東方種変録   作:大神 龍

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第四十七話

 チュンチュン。と、鳥の鳴き声が聞こえる。

 

「ん……朝か……」

 

 薄らと目を開けると、まだ昇りきっていない太陽がゆっくりと辺りを照らしていく。

 

 足に自分以外の重量を感じて視線を落とすと、ルーミアが幸せそうな表情でまだ眠っていた。

 

「……そうか、昨日はルーミアに膝枕をしてから寝たのか」

 

 ぼんやりとしているまま考えた結果その結論になり、迅真は笑みを浮かべながらルーミアの頭を撫でる。

 

「はぁ……今日でここから出て行くんだよな。今更変えるつもりなんてないし、グダグダする前にさっさと出て行くに限るかな」

 

「そうか。じゃあ皆を早く起こさないとな」

 

 唐突に背後から声がした。

 

「……なんだ。起きてたのかよ。閃鬼」

 

 ザッザッザッと音をたてながら閃鬼は迅真の隣に来る。

 

「あぁ、残念ながらな。お前、姐さん達や天狗達が起きる前に出て行くつもりだったんだろう?」

 

「分かってんなら行かせてくれても良いんじゃねぇのか?」

 

「ダメだな。出て行くのは良いが、せめて挨拶してからにしろ」

 

「……昨日お礼はしたろ?あれで良いじゃんか」

 

「それはそれ、これはこれだ。だからせめて一言言ってから行け」

 

「チッ。分かったよ。挨拶してから出て行く。これで良いな」

 

「あぁ、それでいい」

 

「ったく、面倒くさい奴。あぁそうだ。お前にコレをやるよ」

 

 なんだ?と声を上げた閃鬼に向かって、スキマを通じて鞄の中から引っ張り出したブレスレットを投げつける。

 

「……何コレ?」

 

 渡されたブレスレットは朱い色をしていた。

 

「不死鳥の羽を圧縮しまくって固まったモノの形状を変えてブレスレットにした物だ。付けている奴の死を三回だけ無効化する。貴重品だからな?無駄遣いすんなよ」

 

「シャレにならねぇ程の高級品じゃねぇか。あれだぞ?コレはRPGとかだとイベントとか10000分の1以下の確率で出る様なアイテムだぞ?俺に渡しても良いのかよ」

 

「別に問題は無い。っていうか、そのブレスレットは後二つあるからな」

 

「……お前、本当に何者だよ」

 

「そりゃこっちのセリフだ転生者。お前結局最後まで話さないのな」

 

 転生者。その言葉に一瞬閃鬼は身を震わせる。

 

「……やっぱりばれてた?」

 

「当たり前だ。むしろ気付かないのは無理だと思うが。お前、ここ最近言葉選びが雑になってんだろうが。嫌でも気付くわ。まぁ、さっきの会話でトドメだよな。今の時代の奴がRPGって単語を出すわけがない。言うとしたら転生者か異世界落ちした奴かじゃないか?」

 

「あ~……無意識だったわ。全く考えてなかった。言われてみれば確かに今の時代を生きる奴のセリフじゃないよな」

 

「むしろそれで良く今までばれなかったな。普通にすげぇわ」

 

「いや、正直ばれてると思う。もしくは流してるのか。とにかく、完全にばれてない訳じゃないと思うからこれからが不安だわ。ってか、俺も良く今までその事を考えなかったもんだ。馬鹿か俺は」

 

「馬鹿だろ?前から分かってた事じゃねぇか」

 

「うわひでぇ。そんなハッキリ言わないでも良いだろうが」

 

「いや言うよ。それより、転生者ってのが分かったからこそ聞きたいんだが、お前の種族って本当に鬼なのか?」

 

「……鬼だよ。紛れも無く。転生する前は人間だったけどな」

 

「そうか。じゃあ次の質問。この世界にはどうやって来た?」

 

「は?何でそれを聞く?お前も転生者なんだろ?」

 

「いや、そうなんだけどさ。俺、この世界に来るまでの間に空白の時間があるんだよ。なんでか知らないけどその部分だけ思い出せないんだ。だからお前はどうやって来たのかなって思ってな?」

 

「ふぅん?変な事もあるもんだな。普通転生系なら神様に会うもんだろ?」

 

「それは分かってるんだが……一回死んだ後の記憶は森の中に落ちた所なんだよ。だから他の奴も同じなのかと思ってな?」

 

「お前、かなり変な落ち方してんだな。まぁ、俺はちゃんと会ったぞ?」

 

「マジか。それで?どんな神だった?」

 

「そうだな……身長は俺くらいで、腰くらいまでの長さの黒髪だった。んで、かなり美人だったんだが……」

 

 そこまで言って、閃鬼は苦そうな顔つきになる。

 

「……なんかあったのか?」

 

「……あぁ、いや……正直もう二度と関わらない方が良いと思うような雰囲気の神だった。アレは確実に周りに多大な被害を出すくせにそのことに全く気付かない天然系の奴だったわ。関わったら命がいくつあっても足りないって言われるレベルの奴」

 

「うわぁ……マジかよ。どうしてそう思ったんだ?」

 

「いやな?これが変な話なんだが、その神様のかなり後ろの方に人がいてな?一人が倒れてたんだよ。口から血を吐きながら。で、そいつの背中をもう一人がさすってんの。その時点でもう嫌な予感しかしなかったわ。まぁ、その後すぐにこの世界に送られたんだがな」

 

「……それ、フィクションじゃなくて?」

 

「残念ながらノンフィクションだ。倒れてた人に俺は思わずお疲れ様ですって言いそうになったよ」

 

「恐ろしい話だ。っと、ありがとな。こんな質問に答えてくれて」

 

「良いさ。俺もこんな話をするとは思ってなかったが、悪い気分ではないしな。あぁ、そうだ」

 

「ん?何かあるのか?」

 

「いや、別にそう言うわけじゃないけど、一応伝えておこうかと思って」

 

「なんだよ?」

 

「ルーミアさんの封印を解く時は注意しろよ。最悪死ぬぞ?」

 

「……安心しろ。俺はこいつに殺されはしないさ」

 

「……そうか。じゃあな。また後で」

 

 そう言うと閃鬼は手を振りながら去って行く。そして、迅真はそれに答えるように手を振りつつ、

 

「あぁ、また後でな」

 

と、笑みを浮かべつつ声を上げるのだった。




 あぁ、今回で山から出て行くつもりだったのにぃ~!!(>_<)

 まぁ、出て行けなかったものは仕方ない。次回は出られるように頑張ろう。
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