東方種変録   作:大神 龍

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第四話

「迅真!これを見て!!」

 

 そう言って諏訪子が封書を持ってきたのは、最初に会ってから、1ヶ月くらい経とうとしている時だった。

 

 ちなみに、その間に迅真は村の人たちと親睦をそれなりには深めていた。まぁ、神社に住んでいるから微かに恐怖が見え隠れしていたが、今ではそんな気配はあまりしない。

 

「どうしたんだ?そんなに慌てて」

 

 振り向きつつそう言う迅真は、ルーミアと一緒に食器を洗っていた。

 

「いいからこれを見てよ!!」

 

「ん、ちょっと待て――――よし、良いぞ。えっと?」

 

 

 

『 諏訪の大地を大和の信仰のために貰い受けたい。

 良い返事を待つ。 』

 

 

 

「――――これは……面白――――じゃなかった、めんどくさそうな事が起こったな……」

 

「ちょっと、ふざけてる場合じゃないと思うんだけど!?」

 

 諏訪子が手を上下にパタパタと動かしながら言っているが、迅真はもちろん真面目に

言っている。

 

「ルーミア、後の事は任せて大丈夫か?」

 

「大丈夫だよ~」

 

「じゃあ任せたぞ」

 

 そう言いながら迅真は迷わずに外へ向かう。諏訪子は迅真を追い、

 

「ちょっ……!どこに行くの!?」

 

「いや、ちょっと気になることがあってな。これを送ったやつの所に行ってみる」

 

「はい?え、行くの?というか、行けるの?」

 

「まぁ、行けなくはないな。何か送ったやつに言いたいことはあるか?」

 

と、迅真は神社の階段辺りに来てから、振り返り諏訪子に問う。

 

「えっと……とりあえず、断って欲しいんだけど……できる?」

 

「やれるだけやってみる」

 

 そう言い、迅真は階段を下りて行く。

 

 

 

「さて、たぶんこれの送り主とだと思うやつが近くにいるっぽいんだよなぁ……」

 

 迅真がぼそりと呟いたのは、階段の真ん中あたりだった。すると、左側の草陰から、微かな呼吸音が聞こえた。

 

「…………」

 

 迅真は草むらに入って行き、呼吸音を頼りにその人物を探す。

 

 1分も立たないうちにその人物に感付かれたのか、その人物が遠ざかって行っている気がする。

 

 その人物を追いかけると、5分と立たないうちに追い付く。

 

「おいおい、いきなり逃げるなよ……っと、あんたがこれを送った人物か?」

 

 そう声を掛けられた人物は、ゆっくりと、錆びついた機械のように、振り返る。その人物は、どうやら女性のようだった。そしてその女性は、

 

「……そうだ」

 

と、短く答える。その返答に、迅真は不満そうな顔をしながら、

 

「そんな警戒するなよ。別に俺はお前をどうかしようとは思ってないからさ」

 

「そんなことを言われても……信用できないな」

 

と言いながら、迅真のことを睨みつける女性。迅真はため息をつき、

 

「取りあえず、これの返答だが――――」

 

 迅真は封書をパタパタと動かしながら、

 

「――――お断りだそうだ。何か言いたいことは?」

 

「……そうか、やっぱり断るか……ならば、七日後にここで決着を付けよう」

 

 まるでその返答を読んでいたかのように、ある場所が書かれた紙を渡される。

 

「ふむ、決着……ね。じゃあ、条件がある」

 

「条件?」

 

「そう、条件だ。まぁ、やるなら一対一にしようぜって話だ」

 

「どういうことだ?」

 

 女性は首を傾げながら聞いてくる。

 

「どういうことも何も……この地の神と、お前の所の代表の神との一対一だ。別に、不利な条件じゃないだろう?」

 

「なるほど……では、私はこのことを伝えに戻る。どちらにしても、結果はそこで分かる。では、また会おう」

 

 そう言って、女性はスタスタと去って行く。

 

 迅真はその女性を見送ると、神社に戻る。

 

 

 

「――――てことがあって、今その送り主の元に迅真が行ってるってこと?」

 

「うん、そういうこと」

 

 迅真が神社の階段に戻り、神社が見え始めたあたりで、そのような会話が聞こえた。声からして、ルーミアと諏訪子だろう。

 

「それで、何時くらいに戻ってくるの?」

 

 と、ルーミアの声が聞こえたので、

 

「今帰った」

 

と、迅真は声を掛ける。そこから見えたのは、予想通りルーミアと諏訪子だった。そして、迅真の声を聞いた二人は、迅真の方を振り向く。

 

「迅真!もう会って来たの?」

 

と、諏訪子が心配そうに見てくる。

 

「おう。一応な。それと、さっきの奴は断ったが、少しめんどくさくなったな」

 

「え?どういうこと?」

 

「えっとな、一対一で戦うことになると思う」

 

「……はい?」

 

 迅真の一言を聞いて、諏訪子がぽかんと口を開けて動かなくなる。

 

「おい、放心状態になるんじゃない。まぁ、その気持ちは分からんでもないけどな。とりあえず、お前がどれだけ強いのか分からねぇから確かめたいんだ」

 

「……もしかして、信用されてない?」

 

「そもそもお前の力を知らないんだから信用以前の問題だろ……っと、ここら辺で良いかな」

 

 そう言った迅真は、諏訪子から5メートルくらい離れた所に立ち止まる。

 

「さて、諏訪子、さっきも言った通り、俺はお前の力を知りたい。って事で、力試しだ。俺を倒してみろ」

 

 そう言って、迅真は不敵に笑い、諏訪子を見る。

 

「力試し……ね、私を試せるほど強いの?」

 

「さぁな。まぁ、俺がどれほど強いか、俺自身もよく分かってないからな。とりあえず、ルールを決めるぞ」

 

「ルール?」

 

「簡単なものだよ。ルールは一つ。十秒以上足以外を地面につけることと、投了だ」

「へぇ?本当にそれだけでいいの?」

 

「あぁ、全く問題ない。数えるのは、ルーミアに任せる。ルーミア!それでいいか?」

 

 迅真がルーミアに声を掛けると、

 

「大丈夫だよ~!」

 

と、元気な声が返ってくる。

 

「さて、始めるか」

 

 

 

 瞬間、空気が爆ぜた。

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