宵崎奏は冬の女王とイッシュチャンピオンを目指すようです【改訂版】 作:弊鳥
『誰もいないセカイ』
奏「・・・ええっと」
モルガンから『妖精』に関する話を聞いてから数時間。いきなり種族単位の話になってびっくりしたのもあるし、結局モルガンがどうやってこのセカイに来てしまったのかは分からなかったけど・・・
でも、話し終えた後モルガンは『妖精』について話している最中とはまた違う、澄んだような表情を浮かべていたし・・・少しでもオモイを軽くできた、のかな・・・?
さて、そんなモルガンなのだけれど今現在・・・
ーーーーーーーー~♪~♪~~~♪♪♪
メロエッタ「ァァァ~♪」
モルガン「・・・なるほど」
目を瞑りながらも、表情と頷きは目覚めている事を雄弁に語りながら腕を組んでいるモルガン。先ほどと同じ鉄骨の上から一切立ち上がることもなく、滑らかな銀髪を艶やかに耳にかけながら一言。
モルガン「奏、次の曲を」
奏「うん、まぁ嬉しいけど・・・まだ、聞くの・・・?もう何十曲もぶっ続けで聞いてるけど?」
モルガン「ええ当たり前です。もし候補がなければまた最初からループさせましょう。メロエッタ、合いの手を」
メロエッタ「~!ァァァ~♪」
奏「合いの手入れる曲なんてそう多くなかった気が・・・」
あれからの数時間、ひたすら私の曲を聞いて黙って過ごしてた。勿論その間、曲の再生係としてプレイリストの作成を強制されてた・・・会って数時間なのに奴隷と皇帝・・・?
既に私が作った曲の大半をぺろりと召し上がり、さらにまだまだ聞きたいって・・・。作曲家としては冥利に尽きるけど、数時間ひたすら浸るとは・・・
でも曲を流し始めた時にはこんな続くとは思わなかった。モルガンの話を聞いていたら今までに無いようなイメージを膨らませることができたし、それを形にするためにも作曲作業に戻りたいし・・・あれ?
奏「というか今まで考えたことも無かったけど、セカイの中でスマホの充電が切れたら・・・え゛?」
今まで意識もしないで回避出来ていた『充電切れ』という弊害によって、現実世界とのつながりが断裂される事をイメージしてしまった私は、流石に青ざめた顔で、普段出さないような声で未だ曲に浸っているモルガンに一も二もなく詰め寄った。。
奏「モ、モ、モ、モモ、モルガン!それ以上セカイでバッテリー使うと、もしかしたら現実に返れなくなるかもしれないから、そ、その辺で」
モルガン「・・・最後の一曲」
奏「だ、駄目!」
モルガン「・・・はぁ、奏の機嫌を損ねることは本意ではありませんし・・・まぁ現実世界に戻ってから聞けば良いといえばその通りですから・・・仕方ないですね」
よ、良かった。割とあっさり引いてくれた。何か色んな技とかを盾に座り込み居座りされてもおかしく無さそうだったし・・・。
モルガン「それでは元の世界に帰りましょう?して、どのようにして?」
奏「えっと、再生中の『untitled』を停止すればスマホから光が溢れて・・・ってあれ?モルガンも着いてくるの?」
モルガン「当たり前でしょう。ついていかねば貴女の曲が聞けないではありませんか」
奏「あっ、全然満足したとかそういうわけじゃないんだ・・・。」
モルガン「それに、私とてポケモンであり栄養の補給は必要ですから。」
モルガン「・・・故に、何故メロエッタが常にここに居続けられるかは疑問点ですが・・・いえ、これも詮無きことですね」
メロエッタ「ァァ~?」
奏「それは確かに前から思ってたことだけど、よくわからないからそのままでいいかなって。」
モルガン「・・・まぁ今優先すべきはそのことではないですし。ひとまずのところは良しとしておきましょう」
と、私は話しながら『untitled』の画面をスマホに映す。曲のはずなのに何も流れていない。無音で構成された曲とはまた違う、『真っ白な曲』。いつかこの曲にも名前が付くのかな・・・あれ?
奏「・・・そういえばモルガンってこれで一緒に来れるのかな?」
モルガン「・・・はい?」
あ、モルガンが何か悲哀と怒りと驚愕と失望がごちゃまぜになった表情をしてる。ごめん、怖いからその顔でこっち向かないで。何か首を動かす時もギギギって擬音がなりそうな向きかたしないで。
奏「いやえっと・・・いつも私一人だったから。光に包まれれば帰れたけど。モルガンと一緒にってなるとどうなるのだろう・・・?」
モルガン「そのところどうなのですか?メロエッタ?」
メロエッタ「~?」
メロエッタはとぼけるように首をかしげる。かわいいそもそも何て言ってるのかは分からないから聞いたところで意味ないし、うん知って無さそうな感じだねこれ。
モルガン「・・・光に包まれればということでしたね。ではできるだけ離れることがないよう、密着しながら帰るとしましょうか。さぁ」
と、モルガンは立ち上がって、何かを受け入れるかのように両手を広げた・・・ん?
奏「・・・ええっと、モルガンさん?そのポーズは一体?」
モルガン「何をもたついているのです。さぁ早く。不敬とは見なしませんから」
と、モルガンは本来なら家族以外なら恥ずかしくて出来ないような
モルガン「早く抱き着きなさい」
奏「なんで・・・?」
あれ・・・?なんだか距離近くないかな・・・?えっと、さっきというか数時間前に初めて会ってから殆ど曲聞いて過ごしただけ。私もコミュニケーションは得意じゃないし、そんな信頼というか親愛を持たれるような覚えはない。うん。ない。つまりはそういうことに違いない。
奏「モルガンって天然だよね・・・?」
モルガン「それは貴女にも言えることだと忠告しますが。」
・・・私が天然?そんなことはない。そこは反論したい。ただ、セカイから出るにあたって、抱き合うという奇異な対策に対しては、正直に言っちゃうといい反論が思いつかない・・・。
というわけで、そのままなし崩し的に。
奏「や、優しくお願いします・・・」
モルガン「ええ、私はポケモンで貴女は人間。そう易々と私に影響は与えられませんから、もっと強く、確実に戻れるよう密着しなさい。」
奏「いや、そこまでは・・・」
モルガン「奏」
奏「はい・・・」
こうやって私とモルガンはなんとか無事に二人で戻ることができた。終始楽しそうに目をキラキラさせていたメロエッタの顔が脳裏に色濃く再生されながらという全く経験したことない事態に巻き込まれている。そんな中最も印象には残っているのだけれど・・・
その時差し出された手はとても冷たかったな・・・
手が冷たい人は心が云々
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