幻想郷を支配?…いや無理だろ   作:KAGENARI

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誤字報告により12話の脱字を修正してます。いつも迅速な報告ありがとうございます。


第13話 博麗神社夜襲

戦闘態勢に入り戦場への獣道を登り切る。問答無用の先制攻撃を警戒し、一気に神社境内の中ほどまで飛び込むと、案の定俺らを察知していたらしい巫女が待ち構えていた。

 

「参拝客かしら?素敵なお賽銭箱はそこよ」

「…そうだな、折角ここまで足を延ばしたんだ。神頼みでもしてみるか」

「へえ、話が分かるじゃない」

 

…魔理沙と阿求からこの巫女…博麗霊夢の話をある程度聞いておいたのは正解だったな。そして俺が渡した情報に価値があると判断してくれた阿求は「トラブル回避に使ってください」と情報料として多少の金銭を恵んでくれたのだ。それを有効利用させてもらう。

尻ポケットからその小銭を取り出し、示された先の賽銭箱へ歩みを進め…

 

「まったく。なんでお賽銭入れてくれるいい奴が敵なのよ!」

 

その言葉が聞こえ即座に地面を転がる!俺が一瞬注意を引いてすぐ大将はタンクを移動させるべく空間魔法を行使しているのだが、その時点でこの巫女はアリスの予測通り俺も連帯責任で敵と割り切ったのだ。

 

「閣下!」「ひっ!?」

 

転がると同時に巫女の放った札が俺の髪を掠めるとほぼ同時、女性大尉が大将を庇っただろう声と男性工兵の悲鳴が耳に入る。何の役にも立たず一人散ったわけだ。

 

「これっぽっちで加護なんて言わねえ、少しの幸運でいいから俺にくれ…!」

「――ッ!見習わせたいわねアンタのその心掛け!」

 

困った時の神頼みとしか言えないが、取り出した小銭を転がったことで距離が詰まった賽銭箱に放り投げる。こんな作法もクソも無い入れ方じゃ幸運すら恵んでもらえる気がしないが、気休めでも頼れるものは頼りてえ!

そして魔理沙と阿求から聞いた通り、この神社にお賽銭は滅多に入らないようでこんな雑な方法で賽銭箱に放り投げたにもかかわらず巫女は俺への敵意が若干薄れる。それにより狙いが甘くなった俺への二撃目は難なく避けたのだが、その流れ弾の先にはあえて無視していた強大な反応…!

 

「んー?私の酒を邪魔する奴なんて久しぶりだねえ。いいつまみになってくれるのかい?」

 

出て来てほしくなかったのが参戦しちまった!幻想郷で活動する上で警戒すべき実力者。その中の一人、伊吹萃香…!あの巫女だけでも相手取れるのが数人しかいないってのに、それと同レベルの敵が一人増えたってことだ。戦闘は始まってすぐに最悪な状況になっている、そしてそんなことを考える余裕なんざなく…!

 

「…ハッ!?」

「お、つまらないザコではないか。思ったより楽しめそうだわ」

 

声が聞こえた方向から悪寒を感じた途端、急に目の前に霧が出た。何の迷いもなく後ろに飛び退くと、俺がいた位置に腕を突き出した小柄な鬼がその場に現れる…!完全に勘と反射で回避できたが、間違いなく次はねえ…!

だが、辛うじて時間稼ぎは出来たらしい。大将の空間魔法が問題なく発動し、タンク2輌が神社境内に現れ発進!

 

「こいつ!?萃香、先に叩き壊すわよ!!」

「しょーがないねえ、酒をこぼされちゃもったいない」

 

流石に神社へ向け爆走し始めたタンクを放置はできないらしく、俺は辛うじて命拾いする。だがタンクの召喚に呼応し総攻撃に移った全軍は、2輌があっさりと止められるやり方に戦慄することになる。

 

『ミッシングパワー』

『在庫全ての陰陽玉』

「「「なっ!?」」」

 

伊吹萃香は巨大化しそのままタンクを掴み上げて、両手で握り潰しスクラップに変える。博麗霊夢は一瞬で大量の球体を召喚し、その奔流に巻き込まれたタンクは境内から転落していった。

一瞬でタンク2輌が失われてしまい、動揺を隠せない本隊に対し。

 

「なーにボサっとしてるのさ。さっきの奴とはえらい違いだねえ」

「あ…!」

「うっ!?」

 

スクラップとなったタンクを高い位置からポイと投げ捨てられ、落下地点にいた少佐が下敷きになる。巨大化を維持する必要もないと判断したらしい鬼は元のサイズに戻ると、足元で硬直していた俺の仲間…女性少尉が裏拳で吹き飛ばされ、鳥居に叩き付けられて動かなくなった。

 

「くっそ…!守ってやれねえとは」

「中佐さんっ!」

「ッ!?」

 

そして俺が仲間を守ろうなんて言える立場じゃないことを再認識させられる。少将と共に神社社殿近くまで別方向から突入してきた騎兵ちゃんの声でそれに気付き、横っ飛びしながら拳銃(ベレッタ)を3連射!!

 

「中佐、か。ほぼ中央値でこの反応となると、甘くは見れんな」

「九尾の狐、か。こんな美しい女性とは戦場で知り合いたくなかったな…!」

「ふっ…近頃はそんな世辞もあまり言われなくなった。素直に誉め言葉として受け取っておこう。

だが残念だよ、博麗神社を狙ってしまった以上…見逃せないのでな」

 

かなり危ない賭けだったが、避けきれない光弾に銃弾を撃ち込むことで相殺できた…!とはいえリロードなんざやってる余裕が無い戦場で、防御のために弾を使うのはなるべく避けたい。そのためには必中かつ必殺で撃ちたいんだが…新たな強者の参戦で絶望感が増す。

 

「藍、そこの女性が少将だわ。生け捕るのは総大将一人で十分、任せるわよ」

「はっ!」

 

阿求からの情報だけでなく、大将も情報を持っていた俺たちのメインターゲット…八雲紫を引き摺り出すのは成功した。しかし、同時に八雲藍という強者も現れてしまった。想像してた以上に、この神社は重要拠点だったらしいな…そして、言葉通り俺たち全員見逃すつもりはないらしく。

 

「橙、あうんと協調して逃亡を図る者から狙え。誰一人として逃がすな」

「はいっ!お任せください藍さま!」

「よろしくお願いしますね、橙さん!」

 

強者としては名前が挙がらなかった相手だが、決して油断してはならない少女2人…猫又と狛犬が俺の仲間にとっての絶望を加速させる。乱戦に紛れて逃亡という手段を先に潰されたのだ。

こうなった以上、俺も腹を括るしかない。騎兵ちゃんと、中尉と、大佐を守るためには…少しでも俺が足止めして大将か中将に作戦目標を果たしてもらう…これが唯一生き延びられる結末。勝利しなければ俺らに生は無いと、今この場で断じられたのだから!

 

「世辞じゃないさ、それに今のやり取りで覚悟が決まった。

 …何も知らないまま死ぬのは御免なんでな。最期まで抗わせてもらう」

「…そうか、お前は己のことを理解しているのだな。

 この場で出会ったのが少々惜しいよ」

 

こんな言葉で同情をしてくれるとは思ってねえが、少しでも攻撃が甘くなることを期待して言葉を交わす。

―――視界の片隅で、中尉が巫女の大幣フルスイングをくらい流血しながら池に叩き落とされたのが目に入る。また一人、仲間が散った…守りたいなら、勝つしかない!

 

「雷よ、乱れ降れ」

「式神『十二神将の宴』」

 

単純な銃撃や高威力の単発魔法じゃまず当てられない。そう判断して初手は範囲魔法―――俺の記憶に残る魔法で最も広範囲にバラ撒ける雷撃連射魔法を行使しつつ突撃!俺の攻撃じゃ火力も命中も期待できない以上、誤爆や至近にいる少将に攻撃してもらうのが唯一の勝ち筋!しかし相手もそれを理解していて、あちらの初手も範囲攻撃。俺だけでなく少将と騎兵ちゃんも狙うように弾幕が展開される!

 

「クッ…回避が精一杯かよ」

「ううっ、中佐さんの援護を…っ!」

「欲を出すな騎兵。無駄死にしないように動け」

 

いくつか掠めるもののなんとか避けきる。騎兵ちゃんは俺の援護に回ろうとしたが少将に窘められ回避に専念し、少将は回避しつつ光弾を放ち牽制する。しかし格上の九尾はこの程度で動じるはずもなく、雷撃魔法は僅か左に寄るだけで全て回避し俺と少将に向けて光弾を乱射。思ってたより俺を警戒してるな…!少将より先に俺を片付けようとしたのか、初手で展開された魔法陣から放たれる弾幕へと誘導するように俺を狙ってくる。このままじゃジリ貧、なら…!

 

「距離を詰めなきゃ当てられねえな!」

「ますます惜しくなるな、いい判断だ!」

 

あえて接近することで展開された弾幕からの流れ弾を八雲藍にも向ける!俺の魔法より威力があるんだから優先的に避けざるを得ない、それなら俺も同じ戦法を使うのみ!!

 

「リサイクルエナジー」

「ほう、面白い魔法だな」

 

乱射した雷撃魔法は全て外したが、落雷という性質上魔力電流はしばらく地面に残留している。それを集中させることで再利用し電気弾として下方から狙うが、この程度じゃ不意打ちにもならねえか…!これも後方に下がるだけで難なく躱される。だが多少気を逸らしたその隙に…!

 

「喰らえ」

「当たって!!」

 

少将の土魔法に合わせて騎兵ちゃんが銃撃!そして最大火力である少将の土魔法の回避位置を予測して俺も銃撃!!

 

「連携は見事だが、火力不足が惜しいな」

 

だがそれも俺が初手で対応したように、銃弾に光弾をぶつけて相殺される。だが決め手は俺じゃない!

 

「隆起せよ!!」

「式輝『狐狸妖怪レーザー』」

「少将っ!?」「ああっ!?」

 

何も言わずとも俺の狙いを理解してくれた少将が、俺の銃撃に対処したその一瞬の隙に合わせて大技を放ち決めてもらうつもりだった。

―――だがそこまで読み切られていたのだ。大技を放つための僅かな溜め、その硬直を逃さず数発のレーザーで貫かれ少将が倒れ伏した。それに動揺した騎兵ちゃんにも残りのレーザーが放たれ…間に合え!!

 

「落ちろおぉぉっ!!」

「キャアっ!?」

「優しいことだ、仲間を切り捨てられないか」

 

最大火力の落雷魔法を短縮詠唱で騎兵ちゃんの目の前に落とし、レーザーへの盾代わりにする!完全に遮断は出来なかったが、威力はだいぶ減衰させられたようで数ヶ所を貫かれながらも騎兵ちゃんは倒れずに踏みとどまってくれた。少将の大技も発動自体はしたことで八雲藍に向けて土の巨大な槍が地面から突き上げられたため、大きく回避したことで俺が騎兵ちゃんの前に立つ時間はあった。

 

「騎兵ちゃん、まだ行けるな?」

「は、はい…!回復魔法ありがとうございます」

「驚いたな…雷撃魔法だけでなく回復魔法まで扱えるのか。

 …だが、なぜ中佐という階級が備える…?

 

後半の言葉は聞き取れなかったが、唇を読んだ限り中佐の階級を疑問に思ってるらしい。

―――これは、俺にとって非常に重要な情報だったのだが…思い出すのはずっと先のことだった。

 

なにより、勝たなければ仲間ごと皆殺し。その条件下で少将でさえ歯が立たず敗れた相手が目の前に立ち塞がっているのだ。この疑問に時間を費やす余裕なんざなかったのだ。

 

「騎兵ちゃん、もう後がねえ。

 …一緒に命を賭けてくれるか?」

「わたしからお願いしたいぐらいです。

 中佐さんなら、信じられますから」

「そうか、ならもう小細工は無しだ。

 全力を叩き込む、二人同時にだ」

「はい、任せてください!」

「本当に惜しいな、中佐は。排除するのはもったいない…だが、八雲の姓を授かった者として博麗神社での戦闘は許せないのでな。終わらせようか」

 

俺と騎兵ちゃんは覚悟を決め、八雲藍もそれを察し応える。

決着はもう、すぐそこにある。

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