宵崎奏は冬の女王とイッシュチャンピオンを目指すようです【改訂版】   作:弊鳥

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この小説はやる夫スレ「これが俺のポケモンマスター様」といった作品を始め「この素晴らしいシンオウに~」「ポケットモンスターyell」などの作品を多いに参考にしています。
素晴らしいシステム、お話を作成してくださった先人に多大なる感謝を。

またこちらの小説は以前投稿していたものの改訂版となりますのでご容赦ください。


第零楽章 セカイの果て、出会うは妖精女王と救いの子
第1話 宵崎奏


 

 

 ーーーーーーーポケットモンスター、縮めてポケモン

 

 とあるセカイに生きる不思議な生き物達。

 

 

 空に、海に、陸に生きる彼らは時に人を助け、時に人に仇なし、時に現在まで語り継がれるような大災害、伝説を残しながらも、人の隣人であり続けた。そして、彼らとどう関わるかは人間次第。穏やかに日々を共にするも、冒険の旅に出て新たな未知と遭遇するも自由である・・・中には彼らを利用したり、人との繋がりを断絶させようとした事例も遺されているが、それも過去の話。

 

 そんな彼らも最初は100、次第に200、300と徐々に種類が確認され、一時は1025種がこの世界に住むポケモンの全てだとも言われたのも遥か昔の事。

 

 ある時、ある日を境にこれまでのポケモンとは一線を画すような、『新たな』ポケモン達が現れたのである。これまで発見された『古代種』とは区別される『現代種』。彼らのうち、ある者はこれまでのポケモンからさらに進化を遂げ、ある者は私たち人間と変わらない姿、ある者は機械生命体、ある者はその獣性を前面に表したもの、そしてある者は・・・輪郭を持った災厄のように。全くこれまでとは異なる形を持って生まれた。

 

 

 中にはーーーーーー『伝説』と呼ばれたもの。

 

 

 

 

 

 或いはーーーーーー『幻』と呼ばれたもの。

 

 

 

 

 

 そしてーーーーーー種の頂点にあるべきモノ『天賦』と呼ばれたものも。

 

 

 

 

 

 ・・・そして、そんな彼らと人間が最も心を通わせ、熱狂し、心の底から人々を魅了しているもの。

 それこそが『ポケモンバトル』である!

 

 

「ーーーーーーさぁ!さぁさぁさぁ!今年も雷鳴のように轟き、蒼炎となって人も、ポケモンも何者の心を燃え上がらせるイッシュリーグ最終節!」

 

 

「ジムリーダーの激戦を勝ち抜き、最終節へと着陸したフキヨセジムリーダーの『覇空』たる『トップバッター』がいきなり波乱を巻き起こすか!?」

 

 

 

 

 

「快進撃を待ち受けるは老兵ながらソウリュウジムを遥かな壁へと押し上げる彼の、『極星』だぁ!!!」

 

 

 

 

 

「四天の一角は伊達ではないか!?その若さにして一柱へと至った超然たる眼は、『絢爛』な『アシスト』で勝利へと導くっ!!!!!」

 

 

 

 

 

「黒より黒き暗黒より出でし『蒼雷』の『エースキラー』が、研ぎ澄まされた四天の手により因果を喰らうっ!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

「さぁ!最後に残った、相手からすればいや残してしまった!このイッシュに歴史を遺した、最強のチャンピオン!」

 

「劣勢だとしても、空に咲き、天を貫く『不動のエース』がいる限り、希望は彼女の手にーーー」

 

 

 

 ーーーーーーーーーワァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!

 

 この世界。ポケモンと人とが共存する華やかな世界。

 その中には花開く事を夢見る、まだ表舞台には上がっていないポケモン達も数多く。

 

 

 

 今宵も大勢が湧き上がり、熱に浮かされる大都会、イッシュ地方。そこから切り取られたかのように隔絶されたセカイと一室で、このセカイの主人公である『彼女』はーーーーーー

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『ライモンシティ 住宅区』

 

ーーーーーーカタカタカタカタ...

 

「・・・・・・♪~、♪~」

 

 辺りは静か、かすかに漏れる電子音と熱狂を覚ますようなファンの音が微かに聞こえる宵の先。そこに時折混じり、空間に浸透していくかのような淡い歌声のみがここには許されている。

 

 

「・・・うん、ここはやっぱりこっちの方が意思を込められる。もっと、もっと聴いている人に寄り添えるように・・・聞いている人の、暖かさになれるように」

 

ーーーーーーカタカタカタカタ...

 

「・・・誰かを、幸せにする曲を・・・」

 

 深夜25時、何時からか続けている作業は大詰めに入った。暗い部屋を怪しく目の前に映る青を基調とした白黒の光も、少し息苦しいヘッドホンの重さも高揚感をもたらすスパイスのよう。

 

 誰にも邪魔なんてさせない、静謐の中ーーーー

 

???『おーい奏ちゃーん、ご飯の時間だよっ♪』

カタカタ・・・

???『おーい奏ちゃーん、ご飯の時間だよっ♪』

カチッ、カチカチッ

???『おーい奏ちゃーん』

カタカタ、カチ、ペラ・・・ペラ

???『・・・・・・はぁぁぁぁぁぁ・・・』

トンッ、トトトンッ、カチカチッーーーーーー

???『ドラム、伊地知虹歌いっきまーす!』

 

 

 

『ーーーーダララララララララララララララララダカダーン!!!!!』

 

 

「うひゃうっ!?」

 

 モニターとその源から流れ出す音階に全てを集中させていた最中。そばに置いてあったスマートフォンから静寂を引き裂くようなドラムロールが流れ出し、私は思わず意識を現実に引き戻した・・・というか、引き戻された。いやヘッドフォンしてたのに、どうしてこっちのドラムロールの方で耳がジンジンしてるのかな・・・。

 

「・・・あ・・・もうこんな時間。また食べるのも忘れちゃった・・・うん、そりゃアラームもなるかぁ・・・」

 

 既に使い古され、節々が軋むデスクチェアに深く沈み込みながら一つ、息を吐く。ふとモニターの右下に刻まれた数字を見ると・・・あぁ・・・本来なら部屋も街の灯りも暗闇に沈んでいるような時間・・・明日に学校とか、会社があるような人はきっと夢の中、かな。

 

 慣れてしまったけれど、寝るのも食べるのも忘れて昼夜逆転なんていつもの事だし、三大欲求なんて実際は不要だった事を図らずも証明してしまっていた。最近食欲はだいぶ普通になったかなと思ってたけど・・・一回作曲に集中してしまえば、うん。

創作意欲・・・というわけでもないんだけれど・・・

いや、もしかしたらあり得る?胸がいっぱいになれるような創作を続けられれば、それで自給自足ライフ?

 

ーーーーーグゥゥゥゥゥゥ

 

「・・・やっぱりお腹減ったかもしれない」

 

 まぁ冷静になればそんなわけはないんだけどね。それに空腹感という気持ちも立派な作曲の材料。うん、だからしばらくこのまま作曲してても良いといえば良い。多分偉い人か何かはそう言ってくれてる、私の代わりに。

 

 ちなみさっきのドラムロールは、家事代行サービスで来てくれているお手伝いさんが

「作業に没頭しすぎておご飯を忘れないよーに!せめて草は食え!そこら辺の雑草でもいいから!」と言って、作業開始から時間が経ちすぎると勝手に鳴っちゃう。ぺあれんたるこんとろーる?みたいなので設定されてて私じゃ解除不可だし・・・。

 

「伊地知さんも暫くは用事で来れないって言ってたから、気が付いたら今週はカップ麺ばかり食べてて・・・あれ」

 

 ふと、私の脳裏によぎるある記憶・・・

 

「私、あの時食べたカップ麺のスープ、どうしたんだっけ...?」

 

 いつも食べ慣れた醤油味、作曲終わりでほとんど働いていなかった頭、曲を作り終えたことと食べ終えた後の満足感、新しく生まれてきたアイディアへの意識、構想と想像のセカイに浸りながらPCの電源を付け・・・

 

「・・・何時間、いや、何日・・・?」

 

 ライフワーク、いや私という人物そのものである作曲をいつも通り始める前、ご飯食べたっけと冷や汗をかきながら、音楽に囲まれた父の仕事場をのそのそと抜け出す。

 

 

 

 

 

 私の名前は宵崎奏。16歳。肩書はコンポーザー。今日も歌で誰かを救うために、この部屋で曲を作り続ける。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

奏「ふぅ...ごちそうさまでした。」

 

 ちゃんとカップ麺を処理していた自分に安堵しつつ、今日のおご飯をも飲み干した。流石に3日間も放置していたなんてそんなこと・・・うん、あの時のことは・・・忘れよう。多分この気持ちは曲作りにはいらないと思うから。

 

奏「それにしても、結構当たりだったな...トロピカルすだちそば。ラーメンじゃないのは始めてだったけどスープがゲーミングゲーミングしてて新感覚って感じ・・・青春ってこんな味なのかな」

 

 酸味と甘みと塩味が口の中に広がって、そこにむせかえるようなすだちの軽くツンとした清涼感が突き抜ける・・・どこからか、お手伝いのアルバイトで来てくれている伊地知さんからの「青春なめんな!?」という声が聞こえるが、うんこれはきっと青春の味。

 

奏「・・・私も、ちょっと違ってたら青春に立ち合えてたのかな」

 

 私はスープに揺らぐ水面を見てぼんやりと、かつて『トレーナーズスクール』に通っていた頃を思い出す。プロのトレーナーなんかは勿論、ポケットモンスター達を育てる人や周りをサポートする人なんかを含めて色々教えてくれる学校。

 

 周りの子が行くから...位の軽い気持ちで通ってたなぁ・・・でもあの頃は結構、将来はプロトレーナー確実だ・・・なんて言われたっけ・・・私は良く分からないままだったけど、それでもお父さんはニコニコしてくれて。友達と言えるような人もいっぱいいて、仲良くなったポケモンもいて、

 

 一緒にチャンピオンを目指したいねって言った『あの子』も・・・

 

奏「・・・でも、それを捨ててでも、生きる意味を自覚したから。私は、しなくちゃいけないから」

 

 そうだ、私は誰かを幸せにできる曲を、つくれるようにならなきゃいけない。

 

 

奏「どんな人だろうと、ポケモンだろうと救える曲を作り続けなくちゃーーーー」

 

 

 ・・・私は前までお父さんと二人で暮らしていた。

 お母さんはとても優しく、温かかった。けれどお母さんは元からとは聞いてはいたが、私を産んだ影響もあってか、病気がちだった。そして・・・まだ私も小さい頃に病気で。それからはお父さんと二人っきり。少し寂しくはあったけれど・・・お父さんは家でお仕事をしていてすぐそばに居られたし、お父さんの作ってくれる大好きな音楽もあってそこには確かに温もりに満ちていた。

 

 

 今の私の部屋・・・お父さんの作業部屋に大切に飾ってあるオルゴールの優しい音色を思い出す。病気がちのお母さんのために、作曲家のお父さんが編み上げた暖かい旋律。とても素敵で、優しくて、聞いた人を幸せに出来る曲。私もそんな曲を作りたいと思って小学生から曲を作り続けた。そして中学生になったある時、少しでもお父さんに喜んでもらえたら...と、お父さんの曲にアレンジを加えてプレゼントしてみた。

 

 

・・・それが最初の罪とも知らずに。

 

 

 

 その次の日から、お父さんは部屋に籠りがちになって、どこか追い詰められた表情をすることが増えていった。そんなお父さんを元気づけようとして、曲を手作りし、喜びに満ちた心でそれをまたプレゼントした。これで少しでも笑顔が増えてくれれば・・・と、わくわくしたオモイで感想を待つ私。その期待も叶ってか、お父さんは再び柔らかく微笑んで、とても大きくて、暖かくて、優しい手で私の頭を撫でてくれた。

 

 今でも覚えてる、その日はお母さんがいなくなってから久方ぶりに得たとても安らぎに満ちた夜だった。

 

 

ーーーーーーー次の日、お父さんは倒れた。それ以降、今も寝たきりのまま。

 

 

 病院の人曰く、精神的な傷が引き金となり、体を蝕んでいたのだという。そして、その引き金を引いて、追い詰め、救うどころか水底まで突き落としたのはーーー他でもない私だった。

 

 お父さんの残した日記によれば、なんの間違いか私が最初にアレンジした曲に衝撃を受け、しかもしれが周りからも評価を得てしまったという。そしてそれと同じ物を周りから、そして何より自分自身が私に頼らないようにして求めたが答えることが出来ず、どんどん追い詰められてしまった。

 そして日記の最後にあったのは・・・

 

『奏の曲は誰か、世界に生きる人の、ポケモンの心に触れることの出来る、素晴らしい曲だ』

『そして僕には・・・そんなことは、そんな曲を創り出すことは出来ない。それでも、生きるために奏との生活のためには音楽を作らなくては・・・』

 

『・・・それは僕が本当に紡ぎたかった、奏のように誰かを救うことができる音楽なのだろうか』

 

 そうやって、1番最後のページは締めくくられていた。

 ーーーーーーー違う、私は何かを救うどころか、疫病神だった。中途半端な曲しか作れなかった。お父さんを救えると思っていたのに、追い詰めることしか出来なかった。

 

 悪いのは、全て私だった。

 

 それでも、でも、なら。嗚呼、お父さんが残してくれたように、そう思っていてくれたように。誰かを、全ての人を救う曲を作り続けなければ、のうのうと生きることすら許されない。お父さんの代わりに、私が救わなくちゃいけない。

 

 

 そのために、この生はある。

 

 

 ・・・そうやって私の存在理由を思い返して見ると、ここでぼんやりと立ち止まってる暇はないよね。今作っている曲もおおよその形が見えてきた。あとは細部をどう詰めて、私が乗せるべきメッセージをどうやって届けるか、どう救うかを見出すだけだ。ただ、流石に一度凝り固まった頭を解さなきゃ、とも思う。誰かを救う曲は独りよがりでいちゃ駄目だって、何となくそう思うし・・・何より、本当に救う事が出来る曲なのか・・・”聞いてもらわなければ”。

 

 

 

 誰かを救えない歌を作る私に、生きる意味は無いのだから。

 

 

 

奏「・・・そういえばしばらく集中してたのもあって、『あの子』の所にもいけてなかったな。・・・また、一緒に歌いたいな。今の曲も聞いてもらいたいし」

 

 と、私はそのままジャーj・・・部屋着から着替えるでもなく、ドアに向かって立ち上がるでもなく、おもむろにスマートフォンを取り出す。”あの”楽曲のデータはスマートフォンからも見れるようにしてあるし・・・準備はできている。

 

 そして車窓も無く、各駅で止まることも、揺れることもない椅子に乗りながら私は目的地へ向かう。

 

奏「ーーー再生、『untitled』」

 その瞬間、目の前は眩い光で満たされた。後に残る部屋に、私の姿はどこにも残っていないだろう。

 いつの間にかプレイリストに増えていた『無題』の曲を流すことで、私は。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

?「ァァァァ~♪・・・!」

 

 寂しさを感じさせる光景に、人ならざる古の美しい歌声が響き渡っている。

 

奏「・・・やっぱりここも落ち着くな・・・」

 

 一瞬光に包まれたかと思えば、私はそんな歌声に包まれたいつの間にか部屋とは似ても似つかない場所にいた。「テレポート」でも「あなぬけのひも」を使ったわけではないが・・・不思議な技術。少しだけうす暗い中、薄明に照らされ、地面に刺さった鉄骨がそこら中にと立ち並ぶ。白黒映画をそのまま切り出したかのような、寂寥感を感じさせる現実離れした・・・異世界。

 

 確かに鉄骨とかの物は立ち並んでいるはずなのに、どこかなんの文脈もなくただ置いただけの様に見える、『何もない』モノクロの明らかに元居た現実世界とは異なる異世界・・・私は『セカイ』と呼んでいる。時折作曲で体力を使いすぎたり、”あの子”に会うためにここに来ている。スマートフォンで先ほどの『untitled』を再生すれば、光に包まれてここに来れるのだが、いつその扉である『untitled』が私のスマホに入ってたかは・・・うん、考えても意味が無いや。

 

奏「えっといつもならこの辺りに・・・」

 

?「〜♪〜♪」

 

奏「あっ、よかった、元気そう。いつも一人にさせちゃって・・・ごめんね?でも何故かこのセカイから連れて帰るのも出来なくて・・・」

 

?「?~!ァ~、ァァァ?」

 

 親しい人と話すようにすらすらと話しながら声のする方を振り返ると、そこには緑の髪が五線譜のように靡いている小さなポケモン。色んな表情を見せてくれるその顔は、私のことを「心配しないで?」と言ってくれているように見える。

 

奏「こんにちは、メロエッタ」

 

メロエッタ「♪」

 

 

 

 

 私が名前を読んであげると、満足感に満ちた表情と嬉しさが滲んだ音色を返してくれる、小柄な1匹のポケモン。音符を象ったかのような髪に歌姫のような佇まいはどこか神聖さというか、掴み切れない『幻』のような気分にさえさせてくれる。

 

 ただ・・・私が初めて会ったあった時からちょっと人懐っこすぎるというか、授業で見た『古代種』のワンパチ?みたいに無防備に人についてっちゃいそうで危なっかしいところまである。このセカイには私とメロエッタ以外誰もいないから事件とかそういうのは気にしなくて良いんだろうけども・・・多分『古代種』なんだろうけど、何を調べても出てこなかった不思議なポケモン。

 

メロエッタ「・・・?」

 

 と、ぼんやりしていた私のことを心配するかのように、「今日はどうしたの?」と首をかしげるメロエッタ。ただそれだけだというのに、絵になる・・・とはこういうことをいうのだろうか。

 

奏「え・・・っとね、実は新しい曲がもうちょっとできそうで...メロエッタにも聞いてほしいなって。まだ歌詞とか細かいところは直していきたいけど。メロエッタが気に入ってくれるといいな。」

 

メロエッタ「ァ!ァァァ~♪」

 

奏「あっ『いにしえのうた』はやめて・・・絶対寝ちゃうから・・・この前も9時間ぐっすりで伊地知さんを滅茶苦茶心配させちゃったから」

 

 これ以上変な心配をかけたら、いよいよ何かペット用亀田とかで生活を管理されかねない・・・!振ってきたインスピレーションを忠実に、神速で打ち込むために、なんとしても回避しなきゃ・・・でも『いにしえのうた』として歌われたら何故か寝ちゃうんだよな。命中率の低い技とか、追加効果とかなんか絶対受けるんだよな・・・昔から。

 

メロエッタ「ァァ~ァァ~?」

 

奏「ああうん、そんな怒った顔しないで・・・最近は伊地知さんのおかげもあってちゃんと寝れてるから。それじゃ、デモだけど・・・再生するよ」

 

メロエッタ「♪」

 

 

 ーーーーーーそういう事もありつつも、今日も、私は変わらない

 

奏「~♪~♪」

 

メロエッタ「ァァァ~♪ァァ~♪」

 

 誰かを救うために曲を作って、生きるために曲を作って、曲を作るために生きて、時折・・・こうしてセカイでメロエッタと出会う。

 

 息をするように、呼吸をするように。それが生きるために必要なことだから。

 

メロエッタ「ァァ~♪ァァァァ~♪」

 

奏「~♪ふふ・・・♪」

                  

 お父さんから貰った祝福で、私がお父さんを不幸にしてしまった私ができる、唯一のコト。それが私に許されたセカイで、私が望んだセカイ。

 

 星明かりも届かず、咲き誇るような華は無く、色彩は黒く塗りつぶされ、神なんて存在は見向きもしないような真夜中の終点から、誰かを、誰もを救える曲を作り続ける。

ただそれだけのこと。そのための命。バンドマンにも、アイドルにも、ストリートミュージシャンにも、演者にも・・・ポケモントレーナーにもなることは出来ない私の唯一の生きる道。

 

 ーーーーーーそのはず、だった。

 

 

メロエッタ「ァァ~♪・・・?」

 

 デモを流している最中・・・だというのに、メロエッタが急に歌うのをやめて、辺りをきょろきょろを見出した。どうしたんだろう・・・今までこんなこと無かったのに。

 

奏「・・・?メロエッタ?急にどうしたの?」

 

メロエッタ「・・・!」タッ

 

奏「あ、メ、メロエッタ・・・!?あ、ちょ、ちょっと待って...」

 

 は、はや・・・!?具体的には俊敏さを表す種族としての力が90位速い!どうやら何かを見つけたみたい、た・・・っ。そうして辺りにスマホから流れる曲を止める暇もないまま、唐突に走り出したメロエッタを思わず追いかける。

 

奏「まっ・・・メロエッタ、速、い!あっ、ちょっ、は、走るのってどうすればいいんだっけ…?」

 

 ・・・だけどこれまでを見てくれればわかる通りで運動とは程遠い生活を送っていたから。もはや50m走りでも瀕死になるくらいには体力不足・・・そんな中でも、なんとかメロエッタを見失わないよう、力の出る限り平らな地面をけり続ける。

 

 そうやってメロエッタの先導に必死について行って。目の前に広がっていたのは・・・

 

メロエッタ「!・・・!」

 

奏「・・・み、みずうみ・・・?」

 

 こんなところがあるなんて・・・今まで全然知らなかった。なんとか走ったその先には、遠くまで湖が広がっていた・・・いや大きさとして泉?位なのかな・・・辺りと同じように薄灰色の鉄骨が刺さっている、現実世界から見れば異質な場所。だというのに水面は穏やかで、見ているこちらもどこか透き通るような気持ちになる不思議と暖かい場所。

 

 ・・・とはいえ、今の私にはその景色に染み入る余裕も、パースを曲に投影するだけの思考力も全く残されていなく、

 

奏「ぜぇ、はぁ、ふっ、ふぅ、ちょ、ちょっと・・・まって、速、すぎて、ぜ、ぜぇ・・・はぁ・・・かひゅ・・・!」

 

 も、もうちょっと運動しておくべきだった...。まさかちょっとの距離を走っただけでこんなバテバテになるだなんて。い、いやこれはさっきカップ麺を食べて横っ腹が痛いだけだから。普段はもう少しマシだから・・・た、多分・・・。

 

メロエッタ「!・・・!」

 

奏「だ、だから、ど、どうしたのって・・・え?」

 

 疲れて思わず膝に手をつきながら俯いた重い頭を、持ち上げる。

 

 垂れた髪を手で払いながら見たその水辺、そこにあった・・・いや、そこにいたのは

 

?「・・・・・・・・・・・・・・・すぅ・・・」

 

 “それ”は宵崎奏とメロエッタしか居ないはずの世界に存在する何者か。泉から流れて来たのだろうか・・・ううん、濡れている様子は見えない。

 

奏「・・・貴女は・・・」

 

 私と同じ、透き通っててらてらと光を靡かせる銀髪。どこまでも堕ちていきそうな程黒いのにも関わらず、どこか神聖さも感じられる装い。扱えないような程大きく触れるだけでその生を追えそうなほど鋭利で恐ろしいのに・・・だからこそ彼女に相応しいと感じさせる大槍。

 

 それらを携えながらも無防備に横たわり、たおやかに息をしながら夢のようなセカイの中で夢を見ている。

 

奏「・・・綺麗」

 

 

 

 

 そんな、ゾッとするほど冷たく、1枚の絵画のように美しいポケモンだったーーー

 




大変お久しぶりでございます、少しづつ変化したポケモン?の世界をお見せできればと。
今のところ英霊みたいな方々が多いけどね、ポケモンだからね
この小説は先達の現行スレッドを応援しています。

誤字脱字、意見感想とあればお気兼ねなくよろしくお願いします。
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