宵崎奏は冬の女王とイッシュチャンピオンを目指すようです【改訂版】   作:弊鳥

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第11話 イッシュチャンピオン 空崎ヒナ

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー『歴代最年少でのプロリーグ参入!!』

ーーーーーーーーーー『若干2年目にして圧倒的な実力でチャンピオンを簒奪!!』

ーーーーーーーーーー『他を寄せ付けない2冠の女帝!3連覇もその銃口のすぐ先か!?』

 

 手持ちのスマホで『空崎ヒナ』と検索するだけで湧き上がってくる記事の数々。それだけでヒナちゃんがどれだけ華々しい功績をたった数年の間でその手につかんできたかを雄弁に語ってくれる。

 

 

 持ってきていたパソコンの画面は現在、去年の『リーグファイナル』・・・チャンピオンを決定する決勝戦の光景を映し出している。あっちの方でじゃれ合っていたポケモン三人娘も気が付けば正座してポケモンバトルの映像に見入っていた。私のDTMソフト・・・

 

 ・・・とはいえ、明らかに目を引くほど煌びやかなのは疎い私でもわかる。

 

虹夏「流石に今このイッシュで知らない人はまずいない、2連覇チャンピオンを知らない時点で疎いどころではない」

 

奏「いやまって欲しい、こんな人は探せば一人や二人は・・・」

 

虹夏「ショッピングモールR9でマスターボールでも引く位の確率だと思うけど!」

 

 そうかなぁ。私程度の集中っぷりでも知らない位だから、もっと自分の世界に没頭できる人は知らなくてもおかしくないとも思うんだけど。数日間食事すら忘れる人とか。

 

 ただなんというか、画面越しでも容易に伝わってくるこの熱狂。まるで超有名アーティストがぶっ通しでライブしているかのような盛り上がりを見れば、この向こう側で行われている光景がどれだけ凄いのかは感じ取れる。

 

カリオストロ「すっご~い!これが例のチャンピオンの試合かぁ!」

 

モルガン「相当会場も広いですが見渡す限りの人ですね・・・流石はこの地方で最も盛り上がる日といったところでしょうか」

 

メロエッタ「~~~!」

 

モルガン「・・・これは確かに目を話すことなんて」

 

実況『さぁ!いよいよもってチャンピオンも絶体絶命か!?残るは最後の一体のみ!対してチャレンジャーはほとんど万全とも言える、超級のポケモンが何体も控えているぞ!』

 

 わっ・・・!そっか、これだけの規模だとそりゃ実況もいるよね。でも聞いてる限りだとヒナちゃんは劣勢みたいだけど、大丈夫、かな。過去の動画だとはわかっているのに、思わず見てるだけの私がゴクリと嚥下していた。

 

 そんな心配なんて当然届く事もなく。それどころかヒナちゃんは動じるような素振りも魅せずーーーーーー

 

実況『劣勢だとしても』

 

 

 

 

 

 

実況『空に咲く『不動のエース』がいる限り、希望は彼女の手にーーー』

 

 

 

 

 

『わぁぁぁぁぁぁぁ!』

 

奏「っ!・・・また一段とすごい歓声、いったいなにが?」

 

カリオストロ「まさに熱狂、だな。カメラマンすら仕事を放棄して大喝采。正に大注目の瞬間ってわけだ」

 

虹夏「そう、ここからがすっごいんだよね~。あたしも何回も見ちゃったもん!」

 

 映像の中ではヒナちゃんのポケモンは相手の猛攻によって倒れ、その次のポケモンを出そうとしていた。実況の声を頼りに状況を判断するけれども、どうやらヒナちゃんは残り1体、それに比べて相手のポケモンは残り3体。6vs6の対戦でどうやってここまで差が付いていなかったのかはわからないけど・・・

 

虹夏「チャンピオンの『エース』で異名は・・・『絶槍』。『絶槍』のアルトリア・ランサー。イッシュチャンピオンといえば感じだよね~」

 

奏「『絶槍』・・・」

 

 ヒナちゃんが繰り出して来たのは大きな馬に跨り、全身を銀で覆った、鎧姿の人に近いポケモン。これは過去の映像だと言うことが分かっているのに、それでも冷や汗をかいてしまいそうになるほどの、圧倒的な存在感。

 

 

 

 

 

 ・・・人間とは一線を隔する様な相貌。その一点だけを考えれば私のすぐ隣で覗き込んでいる彼女と・・・

 

モルガン「・・・なぜだかわかりませんが、無性にその面を直に拝みたくなってきますね」

 

カリオストロ「おいおい?」

 

モルガン「そもそも槍が白だの光っているのがナンセンスです。時代は深く飲み込まれていきそうな漆黒でしょう」

 

虹夏「おーい、物騒なのはいいけど、レベルも経験も地力も何もかも及んでないぞおまぇいそれにここからの無双劇を見たらそんなこと言ってられなく------」

 

 

奏「・・・・・・ヒナちゃん?」

 

 周りが、『絶槍』へと視線を向ける中。私は何故か、どうしてか。目を引くはずのエースではなく、その奥に何もない風に立っているヒナちゃんから目を話せなかった。

 

 

 だからこそ、なのか。ふと、あることに気が付いた。

 

 

 わざを繰り出し合うポケモンの後ろ、監督として選手に指示を出しているヒナちゃんの姿。吸い込まれるように見入る。マイも、モルガンも、伊地知さんも、メロエッタも声が聞こえない位に。

 

奏「・・・え?」

 

 映っているのは・・・私が知らない表情を浮かべるヒナちゃん。

 

 そこには笑顔も、葛藤も、心配も、自信も、確信もなかった。まるで虚ろに空いた巨大な空洞のように。ただひたすらに見える『無』。あるいは『虚無』

 

 

 唯一あると言ってしまえるのは、それが当たり前だからという感情にも満たないナニカだけ。諦め・・・が近いのだろうか。熱狂の渦を形成する台風の目だとしても、その姿はあまりに異質に映る。生に溢れる世界の中で、死んでいるみたいに生きている。

 

 

 

 こんな、いつ何がきっかけで消えてしまうかもわからないような顔でポケモンを操る子だったっけ?違う、そうじゃなかった。それは鮮明に覚えてる。負けているからこんな顔をしている?いや違う、私たちにとって、楽しさは勝ち負けだけで決まるようなものではなかった

 

 私たちにとって、ポケモンバトルは笑いあって、悔しがって、褒め合える。輝かしいとさえ感じられるもの。負けていようと勝っていようと、私たちは『そこ』で生きていた。

 

 

 彼女は今、ヒナちゃんは、貴女は今。

 

 

 

奏「・・・どんな気持ちでポケモンと戦っているの?」

 

 

 

 

 

 

 当たり前の様に、その問いは届くことは無かった。今、この瞬間はーーー

 




空崎ヒナの『不動のエース』 アルトリア・ランサー(出典:『Fate/GrandOrder』よりアルトリア・ペンドラゴン(ランサー))

朝比奈→あさひな→ヒナ


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