あのライブから2年が経過して発覚した被害は酷かった。会場にいた1万人を超える観客・関係者から1500人が亡くなり2千人が重軽傷を負った。しかもその内訳に至っては……
「ノイズによる死者が500人で残りの死傷者が全て混乱の最中起こった圧死や骨折って……」
そう考えると僕の頑張った事って……
「振り返ればノイズ死者より観客同士の影響による被害の方が多かった。2人の言う通りだったね」
「そうね。まぁあの狂乱を見た時点で予見出来た話よ」
「そして寧ろ悲惨なのはこの後だったわ。人類の醜悪さがあらわれてましたね」
「…………うん」
生存者は死傷者を身代わりに逃げたと思われている。その側面は確かに事実が含まれてる。でもそれは1側面に過ぎない。
「追い打ちにこの情報社会なら
「本当……コレが正義の味方なら私が殺します。あの赤い弓兵と比べるのも烏滸がましい」
「流石にあの男と比べるのは酷ね」
結局僕達の奮戦による被害の低減よりも酷い出来事が起こった。それは被害者を加害者と定義した迫害だった。
「
「そういえばあの歌姫……天羽奏はあのライブの後引退した。そしてノイズの出現頻度が下がって来たけど……」
「心でも折れたのかな?」
「どうだろうね? まぁ繋いだ命で幸せを掴めるなら……いや、彼女達みたいな娘が自分らしくあれる世界を守りたい……そう思うよ」
人理修復を成した後なら特に……ね。
「まぁ私達はそういう偉業が無くてもマスターの隣にいるけど? だって私はマスターに
「ちょ……! マスターにベタベタするんじゃないわよ! 勝手に抜け駆けしたら蒸発させるわよ白鳥!」
「やれるものならやってみなさい聖女!」
「はいはい喧嘩しないで。2人が喧嘩したらここが被害を被るからやめてね!」
やれやれ2人はいつも張り合うから仲裁しないといけない。でもお互いの悪口や皮肉を言っても最低限の礼儀はあるらしく互いへの牽制に留まってる。その理由は納得し難いけどね。
「まっ……考える事は多そうだけど」
あの悲劇もいずれ埋もれてしまう。そして悲劇はいつの時代で繰り返される……
「……来たな。天然と召喚のどっちだと思う?」
『召喚……というよりは天然物の誘導……かしら? あのライブ程の指向性は感じないわ……』
『強いて言えばマスターへの嫌がらせでしょう。シンフォギア装者以外でノイズに対抗出来るのはマスターだけでしょうから』
「じゃあどっちが行く? 正直対ノイズ相性を考慮すればメルト?」
『マスターは私に飽きたのかしら?』
「相性ね相性。獲得したシンフォギア? の特性を考慮すればそっちの方が良いだけ」
『…………あ〜あ〜……私も使えたらなぁ!』
「でもそれを言うならジャンヌの火力は切り札だよ? 単純火力が通じる相手なら特にやれる。総力戦で加減の必要が無い時は期待してるよ?」
『…………バッカじゃないですか』
照れ顔を見せてくれないけど絶対赤面してる。見せて欲しいけどそれもジャンヌらしい
「急げ〜発売日だぁ〜!」
「おっと……危ないよ?」
「ごめんなさい! 急いでますので……」
「どこに行くかわからないけど気を付けて。後コレは直感だけど危険な気配がする。具体例がどうとかわからないけど気を付けてね?」
「は……はい! 失礼します!」
行ってしまった。
「よろしいのですかマスター?」
「うん。ちょっと仮説もあったしそもそも忠告した。後は介入するべきじゃないよ?」
「随分肩入れするのですね」
「かもしれないね」
肩入れ……か。
ひとまずノイズを処理しよう。変に沸いて市民に危険が及ぶのは本意じゃない。たとえそれが悪意を抱く人間でも救わないと寝覚めが悪い。
「無理せず狩れるだけで良いし、敵対勢力が現れないとは限らないからそこは注意するように」
「「ええ/任せて」」
2人とも僕の意思を汲んでノイズ殲滅を始めた。
メルトの解析からある程度の対抗性を獲得した。コレで僕は礼装さえ纏えばある程度の耐性を得た事で行動出来る。
「ガンド!」
とはいえ2人の手を借りないと火力は心許ない。
「なんで……どうして……」
「やっぱ見つかってたか。さて……予感の正体は何だ?」
僕は使い魔の視界から立花響を追跡している。しかし……随分と人気の無い所に逃げて行くな。誘導されて無ければ良いのだが……
「まずはメルトと合流しよう。一応正体隠匿もしないと」
「なるほど。分かったから憑依するわ」
合流した僕はメルトに憑依して貰い戦闘力を得た。そして使い魔が観察していた立花響の様子が変わって行く。
『不味いんじゃない?』
「相当不味い。急ぐよ!」
そう思っていたが彼女の胸から光が溢れた。
「アレが予感の正体かな? そしてこの気配……」
その正体を聞いた時メルトの言葉を疑った。
【レプリカ】……まさかアレがね。彼はそれを知ってたの?
「暴力師匠が開示しない訳無いでしょう?」
「それもそうか」
天羽奏が所有していた槍【ガングニール】で一般的には【グングニル】と称される。そしてそのレプリカと言われてるのがケルト神話に登場する魔槍【ゲイボルグ】……クー・フーリンが愛用した朱い槍だ。
「そんな槍をあの娘が手にした。切欠は多分……」
『天羽奏の槍はあの戦いで戦闘中に破損してたわ。そして破損した槍が身体に適合した。それが答えよ』
メルトの言葉が僕に嫌な想像をさせる。
「聖遺物との融合……だよね。身体に影響が出ないよね?」
『馬鹿な事を言ってるの? 間違い無く宿主の身体を蝕むわよ? マスターみたいに何らかの対策を講じているならともかく一般人……それも少女なら禄な抵抗力も無いわ』
「…………観察をしないといけないかもしれないね」
僕の手から溢れた彼女の命を装者が繋いだ。彼女を見捨てるのは僕の失態と彼女達の努力を踏みにじる。それは寝覚めが悪い。
「もう少しだけ人気の離れた場所に逃げたら助けよう」
僕は冷静に彼女を観察する。しかし……
『動いていたわね。当然と言えば当然だけど』
「やめとく?」
「いや……行くよ。幸いメ2人の姿さえ見られ無ければバレないだろうからいざって時は……」
「分かった」
最悪を考慮して僕達は向かう事にした。
救えなかった命に後悔は大きめです
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