東方種変録   作:大神 龍

40 / 127
第三十九話

「……さて、全員集まったか?」

 

 そう言う迅真の前には、いつもの鬼の四天王に加え、一部の腕自慢の鬼、天魔、大天狗、白狼天狗等がいた。

 

「あぁ、天狗はこれで全員だ」

 

「鬼もこれで構わない。早く始めようじゃないか」

 

 迅真の問いに恂覇と鳳花が答える。

 

「クククッ……いやぁ、この中で名前を知ってるのがほとんどいねぇな。6人くらいとか、本当に意外だわ」

 

 目の前にいる数十人もの精鋭部隊を前に、迅真はそう呟く。すると、

 

「えぇっと……なんで私まで巻き込まれてるんですか?」

 

「私に聞かない。それを決めたのは迅真よ。私はただ迅真の膝の上で寝てただけだからね!」

 

「威張れることじゃないような…?」

 

 左側にいる紫が疑問を口にすると、右側にいるルーミアが突っ込む。

 

「紫。コレは修行の一環だと思え。まぁ、主力は俺が全部相手するんだろうけどな。とりあえずお前は全力で向かって来るやつらを倒せば良い。10人以上倒せたら合格な」

 

「え?合格したら何があるんですか?」

 

「え?……あ~、そうだな。何かやろう。要望があるならそれで」

 

「分かりました!全力で頑張ります!!」

 

「え、お、おう。が、頑張れよ?」

 

 突如として張り切り始めた紫に思わず迅真は動揺し、ルーミアは迅真の発言を聞いて迅真の右手に噛みつく。

 

「……ルーミア?何で俺の腕を噛んでるんだ?」

 

「…………」

 

「だ、黙られてると不安になるんだが……」

 

 数秒後ルーミアは渋々といった表情で口を離すが、噛まれていたところから血が流れ出てくる。

 

「……あ~……まさか戦う前に大怪我を負うとは思わなかった。もう泣きそう」

 

「なぁ迅真。殴っていいか?」

 

 滴り落ちる血を眺めながら迅真が呟くと、少し怒りを込めた声でそう聞く。

 

「あ、あぁ、すまん。もう少し待ってくれ」

 

「……少しだけだぞ」

 

「分かった分かった。じゃあルーミア。とりあえず離れていてくれるか?」

 

「う~……とっても納得いかないんだけど。なんで紫が良くて私がダメなのよ」

 

「え、えぇ?なんでって言われてもなぁ……お前を傷つけさせたくないからじゃダメか?」

 

「ダメ。それだけなら私も紫と一緒に戦う」

 

「……今日のルーミアはわがままなのか?それはそれでレアだから嬉しいのだが……でもダメだ。ルーミアの事を信頼してない訳じゃないがなんか戦わせたくない。だから待っていてくれ」

 

「……迅真、私を戦う事から遠ざけてない?」

 

「あぁ、遠ざけてる。お前には戦ってほしくないからな」

 

「そう……迅真がわざわざ遠ざけてるならもう少しだけ私は遠くから見てる事にする。頑張ってね?」

 

「あぁ、負けないさ。お前の前で無様な姿を晒してたまるか」

 

 そう言って迅真は左手で札を取り出し右手の血を染み込ませていく。

 

「もういいのか?」

 

「あぁ、十分だ。紫、準備は良いな?」

 

「えぇもちろん。お二人が話している間に終わらせておきました」

 

 閃鬼の問いに対し不敵な笑顔で答え、札を上空へと投げる。

 

「さぁ、大戦争(ゲーム)を始めようじゃねぇか」

 

 結界が張られたと同時、迅真はダーインスレイヴを生成。閃鬼は一気に迅真へと距離を詰め、殴り掛かる。

 

 一方紫の方へは烏天狗――――射命丸文が最速で突っ込んでいく。迅真はチラリとその姿を見て、すぐさま自分の方へと集中する。

 

 まず迅真は閃鬼の右拳を受け止め右足で蹴り上げる。それに対し閃鬼はその足に蹴りを入れて軌道を逸らす。

 

「へぇ?意外だな。逸らすのか」

 

「お前こそ受け止めるとかいつものお前ならやらねぇ様な事じゃねぇか。どうしたんだ?」

 

「うるせぇ。取りあえず後ろに下がれよ」

 

 迅真はそう言うと同時に閃鬼の腕を引き、腕を引いた手で殴り飛ばす。そして、飛ばされた閃鬼の後ろから現れる勇義。空中で一回転しつつ彼女は迅真に踵落としをする。

 

 迅真はダーインスレイヴで防御をし、地面を隆起させて上空の勇義を叩く。が、隆起した地面は勇義の横に振るった腕により爆砕してしまう。

 

 迅真はそれを視認するよりも早くに勇義を押し返し、一瞬の間に剣の向きを横から縦へと変え、斬りあげる。

 

 が、剣の軌道は不自然に逸れ、勇義の真横を通って行く。迅真はそれを疑問に思ったと同時、無意識に背後にスキマを大量に開き数十の霊力製の武具を放つ。

 

 直後何かに当たった感覚があり、斬り上げたダーインスレイブの返す刀で勇義を叩き落とし背後を確認すると、数十あった武具の内、たった一本だけ腕に刺さっている恂覇がいた。

 

「なるほど。さっき軌道が逸れたのはお前のせいか」

 

「まさか気付かれるとは思わなかったが……この状態で気付くとは、さすが迅真。といった所か?」

 

「なんでもいいさ。とにかく、まだ相手が残ってるんだ。お前にそれほど構ってる暇はない」

 

 直後、数千の影の槍が恂覇に襲い掛かる。が、恂覇に当たる直前、数人の天狗たちが恂覇をかばい、光になって消えていく。

 

「……身代わりか。正直それで防がれるとは思わなかったが――――」

 

 迅真が腕を横に振るうと、恂覇を囲む様に妖力の武具が生成され、

 

「――――お前はさっさとリタイアしときな」

 

 迅真が振るった方の手をギュッと握りしめると同時、射出される。

 

 恂覇は放たれると同時に前方へと走り出し、武器のわずかな隙間を通って脱出する。

 

「お断りだ。この前の様な無様な姿はもう見せはしない」

 

「そうか……クククッ、良いぜ。お前を敵として認めてやる。早々にくたばるんじゃあねぇぞ!!」

 

 叫ぶと同時、迅真は呪文を唱え始める。それに対し恂覇は落ちていた石に妖力を込め、全力で投げる。迅真はその石をダーインスレイヴで叩き斬ろうとするが、ほんの少し位置がずれて石には当たらず、石はまっすぐと迅真の心臓目掛けて飛来する。

 

 そして、迅真に当たる寸での所で、

 

「もちろん、読んでたさ」

 

 影が鎧のようになり、石を弾く。

 

 恂覇もそうなる事を分かっていたのか、特に驚く様子も無く至近距離にまで迫り、手に持っていたナイフで影の鎧の隙間を縫って迅真に切りかかる。

 

 咄嗟に迅真は後ろへと下がるが、瞬間、嫌な予感がし、後方に蹴りを入れる。そして、その蹴りは何かに当たり、止められてしまう。

 

「っ!!」

 

 気づいた時にはもう遅い。迅真は蹴りを止めた何者かに足を持ち上げられ、思いっきり地面に叩き付けられる。

 

「カハッ!!」

 

 しかし、迅真は叩き付けられた反動を利用して起き上がり、足をつかんだ犯人に闇の槍を叩き込む。

 

 その槍は対象に当たると同時、カキキキキキンッッ!!という金属音とともに弾かれ、あらぬ方向へと飛んでいく。

 

「チィッ!!やっぱりお前の防御はこれくらいじゃあ破れないか…!」

 

 迅真がそう言うと同時、迅真の足を掴んでいた犯人――――鳳花が迅真の足を引っ張り、後方へと全力で投げ飛ばす。

 

「うぁッ…!!」

 

 思わず迅真は驚きによって呻き声をあげ、そのまま飛ばされていく。

 

 そして、迅真はすぐさま空中で体勢を立て直し地面を隆起させて勢いを削っていく。

 

 三、四個の土壁を砕きながら飛んでいき、五つ目の壁でようやく静止する。瞬間、その時を狙い巨大な影が迅真を覆う。

 

 見上げると、そこには雲に届くほど巨大な萃香がいた。

 

「おぉぅ、圧倒されちまうなぁ。その大きさは。だが、負けはしないさ。あいつが見てんだ。ほら来いよ。正面からぶった切ってやる!!!」

 

 振り下ろされる迅真の重大を優に超える拳。対し迅真は二メートルを超える大剣を片手に突っ込んでいく―――!




 珍しく戦闘回が複数になるという…

 ちなみに恂覇の能力の正体のヒントは本編で迅真が言っている通り『逸らす』事。というか、文字通り。またいつか設定書きますのでそれまでお待ちを。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。