死神代行のIS戦記   作:ピヨ麿

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皆さんお待ちかね!
今回ついに! あの男が登場します!


5.Tag Match Tournament

「お見事でした、黒崎さん」

 

「いや、一発殴っただけで言われてもな……」

 

 

騒動がひとまず落ち着き、来た道を引き返していると楯無と(うつほ)に出迎えられる。

 

 

「……未だに信じられないんだけど。ドイツのAICの完成度はかなり高いわ。あんな力技で破れるようなものじゃない。少なくとも、私には無理」

 

「織斑千冬も出来そうだけどな」

 

「一生徒の比較にブリュンヒルデ(世界最強)が出てくる時点でおかしいわよ……」

 

 

一護がやったのは至極簡単なことで、霊圧を拳に集中しただけ。AICに使われていた霊圧よりも、一護の攻撃の方が霊圧が高く、濃かった。ただそれだけである。

一護としては、霊圧等の扱いを知らないのにただの力技で破れそうな千冬の方が出鱈目だと感じている。

 

 

「だからこそ、タッグマッチで唯一の個人戦、一回戦シード扱いなのだろうけど」

 

 

織斑千冬が去り際に、

 

 

『月末のトーナメントはタッグバトルになったのだが……貴様はタッグを組むことを禁じる。でなければ勝負にならん。それと、一回戦は免除。シード扱いだ』

 

『は? そもそも、出るって言ってな……』

 

『男三人は必ず出ろと上からの命令だ。サボることも許さん』

 

 

ブレード片手に告げていた。サボりでもしたら、ブレードを手に襲いかかって来るだろう。大義名分を得た、と。

 

 

「まぁ、適当なところで負ければ……」

 

「そしたら手を抜いたなって怒るわよ、彼らが」

 

 

確かに、織斑一派とボーデヴィッヒとの諍いは一旦の終息がついた。ただし、彼らの――――正確に言うと織斑とボーデヴィッヒだけだが――――の標的が一護になっただけ。

一護の実力の一端を知っているだけに、少なくとも一般生徒に負けることはありえないと考えていることだろう。

 

 

「頑張ってください、としか言えませんね私からは。では、私達はこれで。仕事が山ほど残っているので」

 

 

 

 

 

 

楯無らと別れた一護は、運び込まれた凰とオルコットの容体を確認すべく保健室へと向かった、のだが……

 

 

「「「「黒崎君! 私とペア組んで!!」」」」

 

 

数十名の女子生徒が、一護とのタッグを組もうと詰め寄って来た。その様子はさながらホラー映画の一シーン。幼いころから霊が見える為に怪談等で怯えたことなど皆無な一護でも、流石にこの光景は恐ろしく感じた。

 

 

「いや……俺、タッグ組むなって言われてるから。悪いな」

 

「な、なんで!?」

 

「理由は織斑千冬に直接聞いてくれ。俺は言われただけだからな」

 

 

それだけ言うと、一護を囲っていた人垣はとぼとぼと去って行った。

 

 

「……何やってんだ?」

 

 

部屋に入ると、涙目の凰とオルコットが織斑を睨んでいる。

 

 

「ッ!? ……一護」

 

「えっとね、一夏が傷だらけの二人をちょんって触ったら、それが痛かったらしくて……」

 

「あー……大丈夫か?」

 

「あとで絶対ぶん殴る」

 

「同じく、ですわ」

 

 

ここまで言われれば顔を青くするはずだが、当の織斑は俯いたまま。

 

 

「……一夏?」

 

「どうしましたの?」

 

 

反応を示さない織斑を不審に思った二人が声を掛けるも、全く反応無し。すると今度は一護へ、『何かしたのか』と若干の敵意を込めて視線を送る。

 

 

「……一護……」

 

「ん?」

 

 

弁明しようとしていたところで、喋らなかった織斑が口を開く。

 

 

「お前にも、ラウラにも! 絶対に負けないからな!!」

 

 

一息で言い切って、そのまま部屋を走り去っていく。

 

 

「……何がどうなってるの?」

 

「ボーデヴィッヒさんを瞬殺した黒崎君に織斑先生が興味を持ったみたいで。その時に向けてた愉しそうな表情を、自分は向けられたことが無いって。要は嫉妬……かな」

 

 

デュノアが簡単に説明をすると、

 

 

「……え? ちょっと待って。……え?」

 

「……今何か、聞き捨てならないことを聞いたような……」

 

「あんな顔を向けられたいって、どんな神経してんだ? 織斑は」

 

「「そこじゃないから(ですわ)!!」」

 

 

 

 

 

 

これから身体を動かすという気分にもなれず、自室へ戻ろうと歩いていると、

 

 

「あ、いた」

 

 

簪が駆け寄ってくる。

 

 

「なんだよ。専用機の開発してんじゃなかったのか?」

 

「そうだったんだけど、アリーナの方で複数人とぶつかり合うのを感じたから……」

 

「それがどうかしたのか?」

 

「どうかしたのかって……生身ならともかく、ISで戦ったなら心配するでしょ。ドイツの子もいたみたいだし」

 

「……よく分かるな。結構離れてるだろ?」

 

「前も言わなかった? 学園内ならIS全機を感知出来るって」

 

 

その感知能力の高さに、流石に呆れてしまう。以前は石田並と評していたが、彼よりも上なんじゃないかと評価を改める。

 

 

「それに、何でか分からないけど黒崎君の霊圧はすぐに見つけられる。顔を思い浮かべたら、パッと」

 

「お前……出鱈目だな」

 

「黒崎君に言われたくない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして迎えたトーナメント開催当日。

 

 

『スピリッツ・アー! オールウェイズ!! ウィズ!!! ィィユーー~~!!!! ボハハハハーッ!』

 

「「「「ボハハハハー!」」」」

 

 

開会式、学園長の後に出てきたドン・観音寺に会場は大いに沸く。ただし日本人のみ。

 

 

「相変わらずだな……」

 

 

アリーナの観客席からその光景を眺めながらそう呟く。

二年前と何ら変わらぬテンションにあの独特な笑い声。それに日本人生徒がほぼ応じているのだから、変わらずの人気ぶりに内心驚く。

 

 

「黒崎君はやらないの?」

 

「やらねえよ。オメーがやれ」

 

「……ヤダ」

 

 

周りが盛り上がる中、隣に座る簪はいつもと変わらぬ様子。

 

 

『見ているかね! マイ一番弟子! ユーもこっちへ来たまえ!!』

 

「呼ばれてるよ?」

 

「行くわけねえだろ、こんな大勢の前で」

 

 

霊が見えるということを何が何でも隠したいという訳ではないが、かといって知られたいという訳でもない。一人二人に知られるならまだしも、これだけの大衆の前で言い放つのは、ただ面倒事が増えるだけ。観音寺がそれを理解しているかは分からないが。

 

 

「行ってくればいいのに。きちんと撮っておくよ?」

 

「……撮ってどうすんだよ。つーか、そのたこ焼きどうしたんだ?」

 

「向こうで売ってた。銀髪に死んだ魚のような目をしてて最初はどうかなって思ったけど、『学園長に許可されてるっての。タコだって新鮮なもの使ってるし。こんな稼ぎ時に手を抜くわけねえだろ』って。食べてみたら美味しかった」

 

 

たこ焼き以外にも焼きそばやチョコバナナ、ポップコーンなんかも売られている。

 

 

「祭りかここは!?」

 

「……祭りのようなもの、じゃない? 教員にも楽しんでる人いたし」

 

 

簪の視線は、ドン・観音寺の登場で盛り上がっている観客達。例年のトーナメントならばここまでの騒ぎにはならなかったので、祭りと言っても過言ではない。

 

 

「ってことで……たこ焼き、美味しいよ?」

 

「……何でこっちに向けんだよ」

 

「え? 黒崎君にも食べてもらおうと思って。……迷惑?」

 

 

口元に差し出されるのは爪楊枝に刺さったたこ焼き。

 

 

「い、いや、迷惑ってわけじゃねえけどさ……」

 

「はい、あーん」

 

「…………」

 

 

差し出されたたこ焼きを無言で手に取り、口に入れる。

 

 

「むぅ……」

 

「お前……初めて会った時と、性格変わってねえか?」

 

「そんなことない」

 

 

訂正。簪も会場内の空気に中てられて、テンションが上がっている。ただそれが、表情として顔に現れていないだけ。

 

 

「もう一回。あーん」

 

「いや、だから……」

 

 

簪からの無言の圧力が一護を襲う。その圧力に屈し、渋々受ける。

 

 

「美味しい?」

 

「……あぁ」

 

 

 

 

 

 

一年の第一回戦・織斑&デュノアVS篠ノ乃&ボーデヴィッヒが始まった。

開幕直後、瞬時加速(イグニッション・ブースト)で突っ込む織斑と、それを読んで織斑の身体をAICで捕まえるボーデヴィッヒ。そこをデュノアが背後から狙い撃つことでAICは解除されるが、今度は篠ノ乃がデュノアに接近戦を挑む。

 

 

「あいつらの連携がどこまで巧くいくかが鍵か。……どうした、簪?」

 

 

試合を見ていた一護だが、簪の表情が優れないのに気付く。

 

 

「……ボーデヴィッヒさんの機体、シュヴァルツェア・レーゲンから……(ホロウ)の痕跡を感じる」

 

「!!」

 

 

言われて驚く一護。先日、僅かとはいえ相対した時には(ホロウ)の痕跡など感じなかった。だが、霊圧感知能力は簪の方が優れているので、本当のことなのだろう、と理解する。

 

 

「ここからじゃ分かんねえな……」

 

(ホロウ)に傷つけられたような感じじゃない気がする。それだったら、事前に黒崎君が気付いてるはず……気付くよね?」

 

「……多分な。霊力(チカラ)が無い奴に(ホロウ)の痕跡があれば、流石に気付く」

 

 

話を余所に試合は進む。四人の中で唯一の訓練機で参加した篠ノ乃が真っ先に落とされ、今は二対一の状況。それをものともしない実力で、デュノアを牽制しながら織斑を撃墜する。続いてデュノアを堕とそうとするも、今この時初めて使ったという瞬時加速(イグニッション・ブースト)、織斑の援護射撃、そして第二世代型最大の攻撃力を持つ六九口径パイルバンカー・灰色の鱗殻(グレー・スケール)によって、逆に追い詰められることになる。

 

 

「すげぇな。あんな風に武器を持ち替えて戦うって」

 

「死神は斬魄刀だけだもんね。というか、黒崎君はそんな器用な戦い方無理でしょ」

 

「……分かってる。分かってるけど言うなよ」

 

 

必死の形相のボーデヴィッヒとデュノアの叫びが重なる。お互いにここが――――パイルバンカーが極まるかどうかが勝敗の分かれ目だと分かっていた。そして、その軍配はデュノアに降りた。

パイルバンカーがボーデヴィッヒの腹に極まり、それが連続で撃ち出される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(こんな……こんなところで負けるのか、私は……。いや! 私は負けられない! 負けるわけにはいかない……!!)

 

 

戦いの為だけに生み出され、育てられ、鍛えられた、遺伝子強化体。その一人がラウラ・ボーデヴィッヒ。とある事故によってトップの座から転落し、『出来損ない』の烙印を押された。そんなラウラを救ったのが織斑千冬だった。織斑千冬に鍛えられ、再びトップの座に戻ったラウラが、織斑千冬に憧れぬはずが無かった。いや、最早崇拝に近い。強く、凛々しく、常に堂々としている。そんな織斑千冬に憧れていた。

 

だが、その凛々しい表情を崩す相手がいる。

一人は弟の織斑一夏。彼のことを話す時には、僅かだが優しい笑みを浮かべ、どこか気恥ずかしそうな表情をする。

もう一人は黒崎一護。彼には一変して凶暴な笑みを見せる。戦乙女(ヴァルキリー)というよりも狂戦士(バーサーカー)と言うべき表情を。

 

 

(あなたがそんな顔をしてはいけない。あなたは世界最強で、私の憧れなのだから!)

 

 

自身の願望を相手に押しつける、身勝手で歪んだ想い。だが、行き過ぎた崇拝が、戦いに関することだけしか教育されてこなかったことが、それが間違っているのだと気付かせない。

 

 

(敗北させると決めたのだ。奴らを、私の力で、完膚なきまでに叩き伏せると!)

 

『チカラが欲しいか……?』

 

 

歪に歪んだ想いに応えるかのように、闇の奥から声がかかる。

 

 

『ならば願え。あらゆるものを破壊する力を。本能の赴くままに』

 

(力があるのなら、それを得られるのなら、私など――――空っぽの私など何から何までくれてやる! だから、力を……比類なき最強を、唯一無二の絶対を――――私によこせ!)

 

 

Damage level……D.

Mind Condition……Uplift.

Certification……Clear.

Download……Completion.

 

《Valkyly Trace System》……boot.




前書きで煽っておいた癖に出番が少ねえじゃねえか!と憤っている方、ご安心を。
次話、もしくは次々話。きちんと出番がありますから!

次回は初の戦闘回。頑張ります。
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