死神代行のIS戦記   作:ピヨ麿

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まだ始まったばかりですが、こんなにも自分の書いた作品を読まれるとは思っていなかったので……正直焦ってます。

第一話投稿から6日も経ったというのに、今回の話は駆け足気味な原作沿い&ちょっとした説明会。なので、読むのがメンドイという方はあとがきだけ読んでいってください。


2.IS school

あの時、女性は一護がISを纏っている画像をIS学園へと送っていたらしく、あそこで一護がいくら拒もうともIS学園への入学は免れなかった。

 

それからというもの、学園関係者が家へと押し掛けてきて、転入準備など慌ただしく過ごし、その合間を縫って女性にISのことを叩き込まれた。仲の良い友人達には心配されたり、呆れられたり、羨ましがられたり。

それと、一護がIS学園に行くことになった為、阿散井恋次が空座町の担当に加わった。今までは隊長と同等の実力を持つ一護がいたので問題は無かったが、町を離れることになった今、車谷だけに重霊地を任せるのは些か不安、とのこと。

 

 

 

 

そして、あれよあれよという間に一カ月が経ち、現在一護はIS学園一年一組の教室の前へと来ている。

 

 

(……帰りてぇ……)

 

 

教員に呼ばれるのを待ちながら、早くも心が折れかける一護。この学園に来ることも了承したし、あの女性の頼み事はきちんと成し遂げるつもりでいる。だが、やはり周りが女性ばかりというのはつらいものがある。昨夜、最終試験と称して朝までずっと勉強漬けだったこともあり、肉体・精神共に、すでに疲労困憊だった。

 

 

『えええええっ!?』

 

 

中から悲鳴にも似た叫びが聞こえ、身体をビクッと一瞬震わせる。

 

 

『それじゃあ入ってきてください』

 

 

続いて聞こえた声に従い、中へと入っていく。

 

 

 

 

 

 

「きゃあああああ――――っ!!!」

 

 

一人目のシャルル・デュノアが自己紹介をしたところで、クラス中から歓声が上がる。二人目の男が、美系が来た、と。だが、一護としては、

 

 

(え? 男?)

 

 

だった。格好は確かに男だが、身体の線や顔が女性のものに近かった。

 

 

(ルキアやたつきよりもよっぽど女っぽい……!?)

 

 

失礼なことを考えていると、不意に悪寒が走る。女性というのは、何故か自身のことを悪く考えているのを察するものである。そしてそれは、女性らしくない行動をしている者に多く見られる。

 

 

その後、二人目のラウラ・ボーデヴィッヒが簡潔に――――クラスにいた男・織斑一夏を殴っていたが――――自己紹介を終え、悪い空気のまま一護の番が来る。

 

 

「空座第一高校から来た黒崎一護だ。お前らより二つ年上だけど気にせず接してくれ。これからよろしくな」

 

 

織斑一夏やシャルル・デュノアと比べて興味を持たれるとも思っていなかった一護は、典型的な自己紹介で済ませる。だが、

 

 

「きゃああああ――――っ!!!」

 

 

一護の予想とは違い、シャルルの時と同じような歓声が上がる。

 

 

「こっちはワイルド系よ!」

 

「しかも年上!」

 

「目つきがちょっと怖いけど、それがまた格好良いわ!」

 

 

……どうやら、このクラスの女子生徒は節操がないらしい。それとも、男に飢えているのか?

一護も、シャルルも、その様子に引いている。

 

 

「ではHRを終わる。各人はすぐに着替えて第二グラウンドに集合。今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。解散!」

 

 

ざわめいている生徒だったが、教員が話し出した途端静まり返る。その様を例えるなら、上官の命令に忠実な兵士、だろうか。

 

 

「織斑。同じ男子だ。二人の面倒を見てやれ」

 

 

そう言い残し教室を出ていく教員――――織斑千冬。

 

 

「君が織斑君? はじめまして。僕は――――」

 

「ああ、いいから。とにかく移動が先だ。女子が着替え始めるからな」

 

 

言うと同時に走って教室を出ていく織斑。一護も異性が着替えをする場所にはいたくはないので、それについて行く。

 

 

この学園は男子生徒がいることを想定しておらず、当然男子更衣室もなかった。なので、着替える際には空き教室を使う必要があり、教員に見つからないように走って移動しなければ授業に間に合わない。

だが、女子生徒にとってそれは関係無いようで……

 

 

「転校生発見!」

 

「目標、捕捉」

 

「者ども出会え出会えい!」

 

 

ここは武家屋敷か何かか?と言いたくなるような光景が目の前で展開される。無駄に高い身体能力を駆使して、一護達を追い詰めようと動いている。

 

 

「おい織斑。更衣室ってどこだ?」

 

「え?あぁ、校舎を出て、空いてるアリーナ……今日は第二アリーナの更衣室だ」

 

「第二アリーナ……確か向こうだったな」

 

 

そういうと、近くにあった窓を開ける一護。

 

 

「……あの、何する気?」

 

「何って……飛び降りんだよ!」

 

 

織斑とシャルルの襟首を掴み、そのまま飛び降りる。着地後、二人を離し、衝撃を感じさせない動きですぐさま走り出す。

 

 

「む、無茶苦茶するなよ!!」

 

「二階から飛び降りたぐらいで文句言うなよ。それに、大分短縮出来ただろ」

 

 

着地時に完現術(フルブリング)で衝撃を和らげたとはいえ、それなしでもそこまで無茶だとは一護は思っていない。これ以上の無茶を山ほどしているのと、中学時代のチャドは自分以上にとんでもないことをしていたからだ。それと比べれば、二階から飛び降りる程度どうってことない。

 

 

「……そういう問題じゃ、無いと思う」

 

 

シャルルのツッコミも最もだが、言っても無駄である。

 

 

 

 

 

 

「では、本日から格闘及び射撃を含む実践訓練を開始する」

 

 

ショートカットのおかげで、難なく授業に間に合った一護達。今は、生徒の前に立つ織斑千冬の話に集中している。でないと、出席簿で頭を強く叩かれる可能性があるからだ(by織斑)。

 

 

「凰、オルコット。前へ出ろ。お前たちは専用機持ちだ、すぐに始められるだろう?」

 

 

それから始まったのは副担任である山田麻耶との二対一の模擬戦。元日本代表候補生だったらしく、量産機でありながら、専用機持ち二人を追い詰めていく。……それなら、ただの飛行で何故墜落しかけたのか。

その光景を見ながら、

 

 

(連携、全然出来てねェな。まぁ、俺も無理だろうけど)

 

 

死神代行として数々の強敵と戦ってきた一護だが、共闘というのはほとんど経験したことがない。背中合わせならば、中学時代の喧嘩等で慣れているのだが。

 

 

(それに……話を聞いた後だからか、どのISからもちゃんと霊圧を感じる)

 

 

一か月前のあの女性――――篠ノ之束の語ったことを思い起こしていた。

 

 

 

 

『ISコアにはね、私が霊力を込めてるの』

 

『だからISから霊圧を感じるのか……』

 

『そもそも、ISは宇宙での活動を目的に作られた物。でも、普通の人間が宇宙空間を生身で活動なんて到底無理。死神や虚なら可能なのかもしれないけど……。それで目を付けたのが霊力。霊力による結界を張っておけば、宇宙遊泳も可能かもしれないって』

 

『ってことは……シールドエネルギー=霊力による結界ってことか?』

 

『うん。それとね、絶対防御についても皆勘違いしてるの。確かに、搭乗者を護る機能ではあるけど、それは宇宙空間から。衝撃とかからは完全に護ってくれない。私はちゃーんと説明したんだけどな~』

 

 

一護の前で語られたのは、世界中の研究者の努力を無駄にするものだった。

研究者たちはISのコアを複製するべく日夜研究している。だが、今以上のことを知るには霊的素養が必須であり、たとえ霊力を持っていようと結界に関する知識が無ければ意味が無い。

それを事も無げに、最後には笑みを浮かべて語っている。性質が悪い。

 

 

『よく死神や(ホロウ)に狙われなかったな』

 

『その為に、全てのコアに結界を張ってあるの。一護君も近付くまで気付かなかったでしょ?』

 

『確かに……』

 

 

霊圧を遮断する結界。それにより、霊圧感知能力が低いとはいえ、ISを直接見るまで霊圧を――――それもわずかな、浮遊霊並みの霊圧しか感知出来なかった。ISに触れてようやく、内包された霊力の大きさを確認出来た。

 

一護はそれと似たものを一心が張っていたのを目にしている。なので、そういったものがあることには然して驚かないが、死神と関わりもなく、滅却師(クインシー)でもない彼女が高度な結界を張れることに驚いていた。

 

 

『ふっふっふ~。この程度、束さんにかかれば余裕なのさ!』

 

 

一護の考えていることを当てたうえで、自慢げに胸を張って言う。

 

 

(天才ってのは聞いてたけど、想像以上だな)

 

 

複雑な思いで束を見る。(初歩的なことだが)霊力の扱いを死神やその関係者に学んだ一護には到底出来ず、独学の束は高等結界を張れる。鬼道に関してはもう諦めてはいるものの、落ち込みはする。

 

 

『よかったらこれも教えてあげようか?手取り足取り』

 

『……遠慮しとく。何カ月かかるか分かんねえし』

 

 

実際に訓練すれば、ある程度習得出来るのかもしれない。一護は死神として天才の部類に入るのだから。ただし、その莫大な霊力を用いた、とてつもない大きさの結界になるだろう。

 

 

『それにしても……すっごい逞しくなったねぇ。最初に見たときはあんなに小さかったのに』

 

『いつの話をしてんだよ。って、(ちけ)ェよ!!』

 

『腕の筋肉も凄いし……。でもちーちゃん、もうちょっと細かったけど、生身じゃ一護君より力があったような……。なんでだろう?』

 

『俺に聞くな! てか離れろよ!!』

 

 

 

 

(……余計なことまで思い出したな)

 

 

上空の爆発音を聞き思考を止め、その音源を見上げる。ちょうど凰とオルコットが地面へと堕ちていくところだ。

 

 

「さて、これで諸君にもIS学園教員の実力は理解出来ただろう。以後は敬意を持って接するように」

 

 

織斑千冬が纏めたところで、実践訓練は開始された。最初、男子三人のところにほぼ全員が詰め寄りそれを一喝されたり、織斑がまた騒ぎの種を作ったり等あったが、順調に授業は進んだ。

 

 

 

 

 

 

「……どういうことだ」

 

 

昼休み、一護は織斑一夏らと共に屋上にいた。

入学したばかりで当然知り合いもおらず、一人になれば確実に女子生徒に包囲されると思った一護は、一緒に昼飯を食べるという提案を受け入れた。そのあとに待っている修羅場を知らずに。

で、今篠ノ之箒が不機嫌なのは織斑に原因がある。元々二人きりで食べるつもりでいたらしいので、それ以外の面子――――特に凰とオルコットがこの場にいるのが気に喰わないらしい。

 

 

「あー……なんか邪魔みたいだし、俺らは別のとこに行くか?」

 

 

当たり障りのない言葉でこの場を離れようとする一護。女心が分かる訳ではないが、彼らの関係はすぐに察しが付いた。なので、この後に起こるであろう修羅場から事前に逃げようと考えたのだが、

 

 

「え? なんでだよ。一緒に食おうぜ!」

 

 

あろうことかその元凶であるキング・オブ・鈍感に止められた。さらに、

 

 

「それだと私たちが追い出したみたいじゃない」

 

「わたくしも、ご一緒しても構いませんわよ」

 

 

凰とオルコット、二人からも言われれば、流石に無碍には出来ない。覚悟を決めるしかなかった。

 

 

「あれ? 一護って弁当なのか?」

 

「ああ。今朝来る途中に渡されたんだよ」

 

 

渡したのは篠ノ之束。意外にも料理が得意であり、一か月の間にも度々手料理が振舞われていた。

 

 

「へぇ。ん? 今日は箒も弁当なのか?」

 

 

その言葉を発端に始まったのは弁当戦争。織斑に気に入られる為、篠ノ乃・凰・オルコットがそれぞれ牽制し合いながら自身をアピールしていた。……当の本人は全く、これっぽっちも気付いていないが。

 

 

(……織斑の性格をどうにかした方が(はえ)ェんじゃねえか?)

 

 

失礼なように感じるが、この場にいれば誰しもそう思うだろう。

 

 

 

 

その後は、一護の予想通りの展開になった。時たま『コイツは狙ってやってんのか?』と言いたくなったり、思考回路がおかしいんじゃねえかと思ったり。

そして、何故か一護自身にも被害が来た。勧められるままオルコットのサンドイッチを食べ、その結果が

 

 

「……井上と同じ味覚をした奴がもう一人とか……嘘……だろ」

 

 

ただでさえ減らされていた体力がガリガリと削られていった。

一応の補足だが、オルコットの味覚は正常である。ただ味見をせず、見た目だけを似せて作っているだけ。なので、一応食べられる物である井上のより味は悪い。見た目との差も加わり、意外とダメージは大きい。

 

 

「あら? どうかしましたの?」

 

「いや……なんでもねえ」

 

 

事実を伝えようかとも思ったが、自身が料理を出来ないことと、練習の際に味見させられる可能性を考えてやめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

 

今日から住むことになった寮の部屋、そこに備え付けられているシャワーを浴びた一護は、ボフッとベッドに横になる。

 

 

「そういや……一人ってのは久しぶりだな」

 

 

自宅暮らしの一護は、よく妹たちが一護を訪ねて来るし、朝には一心に襲撃されることがよくある。最近では束と半同棲(本人はそう認識していないが)状態だったので、一人きりというのは意外と経験していなかった。寂しくはないが、何かが物足りない。転入初日で自分を訪ねる者がいないからか、柄にもないことを考えていた。

 

 

「らしくねえな……」

 

 

気分を変えようと立ち上がろうとしたところで、

 

 

「ホーロウ! ホーロウ!」

 

 

(ホロウ)の出現を告げる、代行証の独特の音が鳴り響く。それを聞き流しながら手に取り、胸へと当てる。魂が肉体から抜け出し、死神代行としての一護が現れる。

 

 

「さて、と……あっちか」

 

 

(ホロウ)のいる位置に大まかな見当をつけ、跳ぶ。空座町にいた時よりも霊圧探知が容易だったが、それにはこの近辺の霊子濃度と、霊の数が関係している。ただでさえ霊圧が高い者が多く霊も多い町と、霊すらもあまりいない場所では、(ホロウ)の見つけやすさも段違いだ。

 

 

 

 

「ヤラナイカ!」

 

「ふっ!」

 

青い体色をした(ホロウ)を斬魄刀・斬月の一刀で斬り伏せる。……その(ホロウ)が妙な視線を一護に送っていたのは気のせいだろう。

 

 

「この辺って(ホロウ)の数も少ねえんだな」

 

 

重霊地である空座町ならば、あと二・三体は続けて出てもおかしくは無かった。

 

 

「っと、戻るか」

 

 

近くには浮遊霊や自縛霊もおらず、一護も疲れていたので、早くベッドで横になりたかった。

 

そして、寮へと戻ってくると、自身を見つめる視線を感じる。それを辿った先には……眼鏡を掛けた蒼髪の少女が、一護を訝しげな眼でジーッと見つめていた。

 

 




本編の補足&まとめ

・ISコアについて
ISコアには霊力が籠められ、その上から霊圧遮断結界を張ってある。
シールドエネルギー=霊力で、絶対防御は宇宙空間で死なない為の措置。また、エネルギーが尽きても最低限生き残れるように、使用不可の霊力と酸素供給機能がある。
量子変換したものを内部に収め、ISへ入れられたエネルギーを霊力へと変換する。

・一護の完現術について
一護自身の完現術は銀城に盗られたが、『完現術者が死ねば、その能力者の痕跡は全て消える』ということから、一護の下に戻っているということに。
戦闘じゃ使いませんが、あれば何かと便利なので。

それおかしいだRO!というところがあれば、遠慮なく言ってください。

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