東方種変録   作:大神 龍

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第五話

 爆発音の直後、諏訪子はすでに迅真の前に来ており、右こぶしを突き出して殴りかかって来ていた。

 

 しかし、迅真はその攻撃を最小限の動きで避けると、諏訪子の右手首を左手でつかみ、地面にたたきつけるように引っ張り、投げる。

 

 その行動は予想外だったのか、諏訪子はそのまま飛ばされるが、一度地面に当たり、バウンドした後、空中で体勢を立て直す。すると迅真が、

 

「あぁ、一応言っておくが、攻撃は何でもいいぞ。遠、中、近距離のどれでもいいし、武器を使うのも、能力を使うのもありだ」

 

「分かった。じゃあ、行くよ?」

 

 言い終わると同時に、諏訪子と最初にあった時に見た、白い玉のようなものを2~3個、壁のように固めて撃ってくる。

 

「(これ、前も見たが、なんなんだ?『明り(ライティング)』みたいだが……当たるとダメージを受けそうだし……一応避けておくか)」

 

 そう思いつつ迅真はそれを右側に動いて避ける――――が、不意にそれの後ろから現れた諏訪子が、さっきのお返しと言わんばかりにがら空きだった腹にボディーブローを放つ。

 

 ドゴッ!という音と共に、迅真は数メートル吹き飛ぶが、空中ですばやく体勢を立て直し、地面に足がつくと同時に、前へ飛び反撃の右ストレートを放つ。

 

 反撃を予想していた諏訪子は、その攻撃を腕を交差させ防ぐが、威力が高く、そのまま後ろへ吹っ飛ぶ。そして、諏訪子は衝撃を受け止めきって止まると、今度は、パンッ!という乾いた音を立てながら勢い良く手を合わせる。すると、迅真の正面の地面が隆起し、迅真に襲い掛かる。

 

 突如変化した地面に迅真は一瞬驚くが、すぐさま対応し、隆起してきた地面に手をつき、乗り越えてかわす。

 

「それがお前の能力か?まぁ、答えなくてもいいけどな」

 

 迅真がそう言っている間にもどんどん地面が襲い掛かってくるが、迅真はその全てを紙一重でかわし続ける。そして、諏訪子の前にたどり着くと、即座に足払いをする。諏訪子は能力を使うことに集中しすぎたのか、足払いを避けれずに、あうっ!と、小さく声を上げて倒れた。その直後、諏訪子の手足を、突如変化した地面が拘束する。

 

 そのことに驚いた諏訪子は、能力を使ってその拘束を外そうとするが、その地面は変化しない。あわてて暴れてその拘束を解こうとするが、地面はびくともしない。そして、そうやってもがいている諏訪子の顔の部分に影がかかる。それに気づき諏訪子が顔を上げると、そこには迅真がいた。

 

「さて、そろそろ十秒だな。どうだ?自分の力でやられる気分は。まぁ、大体聞かれた奴は『最悪の気分だ』って答えるんだけどな」

 

 そう言って迅真は笑う。それを聞いた諏訪子は疑問に包まれた。考えていたのは、なんで自分の能力が通じないのか。更に、なんで自分の力で壊れないのか。そう考えていた。すると、

 

「あぁ、一応言っておくが、それは純粋なお前の力だけじゃねぇぞ?俺の知ってる力がいくつか追加されてるからな」

 

「あぁ、なるほど。それじゃあ何しても無駄ってことなんだね」

 

「そういうことだ。まぁ、それでももう少し諦めないで頑張ってくれると嬉しいけどな。とりあえず、この戦いは俺の勝ちだ。次は勝てるように頑張れ」

 

 迅真がそういうと、諏訪子の拘束が解かれる。そして、迅真は諏訪子に手を差し出す。

 

「その上から目線の言い方が少し気に入らないけど、まぁいいや」

 

 諏訪子はその手をつかんで起き上がる。

 

「おし、ルーミア審判ありがとう。社の中に入るぞ~」

 

 それを聞いたルーミアはスタスタと迅真の元へ歩いてくる。

 

 

 

 諏訪子は居間に入ると、疲れた~……と言いながら、そこにあったちゃぶ台に()()す。迅真はそれを見つつ隣に座ると、

 

「あれくらいの運動で倒れるなよ……」

 

と、呟く。

 

「だって、アレ、結構疲れるんだよ?」

 

「アレ?……あぁ、能力か。って、それで疲れてちゃダメだろ」

 

「むぅ、迅真も同じ能力を使ったって言ったのに疲れてないのは何か不満なんだけど」

 

 そう言いつつ諏訪子は頬を膨らませる。

 

「はぁ、お前、あんまり能力使わないだろ」

 

「まぁ、使ってないけども……」

 

「だからだよ。ずっと使っていれば、自然と力の調節とか覚えて疲れにくくなるさ」

 

「そんなもんなの?」

 

「そんなもんだよ」

 

 そんな感じでぼんやりと迅真と諏訪子が話してると、ルーミアが、

 

「迅真ぁ~、私の能力見たい?」

 

と言ってくる。それを聞いた迅真は、

 

「見せてくれるのか?」

 

「良いよ~」

 

「えっと、一応ここで使っても危険は無いよな?」

 

 若干冷や汗を浮かべながら言う。

 

「う~ん、たぶん問題ないと思うよ~?」

 

「よし、なら見せてくれ」

 

 迅真がそう言うと、ルーミアが目を閉じる。すると、ルーミアを中心に、何か黒いものが発生した。それは迅真たちを包み込む。その中で迅真が感じたのは、それは湿った感じがしていて、更に手元までもが全く見えない。

 

「うおお、なんだこれ。すげぇ不気味」

 

「そう?まぁ、これが私の能力。闇を操る能力だよ。まぁ、これをすると自分も見えなくなるんだけどね」

 

「なるほど……って、自分も見えないのかよ」

 

「うん。迅真と会うまでは結構使ってたよ?」

 

「そうなのか。よし、ありがとう」

 

 迅真がそう言うと、すぅっと黒い何か――――闇は消えていく。

 

「さて、とりあえず、諏訪子は能力を使うのに集中しすぎないで、能力を使いながらでも普通に戦えるようにしておけ」

 

「あう、分かった」

 

 そう諏訪子が言うと、迅真が少し考えるような素振りをして、

 

「あと、あれはなんだ?」

 

と言う。それを聞いた諏訪子は首を傾げ、

 

「あれ?」

 

「ほら、あの白い玉だよ。不意打ちの時に使ってたろ?」

 

「あぁ、あれね。あれは神力弾だよ。まぁ、妖怪にも同じようなのを使うのとかいるらしいんだけどね」

 

「そうか……俺にもできるかな……じゃなかった、とりあえず、あれも同じように使えるようにしておけ。そんくらいだな」

 

「ん、分かった」

 

「よし、じゃあ、今日はこのくらいにしておこう。もう暗くなってるしな」

 

 そう言って外を見ると、すでに茜色になっている。

 

「さてと、飯を作るかな……」

 

 迅真はそう言って、台所へ向かった。




ううん、結局ルーミアが空気になっちゃったかもしれない……
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