東方種変録   作:大神 龍

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第三十六話

 風呂を作った日の夜の事。迅真は風呂を作った時の余った木で作った長イス(外配置。コラボの時に出てきていたアレ)に座って、ぼんやりと星を眺めていた。設置場所は閃鬼の家の前あたりで、壁から人が一人ほど入れるくらいは開けて置いていた。

 

 状況を説明するなら、閃鬼は未だに帰って来ておらず、先に食事を済ませ、現在はルーミアが風呂に入っていて、迅真はスキマを使って長イスに座りながら湯加減の調整をしているといった所だろうか。ただ、すでにルーミアが入ってから20分くらいは経っている。

 

「……あ~、やることないな。ん~、このまま寝るのもあり…か?いや、それをしたらルーミアに起こられる気がするなぁ……でもここに来るまでの間普通に外で寝てたしなぁ……ふあぁぁ…もういいや。怒られたらその時に考えればいい事さ」

 

 迅真は結局眠気に勝てず(勝つつもりもなく)そのままイスの上に寝転がる。

 

 

 

「……迅真ぁ?何所に居るの~?」

 

 ルーミアは困っていた。何に困っていたかというと、服が無いのだ。いや、正確には先ほどまで着ていた服が無くなっており、代わりに別の服が置かれていた。

 

「……犯人、迅真、だよね?やっぱり洗わなかったから強制的に洗われちゃったのかな……むぅ、せめて一言言ってくれればいいのに」

 

 置かれていた服は、まずルーミアより若干大きいくらいの白いブラウスと、フリルのついた黒いスカートだった。そのどちらも今の時代ではお目にかかれない代物である。

 

「それにしても、この服……なんで私に合ったサイズなの?」

 

 おそらく迅真が調節したのだろうが、どうしてここまでサイズを合わせる事ができたのか。本当は分かっているはずだが、正直認めたくないルーミアなのだった。

 

「仕方ない。他に服が無いからこれを着るしかないよね」

 

 渋々といった感じの声を出しつつルーミアはその服を着て行く。

 

「それにしても、迅真は何所に居たんだろ。呼んでも返事が無いってことはそれなりに離れているはずだし……」

 

 考えつつルーミアは迅真を探し、家の中を全て見終わった時点でふと気づく。

 

「……家に居ない…!?」

 

 今更か。と突っ込みたいのは私だけだろうか。まぁいい。ルーミアはその後玄関から外へ出て――――そこでやっと探していた人物が見つかる。彼は自分で作った長イスの上でこちらに足を向けて寝ていた。

 

「あ。迅真、こんな所にいたのね。全く、なんで私の服を勝手に洗っちゃうのよ――――って、迅真?起きてるの?お~い!」

 

 しかし返事は無い。もしやと思いルーミアはテクテクと迅真の横へと行くと、案の定、迅真は寝ていた。

 

「むぅ~……迅真ったらこんなの所で寝て!家の中に入るくらいはしなさいよ!」

 

 文句を言いながらルーミアはぺちぺちと迅真の頭を叩く。しかしそれでも一向に起きる気配がしない。

 

「ていていていていていてい!」

 

 ペチペチペチペチペチペチ!とひたすら叩くが、やはり起きない。

 

「ぐぬぬ……なら、これでどうよ!」

 

 そう言うとルーミアは迅真の頬を思いっきり引っ張る。迅真の頬はびよ~んと伸び――――ベチン!と音をたてて勢いよく戻る。さすがにこれで起きただろう。とルーミアは思ったが、迅真は少し呻くだけで起きなかった。

 

「か、かなりぐっすり眠ってる…!うぅぅ……でもここで寝られると困る…具体的に言うと隣で寝れない!」

 

「困る理由はそれだけなのかよッ!」

 

 唐突にルーミアはそう突っ込まれる。誰だ?と思いルーミアが声のした方を見ると、そこには、明らかに疲労しているであろう表情の閃鬼がいた。

 

「あ、お帰り。ずいぶんと遅いじゃない。どうしたの?勇儀とか萃香に遊ばれたの?」

 

「その通りだよッ!!二人ともやりたい放題やりやがってッ!!うがーーーーー!!!」

 

 閃鬼はルーミアの問いに答えるとその場に座り込み地面を叩きはじめるのだった。

 

「……散々な目にあったみたいね。まぁ興味ないから早く家の中に入ったら?どうせ勇儀の家でご飯食べたんでしょ?」

 

「うぅ、確かに食べたけども……はぁ、もういいや。寝ちゃおう」

 

「うん。おやすみなさい」

 

 ふらふらと頼りない足取りで閃鬼は家の中へと入って行く。ルーミアはそれを見送ると、迅真に視線を戻す。

 

「さて。迅真にも中に入ってもらいたいんだけどなぁ……どうしようかなぁ……」

 

 ルーミアはそう言いつつもう一度迅真の頬を引っ張って遊ぶ。すると、

 

「ぅん……」

 

と呻き声をあげて寝返りを打ちつつ迅真はルーミアの手を掴むと、自分の方へと引っ張る。

 

「うぇ…!?」

 

 ルーミアが反応した時にはもう遅く、抱き枕の様に迅真に捕まってしまった。

 

「うあぁぁぁ…!外だからこれ完全に公開処刑…!!」

 

 目を回しながらルーミアはそう呟くが、そもそも長イスの面積が狭いうえ迅真が寝返りを打ったのもあり、実はルーミアは迅真の腕力だけで支えられている状態である。

 

 それに気付いたルーミアは必死で迅真に引っ付き、頬をひたすらに叩きつつ、

 

「じ、迅真ッ!迅真ぁッ!起きてって!落ちる!私落ちちゃうから!!」

 

「うぅぅ……ん?…あぁ、ルーミア。おはよう…って、これ、どういう状況?」

 

 迅真はようやく起きると、ルーミアに挨拶をしてそれとほぼ同時に自分がルーミアを支えている事に気付く。

 

「ど、どういう状況って言われても、私が迅真を起こそうとしたら抱き枕にされた?」

 

「あぁ、なるほど。そういう事な。そりゃすまなかった」

 

 迅真はそう言うと起き上がりルーミアを立たせる。

 

「ふわぁぁ……はぅ、あ~……じゃあ家に入って寝直すかな」

 

 自分も立ち上がり、ルーミアと一緒に家の中に入って行くのだった。

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