東方種変録   作:大神 龍

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第五十七話

 男が消えたのを確認した後、ルーミアは全速力で迅真に駆け寄る。

 

「迅真大丈夫!?」

 

「うあ~……おう、大丈夫だ。体の節々が痛いがそこまでしんどくないってか、この結界を壊せば完全回復するんだけどな」

 

「あ、そっか。って、ならさっさと壊しなさいよ!」

 

「う~……はいはい。分かったよ」

 

 迅真が右手を握りしめると、パリンッという音と共に結界が砕け散り全ての傷が回復する。

 

「あ~……やばい。久しぶりに能力使いまくったから精神的に疲れた。すげー眠い」

 

「なら寝ちゃいなさいよ。おやすみなさい」

 

「うぐぅ……じゃあとりあえずあの男に聞いておいて欲しいんだけど…良いか?」

 

「なに?」

 

「ここにしばらく滞在しても良いかって聞いておいてくれ。任せた。じゃあおやすみ」

 

 それだけ言うと、あっさりと迅真は寝てしまった。

 

「……はぁ、全く。こんなに安心しきった笑顔で寝られちゃこっちも少し眠くなるでしょうが」

 

 つんつん。とルーミアは迅真の頬を突きながらそう言う。そして、一度ため息を吐いた後スッと立ち上がると辺りを見渡して未だに地面に倒れている男を見つけスタスタと歩み寄ると、

 

(かおる)!さっさと起きなさい!」

 

 香と呼ばれた男はピクッと反応すると体を起こし、座ったまま、

 

「ったく、随分なご挨拶じゃねぇか。ルーミア。つか、その姿を見るに封印は解けたみたいだな。おめでとさん。それで、今更俺に何の用だよ」

 

「迅真からの言伝よ。『ここにしばらく滞在しても良いか』。だって。もちろん受けるわよね?」

 

「ハハハッ。断ったらどうする――――」

 

 言葉を言っている途中で首を狙って数十の影の刃が生まれる。

 

「こうするつもりだけど、文句ある?」

 

「――――わかった。っつか、そもそも断るつもりなんか無かったけどな。今は久しぶりに滾る戦いをして気分が良いんだ。とりあえず、この刃を引っ込めてくれねぇか?」

 

 香が言うと、ルーミアはおとなしく刃を消す。

 

「さて。とりあえずお前の彼氏は俺が運ぶから、お前はあいつを頼む」

 

「分かった。ちゃんと遊ばずに家に案内しなさいよ?」

 

「ハハハッ!俺、そんなに信頼されないような事したっけか?」

 

「そりゃいつも人を疲れさせるように歩く奴だからね。そろそろ私も我慢の限界なのよ」

 

「別にいいだろうが。代わりに家の中はいつも安全にしてるだろ?」

 

「それはそれ。これはこれよ。それよりも、ほら。さっさと行くわよ」

 

 闇を使って迅真と最初に襲い掛かって来た女性を近くまで運んでいた。香はため息を吐き、

 

「やっぱりお前の能力は使い勝手良いよなぁ」

 

 と愚痴を言いつつもしっかりと迅真の事を背負い家を目指して歩き始めた。その後ろをルーミアは女性を闇で運びながらついて行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそぅ!騙された!そもそもこいつが真面目に歩くわけが無かったぁ!!!」

 

 叫ぶルーミアは延々と向日葵畑を歩きまわされたため、家にあった椅子に座り、背もたれに思いっきり寄り掛かって休んでいた。

 

「ったく。おいルーミア。お前めちゃくちゃ体力減ってんじゃねぇか。今まで何してたんだよ」

 

 いいながら香は向かいの椅子に座る。

 

「うるさいわねぇ……別にそこまで鈍ってないわよ。まぁ確かにここ数十年全く戦闘してなかったけども」

 

「数十年戦闘してないぃ!?バカじゃねぇのか?せめて一年に一回くらいは戦えよ!」

 

「封印されてたの知ってるでしょ?それで思うように力が出なかったんだから仕方ないじゃない。むしろここまで生きてる事を褒めて欲しいくらいよ」

 

 背もたれに寄り掛かるのをやめて前のめりに倒れて目の前の机に倒れ込む。

 

「あほらし。そこまで弱体化されてると笑っちまうしかねぇよ。ったく、どうせそいつに甘やかされまくったんだろ?理由なんぞお前の態度を見て分かるわ。ホント、どうしてここまで弱体化してるのか……まぁそれでも俺はお前に勝てないんだろうけどな」

 

「いやいや。肉弾戦じゃ確実に負けるわよ。どうあがいても筋力差も体力差も絶望的じゃない。昔はあんたを片手で相手できるくらいあったのになぁ……ちょっと残念」

 

「ふざけんな。今でもその威力だったらお前はあいつと一緒にいないだろうが」

 

「まぁ、たぶんそうなってたと思うけど…いや、どうだろ。たぶん迅真以外を滅ぼしてたって自信はあるけど迅真だけは殺さない気がする」

 

「んだよ。一目ぼれか?」

 

「そんなとこかな。最初は食べ物だ。って程度だった気がするけど、近付いて行って迅真の顔を見たらどうも殺せなくなっちゃったのよね」

 

「――――第一声が『あなたは食べても良い人類?』だった事に言い訳はあるか?」

 

 いつの間に起きていたのか、迅真がルーミアの座っている椅子に腕を乗せて寄り掛かりながら呟く。

 

「うぐっ……言い訳はありません。っていうか、迅真もあのくらいの攻撃、別に今の状態でも躱せるでしょ?」

 

「無理。確実に殺されてる」

 

 即答だった。それを聞いてルーミアは体を起こし、後ろにいる迅真に向かって、

 

「嘘でしょ?せめて最初の一撃くらいは防げるよね?」

 

「ん~……どうだろ。たぶん無理じゃないか?俺に出来るのはあくまでも同質の力を引き出すことだけだし。まぁ事前に分かっていたのだとしたらいくつか対策は打てる。ただ不意打ちとかになると不可能だな。せめて準備に0.2秒欲しい。でないと負け確実だな」

 

「むぅ……じゃあ試してみましょうよ。せめて最初の一撃は防いでよね?」

 

「まぁ善処はしてみるよ。無理でも怒るなよ?」

 

 ルーミアと迅真は出て行き、それを観賞しようと二人の後ろをついて行くのだった。




夏休み最終日…!明日から学校だぁ( ゚Д゚)

Ue3an

マロマロン大帝さん

コラボ参加ありがとうございます!

 年越し前に終わればいいな……クリスマスと大晦日で解放すればあるいは……?
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