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異世界からの(紫による強制)訪問者の4人目を送り返した1週間後。生憎の猛吹雪である。今年の雪は早くないだろうか?
そして、1m先すらも見えない悪天候の中、迅真はなぜか外にいた。
「ったく。なんでこんな寒い中に食糧が切れるんだよ……」
そう。運悪く食糧――――肉類が無くなったのである。別にそのくらい雪が止むまで待っても良いだろう?と思うが、これまた運悪く香がダウンしたのである。風邪で。(その時、香が「これで俺がバカじゃないことが分かったな!!」とドヤ顔で言ったので思わず「その発言自体がバカの証拠だっつの」と言いながら叩いた迅真は悪くない。)
そのため、消化に良い食糧を香に回すようにして、自分たちは他のモノを食べようとして、ついさっき。朝食を食べる時に肉類が切れたのだ。
そして、その無くなった食糧を誰が取ってくるか。となった時、迷わず迅真が出たのだ。迅真曰く、男として女性に任せてたまるか。だそうだ。
「にしても、どうやって獲物を探すか……地道に洞穴かな」
目的を決め、迅真はすぐに動き出す。
* * *
しばらく歩き回っていると、何かに
「うわっとと。って、あれ?今俺は何に躓いた?」
不思議な感触に迅真は雪をかき分けながら躓いた原因を探す。
「あ……これか」
雪をいくらか払った所で『ソレ』を見つける。
力を込めて『ソレ』を引っ張り上げてみると――――
「――――……生きてる、よな?」
『ソレ』は男性だった。黒い服を着てはいるが、この猛吹雪の中着ているのは若干場違いな気がする。
「……取りあえず避難できる場所を探すか」
雪との差がほとんど見えない白さの肌の男性。だが脈はまだあるので防寒魔法をかけてから改めて辺りを散策する。
* * *
「お。あったあった」
数十分歩き回った後、ようやく洞穴を見つけ、迅真はその中へと入って行く。
雪が当たらない場所まで移動し、バッグの中から枯れ木(旅をしている時は必需品だと思って、見つけると拾っていた)を取り出して焚火の形を作ると、
「『ファイア』」
瞬時に詠唱をして火を点ける。
「はぁ。ったく、遭難者か?って待て待て。良くよく考えたらこいつの服装、この時代の人間の服装じゃないだろうが」
一瞬この猛吹雪で迷った一般人かと判断しかけ、すぐに訂正する。ここは仮にも古代である。神話大戦や大妖怪を間近で見ておいてここは転生前の世界だと言うのは些か頭がお花畑過ぎる。
そして、この状態でこんな人物をつれてくるような奴は迅真の記憶の中には一人しかない。
「紫ぃ……あいつ、今度見つけたらしばき倒してやる……」
大方ここでキレている原因は無関係は人を凍死させかけたからである。紫の自業自得と言えばそうかもしれない。
「まぁ、ここに紫はいないし、それは後で考える事にするか」
ため息を吐き、迅真は男が起きるのを待つ。
と、その時、ふと悪寒が走る。
即座に迅真はその場から跳ぶように離れると、直後振り下ろされた剛腕。
「チッ!奇襲を受けるとか、俺の危機感知能力どこ行きやがった!寒さにやられたってか!?」
襲ってきたのは熊。正直迅真からしたら敵ではないが、あの剛腕から繰り出される一撃は痛いのだ。
「さってと。生け捕りの方が良いかな。血抜きはちょいとばかしここでやるのは面倒だしな……あ、いや。こいつを使って帰るか」
思いつくと、迅真は魔法を唱え始める。が、それを阻止するように熊が襲い掛かってくる。
咄嗟に避けようとし、迅真は背後で未だに眠っている男に気付き、即座に男を担いで飛び去る。
直後、壁に勢いよくぶつかる熊。
だが、特にダメージを受けた様子も無く、その巨体からは想像出来ない速さで襲い掛かってくる。
しかし、それより少し早く迅真は魔法を唱え終わり、
「『
直後、熊の動きが完全に停止する。
「よしよし……ん?」
完全に動きを止めた。と思ったのだが、
「あ、あれ?ちょっと待て…こいつ……動いて…!!」
瞬間、バキンッ!!という音と共に熊が咆哮する。
「ッ!!俺の魔法を破るとか…こいつ本当にただのクマか!?」
もしそうだとしたら相当な精神力を持った怪物だが、精神支配が出来ないようならやる事は一つである。
「ぶった切る」
呟くと、迅真はバッグの中から貰い物の赤い狼のエンブレムの付いてるナイフを取り出す。
すると、今まで気絶していた男が、
「うぅ…ぅ?」
と呻く。
迅真はそれに気付くと、瞬時に強く地面を踏みつけ、ドームのようなモノを作り熊を覆う。
そして、男を地面に降ろし揺さぶりながら、
「おい、大丈夫か?起きたんなら出来れば手伝って欲しいんだけど!?」
実際は逃げてくれた方が良いが、それでまた遭難でもされたらたまったもんではないので手伝って貰おうと考えた。
すると、男はゆっくりと目を開け、
「え~っと……ここ、どこだ?紅魔館じゃないみたいだが…」
「んなこと言ってる場合じゃないッつの!まず最初に質問!お前は戦えるか!?」
完全に困惑している男を更に困惑させるように聞く迅真。案の定男は驚きながらも、
「あ、あぁ、一応戦えるけど……」
「なら良い!ちょっと熊を倒すのを手伝ってくれ!」
「え、えぇ?熊?」
そんな問答をしていると、ゴガァンッ!!という轟音と共に囲いが粉砕され、中から
「出来るだけ傷つけない様にぶっ倒す!後で喰うからな!んじゃ襲われない様に散開!行くぞ!」
迅真は即座に熊の突進を避けるためにその場から離れ、男は未だに困惑しつつ、だが身に迫る危険を感じて熊から逃げる。
熊は男の方ではなく迅真に向かい突進してくると、熊は先ほどとは打って変わり、迅真の付近に来ると、凶爪を振り下ろす。
「ッ!」
ガキィンッ!という甲高い音と共に熊の一撃を防ぐ。が、そのあまりの力に迅真は体勢を崩す。そして、熊はそれを狙っていたかのような動きで不安定な形のまま迅真に突進を仕掛ける。
その行動が予想外だった迅真は避けることが出来ず、迫りくる肉弾に覚悟を決め――――
――――それを打ち砕くように男が横から全力の拳を振るう。
だが、それでもただ巨体を逸らしただけ。迅真は一瞬止まった熊の動きに反応し軌道を読んで瞬時に回避する。
熊はそのまま壁まで転がっていくと思ったが、なんと受け身を取って強引に体を反転させ、再度襲い掛かってくる。
「嘘だろ!?俺の本気の一撃が軌道を逸らしただけ!?」
「なんだよこいつ…!もう熊の域を超えてるだろうが!!」
悲鳴に近い声を上げながら二人はその場を離れ、熊から距離を取る。
「おい!俺は薙浪迅真!自称人間だ!お前の名前と種族は!?」
「フィアロード・スカーレットだ!吸血鬼だが…今関係あるか!?」
「こいつの力量が測りたかったんだが…コレ、勝てる気がしなくなってきた…」
「諦めるなよ…!おい!そっちに行ったぞ!」
フィアの言う通り、熊は迅真に向かって来る。攻撃相手の判断をどこでしているのか分からないが、異様に自分が襲われていることに若干苛立つ。
「クソッ!誰がくらってやるものか!」
先ほどの様に凶爪を振り下ろしてくる熊に、回転を加えてナイフを振るう迅真。
ガギィッ!!という鈍い音がし、迅真と熊はお互い弾かれるが、迅真は弾かれた力を利用して回転蹴りを放つ。
ドッ!!という肉を打つ鈍い音がして熊の頭部を打つが、特に聞いた様子は無く、むしろ自分を危機的状況に送り込んだような最悪な状況。
直後、前進してきた熊に押され、そのまま壁まで押されて熊と壁にプレスされる。
「ッァ…!?」
吐血し、迅真の身体から力が抜け、動かなくなる。
瞬間、熊のうなじに踵落としを落とすフィア。だが、それも熊の身体を少しよろめかせただけで終わり、振り向き様に振るわれた熊の剛腕に殴り飛ばされ、数度バウンドして倒れ込む。
「ゲホッゲホッ!ガハァッ!!はぁ、はぁ、なんだ、アレ……」
あまりにも強すぎる相手を前に、手加減をするのは無理だと悟り、フィアは全力を出すことにした。
「……行くぞ」
フィアは瞬時に熊へと迫り、熊の顎を殴り上げる。それで一瞬熊はよろめき、その一瞬でフィアは再度顎に膝蹴りを放つ。
ドゴッ!という音と共に熊は大きくよろめき、二、三歩後ろへ下がる。
さらに追撃しようとフィアが前に出た瞬間、恐ろしいほどの速度で熊が右前脚を突出し、フィアの心臓に突き刺さる――――
――――寸前で現れた迅真が飛び蹴りを放ちその前足を逸らす。
そして、フィアはぶつかるはずだった前足が無くなり、そのまま熊の心臓目掛けて拳を放つ。
ズドンッ!!と大気を震わせるような轟音が響き、全ての動きが止まる。
フィアは即座にその場を離れ、迅真に駆け寄る。
迅真は血まみれでどう見ても重傷だった。
「おい、大丈夫か?」
「あぁ…まぁな。これくらい、問題ないさ。ケホッケホッ…少し、休んでいれば、治る」
迅真はそう言いながら立ち上がり、魔法を唱え――――
「――――ッ!!」
驚愕の表情を浮かべると同時にフィアの腕を掴みテレポートを行使しその場を離れる。
直後、大地を揺るがすほどの衝撃と轟音が洞穴に走る。
「――――『ベホマ』」
唱え終わり、魔法を発動させると同時に迅真の傷は瞬時に消え去る。
そして、二人の前には先ほど強烈な一撃を心臓に受けたはずの熊がいた。
「なんだよ…渾身の一撃だったんだぞ!?」
「クソッ!縛り付きでこいつを倒すとかムリゲーだな……でも、どこまで武器を使うか……」
「アレを倒せるなら文句は無いかな……」
「……オーバーキルしか出来ないな」
苦笑いをしながら答える迅真。それにつられて思わずフィアも苦笑いになるが、
「取りあえず、今度は手加減無しで全力だ。絶対倒す」
「了解」
襲い掛かってくる熊を前に、迅真は闇を纏う。
フィアは蝙蝠のような羽を出し跳躍するように飛ぶと、熊の背後へと回る。
「さぁ、決着を付けてやる」
闇と同化するようにゆらりと動き、次の瞬間には残像が残るほどの速度で移動する。
熊の凶爪をひらりと紙一重で回避すると、その腕にナイフを突き立て、
ズドッ!と鈍い音を立ててナイフが突き立てられる。が。直後、恐ろしいほどの力で引っ張られて身体ごと持って行かれそうになったので迅真はナイフから手を離す。
と、その瞬間を狙ったのか、突き立てられたナイフにフィアは背後から全力で蹴りを放つ。
ナイフは更に深く突き刺さり、熊が呻くように声を上げる。
迅真はそのまま掌底を熊の目と目の間に叩きつけ、そこから更に左拳でアッパーを繰り出す。
ドガゴッ!!という連続して響く打撃音。そして、それに続くようにフィアが立ち上がりながら仰け反った熊の背中の中心に全力の拳を放つ。
ドゴッ!!という鈍い音がし、熊はよろめく。
しかし、もうこの程度でやられる相手ではないと悟っているので、追撃の手を緩めず、迅真は心臓へ肘鉄を放ち、熊が前へ倒れかけた所へサマーソルトキックを繰り出す。
そこへ更にフィアが追撃しようとしたところ、突然、
「グオオオォォォォォォォォ!!!!」
と、強烈な響きの咆哮を出し、二人は一瞬硬直する。
そして、その一瞬のうちに熊は迅真へ倒れかかり、押しつぶすと、すぐに起き上がり背後にいるフィアに襲い掛かる。
即座にフィアは全力で後退するが、その速度を遥かに上回る速度で迫る熊に吹き飛ばされ――――
「――――させると思うなよこの怪物ぅ!!」
ドガァッ!!という轟音を立てて熊に蹴りを放ち地面へ叩きつける迅真。
「ケフッ。ったく、今回だけで何回殺されかけるんだよ俺は…」
「なぁ、本当に大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫。魔法で一発だ。さてと、止めを刺すかな」
そう言って迅真は熊に刺さったままのナイフを抜き取り、構えた所で、
「――――ッ!」
言葉にならないような声が聞こえて来る。というより、鳴き声だ。それは洞穴の奥から聞こえ、洞穴の奥へと目を向けると、そこから小熊が出てくる。
「…………」
その小熊は熊の近くに来ると、熊の顔に頬ずりをし始める。
「……ダメだ。この状態で殺すほど俺は野生になってないわ」
「……同意かな。諦めよう」
「だな。はぁ、肉は別の所で調達するか」
そう言い、迅真は即座に魔法を唱えると、熊にかけて傷を治す。
「ったく。精々長生きしろよ。じゃあまたな」
素っ気なく言い捨て、迅真は洞穴を出て行き、その後ろにフィアは続く。
「それで、どうするんだ?食糧、無いんだろ?」
「あぁ、それな。適当にウサギかイノシシでも見つけて狩るさ。んでお詫びの意味を込めて内臓を送っとく。あ、ひでぇやつとか思うなよ?動物からしたら肉よりもそっちの方がご馳走なんだからな?」
「……誰に言ってるんだ?」
明後日の方向を向いて補足をする迅真に思わずフィアは突っ込む。
「気にすんな。それに、ちょうど猛吹雪も止んだから獲物も探しやすくなったしな」
洞穴の外は迅真の言った通り雪が止んでおり、雪も高く積もっていた。
「んじゃ、家に帰りながら獲物を狩りますかね」
* * *
結局、家に着くまでにウサギを5羽、イノシシを10頭ほど狩り、辺りは暗くなってきていた。
「今更だけど、狩り過ぎじゃないの?」
「いや…これで足りるか…?」
「そんなに食う奴がいるのか…」
居るには居る。まぁ、寝込んでいるが。
「さてと。取りあえずお礼をしたいから家に上がってくれよ」
そう言いながら迅真は玄関の扉を開け、
「ただいま~」
と言いながら入る。それに続くようにフィアは
「お、お邪魔します」
と言い、入る。
「お帰り~…って、後ろのは?」
「あぁ、ちょっと途中で会ってな。狩りを手伝って貰ったんだ」
「そう。じゃあ、ありがとうって所かしらね。つれて来たって事はまた色々渡すつもりなんでしょ?」
「まぁな。取りあえず適当に座っててくれ。俺はこれを処理してくる」
「はいはい。さっさと行ってらっしゃい」
迅真はルーミアの声を聞きながら奥へと行く。
そして、フィアはルーミアの斜め前の位置の席に座る。
「さて。じゃあ改めてありがとね。迅真を助けてくれたんでしょう?」
「あぁ、いや、どちらかというと助けられた感じなんだけど…」
「そうなの?まぁ、どっちでもいいわ。ところで、一体どんなことがあったの?なんか迅真が消耗してるように感じるんだけど」
「それは――――」
* * *
二人がしばらく話していると、再び奥から迅真が出てくる。
「あ、迅真。意外と遅かったわね」
「まぁな。予想以上に手間取った」
そう言いながら迅真はルーミアの隣の席に腰を掛け、フィアと向かい合う。
「さてと。んじゃ、お礼でこれを渡そう」
迅真はそう言うと、バッグの中から腕輪を取り出し、フィアに渡す。
「コレは?」
「精神制御のお守り。ある程度の精神ダメージを緩和してくれるから、突然の事にもすぐに対応できるようになる……かもしれない」
「なんでそんな不安になるような事を言うかな…」
何とも言い難い表情をしてフィアがそう漏らすが、迅真はハハハ…と笑い、
「これ以外にも色々あるんだけど……お前の役に立ちそうなのはこれくらいなんだよな。すまん」
「いや、別にお礼を貰うだけでも十分すぎるよ。それに、どちらかって言うと俺の方が助けられた感じだしな」
「いいのいいの。そもそもの死にかけた原因が俺の知り合いなんだから……うん。本当にごめん」
「アハハ……まぁ、死んでないから良いよ」
「そうか?まぁ、お前がそれでいいって言うならそれで良いんだけども。んじゃ、どうする?飯、食ってくか?別に、帰りたいなら言ってくれればスキマを開くから」
「う~ん……いや、帰るよ。妹たちや娘たちも心配してると思うからな」
「そうか。じゃあ、またいつか会おうぜ」
そう言いながら迅真はスキマを開き、
「あぁ、またな」
手を振りつつ、フィアはスキマの中へと入って行くのだった。
「――――熊に殺されかけたんだって?」
「うるさい。あの熊はちょっと規格外だよ。お前からしたら雑魚だろうけどな」
「そう?まぁ、無事だったから良かったわ」
「……ありがとな。心配してくれて」
「当たり前でしょ。もし迅真がボロボロで帰ってきたら私はその熊を細胞一つ残さず消し飛ばす自信があるわ」
「ハハハ…やるなよ?」
そんな会話で夜が更けていくのだった。
キャラ崩壊してる気が…あれ?フィア君ってこんなキャラだったっけ…戦闘してるから違和感しかないのだろうか…
今回はマンネリ化しかけてたVS迅真をやめてVS熊です。最初は全力で狩るつもりでしたがなんか途中から愛着沸いて…うぅ…これはいつかのフラグとなります。
さて、渡した腕輪ですが、妖力を注ぎ込まないと効果ありません!なのでつけてるだけならただの腕輪です。しかも効果もそれほど高くないという(;^ω^)
では、霊魂扇龍さん、コラボありがとうございました!(`・ω・´)ゞ
次回は鯖袋さんとのコラボです!よろしくお願いします!(`・ω・´)ゞ
今やってるくせに活動報告でまたコラボ募集してます。気になったらどうぞ。