幻想郷を支配?…いや無理だろ 作:KAGENARI
「―――俺が知り合えたのはこの3名だな。魔理沙とアリスが敵に回ったら少なくとも中佐以下は歯が立たないと見ていい」
交戦したことを伏せるため、魔理沙が少将を一撃で消滅させたことは伏せる。さらに言えばアリスも魔理沙が『実力で劣ってるつもりはない』と表現してたのだから低く見積もっても同レベルの強さはある―――中将と大将じゃなきゃ対応不可能な相手。戦場に現れないことを願うしかない。
「そうですか…中尉さんと騎兵は?」
「僕は中将に会うまで野良猫と猪ぐらいしか見てないっす。そのあと大佐が合流してくれたんで、途中で中将が中佐と騎兵の反応を察知して道を外れた以外はここにほぼ一直線で向かったっすね」
「わたしは目を覚ますのが早かったみたいで、昨日は命蓮寺ってお寺に一泊させてもらえました。住職さんたちが争いを好まないみたいで、ちょっと心配になるぐらい好意的でしたね…」
「早かった…それはつまり中佐さんと中尉さんは?」
「俺は今朝方目覚めたな。おかげで空腹感はまだ平気だ」
「僕はもう少し早くて今日の夜明け前ぐらいっす。原っぱのど真ん中だったんで野良猫ちゃんが顔舐めて起こしてくれなかったら結構ヤバかったっす」
「そうなんですね…私は真夜中に気付いて、しばらく彷徨っておなかすいて夜明けに携帯食料食べちゃったんです。それからまたしばらく森を進んでたらタンクを見つけたんですよね。なので中に入って動かせないか試してるうちにどんどん時間が過ぎちゃって…大将閣下が空間魔法で回収するときに一緒に合流できました」
「中に入って調べてた?まさか、あのタンクは」
「はい…車内に誰もいません。あちらの少将さんが合流した後で大将閣下と少将さんが確認してくれましたが、魔力動力の自動操縦式だそうです。
戦力的に人員を割かずに動かせるのは大きくはあるのですが…」
「細かい射撃調整は厳しい、フレンドリーファイアには十分注意しなきゃならねえのか」
大将が作戦を伝えるために集合したあの時点でタンクから誰も出てこなかったのはおかしいと思ってたが…元々誰も乗ってなかったのか。あの大尉と工兵がタンクの射撃に回る場合は遠距離戦に徹する必要があるな。後確認しておくべきは…
「少尉、俺からもいいか?俺よりも目覚めが遅かった同志はいるか聞けてるか?」
「はい、少将さんとあちらの男性の大佐さんはお昼過ぎに目覚めたって聞きました」
「それってつまり、階級が高い方が目覚めるのが遅いってことでしょうか?」
「いや、そうとも言い切れないんじゃないっすか?僕たち案内してくれた大佐は聞いた話だと」
「そうだな、私も中尉と同じぐらい…目覚めたのは朝だ。『早朝から人間が何用ですか?』というのが私を案内してくれた白狼天狗の第一声だったからな」
食事を終えた女性大佐も話に入ってきてくれた。そういえば中将の言葉からすると、男女1名ずつの階級で両者共に合流できてるのは大佐だけか。一応工兵も男女一人ずついるが…工兵は人里襲撃に参加してたのが女性だったから男女比が1:2。各一名の例外枠になる、が…
(スパイは男だった。そして大将と中将のことも考えると…男女比が偏らないように派遣されてるのか?)
工兵にスパイを加えれば2:2になり、大将と中将で1:1。最終的に男女の数は同じになる…これに何か意味があるのか?
…俺たちを創造する際の制約に入ってる可能性はありそうだな。頭の片隅に入れておくか。
―――そう俺の中で結論付けたところだった。
ドォン!!
「「「「「っ!?」」」」」
ここまで響く爆発音。これはアリスの家で聞いた覚えがある…!
「な、なんですか!?」
「…誰かが地雷を踏んだらしいな。全軍がここに集結した以上、引っ掛かったのはおそらく現地住民。
これでますます俺らは、現地住民にとって【敵】になったってワケだ…」
「…わたしたちにとっては、かんげ「騎兵ちゃん、それは口に出すな。
聞かれてるのは俺らだけじゃない」
「…っ!すみません。ありがとうございます中佐さん」
騎兵ちゃんの迂闊な発言を拾えたのはいないと思うが、気を使ってくれたらしい女性大佐が全軍の気を引いてくれる。
「…大将閣下。地雷の設置ポイントは、後いくつ把握していますか?」
「ここ…軍旗から見て人里方面の森道です。この開けた平野部に人里側から侵入する場合、6、7割方踏むと思われます。これが最後の地雷です」
大将ではなく工兵…狂信派の男性工兵ではない女性工兵が大佐に答えた。それに対し男性の大佐が言葉を向ける。
「なぜ設置位置を把握している?」
「集合してからの情報を整理した結果、大将閣下以外に私たち工兵も把握できています。
何故大将閣下以外に私たち工兵だけ把握しているのかは不明ですが…」
工兵は設置位置を知るように創造された?
…もしやそれが【与えられた能力】か?騎兵ちゃんが乗馬を召喚できるように、工兵は地雷の位置を確認できる。
(だがそうだとすると…工兵は地雷によるフレンドリーファイアを防ぐためだけの数合わせなのか?
そうなると、工兵より下と理解できた【スパイ】の能力はなんだったんだ…?)
戦闘方面でほぼ最下級であろう工兵より、スパイの方が下というのは今思えば違和感がある。今となっては市場で男性少将と同時に消滅してるから確認しようがないが…俺たちが創造された存在だとすると、スパイにも何かしらの役割があったはず。それが黒幕へと繋がる情報じゃなきゃいいんだが…
そのタイミングで、大将が全軍に再度号令をかける。
「まもなく作戦開始時刻だ。戦地における細かい指示は移動中に私・中将・少将が各隊の班長として伝える。
全軍、準備を」
「「「ハッ!!」」」
さっきと同じ3名が姿勢を正して敬礼を返す。
…もう時間がねえ。後は出たとこ勝負しかねえか…!
「―――ちっ、中佐がやってくれたのはホント助かってたんだな…気分悪い」
「無いものねだりしてもどうにもならないわ。それこそ、人型に近い野良妖怪じゃなかっただけマシと思うしかないわね」
馬の女が逃げた方向を目撃情報と足跡で追ってたんだが、人里の外に出てそう長い距離じゃないとこで森に入ってやがった。時間的にも一度帰って細かい準備をするかどうか迷ったんだが、いいタイミングでアリスが情報交換に来てくれたから、捜索を続行することにしたんだぜ。
そしてそれほど人里から距離の無い川辺で馬の足跡が急に途絶えた。そこをアリスに色々調べてもらったら、しばらく中佐と馬の女はここで休息を取っていたっぽいって結論になった。ただそれ以上の追跡は難しいと思ったところで聞こえた爆発音。それはアリスの家で聞こえたときよりも近かったから、アリスと意見が一致してすぐ調べに来たわけだが。
\シャンハーイ!/
「…お手柄ね、上海。当たりだわ魔理沙」
「やっぱりか。それじゃ残りは1つだな」
アリスの人形がお目当てを思ったより早く見つけてくれたぜ。
慧音と妹紅、それにマミゾウから教えられた【軍人将棋】。細かくアリスに教えなきゃならねえかと思ってたんだが、博麗神社の方にも一つ同じのが現れてたことで説明の手間が省けたのは助かった。それこそ魔界にいる神綺が軍人将棋なんて知ってるのも驚きではあるんだが…『一般魔界人は自由だから』ってアリスの説明で納得することにした。余計なことを考える時間は無いみてえだしな。
「地雷の駒…これで魔理沙が確認してるのが6駒。私が回収したのが3駒。これにこの1駒を加えて丁度10駒ね。
そうなると、中佐を含めて残りの数はおそらく21」
「だな。ただ問題は、何が目的で中佐たちが突然現れたのかわからねえ」
「皆目見当が付かないのよね。それに中佐も言ってたように、敵側の駒も数に入ってるとすればまだ52駒残ってる計算になる…このあたりも中佐に詳しく聞きたいのだけれど」
「あー、そこも考えるとまだ4つある可能性もあるのか」
そうだった、もし軍人将棋をモデルにしてるなら中佐が戦う相手側もいる可能性があるんだった。まあ私とアリスにとってはその方が中佐の確保って意味で理想的ではあるんだが…
「地雷を人里の関係者が踏む可能性が厄介ね。今のところの設置位置を考えると、そう簡単に一般人が来るような場所じゃないけど」
「可能性はゼロじゃねえからな。威力はこの通りだしよ」
ただでさえ人里内で問題起こしたってのに、トラップで死者を出しましたなんてことになったら庇うのがかなり難しくなっちまうんだよな。どうにかして設置ポイントを見つけたいんだが…
「…駄目ね、トラップ式だから残留魔力が散るのが速い。この駒から同じ魔力を探るのは無理」
「そうなるとやっぱ大掛かりな術式の索敵魔法を幻想郷全体に広げて、直接中佐を探す方が早いか?」
「そうでしょうね、ただそれをすると余計なのも反応する可能性があるのが厄介だわ。
一応霊夢に行使するってことは伝えてからにしたいわね、勘頼りで展開した術式を壊されると二度手間。それとパチュリーにも伝えたいかしら。協力するのは断られても、紅魔館周辺まで範囲に入れると念のためで壊されるでしょうし」
「面倒くせえな…アリスがここで直接行使できないのか?」
「やってもいいけどあまり広範囲には展開できないし精度も良くないわよ?私の索敵は人形による近距離索敵の精度を最優先してるから、広範囲索敵は得意じゃないのよ」
「となると霊夢はともかくパチュリーには先に話した方がいいか…協力してくれりゃ負担も減るしな」
この時間に紅魔館に行くと咲夜がいい顔をしないが…昼間に侵入して寝てたレミリアを起こすよりはマシではある。睡眠妨害するとレミリアは容赦なくスペルカードルールギリギリの弾幕撃ってくるからな…流石の私もこれには懲りたから、死ぬまで借りてく時はなるべく夕方近くにしてるんだぜ。
「それじゃ、紅魔館に行ってみる?人里でそんな騒ぎがあったなら、流石に自警団から霊夢に連絡が行くでしょうし。運が良ければ壊す前に情報寄越せって聞きに来るかもしれないわ」
「そうだな!時間はなさそうだし、行くしかねえぜ!」
アリスも結構中佐を気に入ったらしいから話が早くて助かるぜ。それじゃパチュリーに軽く説明して、直接中佐を探してもらうか。