死神代行のIS戦記   作:ピヨ麿

11 / 11
あぁ^~こころがぴょんぴょんするんじゃ^~


……月日が経つのは早いですね。気付いたらもう10月ですよ。
今回は臨海学校前の買い物回です。



11.preparation

7月最初の日曜日。梅雨が明け、一気に夏本番とでもいうかのように太陽の光が降り注ぐ今日この頃。臨海学校まで一週間ということもあり、必要な物――主に水着――を買う生徒達はこぞってIS学園近くにあるショッピングモール『レゾナンス』へと向かっていた。

そして一護も、ラウラ、ルナ共々さゆかに引っ張られ、モノレールを使い『レゾナンス』へとやって来た。

 

 

「うぁ~……あづいぃ……」

 

「だらしないぞ、ルナ。このくらいの暑さで」

 

「日の光やだぁ……」

 

 

だれているルナだが、彼女は肌も白く、生まれ故郷は気候が穏やかな地域。気温もそうだが、日本の湿度、直射日光は辛いだろう。

 

 

「ほら、日傘貸せよ。持ってやるから」

 

「う~……ありがとぉ……」

 

 

ちなみに、簪は四組のクラスメイトに引っ張られていった。一護と関わりだしてからクラスメイトが近寄ってくるようになり、クラス内でのボッチ生活は脱却したそうだ。本音は一組の他の友達と行っている。

 

 

「こ、こういった所には初めて来たのだが、普段からこんなにも人が多いのか?」

 

「そうですね。もうすぐ夏休みという人も多いでしょうし、その準備の為に色々買いに来る人でいつもよりも混雑していますね」

 

 

多くの人間が思い思いに楽しんでいる光景を前に、初めてのラウラは気後れする。

 

 

「で、どこ行くんだ?」

 

「ん~……涼しいとこ」

 

「お兄様、まずは水着を見に行きましょう」

 

「どの店に行くかとか決めてあるのか?」

 

「もちろんです。理子が下見に行ってくれたので」

 

 

それは行かせたの間違いじゃ……と口にしかけた言葉を飲み込み、その目的の場所について聞こうとすると、

 

 

「おーい!」

 

「ではお兄様。参りましょう」

 

「ハアッ☆」

 

 

教室でほぼ毎日聞いている声が聞こえたが、さゆかやラウラは聞こえなかったのか先に行ってしまう。放っておくわけにもいかず、一護はプライベート・チャネルで『悪いな』と軽く言って後を追った。

 

 

 

 

 

 

「俺のは適当でいいとして、お前らの……子供用の売り場ってどこだ?」

 

「あの、兄様……?」

 

「人前で子供用の水着を着るのは流石に恥ずかしいです。……お兄様の前だけでしたら、どんな水着でも――」

 

「それ以上は俺が社会的に殺されるからやめろ。あと、二人はともかく、こいつは冗談でもねえからな」

 

 

三人が視線を向けたその先。

 

 

「あぁ^~。クーラーは人類が生み出した最高の利器だよ……」

 

 

一護の背にもたれ掛り、だらしなく顔を緩めている、ラウラより10㎝は背が低い少女。

 

 

「……これで、近接戦闘に関しては代表候補性クラスの実力があるのだから驚きだ」

 

「ん~? まぁ、ルナは親から戦士としての素質を受け継いでたからね……」

 

「?」

 

 

ルナの言い方に疑問を持ったラウラだが、その思考を遮るかのように

 

 

「ルナのことよりも、早く水着売り場に行こうよ! 二人とも小っちゃいから、良い物見つけるのに時間かかると思うよ?」

 

「「それは事実だが(だけど)、ルナに小っちゃいって言われたくは無い」」

 

「酷い! ルナが気にしてることを! ルナはただ成長が遅いだけだもん!」

 

「それは私もです。ですが、私がルナよりも大きいのは事実でしょう?」

 

「むぐぐ……!」

 

「お前ら、ドングリの背比べって知ってるか?」(181cm

 

「「「ぐはっ」」」(149,148,137cm

 

 

いちごのこうげき

ラウラたちに こうかはばつぐんだ

 

 

 

 

 

 

ラウラ達が瀕死になっている一方で、簪は

 

 

「ねえねえ更識さん、今度はこっちを着てみてよ」

 

「う、うん……」

 

 

見事に着せ替え人形にさせられていた。

 

 

「いやぁ、素材がいいからどんな服でも似合うわね」

 

「ね~」

 

「あの、いつまでやるの……?」

 

「飽きるまで☆」

 

「はぁ……」

 

 

自由奔放なクラスメイトに溜め息を吐く簪。生来大人しい子である簪は、常時テンションが高い人は苦手なのである。

 

 

「まぁまぁ。そんな嫌そうな顔しないでよ」

 

「……そもそも、水着を買いに行くって話だったのに、何で洋服を見てるの?」

 

「何でって、更織さんとどこかに行くの初めてだから、ただ水着を買うだけじゃなくて色々楽しみたいのよ」

 

「前の更識さんはなんていうか、近付き難かったからね~」

 

「それは……ごめんなさい。あの時は辛いことが重なって……」

 

 

以前の自分の人付き合いの悪さを理解している簪は素直に謝る。その頃は、打鉄弐式の開発を凍結した倉持技研やその遠因でもある織斑一夏への怒り、専用機開発の苦労、相変わらずストーキングしている姉の鬱陶しさが重なり、常に余裕がなかった。周りが近づき難いと思っても仕方がない。

 

 

「でも、何で今になって? 自分で言うのもあれだけど、暗いし、人付き合いも悪いし、関わりたいとは思わないでしょ?」

 

 

だからこそ疑問に思った。何故こんな自分と関わろうと思ったのか、と。

 

 

「更識さんって、自己評価が低いよね」

 

「うんうん。でも、前は更識さんの言う通り、付き合い難い人だなって思ってたよ。あの一面見たら、今までのイメージなんてどっか行っちゃったけどね」

 

 

 

 

それは、ラウラと打ち解けた頃。

 

 

『おいラウラ。そんな急いでかっ込むな。喉に詰まるぞ』

 

『むぐむぐ……ですが兄様。クラリッサには、日本では昼飯はかき込むものだと聞いたのですが』

 

『それ、忙しいサラリーマンとかだな。普段からそうやって食ってる奴は……まぁいるかもしんねえけど、時間に余裕あるのに急ぐこともねえだろ』

 

『口の周りに食べカスが付いちゃってるよ。ほら、こっち向いて』

 

『んぐ……! すまない、簪』

 

『ううん、気にしないで』

 

 

食堂にて見られた、微笑ましい光景。これをどう捉えるかは人それぞれだが、少なくとも簪の暗いイメージが塗り替えられたのは確かで、この場に乱入する者は――

 

 

『おーい、一護。たまには一緒に食べようぜ!』

 

『簪ちゃん? お姉ちゃんのことも構ってほしいな~、なんて』

 

 

――よっぽど空気が読めない人物なのだろう。

 

 

 

 

「まぁ、細かいことは気にしないで。あ、これも着てきてね」

 

「うぇっ!? これ、短くない?」

 

「だーいじょうぶ。更識さんなら似合うって」

 

「じゃあこれも――」

 

「それは流石に無理。スケスケだし」

 

「私もそれはどうかと思うわ」

 

「えぇ……! じゃあこっちの紐の――」

 

「「うわぁ……」」

 

 

 

 

 

 

とりあえず必要な物を買い終えた一護一行は

 

 

「中々良い買い物が出来ましたね」

 

「む? そうなのか?」

 

「ルナたちみたいに背が低いと、自分に合ったかわいい水着を見つけるのってけっこう大変なんだよ」

 

「……そうですけど、ルナよりはよっぽど楽ですよ。というか、小学生と間違われてもおかしくない身長で、なんで胸だけ私たちより大きいんですか……」

 

「それはルナだから! お姉ちゃんよりもおっきいんだよ!」(ドヤァ

 

「……どうやら喧嘩売ってるようだな、ルナ」

 

「……いいですよ。喜んでその喧嘩買ってあげますよ」

 

「やめろお前ら!」

 

 

喧嘩が勃発しかけ、ラウラとさゆかの首根っこを掴み強引に引き離す。

 

 

「ですが兄様! 最初に喧嘩を売って来たのはルナです!」

 

「だからってこんなとこで暴れんな! やるなら後でやれ!」

 

「いや、その言い方もどうかと思うけど……」

 

 

四人のやり取りにツッコみを入れるのは、水着売り場で出くわした中華少女・凰鈴音。

 

 

「てか、あんた本当に同一人物なのか疑うぐらい変わったわね」

 

「人は変わるものだ。切っ掛けがあれば尚更な」

 

「いいこと言ってるけど、それだと格好付かないわよ」

 

 

宙ぶらりんなままでは、確かに格好付かない。

 

 

「む、そうだな。……いや、この体勢も結構楽だな。兄様。暫くこのまま――」

 

「自分で歩けよ」

 

「うわっとと」

 

 

言葉と同時に手を離されたラウラは、いきなりのことに驚きつつも問題無く着地する。

 

 

「黒崎、さんのことを兄扱いしだしたって聞いた時は、アホかって思ったけど……。何か普通に兄妹やってるわね」

 

「アホとは何だアホとは。そう言うお前の方がアホだろう」

 

「……慣れって怖いよな。たったの数日でこの状況に適応してきてるんだぜ?」

 

「ご愁傷さま、でいいのかしら?」

 

「別に不満があるわけじゃねえんだが、どうにも釈然としなくてな」

 

「兄様。私はアホではないですよね?」

 

「…………そうだな」

 

 

答えに要した間の意味を悟り、一人落ち込むラウラ。そんなラウラを慰める者は、いない。

 

 

「ああ、そうだ凰。俺に対してかしこまる必要ねえからな。年上だから口調に気を付けてるのかもしんねえけど」

 

「えっと、それもあるんだけど……」

 

 

凰は言い淀む。まさか、本人を目の前にして”怖い”などと言えないだろう。

 

 

「自惚れは良くないよお兄さん。凰さんはかしこまってたんじゃなくて、怯えてたんだよ」

 

(私が言い淀んだことを何軽々しく話してんのよ!?)

 

「二人がかりで戦って負けたラウラが相手にもならないくらいの強さだもんね。万が一怒らせてその力が自分に向けられたらって考えたら、下手なこと言えないよね~。それに、ルナたちはもう慣れたけど、いっつも眉間に皺寄ってたら、誰だって怖いと思うよ」

 

「何で私の考えてたことが全部読めるのよ!? 心を読む程度の能力? ってあんたは破壊の力でしょうが!!」

 

 

一護の力もだが、その周りにいるのも実力者ばかり。戦力としての一番下がラウラということからも、その出鱈目さが分かるだろう。

その為、普段の様子から一護は怒ったとしても暴力を振るうことは滅多にないと分かってはいるものの、藪蛇を突かないように言動に気を付けている者は凰含め多い。

尤も、一護はそんなことを気にせず、むしろ凰の叫びを聞いて、

 

 

「すげえな……」

 

「はい」

 

「これが……」

 

「「「これが本場のツッコみ……!」」」

 

「私は中国人よ! 大阪生まれじゃないッ!!」

 

 

その(芸人としての)素質の高さに驚いていた。

彼女が元のテンションに戻るのに要した時間:5分。ラウラはその間に無事復活。

 

 

「そう言えば……。凰さん、先程織斑さんがデュノアさんと一緒に歩いているのを見かけましたよ?」

 

「あの様子だとデートかもね!」

 

「お前ら、気付いてたんなら返事くらい返してやれよ……」

 

 

彼女らに呆れつつ、一護は凰の顔を窺う。彼女を知る者ならば、そのような情報を知った後の行動が予想出来、場合によってはこの場で止めようと考えていたからだ。だが、

 

 

「ん~……それは無いでしょ。あの朴念仁のことだから、『買い物に付き合ってほしい』ぐらいよ、きっと」

 

 

予想もしなかった言葉が彼女の口から出た。そして、今言ったことは正解です。

 

 

「お、お前……」

 

「ん?」

 

「貴様、偽物だな」

 

「なんでよ!?」

 

 

本人を前にして失礼なことではあるが、四人ともがそう思っていた。

 

 

「だって……」

 

「私たちが知っている貴女は……」

 

「直情型だし! 織斑一夏が他の女の子と一緒にいるって知ったら、ジッとしてないと思う!」

 

「うぐっ! た、確かにそうなんだけど……。私も色々と思うところがあるのよ」

 

「……そうか」

 

 

そのことについて一護は言及しない。普段難しく考えない目の前の少女も、年頃の娘なのだ。悩み、考え込むこともあるだろう。

 

 

「あっ! ルナ、分かっちゃったっぽい。織斑一夏の周りにいる他の女の子とのサイズの違いに落ち込んでるんだ!」

 

「何でそっちの方に持ってくのよ!? 確かに、目の前で箒のアレが揺れてるとこ見て思わず『こいつは私の敵だッ!』って思っちゃったけど! 見せつけてんのかコノヤローって内心キレてたけど!! 私がいつも身体のコンプレックスで悩んでると思ってるの!?」

 

「「「うん」」」

 

「……嘘じゃないだけに腹立つッ! 真顔で答えんな!!」

 

(今日の晩飯、何にしよう……)

 

 

それを現実逃避と言う。(周囲の視線に晒されながら)

 

 

 

 

 

 

五人でぶらついていると、髪を切ったことで若くなったように見える金髪美女が横切り――その際、揺れる二つの塊に悔しがる四人――、少し遅れて銀髪の少年がその美女を探していると訪ねてきたり。

 

 

「む? 兄様、向こうが少し騒がしいようですが」

 

 

ラウラに言われ顔を向けると、そこには時代錯誤な貴族の格好をした青年の姿が。

 

 

「…………」

 

「……凄いわね。セシリアよりも貴族っぽいわ」

 

「に、似合ってるね~」

 

 

他にも、顔や首に刺青を入れた赤い長髪の男、美的センスが壊滅的な少女(?)、口喧嘩で毎回女性に負ける(おとこ)達。

周囲から視線を集めている彼らだが、その理由を分かってはいない。

その後、偶然簪らと出会い、何故か二人きりで行くことになったのだが、

 

 

「お……!」

 

「……私の名前だからって、一々反応しなくていいよ」

 

「けど、似合ってねえか? 安物だけどよ」

 

「私、貰い物にケチ付けたりしないよ。それに、黒崎君から貰った物なら、ずっと大切にするから」

 

 

特に語ることはないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜、一護の部屋にて

 

 

「おい。部屋に入って来るなり、何で人のベッドに横になってんだよ」

 

「……別にそれくらいいいじゃない。ちょっと色々あって、今日は疲れたのよ」

 

 

うつ伏せで枕に顔を押し付けていた楯無は、僅かに顔を上げ今日起こった(本人にとって)辛い出来事を思い返す。

 

 

 

 

中略

「一体いつから、私から逃げられると錯覚していたのですか?」

 

 

仕事から逃げ出した楯無は、幼少期から特殊な訓練を受けていた(うつほ)によってあっさりと捕らえられた。昔からかけっこ等では一度も勝てたことはないのだが、まさかちょこっとだけISを使ったにも拘わらず捕まるとは思わないだろう。

その後、(うつほ)と織斑千冬に罰を受けたのは言うまでもない。

 

 

 

 

(流石に、この歳になってお尻ペンペンされただなんて言えないわ。絶対に蔑んだ目で見られる! ……なんか興奮してきたわ)

 

 

人のベッドで鼻息を荒くしているのを見ないフリをし、

 

 

「それで、何の用だよ。お前が用も無くここには来ないだろ?」

 

「……そうね」

 

 

一護の言葉にどこか不機嫌になりながら、楯無は身体を起こし一護と向き合う。

 

 

「一護君達が臨海学校に行く場所に、また襲撃される可能性があるわ」

 

 

完全な推測だけどね、と楯無は付け加えていたが、確率としては高いと楯無は考えていた。

織斑一夏がここIS学園に入学してからというもの、行事がある毎に何かしらの――命に関わるトラブルが起こっている。専用機持ちが集まり、尚且つ通常よりも遥かに警備が手薄な臨海学校中に狙わないとも思えない。

 

 

「まぁ、そっちは一護君と織斑先生がいるから、どうとでもなるでしょうけど。問題は、IS学園にも襲撃が起こる可能性が高い、ってこと」

 

「それで、俺に残れってか?」

 

「確かに一護君が残ってくれるのならとても頼もしいし、嬉しいけど、重要なのは戦力だけじゃないのよ」

 

 

楯無は一息吐き、

 

 

「私たちは、幽霊が見えない」

 

 

緊張の糸が切れる音がした

 

 

「いくら強くたって見えなきゃどうしようもないわ。というか、見えないってなによ。覗きし放題? クンカクンカし放題? 何それ羨ましい」

 

(……俺達にとっちゃ普通だけど、霊って基本見えないんだよな)

 

 

普通の人間との差異を改めて認識し、スルー能力を高めていく一護。

 

 

「というわけで、何とか出来ない?」

 

「何とかって……。いつもなら突っぱねるとこだけど、運がいいな」

 

 

そう言って一護が出したのは『御守り』と書かれた、一見何の変哲も無いお守り。

 

 

「これは……?」

 

「霊的な攻撃から一回は守ってくれる御守り、って言ってたな」

 

 

楯無が部屋に来るほんの少し前、部屋に穴を開けてやって来た浦原喜助に渡された物の一つ。最下級大虚(ギリアン)虚閃(セロ)程度なら完全に防ぎきる効果を持っている、かつて一心がコンの為に作った物と同種の御守りである。

 

 

「ただの御守りに見えるけど……。まぁ、一護君が言う事なら信じるわ。それに、確かめる術なんて私には無いし」

 

「それ渡したからとっとと帰れよ」

 

「ちょっと! 一護君までそんな態度取らないでよ!! 脱ぐわよ!?」

 

「やめてください」

 

「!? えっと、敬語とか使ってほしくないな~、なんて」

 

「……開いてんぞ」

 

 

突如として扉の方に声を掛ける一護。その光景に楯無は幽霊に話しかけているのかと内心ビビるが、開かれた扉から現れた人を見て驚きの声を上げる。

 

 

「か、簪ちゃん!?」

 

「……ちょっと落ち着くまでここにいていい?」

 

「別に構わねえけど。何があった――」

 

「……大丈夫。私は普通サイズだから。本音が大き過ぎるだけだから」

 

(俺は何も聞いてない。そしてこれからの言動に気を付けろ。でないと俺が死ぬ)

 

「あ、あはは。お姉ちゃんそろそろ帰るわ」

 

 

死の気配を感じ取った楯無がそそくさと部屋から退散しようとする。余計なことをした本音に怒りを感じると共に、彼女の安否を心配しながら。

 

 

「……何で姉妹なのに、こんなに違うんだろうね」

 

「失礼しましたー!」

 

 

楯無、戦略的撤退。

 

 

「別に出ていかなくてもいいのに……」

 

「いや、今のは誰でも逃げると思うぞ?」

 

「黒崎君も?」

 

「ああ。あの怨嗟に塗れた声を怖がるなって言う方が無理な話――すまん悪かった。だからその振り上げた拳は下ろそう。な?」

 

「…………」

 

 

一護に言われゆっくりと拳を下ろす。何も話さないことが、依然恐怖を煽っているが。

数分経過して、

 

 

「……ごめんね」

 

「……落ち着いたんなら早くどいてくれねえ?」

 

「ヤダ。別にいいでしょ」

 

「困るから言ってんだよ! あと重――肘で殴るの止めてくんねえ? 謝るから」

 

「……デリカシーを学んだ方がいいよ、黒崎君は」

 

 

不満気な顔をしながら簪は一護から離れ、別の椅子に座る。

 

 

「……明日からの臨海学校、楽しみだね」

 

「まあな。学校の行事を楽しんだ記憶が()えからな。……空白の期間があったってのに、アニメスタッフは全カットしやがったからな」

 

「その分明日から楽しめばいいんじゃない?」

 

「そうだな。多分邪魔が入るだろうけど」

 

「テンション下がるようなこと言わないでよ。事実だけど」

 

 

そう口にする簪だが、口元は軽く緩んでいる。この臨海学校もどうせ邪魔が入って中止になるということも想像に難くないが、それを踏まえた上でこの数日を心待ちにしていた。

 

 

(なんでだろう。黒崎君がいるってだけで、楽しく感じる。前はただの一つの行事としか捉えて無かったのに)

 

 

自分がどのように変わったのかはまだ理解していないが、不思議と嫌な気持ちはしなかった。

 

 

「お兄さ~ん、一緒に朝まで遊びましょ」

 

「いや早く寝ろよお前ら」

 

 

ノックもせずに入ってきたラウラ達に冷静にツッコむ一護。

 

 

「何で今日に限って夜更かしすんだよ。明日からの臨海学校、楽しみにしてんだろ?」

 

「そうなんですけど、二人が興奮して眠れないんです」

 

「なので、今日安く売られていた『東○非想天則』を一緒にやりましょう兄様!」

 

「それとも、お邪魔でしたか? お二人は逢瀬中じゃ……」

 

 

子供かとツッコみたいところだが、実際この子らは子供である。容姿だけでなく中身も。

さゆかの頭にチョップを入れ、

 

 

「……分かった。相手してやるから、騒ぐなよ?」

 

「「「は~い」」」

 

「私はもう部屋に戻るけど、三人とも、ちゃんと寝なきゃダメだからね?」

 

「分かっています姉様」

 

 

ラウラが簪のことをこう呼ぶようになったのは、先日の模擬戦の後から。さゆかの入れ知恵もあるが、尊敬に値する人物だからということもあり、そう呼ぶことにした。

ちなみに、楯無もそう呼ばれたいと鼻息を荒くしていたのだが、ラウラにバッサリと切り捨てられ、簪にしばき倒され、(うつほ)にお仕置きされていた。

 

 

「それじゃあお休み」

 

「「「おやすみなさい」」」

 

 

部屋を出て扉を閉めると、中から『朝まで遊ぶぞー!』『今日は朝まで寝かせません!』『だから! 騒ぐなって言ってんだろ!!』『あの、兄様の声も大きいです』とても寝る前とは思えない程騒いでいる四人の声が微かに聞こえる。

 

 

「明日起きれればいいんだけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ1

 

(うつほ)様。ご命令通り邪魔者の排除、完了いたしました」

 

『ご苦労様です。あなた達は引き続き、一護さんと簪お嬢様の護衛を』

 

「了解です!」

 

 

舞台裏にて、女尊男卑な思考の女やナンパ男、セクハラ女が連行され、教育されていたことを一護達は知らない。

 

 

 

おまけ2

 

「あんなに怒ったかんちゃんは初めて見たよ。あれは、もはや人の皮を被った悪魔だね」

 

「本音?」

 

「ぴぃ!? ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい――」

 

 

この日以降、布仏本音は簪に対する言動に一層気を付けることとなる。

 

 




次回からようやく臨海学校が始まります。
これからは一護以外のBLEACHキャラも参戦し、本格的にBLEACHキャラがISキャラと関わっていくことになる予定です。また、千年血戦編で出た、この時点で習得している卍解や始解が出る可能性も少しあります。楯無の活躍もあります。

次の更新は…ガ、ガンバリマス。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。