「よお恂覇。楽しくやってるか?」
鳳花達との会話から数分後。すでに宴会は始まり、それぞれ好きな場所で飲んだり騒いだりしていた。
その中で迅真はつまみを掠め取ったりしながらふらふらと歩きまわって、現在は恂覇達天狗の所にいた。ルーミアは別行動で、鳳花達と話をして、楽しんでいる。
「まぁ、それなりにはな」
「そうか。なら良い。で、紫と戦ってくれた勇者たちはここに居るほとんどか?」
「そうだが。まぁ、何人かは君に貫かれたのだがな」
「む。そうだったな。っていうか、お前はそいつらに感謝しておけよ?そいつらのおかげでお前は数分間助かったんだからよ」
「ふん。そんな事、いつも思っているさ。本当、私には勿体無い部下たちだよ」
「ハハハッ!何言ってんだ。お前のその性格あってこそ、そいつらはお前を守るって行動をしたんだろうが。お前がどうしようもない奴だったら助けられることは無かっただろうよ。全く、本当に大切にしろよ?そういう奴は貴重なんだからさ」
「………あぁ、分かっているよ。だけど、君にもそんな人たちはいるだろう?」
「そう、だな。俺にもいるよ。だから、一番近くにいる。離れるのは、辛いからな……」
「…………」
「さて、恂覇。ちょっと聞いていいか?」
「なんだ?」
「いや、お前とルーミアってさ、どこかで会った事あるのか?」
「……あ~……会った事は、あるぞ」
「そうか。で?何時会ったんだ?」
「うぅむ……これは、話しても良い物か……」
「なんだよ、じれったいな。別に問題ないだろうが。お前はどこで悩んでんだよ」
「むぅぅ……いや、別に隠すことは何もないのだが……何となくな?」
「まぁ、その気持ちは分からなくはないな」
「ふむ。まぁ、話しても問題は無いので話すとしよう。といっても、そんなに話すことなんかないのだがな」
「そうなのか?」
「まぁ、私が負けただけの話だからな」
「なんだ。じゃあそんなに面白そうな話じゃないな」
「ひ、ひどいな!その態度の変化は酷過ぎるだろうが!」
「いやいや、そんな事は無いぞ?それなりには興味があるからな。今のあいつにはどう考えてもお前を倒すだけの力は無いはずだからさ。あの封印を解いた時、どんなことが起こるのか気になるしな」
「そうか。ならまぁ、話しても良いか」
「おう、お願いする」
「まず、あやつと会ったのは、まだこの村が出来たばかりの頃だ。その時はあまり人もいなかった。そんな時、ある日の夜にあやつが来た。その時のあやつは今の様に幼い姿ではなかった。君より少し低いくらいだったはずだ」
「なるほどな。やっぱり身長ごと変わってるのか」
「うむ。でだな?その頃のあやつは確実に今とは違った。今の様なあの優しげな笑みではなく、獲物を見つけた獣の様に鋭い眼つきだった。その時の私はあやつが怖くて仕方が無かったのだ。思わず私が後退りをすると同時にあやつは私に襲い掛かってきた。私もやられるわけにはいかないので、必死で応戦した」
「……先手取られてんじゃねぇか」
「仕方ないだろう。その時は本当に死ぬかと思っていたから逃げるつもりだったのだから。まぁ良い。とにかく、この後私は気付いたら地面に倒れていた。あやつは私の事を見下ろしており、私は喰われてしまうのだろう、と思ったのだ。だが、あやつは数秒私の事を見た後、面白くなさそうな表情をして闇の中に消えて行ってしまったのだ。一体なんだったのだろう?と考えても、答えは出なかった。しかし、村の方へと振り返った時、私は戦慄したよ。なぜなら、先ほどまで村だったはずの場所に何も残っていなかったのだから」
「なにも?人も家も?」
「あぁ、何もかもだ。だから、それを知っているのは私だけだ。その後に再び仲間を集めて作ったのがこの村なのだが、正直あやつともう一度会うことになろうとは思ってなかった」
「へぇ……なるほどな。そりゃ怖い話だ。だけど、それなら、今のあいつの力は1割も出てないって事か?」
「ふむ。確かにあの頃と比べたら、異常なまでに弱くなっているな。あれほど強かった者があそこまで弱体化するとは。封印した者はかなり強かったのだろう」
「そうか……よし、恂覇。ありがとな」
「む。今の話で良い所があったか?私がやられただけの話だぞ?」
「あいつの事を更に知る事ができた。それだけで十分だ。まぁ、力についてはあまり分からなかったのが悩ましい所だな」
「むぅ、すまんな。その時の事をはっきりと覚えてるわけでもないし、更に言えば、最初の一撃くらいで意識を狩られたような気がするのでな」
「マジか……なら、かなり弱体化してるんだな。っていうか、それって俺よりも強くないか?」
「どうだろうな?私には比べられないが。私にとってはどちらも格上なのでな。あまりに力の差があり過ぎてどちらも同じくらい恐ろしいよ」
「そうか。まぁ良いさ。とにかく、あいつの事を教えてくれてありがとう。じゃあ俺は行くよ」
「あぁ、また会おう」
「あぁ、また、な」
迅真はそう言うとまたふらりふらりとどこかへと歩いて行ってしまうのだった。