宵崎奏は冬の女王とイッシュチャンピオンを目指すようです【改訂版】   作:弊鳥

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第12話 天賦の才

 

 

『ライモンジム』

 

 

 

 

奏「えっと、失礼します・・・」

 

 ある日私は再びライモンジムに来ていた。今日は一人で。モルガンは興が乗らないと言って、私の部屋でひたすら曲を嗜んでいる。虹夏ちゃんは今日はスクールが忙しいみたいだし・・・ということで私一人で自動ドアをくぐる。

 

 

 

 ・・・あれから数日。

 

 

 

 

 

 気になってヒナちゃんについて調べてみたはいるけど、出てくるのはどれだけすごいかの話ばっかり。私が気になった、あの何か大切なものが抜け落ちた表情については何もわからなくて・・・

 

奏「ふぁ・・・んにゅ。すっかり寝不足、だなぁ・・・。ちょっと曲作りに方もどんな曲を書けばいいのか考えられなくなっちゃって・・・駄目だな、こんなんじゃ」

 

 だからこそ今日はむしろ都合が良い機会ではあるわけで・・・

 

奏「海夢にアニメとゲーム一緒にしよって押し切られてここまで来ちゃったけど・・・何か新しいインスピレーションを手にできればいいな」

 

 ・・・ジムリーダーならちょっとヒナちゃんについて知っていることもないか、って期待していないことも・・・ないけどね

 

 でもあまり違うことを気にするのもせっかく呼んでくれたのに失礼だと思うし・・・うん。今日は今日で気持ちをリセットして色んな刺激を得よう。どんな音楽が使われてるかは気になるし。

 

 そう思って来たはいいものの・・・私はメッセージアプリが表示されている手元のスマホに目を落とす。

 

 

 

 

 

 

海夢『ごっめ~ん!ちょっと急にジムへのチャレンジが来ちゃって対応してるから先に待ってて~♪あ、玄関の方にお迎え呼んでおくから入っててい~よ♪・・・ほんとごめんね!何かで埋め合わせは絶対するから!』

 

 う~ん・・・ジムリーダーにモデルもやってるんだから忙しいことは仕方ないと思うし、埋め合わせとかは別に気にしなくてもいいのにな・・・

 

 

 

奏「それにしてもお迎えが来るって言ってるけど、まだかな?別に決まった部屋があるなら向かっても」

 

?「・・・おや?」

 

奏「・・・あれ?」

 

 待っていると廊下の先から何やら一体のポケモンが現れた。和装、というには少し大胆な服装でいたるところで素肌が露わになっている。そんな少し扇情的ながら、迸るような凍てつくオーラを纏っており、近づくものを一切寄せ付けない冷酷さがありありと感じられた。

 

 

 

 

 

 

 ただ、そんなポケモンはむしろ向こうから私に近づいてきいて、えっ?

 

?「もしや、貴女は”カナデ”ですか?」

 

奏「えっ・・・?あ、はいそうです、けど・・・」

 

?「やはりそうでしたか・・・嬉しそうにあの娘、海夢が話していた特徴と一致していますし」

 

奏「海夢が?」

 

?「何より今日は朝から海夢がそわそわしていましたから。何か良いものか良いことがあるのだろうと思っていましたが」

 

 こちらに来るや否や、不審者に向けるようなオーラは鳴りを潜め、彼女は穏やかな口調で話しかけてきた・・・でもビリビリは漏れてるような気はしてなないけど。

 

 

 どうやら海夢が彼女に私について話してたみたいだけど・・・変なこと言われてないよね?

 

?「ええ、それにしても海夢が言っていた通りの不思議な娘ですね。特別『統率』が高いようには感じませんが、どこか人もポケモンも惹きつけてしまうような。まるで宝石の様」

 

奏「え、ええっと・・・そのどんな風に見られてるかはわかりません、けど。そんな凄いことを言われるようなものじゃ・・・?」

 

?「いえ、ただ私が感じ得ただけです、お気になさらずご教授すればそれで良いでしょう」

 

 うう・・・なんだろうこの話してるだけなのにむず痒くなる感覚。海夢と話してる時とはまた違った複雑な感情・・・今の感覚、曲にできそうだな。

 

 

奏「えっと・・・さっき貴女が言っていた通り、海夢に呼ばれてここまで来たんだけど。海夢はまだジムの方でポケモンバトルを?」

 

?「ええ、どうやら何件か立て続けに来てしまったようで、貴女に会えないことをぼやいていましたよ。全く・・・これもこの定めに就いたが故にすべきことだというのに」

 

奏「あれ?貴女は出なくてもいいの?」

 

?「ええ、私の出るほど修練を積んだ相手ではありませんので」

 

 ・・・やっぱり。さっきから柔和に接してくれてはいるけど、その根底にあるような絶対の自信が見え隠れしている。最初はアグネスデジタルみたいな事務員さんかな?と思ったけれど、1目見るだけで明らかに存在感が別格なのがわかる。

 

 そしてふと、想起されたのは散々みたあの、チャンピオンを決定づけた瞬間の動画。ヒナちゃんではなく、それを守護するかのように立ちはだかった、まるで要塞のような『エース』

 

 

 

 

 

 そう、ヒナちゃんのエースと同じ位の絶対的な圧力を無意識にも感じてしまう。きっと、海夢が本気の本気を出す時に出して来るだろうな、と。

 

?「・・・ああ失敬。普段は名乗りを上げずとも字名を呼ばれていたので名乗ることを失念しておりました。」

 

「俗世に疎いというのは正にその通りだったのですね」と呟きながらこちらに居直る目の前のポケモン。

 

 

 

 

?「あの娘のポケモンとして、このライモンジム『不動のエース』をしています。バアル種の『天賦の才』」

 

 

 

 

雷電将軍「他の者からは雷電将軍と呼ばれています」

 

 

奏「天賦の、才?」

 

雷電将軍「それはまた時間があれば。客人をここで待たせるのも不出来でしょう。さぁ中まで案内いたしましょうか」

 

 

---------------------------------

 

 

-------カツン、カツン、カツン

-------スタ、スタ、スタ、スタ

 

 小気味よい音を鳴らしながら先導する雷電将軍についてライモンジム内を進む私。それにしても・・・そんな靴を履いてて歩きにくかったりしないかな?というか戦闘の時も履いてるかな?というどこか浮ついた考えの下で明るく照らされた廊下を進んでいく。

 

雷電将軍「はぁ・・・それにしても客人が来ているというのに、ジムバトルを受けてしまうとは。休みを取ろうと誰も文句を言わないというのに、真面目なこと」

 

奏「いやまぁそれがお仕事だし、ね?」

 

雷電将軍「・・・あの娘が静かにジムトレーナーしてる姿は早々お目にかかれないのですが

 

奏「ええ・・・」

 

雷電将軍「というか常時あのテンションなので真面目にやってるかどうかも判断突かないのですよ」

 

奏「ああうん、むしろテンションあがって自分から絡んで時間伸ばしてるまでありそう・・・」

 

 道を歩く最中、お互いに唯一共通の話題といっても良い海夢の話題で場を繋ぐ。こういう時海夢みたいに話がうまい人なら色々楽しませることができるんだろうけど・・・残念ながらそんな能力はへその緒と一緒に切り落とされちゃったみたい。

 

 ただ雷電将軍が海夢について話してる時の表情を見るに、彼女も海夢について話すのはまんざらでもなさそうだな・・・言葉は丸くはないけれど、そこには確かな信頼が見える。

 

雷電将軍「これではせっかくいらっしゃったのに、結局奏を待たせることになってしまいます。王を従える女帝として何たる体たらく」

 

奏「あ、い、いや時間はたっぷりあるのでご遠慮なく・・・」

 

 前言撤回、シームレスに殺気を顕にした雷電将軍にビビってます。何とか宥めるため、会話のふとさっき雷電将軍が自分を表すために使った言葉を思い出す、えっとあれは・・・

 

奏「あの、その、て、『天賦の才』って何か教えてもらって・・・頂いてもいいですか?」

 

雷電将軍「あぁ、先ほど興味深そうに呟いていましたか。いいでしょう、時間もあることですしお教えしましょうか」

 

 何故か強く耳に残ったこの単語を口から紡ぐ。どこかで聞いたことがあるような、もしくは・・・感じたことがあるような言葉。もしかしたらスクールに通ってた頃に聞いてたり?結構有名な言葉みたいだし。

 

雷電将軍「『天賦の才』とは文字通り、類稀なる才によってその種の頂点に君臨する唯一の個体を表したもの」

 

奏「種の頂点?」

 

雷電将軍「要するにその種族の中で最も上位の強さを持ち君臨する。種の『王』たる存在ということです」

 

奏「王様・・・」

 

 雷電将軍から感じる『統べる者』としての風格はそこから来てたみたい。比喩的な意味合いかとも思ったけど・・・確かにそこには不可逆で双方向性のカリスマ性を感じていた。

 

 

 ・・・しかし、なんでだろう、

 

 

 

 

 

 何故か王様みたいに尊大ぶったポケモンと聞くと頭に家でお留守番してるモルガンの姿が思い浮かんできちゃうのは・・・ロイヤルさを感じる言動?

 

雷電将軍「言ってしまえばトレーナーの資質に差異があるように、同じ種族の中でも資質に差があるということです。」

 

奏「そしてその中でも特に優れたポケモンを『天賦の才』って呼ぶってこと?」

 

雷電将軍「ええ、その通り。そのため個体数はポケモン全体から見てもかなり限られた数になります」

 

雷電将軍は人差し指を伸ばし、『天賦の才』の唯一性をアピールしながら、こちらの質問にも嫌がることなく、丁寧に答えてくれる。

 

なるほど。確かに1つの種でも優劣があるというのは納得のいく話ではある。私が運動できなくて、他の人は運動できたり、凄い大会出れたりするのと同じようなものだと思う。うん、然り。

 

 つまり同じワンパチでもものすごく強い力を秘めたワンパチがいたり・・・

 

雷電将軍「そして何よりポケモンバトルにおいて『天賦の才』を使う明確な利点がもう一点」

 

奏「利点・・・あっ、もしかして海夢のトレーナーステータスにもあった」

 

雷電将軍「ええ」

 

 利点と聞いてふと思い出したのは見せてもらった海夢の『資質』。その中でも少し記述が変だったのは・・・

 

 

 

 

 

奏「『統率』力?何故か海夢本来の力よりもさらに上がってるように見えたけど」

 

雷電将軍「『天賦の才をエースに据えているパーティは統率ランクが一段階上昇する』、これが我々を従える利点のもう一つです」

 

 なるほど・・・『天賦の才』が持つカリスマ性を使って自身の『統べる者』としての資質を補うってことかな?でも確かに雷電将軍がエースを務めてパーティのトップに立っているならそこに入りたい、従いたいってポケモンは増えてきそうな感じはする。この人についていけば良い・・・って思わせてくれるよう。

 

 

雷電将軍「その在り方は他者と競い、優劣をつけるポケモンバトル向きとは言えましょう。種に一人という限られた存在ではありますが、より上の方の帯域ではそこまで珍しいわけではないと聞きます」

 

奏「うん、でもそれならエースにするだけでメリットがあるし、上位の方はみんな『天賦の才』を使ったパーティなのかな?」

 

 今までの話を聞く限り採用するメリットしかないようだし。珍しいっていうことだけど『プロリーグ』のセカイだったらお金を払ってでも契約したいだろうし。

 

雷電将軍「・・・そうでもありません。そう簡単に従わないというのもありますが、何より-------」

 

 

-------フハハハハハハァ!

-------ピッシャァァァァ!!!!ゴロゴロゴロゴロ・・・・

 

 

奏「!?」ビクンッ!

 

雷電将軍「・・・はぁ、また貴方ですか。いえいい実例が向こうからやってきたともいえますが」

 

 な、なに?室内のはずなのに、急に落雷の音が響き渡ってきた。え?でんきタイプのジムリーダーがいるジムではこれが日常茶飯事なの?雷電将軍も驚いた様子は無く、どこか慣れた気配で呆れた表情とため息を零してきた。

 

 そんな音の先からやってきたのは、これまた一匹の人に近い姿をしたオスポケモン。精悍といってもいい体つきに、ここではないどこかを見ている目、まるで古い作曲家、音楽家の様にきっちりとセットされてその額を露わにしている黒い髪。そしてなんと言っても羽織ってるマントの内側からも漏れ出ている・・・眩い雷霆。

 

 最早目立つという言葉すら温いほど、焦げ付くような存在がゆったりと向こうから歩いてきた・・・いや、なに、これ?

 

?「ハハハハハハハ!これはこれは雷電女史!魅力的なレディを連れいかがされたか!見たところ我がトレーナーが噂していたレディのようだが!」

 

雷電将軍「少しは静かにできないものですか・・・奏、一応紹介します。」

 

 

 

 

雷電将軍「このポケモンは二コラ・テスラ、私の所属するパーティの一人で、『アーチャー』種の『天賦の才』です。弓は私より下手ですが」

 

二コラ「フッハハハハハ!私ほどの天才になれば弓など不要!この交流電流を持ってすれば、世の端まで雷霆が轟くことよ!」

 

-------ピッシャァァァァ!!!!ゴロゴロゴロゴロ・・・・

 

奏「・・・あ、宵崎奏、です」

 

 どうしよう、久しぶりに話すオスポケモンの灰汁が強すぎる。何で話すたびに背後で雷がなるんだろう・・・?どこからか吹いてるか分からない風で紫色の特殊なスーツを靡かせて、右手にはメカメカしさが存分に現れているガンドレットのような物を着けたポケモン・・・アーチャー種?

 

二コラ「ハハハ!我が天才の威光も日に日に洗練されつつある!これはエースの座を奪う日も近いやも知れぬな!雷電女史!」

 

 -------ピッシャァァァァ!!!!ゴロゴロゴロゴロ・・・・

 

雷電女子「はぁ・・・雷程度切り裂けばどうとでもなるでしょう。不遜な。そもそも御客人の前です。漏れ交流電流は仕舞いなさい」

 

-------バチッ、バチバチッ

 

 えっと、お互い漏れてる漏れてる。雷電将軍もなんか体の周りがバチバチなってるし、二人の視線が交差するところですっごい火花散ってるように見えるけど絶対気のせいじゃないよね?

 

 ・・・それにしても二コラ・テスラだっけ?このポケモンも『天賦の才』で自分のことを当たり前の様に天才って呼称してる・・・すっごい自信。あれ、何でかさっきみたいに身近な銀髪の妖精種が頭をよぎるような。

 

雷電将軍「はぁ・・・まぁちょうど良かったです。このポケモンを見ればある程度はお解かりでしょう」

 

雷電将軍「『天賦の才』は王の気質。つまりはパーティにおいても圧倒的なカリスマをもって他のパーティメンバーを従えるのです。それは時に、指示を出すトレーナーまでも」

 

奏「つまり『天賦の才』のカリスマによってできたパーティになる・・・ってこと?『天賦の才』にあまりにも依存した」

 

二コラ「ふむ、まぁ妥当ではあるな。我が力によってただ甘い蜜を吸いたいだけのものを上に据えるわけがなかろう?『王』が簡単に上を明け渡すかね?」

 

雷電将軍「だからこそ劇薬なのです。そのパーティの在り方を簡単にカリスマという暴力で塗りつぶしてしまうのですから。そのパーティのすべてが唯一の『王』を崇め奉る舞台装置へと変貌しかねない」

 

 えっと要するに『取り扱い注意』ということ。強力な洗剤か、主張が強く混ざらない絵具か。

 

 強いポケモンを強いポケモンとして迎え入れた時点で破綻するような、そんな矛盾を抱えた存在。それを押し通してまで『トレーナー』で居続けるのなら・・・

 

奏「よほど相性が良いか、『天賦の才』を従えるだけのナニカを持ってなくちゃいけないってことか・・・」

 

雷電将軍「ええその通り。我の強い相手を従えるのはそれだけ生半可では行かないということです。私とてつまらない理由で従うつもりはありませんし」

 

 他者を魅了してしまうカリスマに圧倒的なプライド。個体によってそこは大小あるにせよ、それをコントロールするならプライドが良い方向に作用するか、トレーナーやパーティが文字通り普通とポケモンと同じように受け入れられる親和性を持っているかがカギになるということ。

 

 あとはスポンサーもついてるわけだし、報酬という対価を支払うのもありなのかな?

 

奏「あ、なら海夢はそれをクリアしてるっていうことなの?その『天賦の才』を2人も同時にパーティに入れてるってことは」

 

雷電将軍「まぁそういうことにはなりますね、『エース』は私ですが」

 

二コラ「ふむ、今は『エース』ではないとはいえ、その命に従うことには異論はない」

 

雷電将軍「まぁ・・・あの娘といると無駄に王様ぶっているよりもよっぽど飽きが来ませんので」

 

 「海夢には秘密ですがね」と温かみを噛みしめるような微笑を携え、雷電将軍は海夢への信頼を見説。

 

二コラ「ふっ、私をコス撮影用のライティング係として起用するなぞこの天才が認めたトレーナー以外ではあり得ぬしな。常に面白いものを見せてくれる小娘よ」

 

雷電将軍「どうです?種の頂点と呼ばれる尊大ぶったポケモンをここまで不遜に扱うトレーナーは」

 

奏「ごめん、やっぱコメントはこの辺で控えさせていただきます」

 

 失言は回避されたといえよう。うん、でも言ってることは間違いなく理解できる。海夢みたいに接するトレーナーじゃなきゃ、余りに強いカリスマ性にトレーナーが中心となるはずのパーティですら崩壊させてしまうということだ。

 

 正に・・・諸刃の剣。ポケモンバトルに置いて凡百と言って良いと思われる私にとってはあまりに過ぎた代物ってことだ。

 

奏「あはは・・・私なんかが『天賦の才』を持ってもすぐにパーティを乗っ取られちゃいそう」

 

雷電将軍「え?」

 

二コラ「は?」

 

奏「え?」

 

雷電将軍「・・・この娘、誰が何と言おうと思ったことに突き進むような鋭利さを感じます

が。それこそ王様であろうと誰だろうと」

 

二コラ「ふむ、そうだな!『天賦の才』であるという程度の理由で己が覇道を邪魔するな!と抑え込むタイプの傑物だと思うぞ!」

 

 -------フハハハハハハァ!・・・えと、評価されてるのかな、これ?なんというか我が儘な赤ちゃんみたいな感じで扱われてない?

 

 そんな感じでライモンジムの二大『天賦の才』に圧されているとそこに・・・

 

 

「ああっ!やっと見つけましたーっ!」

 

 

 

 

 と、聞き覚えのある声が聞こえた瞬間一陣の風ピンク髪をなびかせて素早さAは超える速度でアグネスデジタルがこちらにワープしてきた。びっくりポケモンの宝物庫か何かなのここは?

 

アグネスデジタル「いやはや玄関口でお待ちと聞いていたのにいなかったので探しましたよ~。とりあえず大きな音が鳴った方に来てみたらいらっしゃったので一先ず良かったーーー」

 

雷電将軍「ふむ、よいエントリーでしたね。流石はデジたんです。これなら仮にスライディングとスタン一つになり、ULTポイントが増えても自己完結型のアタッカーになり得るでしょう」

 

奏「ごめんそれ本当にポケモンバトル?5人対5人のチームで戦う競技性の高いタクティカルシューターゲームの話じゃなくて?」

 

二コラ「フハハハハ!フハハハハハハハ!」

 

アグネスデジタル「・・・・・・はれ?」

 

 雷電将軍と二コラ・テスラの姿を見た瞬間、セカイから切り離されたかのように一切の動作をストップしたアグネスデジタル。カートゥーンアニメかな?

 

 

アグネスデジタル「はひゅい!?雷電将軍しゃんとニコラしゃん!?」

 

奏「将軍の後ろにさん付けるんだ」

 

アグネスデジタル「ああっ、眩しい!存在が眩しいでしゅっ!アババババババ!」

 

二コラ「フハハハハハハハハハハ!」

 

-------ピッシャァァァァ!!!!

 

奏「存在というか明らかに物理的な後光が差してると思うけど」

 

 目の前のコント染みた風景にため息をつきながら頭に手を当てる雷電将軍が目の端に映る。ああうん予想ついたけどそんな珍しくない光景なんだこれ

 

奏「・・・それより迎えってアグネスデジタルのことだったんだね。てっきり雷電将軍のことかと」

 

雷電将軍「まぁ海夢であれば平気で私をお使いに出しそうですが」

 

ニコラ「何ならこの前どうしても外せない用があるからとオタグッズ買いに行かせていたな、ジムリーダーのエースに」

 

奏「ま、海夢・・・」

 

アグネスデジタル「オタグッズを手に風を切って歩く推し・・・はぁっ!禁忌的な妄想だというのに捗ってしまうっ!」

 

 ああもう止まらない止まらない会話があっちこっちで大渋滞起こしてる。こ、これが『天賦の才』の力・・・!あ、デジタルアグネスは違うんだっけ。だけど目の前の『天賦の才』2人は・・・特に雷電将軍はデジたん呼びするだけあってデジタルアグネスにも一目置いているようで。

 

 

雷電将軍「・・・そういえばデジたんいつ頃選手として我がジムからデビューするのですか?」

 

アグネスデジタル「ゑっ、いやいやあたしは皆さんの雄姿をカメラに収めるという大切な指名が・・・」

 

二コラ「くっくっくっ、そう謙遜することなぞない。そのうちに秘めたる熱き雷霆は我がトレーナー含めこのジムの上位ならば認めていること」

 

雷電将軍「そこの似非天才の言う通りです。」

 

アグネスデジタル「はひぃ・・・推しにそんなことまで言われてしまってはごちそうさまでしたと言わざるを得ないのでしゅが・・・!」

 

 そうして困ったような笑みを浮かべるアグネスデジタル。ここまで聞けば、ただひたすら推しに押されているようにしか見えないだろう。

 

 

 しかし、ただ、ただ一瞬だけ、私は思いもよらぬ物を見た。

 

 

 

アグネスデジタル「足りない、かなぁ・・・」

 

 

 

 あまりに獰猛で、立ち塞がるもの全てを喰らい、味わい尽くすまで疾走を予感させる異常なまでの気迫。二コラ・テスラが降らせる落雷の音すらどこか遠くに感じられるほど。

 

 まるで、青い焔が滾るように輝く瞳はその時、その瞬間にアグネスデジタルがこの場ではなく、アグネスデジタルしかいない領域に飛び立っていたかのように現実と乖離していた。

 

奏「・・・えっ?」

 

 

 気がつけば何も無かったかのような一瞬の変化。それに目を取られているとアグネスデジタルは元の様子に思っていた。今少し、いや明らかに”足りない”のニュアンスが違ったような・・・

 

そしてあれだけ熱烈なラブコールをしていた2人とも、その本質を理解しているかのように、なら仕方ないという表情を浮かべながらそれ以上勧誘は続けなかった・・・どうして?

 

雷電将軍「ですが後学のためです、わざの一つや二つ覚えておいて損はないでしょう、ほらちょうどよく目の前に『らいげき』を使えるエースが」

 

二コラ「いやいや『らいげき』などという命中不安に頼ってばかりなのはいかがな物かね?ここはあめ状態で無二の必殺となる『かみなり』をだな」

 

アグネスデジタル「ヒィィ〜ッ!!ありがたき幸せ〜〜〜っ!! ですが、ですがその流石に色んな段階飛ばし過ぎなのではないですかねっ!?デジたんはただの事務スタッフなのですが!?」

 

奏「え、えっと・・・助け舟出した方がいい?」

 

雷電将軍「・・・ちょうどいい所にちょうどいい方がいますね」

 

奏「えっ」

 

 何とか仲裁しようとして、1歩踏み出して声をかけようとした瞬間、私よりも長い1歩が横から不意に伸びてきた。その主である雷電将軍はゆっくりと緩慢に、それでも絶対に捕らえるという捕食者の自信を見せながら私の肩へと手を置いた。え、恐怖。

 

雷電将軍「せっかくです、どちらが教えるにふさわしいか奏に決めてもらうのは」

 

二コラ「ふむ・・・賛成である!麗しきレディの言であれば異論もなかろうとも!食い下がりは勿論するがな」

-------ピッシャァァァァ!!!!

 

奏「あっ、あっ、あっ」

 

 

 

 

 そうしてさらにボルテージが増していく中、そこにジムチャレンジの相手を終えた海夢が「あたしもまっぜろー!!」と乱入してくるまで、私とデジタルアグネスが2人の王様の圧力に怯える道中は続いたのだった・・・

 

 




雷電将軍:(出典:『原神』)
二コラ・テスラ:(出典:『Fate/grand order』)


『エース』:
パーティ内のポケモンが担う『役割』の一つ。
パーティメンバーの一匹のみに付与でき、文字通りパーティを支える「エース」としての役割を担う。トレーナーと並んでそのパーティの顔とも呼べる存在。
ここぞ!という場面で能力を上げる力を持つ

『天賦の才』
種族内に一体しか存在しない圧倒的な才能を保有するポケモン
例えば数いるリザードンの中でも『天賦の才』になれるのは世界で一体のみ
他のポケモンを軽く凌駕する潜在能力を秘めている他、『エース』に添えればその頂点足るカリスマ性からトレーナーの『統率』を1ランク上げる。
ただしあるカリスマによってもたらされた外付けの『統率』には相応のデメリットも存在する。

『アーチャー』種
現代種の中ではかなりメジャーな『サーヴァント』種の中の分類の一つ
主に弓矢や遠距離攻撃に長けており、命令を受けて戦うことに長けている種族


雷電将軍は引いても出ないし黄泉も引いても出ない
限定桃井愛莉も出ない
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