転生した。
気づいたら赤ん坊の体になっていた。
最初のうちは混乱したが、割とすぐに転生したという事実を受け入れた。
だって赤ん坊だし。
前世に思うところが無いのかと言われると、未練だったり残してきた家族のことはある、しかし事実として転生したんだ。新たな人生を前を向いて生きていくしかない。
そう、これは仕方ないってやつだ。
「ひゃっほーーーーーい!!!!!!転生したぞぉーーーーーー!!!!やっぱあれかな!?お正月お参りしたおかげかな!?」
仕方ないので俺は転生ライフを楽しんだ。
強くてニューゲームを嫌いなやつはいない。ライフだけど。
でもほんっっとに残念ながら異世界じゃなく現代日本に転生したらしい。魔法だったり異能力も無いし、歴史を見ても覚えてる範囲なら完全に一致してた。あと元号も令和だった。
だが、俺はまだ現代ファンタジーの線を諦めたつもりは無かった。なぜなら転生っていう事象自体が特級のファンタジーだからだ。
何かあるに違いない。そう思いながら小学校は神童コナンくんごっこをして卒業した。中学校では部活に入り友達が多いクラスの秀才として卒業した。
おかしい。コナンくんごっこをしていても事件は起きないし、中学校でそれらしい青春も無かった。やはり舞台は高校生か。
そう思いながら何事もなく高校を卒業した。
特殊な部活は無いし、中学から続けてたテニスは県体予選で負けた。
この辺りで俺は不安になってきた。前世ではろくに見なかった新聞にも目を通して、オカルト雑誌もめっちゃ読んだが、陰謀論の類しか見当たらなかった。
気づけば俺は陰謀論者の大学生になっていた。
「こんにちは〜!新入生ですよね!うちテニスサークルなんですけど、いかがですか!」
「…!貴方は転生を信じますか?実は転生は実際に存在していて、俺こそがその生き証人なんです!!つまりこの世界は作られた物語の世界なんです!!!魔物が現れたり、未来からアンドロイドが襲撃しにくるかもしれません!!!」
「あ…いやちょっと…すみません、何でもないです。」
きたるファンタジーに備えるために大学では仲間集めに没頭したが、結果として俺は4年間ぼっち大学生として卒業した。
そうして俺は30歳になった。
「はぁ……今日も阪神負けちまったよ…ったく、あそこで打たなくていつ打つってんだよっ!」
卒業間近で焦って入った会社はそれなりにブラックな会社で3日で退職代行した。今はフリーターとして細々暮らしてる。
コンビニで買った焼き鳥とビールだけがファンタジーに裏切られた俺の心を潤してくれる。
前世よりも長い期間生きてきて、厨二病も陰謀論も卒業した。
決めては中学の同窓会で良い感じだった女友達に、
「まだそのキャラでいるんだ………」
と割とガチめに蔑みの目を向けられて心が折れたのだ。
「ったく、転生つっても夢ねーよなー、チートどこだよチート。」
30歳、前世も合わせたらけっこうな歳にもなる大人だが他責思考でクズなところは死んでも治らなかった。
負けた試合の振り返りなど見ても酒が不味いだけだ。
「バラエティバラエティっと、面白いのやってねぇかな。」
チャンネルを切り替えていくうちにあるニュースが目に止まった。
『速報です。世界各国で謎の塔が出現。日本でも渋谷109ビルに重なる形で高さ300メートルほどの塔が出現し、多くの住民が避難を余儀なくされています。』
『現在、109で買い物していた人々や働いていた従業員の一部が行方不明となっており、現場からの続報を待っています。』
「…………ふぁ…」
ふぁ。
「ファンタジー……ファンタジーファンタジーファンタジーファンタジーファンタジー………現代ダンジョン、キターーーーーーーーー!!!!!!!!!」
ドゴンっ!
「うるせぇぞ!!!デケェ声出すんじゃねぇ!!!」
「ひぃ!すみません!すみません!」
うちの住んでるオンボロアパートは壁が死ぬほど薄い。今ので穴があいてもおかしくないレベルだ。だが、だが!!!そんなことよりだ!!!
「苦節30年……ようやく、ようやくファンタジーがきたっ…!俺のファンタジー想定ファイル6、現代ダンジョンだ…!!」
俺の異世界に、ダンジョンが降臨した。
となれば早速装備を整えて109に突撃だ。
大学生の頃、ファンタジー想定ファイル2の魔物の出現に備えて買った木刀やら防護服を装備する。この防護服はファンタジー想定ファイル3のゾンビアポカリプスにも対応するために防弾性能もつけてある優れものだ。
「待っていろよっ…ダンジョン!!!」
バゴンッ!
「てめぇ殺されてぇのか!!」
「ひぃぃ!すみません!すみません!」
静かに家を出よう。旅立ちはいつも突然なのだ。
見てくれる人がいたら続くかも。