東方種変録   作:大神 龍

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第五十一話

 雨は一向に止む気配が無い。むしろ、先ほどよりも強くなった気がする。

 

 迅真達は現在、少し大きい木の下で雨宿りをしていた。もちろんあの龍の女性も連れて、だ。

 

「……雨、止まないなぁ……」

 

「そうだねぇ……別に嫌じゃないんだけどねぇ……」

 

「それは分からなくはないんだけどなぁ……」

 

 ぼけーっとしながら二人は会話をする。ちなみに、二人とも座っており、状況的には迅真の足の上にルーミアが座っているような感じだ。

 

「お二人とも、どこか意識がふわふわしてません?」

 

「ん~……そうかな~?」

 

「たぶんそうだよ~」

 

「……なんかもう、ダメそうですね」

 

 実は二人とも眠いだけである。別に寝てない訳ではないが、雨の音をずっと聞いてたら眠くなってきたのだ。

 

「……別に急ぐような事もないし寝るかなぁ…」

 

「ん~……じゃあおやすみ~」

 

 言うと同時、ルーミアは迅真に寄り掛かりながら寝息をたて始める。

 

「寝るの早いな!正直言ってすぐ寝るとは思わなかったよ!」

 

 しかし、どうやらもうぐっすりと寝ているようで、迅真の突っ込みにも全く反応しない。

 

「はぁ……どっちかが起きてないとまずいよなぁ……」

 

「あの、すこし良いですか?」

 

「ん?なんだ?」

 

 何をしようか迅真が考えていると、女性が声をかけてくる。

 

「いえ、さっきルーミアさんにも聞いた事なんですけど、貴方はどうしてルーミアさんと一緒にいるんですか?」

 

 確かにその質問は先ほどルーミアにしたものと同じだった。

 

「理由か?んな事言われてもなぁ……別に理由何か無いんだよなぁ。強いて言えば、こいつといると心地良いからかな?そんくらいだよ。そんな簡単な理由。それ以外思いつかないな」

 

「なるほど……不思議な事もあるものですね」

 

「は?不思議な事?」

 

「えぇ、不思議な事です。本来妖怪は人間の恐怖から生まれる存在ですから、相容れない存在のはずなんですよ。そんな二つの種族がこうやって一緒に、しかもどちらにとっても良い思いをして共存している。それはとても不思議な事です。どうして貴方はルーミアさんとそんなに楽しそうに暮らせるんですか?」

 

「……そりゃあ、俺もルーミアも、怖れられてたからな。それに、初めて会った時、こいつはすごく寂しそうな目をしてたからさ。だから、俺はこいつを救ってやりたいと思ったんだ。傲慢かもしれないがな。お前の言う不思議な事なんてのはそんなどうでも良いような理由だよ。それと、楽しく暮らしてるのに理由なんて無いよ。気付いたら一緒にいて、それだけで楽しいからな」

 

「……ルーミアさんが寂しそうな目をしていたから、ですか。ほんと、良くそんな理由で一緒にいようと思えますね。素直に感心します。すごいですよ」

 

「そうか?そんな難しい事でもないだろうが」

 

「いえいえ。貴方の考えてるように簡単な事ではないんですよ。さっきも言った通り、妖怪は人の恐怖の感情から生まれてくる存在です。だから、貴方やルーミアさんのような関係はとても珍しい関係なんですよ」

 

「ふぅん?……じゃあさ。お前は人間と妖怪の共存って無理だと思うのか?」

 

「……そうですね…現に貴方とルーミアさんは共存してますが、他の人間を当てはめた場合、難しいというより、不可能だと思います」

 

 女性の反応を聞き、迅真はにやりと笑うと、

 

「そうか。なぁ、ならさ。その常識をぶち壊してみないか?」

 

 そう切り出す。

 

「……どういうことです?」

 

「いやな?今、少し頼みごとをされててよ。内容はそいつの夢の実現。その夢の内容は人間と妖怪の共存だ。それをお前も手伝ってみる気は無いか?」

 

「人間と妖怪の共存……その実現……そんな事、不可能では?」

 

「だから言ってるだろ?常識をぶち壊そうって。挑戦してみないか?不可能を可能にするという事に」

 

「不可能を可能に……ですか。フフフ……面白そうですね。分かりました。その計画、私も手伝いましょう」

 

「よし。ありがとよ。んで、協力者さん。一つ聞いていいか?」

 

「はい?なんでしょうか?」

 

「名前だよ。何時までも『お前』ってのはどうかって思ってな」

 

「あぁ、なるほど。そう言えば私も貴方の名前を聞いてませんでしたね」

 

「ん、あぁ、そうか。俺も名乗ってなかったか。すまん。まぁ、ルーミアとの会話の中で何度か出たから完全に分からない訳ではないだろうけど、俺の名前は薙浪迅真だ」

 

「私の名前は龍華(りゅうか) (みどり)です。迅真さん。これからよろしくお願いしますね」

 

「あぁ、こちらこそよろしく頼む。じゃあちょっと待ってくれ。その夢を語ってる奴を捕まえる」

 

「え?それってどういう――――」

 

 緑がそう聞こうとした時、一瞬迅真の姿がブレたと思ったらその右手には一人の女性が捕まえられていた。

 

「あ、あれ!?私、さっきまで森の中を歩いてたはずなのに…!?」

 

 先ほどの会話の流れから分かる通り、紫だ。

 

「おう紫。久しぶり――――ってほどでもねぇか」

 

「あ!迅真さん!どこに行ってたんですか!今までずっと探してたんですよ!?」

 

「なんでだよ。お前には別にやることがあるだろうが」

 

「そうですけど……って、その人は?」

 

 と、そこでやっと緑の存在に気付いたらしい。

 

「えっと、迅真さん。その方は?」

 

「あぁ、こいつは八雲紫。さっき言った夢を語ってる奴だ。おい紫。お前も挨拶しろよ。お前の夢の実現への協力者だぞ?」

 

「えっ!そ、そうなんですか!?え、えっと、その……や、八雲紫です。迅真さんからすでに聞いてるかもしれませんが、私は妖怪と人間の共存を目指しております。この度、協力をして下さるという事で、感謝いたします」

 

 深々と頭を下げる紫。

 

「いえいえ。こちらこそ、そんな面白そうな計画に一枚かませていただける事、感謝いたします。八雲さん。どうか頭をお上げください」

 

 迅真は二人の会話を見つつ、ふと思う。

 

「(たぶん、紫は緑の事を妖怪だと思っているんだろうなぁ……)」

 

 もちろん、そんな心の声は二人に届くはずも無かった。

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