結界の崩壊と同時、背後から誰かが勢いよく抱き着いてくる。
「っと、ルーミアか?」
そう呟きながら振り返ると、予想通りルーミアがいた。
「ちょっと手を離してもらっていいか?」
迅真が聞くと、ルーミアは少し力を緩め、それと同時に迅真はルーミアの方を向いて抱きしめ返す。
「すまなかったな。心配かけたか。って、まぁ、死にはしない戦いなんだけどな。あくまでもゲームの範疇を出ないんだけどな」
「それでも不安はあるよ」
「……そうか。まぁ、俺もそう思うからお前を一緒に戦わせなかったんだけどな」
笑みを浮かべて軽くルーミアの頭を撫でつつ迅真は言うと、閃鬼達を探す。
そして、鳳花達が一か所に溜まっているのを見つけ、それが何かを囲む様になっている事に気付く。
「ルーミア。取りあえず鳳花達の方に移動するぞ」
「ん。分かった」
ルーミアは返事をすると、ごく自然な動きで迅真の左側へ移動する。
そして二人は鳳花達の所へと歩いて行き、その後ろを若干不機嫌な表情になっている紫がついて行く。
「だぁ~…………クソッ!また負けた!今回は勝てる自信があったのに!あ~~~!!!悔しい!!」
「確かに、ここまで完膚なきまでに叩き伏せられると、若干泣きたくなるね」
「全く、あいつの力は無尽蔵かい?それに、私達の全力を受け止めるほどの耐久力。これは並大抵の努力じゃ越えられないねぇ……」
「あっはっは!良いじゃないか!それほどの強敵を倒そうと努力するのが重要だろう?それに、あいつに会うまでは張り合うような奴らがいなかったんだからさ」
「まぁ、それはそうっすけど、鬼子母神様はそれで納得できるんですか?」
「納得も何も、事実だろう?」
「ん~……まぁ、確かに手加減されて勝つよりはこっちが強くなる方が良い…な」
と、四天王達が話していると、話の中心である迅真が歩いてくる。大の字のような格好で地面に寝転がっていた閃鬼は、迅真を見つけると同時に体を起こし座る。
「よう閃鬼。大丈夫か?」
「まぁ、一応。怪我は負ってないからな」
「そうか。いや、ダーインスレイヴで喰った後、よくよく考えたら結界の効果も喰ってんじゃないのかと思ったけど、杞憂だったみたいだな。まぁ、効果が無くなってたら今頃お前はここに居ないか」
「お、お前、なんて危ねぇことをしやがる!!それってうっかり俺を『ホントに叩き切っちゃってました』的な状況になりかねなかったって事だろ!?」
「まぁまぁ。そんな怒りなさるな。落ち着け落ち着け。どうどう」
「誰が原因だと思ってやがる!!後、それは馬を落ち着かせる時とかに言うやつじゃねぇか!!誰が馬だ馬鹿やろう!!!」
「やれやれ、『
迅真がそう言った瞬間空気が凍る。
「…………すまん。黙るのは少し心に刺さる。いや、まぁ俺が原因なんだが、その、なんだ……すまん」
何とも微妙な空気がその場を支配し、いたたまれない気持ちになった迅真は顔を逸らす。
「……まぁ、迅真の変な発言は流すとしてだ。とにかく、今回は無事だったから良いが、次からはちゃんと実験とかしてから戦闘で使えよ。あれで本当に俺が死んだらどうしてくれんだ」
「あぁ、いや、それは問題ない。アレは少し面倒だが放出も出来るからな」
「……なぁ、少し気になるんだが、お前のダーインスレイヴって、伝承と若干違くね?」
「ん~……それがな?本当はあの剣の能力は最初の言えない傷で終わりだったんだよ。だからダーインスレイヴって名前にしたんだけどな?その後友人とかに弄られまくったわけだ。それで今に至る。ちなみに、後一段階封印してある。ただ、これを使うと普通にシャレにならんから基本的には使わない。だって、どう考えても俺の能力の効果をアレ一本で代行できるからな」
「は、ハハハ……お前の友人何者だよ」
「知るか。そもそもそいつらは俺の住んでた場所も原因なんだけどな」
「なんだそりゃ」
「色々あるんだよ。それより、何時まで話し合う?もうそろそろいつものように宴会をしようぜ?」
「……そうだな。こんなに人も集まってる事だし、大宴会か。よし!すぐさま始めるか!」
そう言うと閃鬼は立って天狗やほかの鬼たちの所に歩いて行くのだった。そして、迅真はその背中を見送りつつ、
「……さて、鳳花、勇儀、萃香。お前らに言いたい事があるんだが……まぁ、もしかしたら言う必要なんかないかもしれないけどな」
「……なんだい?」
三人を代表して鳳花が聞く。迅真は鳳花達の方に向き直ると、
「この中でたった一人でもいい、あいつを絶対裏切らないでやってくれ。あいつは表情に出したりはしないが、お前達を心の拠り所にしてる。だから、もしお前ら全員があいつを裏切るようなことをしたら、たぶんあいつは壊れちまう。だから、あいつを裏切る事だけは絶対やめてくれ」
迅真が言い終わると、勇儀が手を上げつつ、
「……なぁ、一つ聞きたいんだけど、いいかい?」
と聞く。迅真が「良いぞ」と答えると、
「なんで迅真は閃鬼の事をそんなに気にかけるんだい?私達が見た時はどう考えても初対面のようだったけど」
「……なんで気にかけるのか、か。そりゃ、昔の俺やあいつらに似た何かを感じたから、としか言いようがないな。それでいいか?」
「なるほど。分かったよ。あいつの事は裏切らない。元々裏切るつもりなんて毛頭なかったけどね。私達は嘘が嫌いだから。嘘を吐くのも、吐かれるのも。だから私は今ここであんたに宣言することにしておくよ。私達はあいつを裏切らないし、裏切らせはしない。これでいいかい?」
「あぁ、それでいい。俺はお前たちの事を信頼はしているから、その『約束』を守ってくれよ。たった一人でも、あいつの傍にいてやってくれ。それさえあれば、あいつは壊れないはずだからさ」
「あぁ、任せておきな。私達があいつの事を壊させはしないから」
そう言い、全員は拳を突出し、こつん、とぶつけてそれぞれの目的地へと向かうのだった。