鹿紫雲一盛るペコ   作:水野 四十坂Q

2 / 7
雷神

「俺にチームプレーは無理だぞ」

 

 五条悟と両面宿儺の決戦前夜。呪術師全員が集まり、作戦会議を開くその場で一番最初に、鹿紫雲はそう告げた。

 

 堪らず、日下部が反論しようとする。

 

「オイ、こんな時に寝言言ってる場合じゃ──」

「いや、性格とかの問題じゃない。単に術式の都合だ。俺は術式を使う時に加減が出来ん。周りにいる人間全員黒焦げになるぞ」

「はあ? どういうことだそりゃ。ちゃんと一から説明しろ」

「鹿紫雲の術式って電撃じゃねえのか?」

「違う。ありゃ、術式のおまけで呪力が電気を帯びてるだけだ。オマエも領域がセットで組み込まれてる術式だろ。それと似たようなモンだ」

「へえ」

 

 お前と戦った時は術式を見せていない。そう言外に伝えられた秤はわざとらしく口笛を鳴らした。鹿紫雲との戦いを思い出し、自らの術式の効果で不死身になっている最中に戦ったからいいものの、それが無ければ確実に殺されていたような戦闘内容だったからだ。

 

「まあそんな面白いもんでもない。前にも言った通り、俺の術式は一発限り、使ったらそれで終わりだ。その代わり、強さは保証してやる。五条なんざ出さなくても、俺が一人で宿儺を殺してやるさ」

「まーて待て待て。言ったろ。向こうにはあと二人、凄腕の術師が控えてるんだ。宿儺と五条の一騎打ちは絶対。ここは譲らん。決めたはずだろ」

「チッ……」

(ただ戦いたいだけだよな、あれ)

(元々先輩から「宿儺と戦える」って言われてこっちについたらしいからな)

(しゃけ)

 

 ヒソヒソと話す二年組。それに構わず大人組が話を続ける。

 

「聞く限り、何か制御不能の、広範囲を攻撃するようなものなのか、君の術式は? なんにせよ、誰とも組めないなら立ち回りを考える必要があると思うが……」

「まあ待て。ちゃんと説明してやる。どのみち宿儺に見せるし、見せたあとは無価値だ。隠すつもりもない。俺の術式は……

 

 

 

 蓄電(・・)だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガガァ!!!! と、大量の瓦礫が高所から落下したかのような音が連続して響き渡る。

 

 なにか攻撃を受けたのだ、と宿儺が認識できたのは、一連の攻撃が終わってからだった。

 

「使うのは、400年ぶりか」

(なんだ、何を喰らった!?)

 

 鹿紫雲の周囲を、電気によって構成された計10個の光球が回り出す。

 それは、彼の異名通り、『雷神』を模った姿であり、『残量』を使用者に示すゲージ(ユーザーインターフェース)でもあった。

 

「俺の400年。受け止めてみせろ、両面宿儺」

 

 稲光を纏った鹿紫雲が駆ける。

 

 そして四方八方から電撃──いや、落雷(・・)と呼ぶべき規模・威力のソレを立て続け様に放った。

 

 ガガガガガガガッッッッ!!!! と、常人ならその音だけで聴力が破壊されるほどの破壊音が響く。

 

「ぐ……雷、か!」

(流石に硬いな。並大抵の術師とは強化の精度も出力も違うか)

 

 鹿紫雲の雷撃は、瞬時にダメージが伝播する都合上、防御側が一定レベルの肉体強度を保持していなければ反転術式による再生すら間に合わせない。再生しようとする前に呪術を司る脳が黒焦げにされて死亡するからだ。(ごく一部の反転術式使いを除く)

 

 既に鹿紫雲が放っている雷撃は、そのどれもが彼が生きた中で未だかつて見なかったレベルのもの。その一本一本の稲光はそれだけで視界を焼き潰すほどに眩く輝いており、完全に彼の術式に許容される出力上限を叩き切っている。

 

(見たところ、宿儺が対応できている様子はない。五条悟との戦闘で相当に消耗したと見える)

 

 雷によって強化されたスピードで駆けながら、彼は冷静に敵の様子を探る。

 

 宿儺はダメージこそ一定以下に抑え、反転術式で肉体の損傷をなんとか相殺しようとしているものの、それが間に合っていないことは明白であった。現に、彼の身体からは煙が立ち上り、その身体を端から徐々に炭化させていっている。

 

 反転術式に手一杯なあまり、代名詞である伏魔御厨子を展開する余裕すらないようだ。このまま攻め手を緩めなければ、勝利することは明白。

 

(──だが、その程度で終わるようなら呪いの王とは呼ばれていないだろう)

 

 現に、彼の者は雷に焼かれながらも、ねめつけるように鋭く、鹿紫雲を睨んでいるのだ。

 

「俺の操雷術式は、俺の呪力によって生まれたり、雷なんかで自然発生した電力を蓄えることができる」

 

 故に、彼は次の策を実行した。

 

 とはいえ、鹿紫雲は根っから真っ直ぐで不器用な人間である。小細工という言葉を彼は知らない。だから、彼に出来たことは、ここからさらに雷撃の威力を上げて、待ち構えているであろう宿儺の奥の手ごと焼き殺そうとすることだけ。

 

「術式の……開示か。くだ、らん」

「蓄えた電力は、俺の移動速度を上げたり、電撃として放出する用途で使用できる。蓄えた電気の残量は、後ろの光球の数によって公開される。放電の威力は呪力出力とは別口だが、術式によって上限が設定されてる。加えて俺は『一度の使用で蓄えた電力を全て使い切る』という縛りを設けることで、蓄電容量を拡張している」

「……ほう」

 

 宿儺が上げた納得の声は、鹿紫雲の説明の内容に対するもの……ではない。彼が、自身の縛りの内容まで話始めたことに対するものだ。

 

「縛りを、含めた……術式の完全(・・)開示か!」

「俺は呪物として保存されていた期間……およそ400年、呪力によって生み出す電気のほぼ全てを蓄電に回している。加えて、この戦いの前に変電所で電力を『補給』してきた。元々貯めてきた分に比べれば雀の涙だがな。前述の縛りにより、宿儺、お前との戦いにその全てを消費することになってる。また、操雷術式と名がついてはいるものの、俺に出来るのはあくまで放出だけで、放出した電気を操ることはできない。──そして今、ここで俺が術式と縛りについてその全てを開示した」

 

 術式効果を開示するとそのパフォーマンスを向上させることができるように、当然、『縛り』やそれ自体もや術式の細かい仕様を敵に明かすことで、同様の効果を得ることができる。古い術師の間では術式効果のみの開示と区別して、『完全開示』と呼ばれた手法だ。

 

「これによって俺は、俺の術式による放電威力の上限を拡張する」

「少しは……楽しめるようだな!」

 

 完全開示によってさらに威力を底上げされた雷撃。鹿紫雲はそれによって宿儺の抵抗を許さず焼き尽くそうと、いくつもの雷撃を放つ。

 

(何も無ければ、これで終わる!)

 

 もはや自然発生する雷などでは到底比較できもしないほどに強大になったそれは、直撃したアスファルトやコンクリートを絶縁破壊によって融解・蒸発させ、爆発させる。雷撃の副産物、電流によって生じた電磁場は誘導電流によって一帯の電子回路に過電流を発生させ、結果として周囲一帯の電子機器を破壊し尽くした。

 

 










もろもろ書き手による設定の改変・独自解釈を含みます。黒閃茈や完全開示とか秤戦の時に電撃が術式効果だと思わせてるなど。宿儺が「効果だけの開示とか中途半端なことしてんじゃねえよしょーもねえな」みたいに思ってるから自分は一切開示しない派閥にいる、みたいな示唆も原作にはないです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。