歌姫と漂泊世界のマスター   作:タク-F

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ライブ会場で何も出来ない筈はなく?


傍観者? or 介入者?

「どう2人共? 中々のライブじゃない?」

 

「そうね。規模に見合うパフォーマンスとは言っておくわ」

 

「あら?」

 

 ジャンヌの視線が空を見ていた。

 

「どうしたのジャンヌ?」

 

「マスター! 礼装を装着してください! 良いからはやく!」

 

「ッ! 分かった!」

 

 ジャンヌの叫びに驚きつつも着慣れたカルデア戦闘礼装を纏う。すると今度はメルトが僕の手を握る。

 

「お身体お借りします!」

 

 メルトの霊子が僕の礼装を覆っていく。やがて僕の身体はメルトリリスの身体へと変換された。

 

「メルト!? これは!?」

 

『聖杯の権能で礼装を媒介して私の能力を引き出せる形態です。更にマスターの魔術も並行して扱えます』

 

「チッ! マスターと一心同体になるなんてズルいじゃない。敵襲来ます!」

 

 ジャンヌの叫びから数瞬後にノイズが現れ観客を襲い出した。

 

「ノイズかよ! 何でここに!」

 

「私が焼き払います! マスターは自身に迫るモノにのみ対処してください!」

 

『安心してマスター。貴方の身体は私の霊子が守ってる。堅実に戦えば危険は少ないわ』

 

 ジャンヌがノイズ群を焼き払うがあまりにも数が多い。討ち漏らしが観客を襲い、恐怖に怯えた者は我先にと逃亡を図った。

 

『悲惨ね。恐怖のあまり他者を気に掛ける事も無く駆け出してるわ。寧ろ圧死や傷害による死者の方がノイズの被害者を上回りかねないわね』

 

「どうするんだよ!」

 

『諦めてマスター。あの人達が冷静になる事は出来ない。下手に止めればこちらにも火の粉が来るわよ?』

 

「クソッ!」

 

 メルトの言葉は人理修復に関わった身からすれば刃物のように抉った。それでも今の僕は動けなかった。

 

「……戻りました。第一陣の被害は可能な限り減らしました。しかし観客の動きを考慮しながら出せる限界は受け入れてください」

 

 ジャンヌの言葉は冷淡だ。メルトの言葉も客観的であろうとしている。その意味が何を意味するかは明白だった。

 

「…………ごめん」

 

 僕は【1人の人間としての無力感】に肩を落とす。

 

『……マスターが悔やむ事はありません。それに今は戦闘中です。構えてください』

 

 メルトの言葉に意識を引き戻された。だが僕達の敵対勢力はノイズだけでは無い。

 

「貴女は何者ですか?」

 

「ノイズと戦ったみたいだが怪しい奴だな。答えによってはアタシが叩き潰してやるよ!」

 

 ツヴァイウィングが武装してそこに立っていた。

 

「そっちこそ物騒な格好だね。答えなかったらどうするんだい?」

 

「ぶっ飛ばして本部へ連行さ!」

 

 天羽奏が鮮やかな山吹色の槍を構えて向かって来た。

 

「巫山戯んな! ノイズの増援の対処が先だろ!」

 

 崩れた会場の瓦礫を足場に僕は距離を取る。あの槍と剣……ただの武器じゃないな。

 

「メルト……わかる?」

 

『槍の方なら心当たりがあるわ。マスターもそのレプリカなら見覚えがあるはずよ?』

 

「レプリカに見覚え?」

 

「大人しく戦えよ! 早く翼を援護しないといけないだ!」

 

「ならさっさと行けよ! お前の言い分は矛盾してんだよ!」

 

「テメェがノイズをおびき寄せてマッチポンプを企んで無いとは言えねぇだろ!」

 

「そうかい!」

 

 多分【ガンド】や【属性魔術】を使えば攻撃出来る。でも今の優先事項は明白だ。

 

『あら? ふ〜ん……』

 

「メルト?」

 

『この娘可愛そうね。自分の身体に毒が相当回ってるわ。摂取してる自覚が無いなら哀れね』

 

「っ!? 助けるにはどうすれば!」

 

「ワケわかんねぇ事ゴチャゴチャ言ってんじゃねぇよ!」

 

「しょうがない……どうしたら良いかなメルト?」

 

『彼女の身体から毒薬を吸収しなさい。私が人類の毒薬ごときに負けるなんてあり得ないでしょう?』

 

「わかった!」

 

「吹き飛べえぇ!」

 

 槍を凪いだ天羽奏の1撃だけどメルトの身体は

完全流水】……物理攻撃は簡単に受け流す事が出来る。

 

「なんだよ……それ……?」

 

 分断された僕の身体はすぐに再構成されて彼女へと歩み寄る。

 

「へっ……やっぱ怪物かよ。なら遠慮は要らねぇな!」

 

 槍に力を込めてる。さっきのやり取りを考えれば次の一手は範囲攻撃……さっさと終わらせよう。

 

「オールドレン」

 

 メルトの鋭利な脚で彼女の胸を貫いた。そして彼女の身体を蝕む薬毒を吸収した。

 

「随分な猛毒だね。よくもまぁそんな身体で戦っていたとは驚いた。暴れられても困るからこっちも毒を使わせて貰ったよ。一時的な神経毒だけど1時間もすれば分解される程度の代物だから心配しないでね」

 

「なんだよそれ……」

 

 彼女は回る毒に膝をついた。多分コレで戦線離脱してくれるだろう。

 

「先を急がせて貰うね」

 

 僕は彼女を置いてジャンヌの元へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ諦めて貰えるかしら? 貴女の剣は私の防御を超えられないし怪物は既に再出現してるのよ?」

 

「だったら大人しく私に捕まりなさい!」

 

「呆れた。どう考えても怪物処理の方が優先じゃ無い」

 

「ッ!」

 

「ごめん遅くなった!」

 

 ようやくジャンヌの元で合流出来た。どうやらジャンヌも風鳴翼に手加減しながらノイズを倒してくれてたみたいだ。

 

「遅いですよマスター……お怪我は無さそうですが手間取ったみたいですね」

 

「そりゃ初陣だよ? 慣れない事が多くてさ……」

 

「慣れてください。これから何度も使う事になりますよ?」

 

「奏……彼女に何をしたの! 

 

 風鳴翼は激怒した。まぁ彼女からすれば天羽奏に何をしたのか気になって仕方ない筈だ。

 

「悪いけど自分で生成した神経毒を使わせて貰った。この戦いが終わる頃には分解出来るけど戦線復帰は難しい筈だよ?」

 

「嘘……嘘よ!」

 

 剣を構えて激昂する彼女をジャンヌは組み伏せた。

 

「マスターの温情に感謝しなさい小娘。そもそも邪魔をしないで貰えるかしら?」

 

「離して……かなでええぇぇぇ!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

「中々減らないね。コレってやっぱり作為的なんじゃない? 自然現象とは思えないけど?」

 

『大方召喚の類じゃない? カルデアだって英霊を召喚してるのだから不思議じゃ無いでしょう?』

 

「なら何処かに陣や術者がいるのかな?」

 

「探し出すのは難しいでしょうね。こういう小狡い輩は戦闘中に目的を果たす為に召喚対象で時間を稼いで、目的を果たしたら身を隠す筈です。そもそも敵の正体を把握してない私達が探ってわかるとは思えないわ」

 

 ジャンヌの言葉は正しい。何処に術者がいるのかはわからない上に術者の正体を識らないなら特定は困難。

 

「歯痒いね」

 

「えぇ。この屈辱は必ず返しましょう。ですが動けない彼女達を見殺しにするのはマスターには無理でしょう?」

 

「そりゃあね。ジャンヌ……宝具いける?」

 

「そうですね……この場の人間の安全を考慮しなければ……」

 

「やめよう。じゃあ仕方ない。モグラ叩きでもするかぁ」

 

「そうしましょう」

 

 僕とジャンヌはひとまず沸いて出るノイズを焼き払う。ジャンヌとの契約のおかげで火属性の魔術適性を、メルトとの契約のおかげで水属性の魔術適性を得ている。ある程度は自衛が出来そうだ。

 

「ん? この詠は?」

 

「随分な詠ですね。まるで聖歌のような……そうでないような……」

 

 詠の出処は天羽奏……この詠は何のつもりで……まさか! 

 

「自分のエネルギーを全て使って自爆でもするつもりか!? 馬鹿な事を!」

 

「どうしますマスター? 正直彼女の自爆如きではノイズは倒せても私達には届きません。放置しても影響は無いかと」

 

「…………止めよう。ごめんメルト……もう1度生成して欲しい。今度はガッツリ意識を混濁させる!」

 

『お人好しですね……まぁそれがマスターらしいですから』

 

 

 

 

 

 

「奏だめ! 早まらないで!」

 

「止めないでくれよ翼……それにさ? いつか命を燃やす程思いっきり歌ってみたかった」

 

「やめて奏! かなでえぇぇぇ!!! 

 

「はぁ。あそこで倒れてて欲しかった。悪いけど手荒いけど恨まないでね!」

 

「が……」

 

 風鳴翼は泣いて天羽奏を止めているが彼女は止まる気配が無い。だから僕は彼女の懐に入り腹部に拳を1撃入れて動きを止めた後にメルトウイルスを注入して彼女の鎧を溶かした。

 

「悪いけどその力は奪わせて貰った。命が残るだけ感謝してね」

 

「ちくしょう……」

 

 天羽奏は膝をついて意識を手放した。

 

『シンフォギア……歌を力に変換する特性があるのね。面白い代物だわ』

 

「再現出来る?」

 

『簡単ね。でも武装だけで充分よ?』

 

 橙の槍を構成し竜巻を発生させた。どうやらこの武装は対ノイズに適した特性があるようだ。

 

『音楽によって調律の特性を有していてノイズを攻撃範囲に固定する特性があるらしいわ。良い収穫よマスター♪』

 

「早く終わらせましょうマスター」

 

「わかった」

 

 僕の発生させた竜巻は徐々に拡大して会場のノイズを飲み込んで殲滅した。僕達はその間に姿を眩ました。

 




奏の薬毒は分解、生存、加えてシンフォギア適性とガングニールは現存したのに漂う絶望臭とはコレ如何に?

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