……あくまでも力尽きなければの話ですけどね……
迅真達は先ほど抜けて来た森の入り口の木にもたれかかって、少女が起きるのを待っていた。
「意外と起きないな……」
「そうだねぇ……」
木漏れ日を浴びて、二人はだんだんと眠くなってくる。
「……ルーミア、寝るか?膝なら貸すけど。どうする?」
「ん~……じゃあ、少しだけ借りるね」
ルーミアはそう言うと、迅真の膝を枕にするように横になる。迅真はそんなルーミアの頭を撫でつつ、ぼんやりと川を見つめる。
「あぁ~……川を見てると、なぜか現実じゃないような気がしてくるんだよな……」
誰に言うでもなく迅真はそう呟く。それから5分もしないうちにルーミアの小さい寝息が聞こえてきて、その寝息を聞いているとこちらも眠ってしまいそうになる。
「うむぅ……俺も寝ようか……でも、寝ているうちにこいつに逃げられてもなぁ……はぁ、仕方ない。何か暇潰しでもしてるかな」
そう呟くと、迅真は近くにあった石を拾うと、川に向かって投げる。ピシャッ!ピシャッ!ピシャッ!――――と音を立てて石は何度も水の上を跳ね、対岸に当たって止まる。
迅真はそれを何度も繰り返し、気付いた時には迅真の周りにはすでに手頃な石が無くなっていた。
「……意外と熱中できるもんだな。昔やった時は途中で飽きたけど……まぁ良いか」
特に何も考えずそう呟いていると、隣で気絶していた少女が突然ガバッ!と起き上がる。
「こ、ここは!?」
「やっと起きたか。はぁ、いつまで寝てるんだよ。こちとらお前が起きるまでどれだけ眠いのを我慢してると思ってるんだ」
「なんで私は怒られてるのかな!?なんでだい!?私は何も悪くないはずだよ!?」
「いや悪いだろ。いきなり人を水の中に引きずり込もうとしたんだからさ」
「そ、それは……」
「あ~……もういいよ。ハイ、この話題終了な。で、だ。お前、名前は?」
「私?私は河城にとりだよ」
「そうか。俺の名前は薙浪迅真だ。よろしくな、にとり」
「こ、こちらこそよろしく」
なぜか自己紹介をすると、にとりの声が小さくなった。
「おいおい。さっきまでの威勢はどうしたんだよ?まぁ別に無理にとは言わないが、出来るならさっきみたいにハッキリ言えるのが良いんだけどな。その方が印象も良くなるだろうに」
「ひゅい!?い、いきなり何を言ってるの!?」
「そうそう。そのくらいの声を保てるように頑張れ。ただ、若干無理してるように見えなくもないのが難点だな。まぁ、そこはそのうち治るか」
「え、えぇ?い、いや待ってってば。本当に迅真は何の話をしてるの?」
「お前の自己紹介の改善点?」
「べ、別に関係ないんじゃ!?」
「そうだが……一応言う事自体に損は無いと思うが?」
「そうだけど!そうだけども!!」
「ほらほら、叫ばないの。寝てる子がいるだろ?」
「なんで迅真はあの会話からいきなりそこに繋げられるの!?すごい強引!」
そう言いつつにとりは迅真に言われて若干声の音量を下げる。
「はいはい。とりあえずそこに座りなさい」
「座ってる!起きてから私立ってない!」
「分かった分かった。だから落ち着けって。今度は空の彼方まで吹き飛ばすぞ?」
「唐突な脅迫!そろそろ泣いても良い!?」
「却下する。とにかく、聞きたいことがあるんだが、聞いていいか?」
「うぇ?あ、う、うん。まぁ大丈夫だけど……何が聞きたいの?」
「えっとな、お前、河童だろ?」
「……あれ?私自分の種族言ったっけ?」
「いや、言ってないぞ。俺が勝手に『見た』だけだ。で、河童であってるよな?」
「まぁあってるけど……なんで?」
「いや、ここの川を少しだけ使わせてもらおうかと思ってな?それの確認だよ」
「ん~……一応仲間にも聞いてみるけど、良いと思うよ。まぁ、迅真が何をやるのか見に来るかもしれないけども」
「そうか。それは特に問題ないが、そんなに時間かかるもんじゃないから見たいなら早くした方が良いぞ。じゃあ俺は準備しに戻るわ」
迅真はそう言うとルーミアを起こさない様にお姫様抱っこをして、立ち去って行く。
「もう行くの?」
「そりゃあな。お前も起きたし許可も取ったからこれ以上そこにいる必要はないしな」
「そう……じゃあ、作業の時にまた会おう!」
「そうだな。その時にまた会うだろうな。また、会おう」
迅真はそう言って森の中へと消えていくのだった。
「……迅真……良い人間…かな?でも、一緒にいたのって…いやいや。見間違えだよね。よし、とりあえず皆に迅真の事を知らせないとね」
にとりはそう呟くと仲間がいる方向へと歩いて行くのだった。
その後、ギャラリーは迅真の想像していたよりも多くいたが特に何の問題も無く作業は進み、目的の風呂作りは一日も経たずに終わったのだった。
に、にとりの口調がおかしい(確信)。迅真を盟友と呼ばせてないからだろうか…?っていうか、自分で言うのもどうかと思うけど、全カットってどうなのさ?