死神代行のIS戦記   作:ピヨ麿

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初投稿となります。
至らぬ部分も多々あるかと思いますが、お手柔らかにお願いします。


1.The end and opening

銀城空吾らXCUTIONとの激闘から幾日か経ったある日。

 

 

「グッモ~ニン!いっちっごおぅ!!」

 

 

彼、黒崎一護の朝は父・一心の襲撃から始まる。

 

本日は綺麗に鳩尾に極まったらしく、直後に蹲っている。

 

 

「朝っぱらからうるせぇよ」

 

 

その言葉に一心は怒りながら言い返してくるも、無視して着替え始める。

 

今は五月。ゴールデン・ウィークも過ぎ去り、学生である一護は当然学校へと通う。

 

 

「おにいちゃーん!ごはんできたよー!!」

 

「おう!今行く!」

 

 

階下から聞こえてきた妹・遊子の声に応えつつ、鞄を持って部屋を出る。

 

今日もまた、いつもの日常が始まるのだ、と思いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ。今日ゲーセン寄ってかねえ?」

 

「浅野さん?僕ら、一応受験生だって分かってる?」

 

「わ、分かってますう!たまにはいいじゃんかよー!」

 

 

彼らは一護の友人である浅野啓吾と小島水色。高校からの付き合いで、数少ない一護の理解者だ。

 

 

「……まぁ、たまにはいいか」

 

「いやっふう!!」

 

 

一護が承諾した途端、テンションがMAXになる啓吾。決して、普段遊んでもらえないから喜んでいるわけではない。頻繁に一護のバイト先に顔出してウザがられてるからでもない。

 

 

「仕方ないなぁ」

 

 

そう口にしている水色だが、内心ではあまり嫌がってはいない。水色も一護や啓吾と遊ぶのは楽しいのだ。

 

 

「んじゃ――」

 

 

行くか。そう続けようとした一護だったが、

 

 

「こんにちわ。黒崎一護君」

 

 

背後からかけられた声に動きを止める。

 

 

「……誰だあんた」

 

 

警戒心を強めながら、話しかけてきた女に問う。ただ名を言われただけならそこまで警戒はしない。だが、この女からは、()()()()()()()()()()が流れていた。石田やチャド程ではないが、ドン観音寺より遥かに大きい。ただの霊能力者では済ませられない。

 

加えて、目の前の女の格好はどこか奇妙だ。青と白のエプロンドレスに機械で出来たウサミミを付けている。言い表すなら『一人不思議の国のアリス』といったところか。サイズが合っていないのか、彼女の豊満な胸が零れそうである。

 

 

「啓吾……」

 

「俺だって時と場合は考えるっての」

 

 

彼女の姿を見て、水色は啓吾に注意を促す。彼はかつて、同じように豊満な身体をした松本乱菊に飛びかかったことがある為、言わずにはいられなかった。

 

 

「そんな警戒しないでよ~。私は、君とお話がしたいだけなんだよ?」

 

 

身体を若干前屈みにし、一護へ言う。そうなれば、当然先程よりも胸元が見えるようになるわけで、

 

 

「けしからん格好ですねお姉さーん!!!」

 

 

我慢出来なくなった啓吾は飛びつき、次の瞬間、見えない壁に当たり、崩れ落ちた。

 

 

「それで、どうかな?」

 

 

啓吾のことを見向きもせず、問う。今彼女の眼には、一護以外の人物は映っていない。

 

 

(俺以外には興味無しか。ご丁寧に結界まで張ってやがる)

 

 

冷静に観察しながら状況を把握する。

 

 

「分かった。ただ話すだけだろ?」

 

「そうだよ~」

 

 

相手の霊圧、敵意の無さを考えた上で、そう決断する。霊圧が高いといってもそれは人間レベルであり、隊長格となんら遜色無い霊圧を持つ一護とは比べるべくもない。だが、仮にこの場で戦闘になったとしたら、啓吾達を狙われる可能性もある。相手がどういう手段を持っているか分からない今、戦闘はなるべく避けるべきだと考えた。

 

それに、この街には石田にチャド、井上、浦原といった信頼出来る仲間がいる。これが一護を引き離す為の罠だとしても、どうとでも対応出来るだろう。

 

 

「それじゃあレッツゴー!」

 

「って! 何でひっついてんだよ!?」

 

 

彼はヤンキーみたいな見た目に反して、かなり初心だ。なので、唐突に自身の腕に抱きついてきた女性の、柔らかい感触に顔を赤くしながら、一護は声を荒げる。

 

 

「? なにか、イケないことだった?」

 

 

それに対し、女性はキョトン、と首を傾げながら一護に聞き返す。

 

 

「一護、早く行って来たら?」

 

「……その手に持ってるのは何だ?」

 

「ん? 携帯」

 

 

言いつつその光景を撮る水色。彼としても一護を貶める気はないが、写真をばら撒いて面白いことになるかな~ぐらいには考えている。

 

 

「…………はぁ」

 

 

この場に味方はいないと悟った一護。溜息を吐いたのも仕方がないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、アンタは俺に何の用なんだ?」

 

 

女性に連れて行かれ、ラボのような場所に来た一護は、開口一番そう聞いた。

 

 

「もう……。そんなせっかちさんじゃ女の子に嫌われちゃうよ?」

 

「生憎、産まれてこの方異性にモテたことはねぇよ」

 

「ふぅん?……なら、行き遅れたなら私が結婚してあげようか?」

 

「いや、アンタの方が年上……スンマセン」

 

 

うっかり女性の年齢(タブー)に触れ、殺気を向けられる。今まで様々な相手と戦い、その度に殺気や敵意を浴びてきた一護だが、今のはかつての強敵達のソレと遜色無いほどだった。

 

 

「まったく……見た目は成長してるのに、そういうところは子供のままなのかな?」

 

「その言い方……俺はアンタと会ったことがあるのか?」

 

「ううん。会ったことは無いよ。私がたまたま見かけて、興味を持って、一方的に観察していただけ」

 

 

それってただのストーカーじゃ……

 

見当違いなことを考えていた一護だが、次に言われた言葉に、心を激しく揺り動かされる。

 

 

「あの時……河原で亡き母を抱いて泣いていた時から」

 

 

瞬間、一護の頭は真っ白になった。

 

 

「なんで……なんでそれを知ってんだ!?」

 

 

一護の中の、決して消えない罪の記憶。

 

当時、霊と人の区別がつきにくかった故に起こった悲劇。それを知っているのは当事者である一護と、母・真咲を殺した(ホロウ)・グランドフィッシャー。それと、一心と浦原も、推測ではあるだろうが知っているだろう。

 

 

「あれは本当に偶然だったの。当てもなく歩いていて目にしたのがその場面だった。その場に残った霊圧から(ホロウ)の仕業だとは思ったけど、それ以上に君の霊圧の高さに驚いたよ。私よりも小さいのに、私よりもずっと大きい霊圧を持ってたんだから」

 

 

それが、女性が知っている訳だった。グランドフィッシャーが去った後ならば、ある程度の霊能力者ならば事情を察することは可能だろう。

 

 

「……それで、何で俺に接触してきたんだ? ただ話して終わり、って訳じゃねえんだろ?」

 

「うん。死神代行・黒崎一護。君を見込んで、頼みたいことがあるの」

 

 

と言うと立ち上がり、ついて来てと部屋の奥へと進む。

 

 

 

 

 

 

女性について行った場所、そこには

 

 

「これって、IS……か?」

 

 

インフィニット・ストラトス。通称ISと呼ばれるそれは、10年前に起きた白騎士事件を機に、世界中で知れ渡った。既存の兵器を大きく上回る戦闘能力を有し、軍や企業が積極的に開発しているパワードスーツ。

ただし、女性しか乗ることは出来ず、開発関係の仕事にも興味を持っていないため、生涯関わることはないだろうと一護は思っていた。

 

それが今、一護の前に鎮座していた。たまにテレビに映る機体とは違い、目の前の物は黒い機体だが。

 

 

「なんでここに……てか、俺に見せる必要があるんだ?」

 

「それはだね……君に使ってもらう為だよ!」

 

 

は? と聞き返す間もなく背を押され、不意の出来事ということもあり前へつんのめる。そして、目の前にあるISに手をつく。すると、

 

 

「…………は?」

 

 

触れた瞬間、脳に夥しい量の情報が流れ込んでいき、それが終わると彼は自身の異変に気付く。

 

男であるはずの一護が、ISを纏っているのだ。

 

何が何だか分からない一護の耳に届いたのは、パシャッという音。音源に視線を向けると、

 

 

「……何やってんだ?」

 

「写真撮ってるの。一護君には来月からIS学園に行ってもらうよ」

 

 

言われて思考が止まる。何を言われたのか理解出来ず、しばし無言になり、

 

 

「はあああっ!!??」

 

 

思わず叫び声を上げる一護。だが、目の前の女性はその声を無視して、

 

 

「大丈夫。お父さんにはちゃんと許可もらってるし、浦原喜助さんにも事情は話してるから」

 

 

意外な人物の名が出てきたことに驚くと共に、自身の意思に関係なく外堀を埋められていたことに、もう逃れられないのだと諦める一護。

 

 

「一護君には一ヶ月後ぐらいに転入してもらうから、それまでは私とお勉強会だよ!」

 

 

かつて尸魂界に乗り込む前に浦原と行った、勉強会という名の殺しあい。不意にそのことを思い出した一護は、不安を抱きながら尋ねる。

 

 

「それって何するんだ?」

 

「ISの基本的な知識と動かし方。それを出来る限り詰め込んでくよ」

 

 

それを聞いて一護は安堵する。必要なことだったとはいえ、かつてやったような無茶は出来ることなら避けたいと思っていた。

 

 

「私も悪いと思ってるからね。折角三年まで進級したのに、別の学校で一年生からやり直させることには」

 

「あ……」

 

 

失念していた、というよりも考えていなかった。転入と言われたから学年は同じままだと思っていたからだ。

 

 

「マジかよ……」

 

「ごめんね~。でも、学校で降格なんて珍しい体験出来たんだからいいじゃん?」

 

 

良くねえ! というツッコミも出ず、茫然とする一護。驚くことが多すぎて、もう何を言ったらいいのか分からなくなっている。

 

 

「それでね、IS学園に入学してもらう理由なんだけど――――」

 

 

茫然としている一護に、本来の目的を告げる女性。

 

 

――――ちーちゃん達を護ってほしいの。

 

 




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