳花姐さん?」

 

と、鳳花達に不敵な笑みを浮かべてそう言う。

 

「クク。そうだね。こっから反撃の時間だ。じゃあ、行くぞ」

 

 鳳花が言い終わると同時、閃鬼は先ほどの塊を迅真に向かって蹴り飛ばす。

 

 それまで静観していた迅真は、自分に向かって飛んでくるその塊を、地面に刺していたダーインスレイヴを引き抜いて切り上げることで動かずに回避する。と、塊の先には勇儀がいた。

 

 切り上げた直後だった迅真はすぐさま剣を引き戻すことが出来ないと判断し、瞬時に剣から手を離してから右側に体だけを動かして躱し、自由落下をしようとしている剣を右手で掴み振り下ろす。

 

 が、唐突に右腕に痛みが走り、迅真は視線だけを右腕に移す。そこには先ほどまでいなかった萃香が迅真の右腕の肘部分を殴っていた。関節は反対に曲がり、常人なら全治何か月というレベルか、そもそも治らないかもしれない。

 

 当然の事に迅真は少し驚くが、しかし、折れたにも拘らず迅真は腕を振り下ろす。

 

 ザンッ!という音と共に鮮血が宙を舞う。

 

 そう迅真は思ったが、勇儀はすでに避けようと体をひねっていたため、服を浅く斬る程度だった。

 

「チッ!逃げられたか!」

 

 迅真はそう言い放つと、言葉を紡ぎ始める。

 

――――黄昏よりも暗き存在(もの)

 

 空気が重くなる。直後背後に回っていた鳳花が迅真に殴り掛かる。が、それは軽々と躱され、避けられた直後に背後から蹴りをくらう始末。

 

――――血の流れよりも赤き存在(もの)

 

 閃鬼達は鳳花の心配をするよりも先に迅真を倒さないとやばいと直感的に悟り、殴り掛かる。しかし迅真はそれを躱すと、闇を槍の形状に変えて閃鬼の腕と足を貫き動きを止める。

 

――――時間(とき)の流れに埋もれし偉大なる汝の名において、我ここに闇に誓わん

 

 霧から元の身体に戻った萃香は迅真の背後から襲い掛かる。が、迅真は振り向きもせず萃香の腕を掴むと閃鬼に向かって投げつける。

 

 萃香が投げられると同時に勇儀が右側から攻撃を仕掛ける。全力の正拳突き。それを迅真は、なんと折れた右腕を側面から当てることで逸らす。

 

――――我らが前に立ち塞がりし、全ての愚かなるものに

 

 勇儀は攻撃を逸らされたが勢いを止めず、逆に攻撃を逸らしたことによってがら空きになった迅真の腹に膝蹴りを入れようとする。迅真はそれに反応し反射的に後ろへ下がろうとする。が、背後から、いつの間に戻っていたのか、鳳花が迅真の事を抑え――――

 

――――我と汝が力もて、等しく滅びを与えんことを!!

 

「『竜破斬(ドラグ・スレイブ)!!!』」

 

 迅真の詠唱が終わるや否や、チュドォォォォォンッッッッ!!!!!という爆音と共に全てが消し飛ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ。久しぶりにあの魔法使ったぜ。っていうか、あれで全滅するとは思わなかったな」

 

 迅真の範囲爆裂魔法で鬼の四天王が倒されて数分後。先ほどの大魔法をくらったにも拘らず傷一つ入っていない結界を解き、少し疲れた様子で迅真が出てくる。

 

 迅真が戦う前に言っていたことはどうやら本当だったようで、閃鬼の貫かれた手足は穴が開いていたとは思えないほど綺麗だった。その他にもかすり傷などもなくなっており、破れた服なども直っていた。

 

「あ~クソッ。負けた~……なんだよ最後のアレはさ……」

 

「ククク。それを自力で考えるのも良いかもしれねぇぞ。もしかしたらお前も使えるようになるかもな」

 

 ブーブーと閃鬼は文句を言うが、迅真は笑いながら流す。

 

「じゃあ鳳花。最初の条件通り、お前達には手伝って貰うからな」

 

「クッ…!はぁ、分かってるよ。鬼に二言は無い。で?私達は何をすればいいんだい?」

 

「ん、あぁ、それは――――」

 

「今は特に何もありません。もう少し準備が整うまで待っていてください」

 

 唐突に迅真の隣から声が響く。言葉を遮られた迅真は少しむすっとした表情で声の主を見る。そこには、迅真の思った通り紫がいた。

 

「あんたが八雲紫ってのかい?人間と妖怪の共存を望んでるっていう」

 

「そうです。正直あなたへは私自身が向かうつもりだったのですが……迅真さんに俺が行くと言われてしまいまして。私がここに来た時にはすでにあなた方が戦っていたので、静観しておりました」

 

「なるほどねぇ。まぁ、あの戦いの中に入ってくるのは不可能に近いだろうし、そりゃ静観しかないね。で?私達はいつまで待ってればいいんだい?」

 

「それは今はまだ言えません。何しろ当初計画していたよりも相当早く進行して行ってしまっているので……」

 

「なるほどね。じゃ、そっちが決まるまでは私達はまだ自由に過ごさせてもらうよ」

 

「えぇ。それで問題ありません。お力をお借りしたい時にはまた声をかけさせていただきますので」

 

「分かった。その時はまたよろしく頼むよ」

 

「こちらこそよろしくお願いしますわ」

 

 鳳花の差し出した手を紫はしっかりと掴み、契約は結ばれた。

 

「――――で、俺は何をすればいいんだ?」

 

 途中から、というかほぼ最初から完全に仲間外れにされていた迅真は少し不機嫌そうにそう尋ねる。

 

「そう、ですね。あなたは協力してほしいと思う方々に聞いて下さるだけで良いですわ」

 

「そうか。じゃあ連絡する必要が出て来るな……よし、これをやるよ」

 

 そういって迅真は鞄の中から透明な石で造られたイヤリングを渡す。

 

「なんですか?コレ」

 

「あぁ、それはちょっとした魔法で通信機能を付けた、言うなれば魔封石かな。ま、通信魔法をかけただけだし、そんな大層なもんじゃねぇよ」

 

「はぁ。そうですか?と、とにかく、私からも面白そうな人材……ゲフンゲフン。協力をしてくれそうな方がいて、その上で私の手で負えなければあなたの所に送りますのでよろしくお願いします」

 

「分かったが、自分でどうにか出来るようになるまで修行してろよ。まぁ、俺が稽古をつけてやっても良いが、それだと基本近接戦闘になるけどな。それで良いならするか?修行」

 

「それは気が向いたらお願いいたしますわ」

 

「そうか。じゃあ、しばらくの間俺はずっとここにいるから、何かあったらここに来いよ」

 

「分かりました。ではまた」

 

 紫はそう言うと、スキマの中へと消えていく。

 

「ふぅ。取りあえず俺のやることはそんなにないって事か。まぁ、ここを出たら色々と出てきそうだけどな」

 

「それは良いんだが、迅真?お前、しばらくここにいるとか言ったが、一体どこにいるつもりだ?」

 

 紫が消えたと同時に離れていたルーミアが走り寄ってきて迅魔の背中に張り付く。それを見つつ閃鬼は迅真に問う。

 

「そりゃあ、閃鬼の家だろ?」

 

「……俺、胃に穴が開くかもしれないな……」

 

 閃鬼は思わず泣きそうになりながら顔を背ける。たった一日ですら迷惑をかけまくってくれた奴がしばらく泊まると言っているのだ。泣き出したくもなるだろう。

 

「はぁ、まぁ良いけどさ、せめて料理と掃除くらいはやってくれよ?」

 

「それくらいやってやるさ。タダで泊まるつもりなんか無いって。最低限それくらいはするし、何かあれば手伝うさ。俺はふざけはするが境界線ぐらい作ってるし守ってるっつうの」

 

「お前に言われてもなんか説得力が無いような気がする」

 

「まぁ、よろしく頼むよ」

 

「分かった分かった。お前らがそれを守ってくれる限り俺はお前たちを泊めてやるさ」

 

 微笑を浮かべつつ閃鬼は迅魔達が泊まることを了承し、迅真はそれに対してお礼を言うのだった。




 今回の話 迅魔→魔王 四天王→勇者パーティー

 書いてる最中そんな気分だった。迅魔君に悪役臭が……!
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