「はぁ……それにしても、なんで俺はこれから冬になるってのに出て行こうなんてしたんだ?」
一人、皆から離れた所で迅真はぼんやり月を眺めつつ呟く。
「どうしたの?こんな離れた所で」
後ろから声をかけられる。が、迅真は振り返る事もせずに、
「ルーミアか。いや、別に何もないよ。ただ、明日にはここを出てくんだなぁって思って」
と答える。ルーミアは迅真の横に座り、迅真に寄り掛かりつつ一緒になって月を見上げる。
「そうね。でも、なんでこれから冬だっていうのに出て行こうとしたの?」
「ん~……特に意味は無いんだけどね。ただ、これ以上ここにいると出て行くのに躊躇う事になりそうだったからさ」
「あぁ……確かにね。ここ、かなり居心地良いからね」
「だろ?だから完全にこの生活に慣れる前に出て行こうかなって思ってさ」
「ふぅん。でも、どうして出て行く必要があるの?」
「……いや、別に出て行く必要ってのはあんまりないんだけど、あえて言うなら世界を見て回りたい。それだけだな」
「そうなんだ……ねぇ迅真?一つ聞いていい?」
今まで月を見ていた迅真は、その言葉を聞いてルーミアの方を向く。
「なんだ?」
ルーミアも迅真の方を向き、少し視線を泳がせつつ質問する。
「その、私って、ついて来ても良かったのかなって思ってさ。迅真はどう思ってるのかなって、時々考えるんだけど……」
その問いを聞き、少し迅真は言葉を詰まらせる。
「……もちろん、ついて来てくれたのは嬉しいよ。っていうか、正直ルーミアがいなかったら俺はどこかで壊れてたんじゃないかなって思う。むしろ、ルーミアは良かったのか?俺と一緒で。行く当ても無い旅だ。もしかしたらどこかでお前に無理をさせてたりしないかなって思う時があるよ」
「私は……迅真と一緒にいて楽しい。私も私で迅真に支えられてるからね。もし迅真がいなかったら私は人食い妖怪のままで、今の生活を思い描くことも出来なかったと思う。こんな幸せな事を全く知らずに、生きていたのかもしれない。だから、私は迅真にすごく感謝してるんだよ?本当に、私にこんな幸せを教えてくれてありがとう」
「……面と向かって言われると少し恥ずかしいな。まぁ、なんだ。ルーミアがそう思ってくれてたのは嬉しい。それに、俺自身、お前といれて幸せだよ。お前がいなくなったら死にたくなるほどにな」
笑顔でそう言う迅真を見て、ルーミアは顔を赤くさせる。
「なによ、それ。私も恥ずかしくなるじゃない。でも、私も迅真がいなくなったらどうなっちゃうんだろうな。って思う。もう迅真がいなかった時の生活に戻れる気がしないからね。もし迅真がいなくなったら、私も一緒に死んじゃおうとか思っちゃうのかな。ただ、一つ言えるのは、どんな生き方をしようと、迅真と過ごした日々を思い出して泣いたりするんだろうなって事だけ。あはは。こんな事、言うべきじゃないよね。迅真は勝手に居なくなったりなんてしないもの」
「……そうだな。出来るだけ、善処はするよ。だけど、俺も不死身ではないからな……いつか、死ぬさ。だから、俺はこの日々を守れるように頑張るよ」
「むぅ、そこははっきりといなくならないよって言ってくれれば良いのに」
「ハハハ……ごめんな。今の俺にはその言葉を言うだけの自信は無いんだ。だから、俺は頑張るって言うのが精一杯だ」
そう言う迅真の表情はどこか悲しそうだった。それを見たルーミアは心に針が刺さったかのような痛みがしたような感覚があった。そんな表情を迅真にして欲しくは無い。そう思ったルーミアは、迅真の腕に抱き着き、
「……じゃあ、私は迅真が私の傍にずっといてくれるように努力するね」
「あぁ、そうしてくれると嬉しいよ。俺もお前が一緒に居てくれるように努力するからさ」
迅真は腕に抱き着いているルーミアの頭を自由な方の手で撫でながら、月を見上げて考え事を始める。
「(ルーミアは俺を強いと思ってるのかもしれないけど、結局の所、この能力は力を借りる様なものだ。だから、付け焼き刃な面が多い。初見の相手には分が悪いから、記憶を読み取って対抗策を考えないといけない。昔はそれでどうにかなってたけど、こっちに来てからは正直それじゃあ勝てなくなるような敵が多い。そのための対策を考えなきゃいけないんだが、それを考えようとすると頭の中に霧がかかったようになる。まるで何かを隠すかのように。もし何かを隠すって意図があるんだとしたら――――)」
ルーミアを撫でていた手からルーミアの感触が無くなると同時、ポスッという軽い音と共に膝の上に何かが乗っかる。視線を落としてみると、ルーミアが迅真の膝の上に頭を乗せて横になっていた。
迅真は笑みを浮かべつつ、幸せそうな表情で寝ているルーミアの頭を再び撫ではじめる。
「(――――もし俺に知られたくない何かがそこにあるなら、俺はそれを知らないといけない。それが俺をここに送り込んだ張本人へと繋がる道のはずだ。鮮明に思い出せる記憶の一部が綺麗なまでに思い出せない。生まれてからここまでの記憶を保有している俺の記憶を全く思い出せなくさせるような奴が隠そうとした情報。一体どんな記憶なんだ?しかも、消えている場所は全て『あの人達』に会ってからの記憶。なんだっていうんだ?クソッ!思い出せないのがこんなに辛いって思うのは初めてだ…………はぁ、今日はもう考えるのはやめて寝るかな)」
結局、自分だけではこの謎は解けない。そう思った迅真は、地面を隆起させて背もたれを作ると、それに寄り掛かりルーミアの頭に手を置いたまま意識を手放すのだった。
最近、見ている作品にコメントを書きたいなぁって思うんだけど、初コメってすごく緊張して何書けばいいのか分からなくて結局書けない(´・ω・`)
感想を書ける人ってすごいなぁ~って思うんですよ。うん。どうでもいいですね。