宵崎奏は冬の女王とイッシュチャンピオンを目指すようです【改訂版】   作:弊鳥

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一部作中で出た用語は作中・後書きで解説します。
今は説明がないものもタイミングに合わせて解説。


第2話 モルガン

 

 

 

 

 ーーーーーーー嗚呼、冷たい

 

 体は濡れていないはずなのに、呼吸は出来ているのに、息も出来るのに、なぜ深海へ墜ちていくのでしょう。深く暗い水底へ沈み、もはや浮かび上がろうとする気力もなく、ただ虚ろに、手のひらを光指す方へと向けるだけ。

 

 ・・・この王たる身に生まれたことを使命とし.、『現代種』が一つである『妖精』種がより生きていけるようなセカイに救世しなくてはいけない。どこにも行き場の無い同胞たちのため、私がその方法を見出し、導いていかなければならない。ただ・・・何千、何万とその行く先をシミュレートしたところで行きつく先は同情、嘲笑、否定、淘汰、拒絶・・・孤独。

 

 野生として生きていくにもあまりに脆弱。暴力の化身が如く災いとなすような、人類の『敵性種』には全く及ばず食い物にされ。他方、トレーナーと共に歩もうにもその気まぐれさ故に信頼も得られず。力も持たないのに努力する他者を興味の赴くままに嘲笑し、その関係に致命的な綻びを残す災害となる。

 

 そう、その在り方が故に、誰にも必要とされない。セカイに取り残されし、哀れで醜き存在。それが私たち、『妖精』種。

 何度見直しても見直しても見直しても見直しても見直しても見直しても見直しても見直しても見直しても見直しても見直しても見直しても見直しても破綻を孕み、破裂する。終着駅は陽炎の先。黒い炎に興味本位なままに突っ込んでいき、自らその生を閉ざしていく。

 

 ・・・とはいえ、それを憂う私も同じ『妖精』種。何もない冷たい海の底で諦念に満ちるがままに沈んでいる私も、好奇心による同胞を救うための一歩を見出せず、踏み出せず、今にも全てを投げ出そうとしている。ただ普通の『妖精』種とは終わり方が違うだけ。そもそもの話が無理だったのでしょうか?『妖精』が誰かと共に歩もうなどは過ぎたる願いだったのでしょうか?

 

 その答えがどうあれ、女王として責務を果たせなかったのは疑いようのない事実。

 

 そんな私に、生きる意味などーーーーーーー。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『誰もいないセカイ』

 

 ーーーーーーー~♪~~~♪

 

 余りにも今までとはかけ離れた光景の中、ここ先ほどまで聞き馴染んだデモが響き続けている。

 

奏「・・・えっと・・・どうしよう・・・⁉と、とりあえず怪我とかしてたら・・・あ、でもうちに『げんきのかけら』も『いいきずぐすり』もないや・・・」

 

メロエッタ「ァァ?」

 

奏「・・・エナジードリンクじゃだめかな。それかなんだっけ、新しく発見されたとかいう噂のエナドリ・・・ブーストエナジー?サイコブースト?」

 

 私とメロエッタが狼狽えている目の前にいたのは、倒れて意識の無い一匹のポケモン・・・いや狼狽えてたのは私だけみたい。メロエッタは冷や汗をかくような素振りもなく、何かの儀式を始めんとするばかりに辺りをクルクルと回り始める・・・あれ?さっきまで私がギリギリついていけるくらいの距離で急いでたよね?もてあそばれてた?

 

奏「・・・いや、どのみちメロエッタに身体能力で負けるのは最早一考の余地も無いからいいや。でも、どうしてこんなところに・・・そもそも湖なんてどうして」

 

 どうやら意識を失っているだけのようで、穏やかな呼吸は確認できる。呼吸の感じからしても衰弱しきっているというわけではなく、ただ眠りに落ちているといった方が良さそう。でも、こんなことは今まで一度も無かった。このセカイに来ることが出来るのは私と最初からいたメロエッタだけ。今の今まで人も、ポケモンだって誰も来ない。「誰もいないセカイ」だったのに・・・

 

 と目の前の状況に呆気にとられているのも束の間。メロエッタは軽快なリズムを足で奏でながら、意識がない彼女の頭に近づいて・・・

 

メロエッタ「~?~!~!」ペチペチ

 

奏「え、あ、あの・・・メロエッタ?あんまり寝てる見知らぬ相手をぺちぺちするのはお行儀が・・・」

 

メロエッタ「~?」むにぃ、むにむに

 

奏「いやその、ほっぺたをむにむにも」

 

メロエッタ「・・・!」

 

奏「えっ、いやその急に腕をぐるぐるとぶん回し始めて、あのその明らかに威力が高い物理技を打つって予告してるように見えるんだけれども。それになんか拳もゴッドブローを放つ前準備みたいに光って」

 

 

 ◎メロエッタの「インファイト」!

 

 

奏「ちょ・・・っ、だめだめだめだめ!?『ねむり』状態の相手にしていい事じゃないからね!?いやもしかしなくても『ひんし』かもしれないし、そんな相手にしたいげ・・・攻撃なんて・・・!というか、力、つよっ・・・っ!」

 

 少し微笑ましい感じで眠るポケモンを起こそうとしている中、痺れを切らしたのか唐突に拳を光らせ最悪な目覚めを提供しようとするメロエッタ。

 

メロエッタ「~!~~!ァァ~!」

 

奏「うっ、ぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ!と、止まって・・・!あっ、つ、つるっ!こ、れっ絶対明日筋肉痛で動けなくなっちゃうやつ!」

 

 と、腕をぶんぶん振り回すメロエッタを態勢を変えながら羽交い絞めにしてなんとか宥めている私・・・のはずだが、じりじりと前に進んでいる気がする。いや、これもポケモンと人間の抗いがたい差だから・・・!決してデスクに向かいっぱなしの生活で、ちょっと筋肉の使い方を忘れてるとかいうのは関係ないから・・・!それに本気を出せば、華奢なメロエッタの一人や二人・・・!

 

 ただ流石に騒がしかったのか・・・

 

?「・・・ん、う、ん・・・」

 

奏「あっ、ちょ、ちょっとメロエッタ待って・・・声が、声が聞こえたから・・・!起きた、起きたかもしれないから・・・」

 

メロエッタ「ァ~~~~~~!」ブンブンブンブン!

 

?「・・・騒がしい、ですね・・・。」

 

 何とかメロエッタの髪のような五線譜の合間から見てみれば、謎のポケモンはゆっくりとその瞼を開いていた。微かな警戒心を左手で握りながら、自分の生を確かめる様にその手を中空へと向ける。

 メロエッタが繰り出そうとしているかくとう技にも、どこか余裕を持って、こうかがいまひとつであると言葉にしないでもわかるほど対応している。少し眩しそうに天へ手をかざすその姿は、見るからに高貴な姿に見合った振舞いで、王族と極々一般の庶民との生まれの違いすら感じさせるかのよう。

 

 ただまぁメロエッタにとってはそんな姿は目に入っていなかったらしい。

 

メロエッタ「ァッ!ァァ~!」

 

奏「ちょ、だ、だから起きてる・・・もう起きてるって・・・!」

 

?「・・・何者かは分かりませんが、とりあえず矛を収めてください。目の前のこの状況を未だ甘い夢の中だと勘違いしそうになります。」

 

 そんな風に、私と彼女の始めての邂逅は、少しどころではなく慌ただしく過ぎていったのだった・・・

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

モルガン「・・・紹介が遅れました」

 

 

 

 

 

モルガン「私は『妖精』種としての・・・いえ、ただの『妖精』種、「モルガン」と申します」」

 

 目が覚めた謎の美女ポケモン・・・モルガンは特に怪我や不調を感じさせることがなく起き上がり、座った転がっている鉄骨を玉座のように塗り替えている・・・言い方を変えればふんぞり返っている、うん。それがあまりに自然なので文句の一つも湧かないけれど・・・仕える事すら渇望するかのようなカリスマというのはこのことを指すのだろうか。

 

モルガン「ああ、頭は垂れなくても結構です、今の私はそこら辺の草むらから飛び出してくるのと同じ、たかが一介のポケモンに過ぎませんので」

 

奏「え、あぁうん・・・。ど、どうも・・・」

 

メロエッタ「~♪」オジギィ

 

奏「え?メロエッタこれってそういうこと?私も・・・しなくちゃ、だめ・・・?」

 

やたらと芝居がかったそぶりで礼をするメロエッタに、まんざらでも無さそうに眼を瞑って微笑を携えている芸能人みたいにキラキラしている、モルガンと名乗った銀髪のポケモン。

なんだろう、さっきの慌ただしい所から一転してのこの光景・・・ついさっきこのセカイに来たばっかり・・・っぽいのに、なんだか私より馴染んでるような。絵になりすぎじゃないかな??

 

モルガン「・・・それで、ここはどこなのでしょう?雰囲気で見ればどこかの『ダンジョン』のよう。ですが、それに挑むトレーナーにしては閑古鳥が”ハイパーボイス”まき散らしているようですね。他に野生ポケモンの姿も見えませんし・・・何より明らかに異質な空間ですが」

 

奏「えっと・・・私もトレーナーじゃないし、メロエッタも私のものじゃなくて友達、なんだ。そんな私が普通にいられるんだから危険なダンジョンでは無い・・・とは思ってるけど」

 

モルガン「そうですねまだモンスターボールの内側だと言われた方が説得力が在りますが・・・貴女がポケモンと同じだけのパワーを持ちうるとは思えませんし、そもそも複数立ち入っている事に違和感があります」

 

 あれ?今さらっと貧弱って言われた?

 

奏「あっ・・・えっと、ごめんなさい。そういえば私について紹介してなかったかも。」

 

 そうして軽く私の自己紹介をする中、頭の中ではかつてトレーナーズスクールの授業で教わった単語を思い出していた。

『ダンジョン』・・・いわゆる人間ではなくポケモンが中心となって生息している場所、だっけ。確か『敵性種』ポケモンの巣窟で、入った人間は無傷では出ることは到底叶わないだろうって授業で聞いたっけ・・・。奥には凶悪な『ヌシポケモン』がいるとかなんとか。

もう覚えておく意味も無いからかなり曖昧だけど・・・お手伝いに来てくれてる伊地知さんならもっと詳しく知ってるかな・・・?確かトレーナーズスクールの高等科だったはずだし。

 

モルガン「奏・・・なるほど良い名ですね。それに、メロエッタも。その字名を覚えておきましょう」

 

メロエッタ「ァァ~♪」

 

奏「あ、ありがとう・・・?」

 

モルガン「それにしても『セカイ』・・・とは。『シロガネ山』や『うずまき島』以外に、斯様な不可思議に満ちた場所が存在していたのですね。・・・人間の営みも奥が深い、ということでしょうか。やはり『妖精』の足りない知見では見えない世界はここまで広がっている、と」

 

 と、ぼんやりとダンジョンの事を考えながら私自身、そしてここがセカイという謎しかない空間であることを彼女に告げる。

 

奏「・・・思ったより驚かないんだね?」

 

モルガン「おや?期待外れであれば申し訳ありません・・・これでも、案外驚いてはいるのですよ?私が急に・・・私の意思とも関係なくこちらに立ち入ってしまった事も含め、一切想定も、仮定も、おそらく願いもしてなかった自体が起こっているのですから。驚きは無理もない感情でしょう」

 

 そうすると、モルガンはこれまでの毅然と、女王のような威厳に少し翳りを見せながら声のトーンを落とし呟いた。

 

モルガン「ただ今更、驚きという感情を持つことに意味を見出せなかったもので。」

 

メロエッタ「・・・?ァァァ~?」

 

奏「・・・モルガンさん?」

 

 何か裏があるようなことを呟いたその顔は・・・自嘲、正に自身を嘲笑っているかのように後悔に満ちているみたい。余裕に満ちたこれまでの彼女とは違う側面、ただのポケモンのような雰囲気にどこか・・・親近感?を感じている私がいる。

 

 聞いた人を救うために曲を作る、私の中と。

 

モルガン「・・・敬称は不要です。モルガンで構いません、奏。ここでは貴女が先達ですし、何よりここはあなた方の領域であり城。主人がそのような事を気にする場ではないのでしょう」

 

奏「・・・じゃあえっと、モルガン・・・その、モルガンは何があってここに来たの?」

 

モルガン「どうして、ではなく何があって、ですか・・・。」

 

奏「うん、さっきも意図が会って来たり、そもそも知らないから狙って来れるような物でも無いと思う。けど、何となく例えば」

 

メロエッタ「・・・?ァァァ~?」クイクイ

 

 メロエッタは心配そうな顔をしてモルガンの袖を引っ張っている。あまり他人のこういった事情に踏み込もうとすることはお行儀の良い事ではないのかもしれない。それでも・・・何故か、いや当然のように、目の前のモルガンを救えたら・・・と思ってる私がいる。せめてでも、今手の届く範囲にいる、彼女を救えないかと考えるより、先に口と体は動いている。

 

奏「消えてしまいたいと思っていた・・・とか」

 

モルガン「そう、ですね・・・これもある種の運命ですね。なんの因果か、今日この場所で会ったのも冥土の土産です。本来・・・誰にも語ることなく、私が消え去るとともに芥となって忘れ去られていく調べですが・・・気まぐれに」

 

 そうしてモルガンは少し驚いた表情と、それに後追いするかのように少し柔らかに、一歩距離が近づいたか事を感じさせる表情を浮かべながら、

 

モルガン「一つ、話をしましょうか。」

 

 

 




『古代種』
遥か昔、ポケットモンスターとして『オーキド』博士によって発見され始めたポケモン達。
代表例としてはメロエッタ、ピカチュウ、カミツオロチ、リザードン、ニャースなど。
現代でも普通に生息しているが、知名度が特別高いわけではない。
原則として4つまでしか『わざ』を覚えない。

第4の壁のこちら側にいる我々としては、いわゆる『ポケットモンスター』作品に登場する『ポケモン』達である。

『現代種』
古代種の出現からさらなる時を経た結果、様々な姿を持つようになったポケモンたち。
モルガンが属する『妖精』種もこの一種。
他にも『MS』『シンフォギア』『ウマ娘』『艦娘』『モンスターハンター』なども存在。
また、一部は『古代種』から進化して『現代種』となることも。
ポケモンにもよるが、4つ以上の『わざ』を同時に覚えることができる。

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