幻想郷を支配?…いや無理だろ   作:KAGENARI

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誤字報告により13・14話を修正してます。いつも報告ありがとうございます。


第2章 R
第15話 振り出しに戻る


「―――なんで、生きてんだ」

 

俺は死んだはずだ。いくら人間じゃなかろうと首と体を切り離されて生き続けることは…

 

「…いや、妖怪ならあり得るか」

 

飛頭蛮が人里に隠れ住むという噂を聞いた覚えがある。

…いやちょっと待て。

 

(おかしい、俺は噂話なんぞ聞けるほど長く生きていなかったはずだ。

 つまり、俺を創造した奴も()()()()()()()()()()ワケか)

 

俺に記憶を与える上で、わざわざ噂なんて不確定な情報を残す必要はない。何より俺らに課せられた目的は【支配】…敵になるであろう妖怪の存在なら、噂レベルだろうと確実に存在しているという方向で動くべきなのだから。

つまり、俺個人が探すべき相手はやはり幻想郷内の一般人という可能性が高い。妖怪に関して正確な情報を把握できていないということなのだから。

 

「………いや、そうじゃねえな」

 

まずは現状を把握しねえと。俺は博麗神社で八雲藍に一蹴されて死んだはずだ…騎兵ちゃんの最期も視界に入った上で。しかし、俺の頭と胴体は繋がって…?

 

「ん…?」

 

背後の竹にもたれかかるような姿勢から起き上がろうとすると、右手の中にあったモノが転がり落ちた。

それは、小さな駒。

 

「…中佐。俺の駒か?」

 

それに気付くことで、服が変わっていることにも意識が向く。女中佐ごと燃やされてギリギリ衣服の体を保っていた軍服ではなく、ロンTにジーンズというラフな服装に変わっていた。そして、最も違和感があるのが…

 

「…R?」

 

左手だけにオープンフィンガーグローブを付けていて、その手の甲側に大きくRのアルファベットがデザインされている。黒地に黄色でRのオープンフィンガーグローブ(しかも片手だけ)という正直に言ってセンスのないファッションだ。だが、中佐として死んだ俺が再び目覚めたことから推測すれば…

 

「―――Revival(リバイバル)、もしくはReincarnation(リーインカーネイション)か?」

 

Rというのが頭文字であれば、復活・再生・転生などという意味を持つこの単語が思い浮かぶ。逆に考えると、俺が()()()()()()()()()()であることを示す証拠と見られる可能性があるな。片手だけというのもあまりに目立つ、これは外して動くべきか。

 

そう判断してオープンフィンガーグローブを外し、中佐の駒と一緒に傍らに落ちていたナップザックへ放り込んでおく。ちなみに今回のナップザックの中身は水筒と携帯食料しか入っていなかった。中佐として目覚めた時と違い、武器が無い…拳銃(ベレッタ)どころかアーミーナイフすら支給されていないのだ。

…下手すると、前より合流できる同僚が少なくなるんじゃないか?本当に俺らは捨て駒としか見られてねえようだな。

 

(とりあえずは仲間と判断できた皆と合流だな。騎兵ちゃんに中尉と少尉は力を貸してくれる…復活しても記憶が残ってれば、だが)

 

問題なく体は動く。中佐の時に使えた魔法も覚えてる。

野良妖怪なら俺一人でも対処できると踏んで、まずは現在位置を把握すべく竹林を歩き出す俺だった。

―――俺が例外だということに、気付けないまま。

 

 

 

 

 

 

 

「…それじゃ結局、中佐の駒だけ見つからなかったってことか?」

「そうなる。私と魔理沙で回収した軍旗と地雷の他に不足していた駒だが、騎兵の駒は妖怪の山で哨戒中の白狼天狗によって回収されたものを烏天狗の大将が八雲に提出してきた。

もう一駒、中尉の駒は守矢神社から回収している。そもそもこちらを持っていたのは地上に出て来ていた古明地こいしだったらしいが、紫様が地霊殿に出向いて聞き出したところ彼らの同僚で間違いないことを確認できている。

そして大将を処刑してから二日経っても別の存在が確認できない以上、対局側の駒は戦力化されていないと判断した。ここに関しては八雲だけでなく隠岐奈様も動いてくれたから間違いない…もっとも、ヒコーキの駒が実体化すると厄介ゆえに、紫様がしばらく臨戦態勢を維持することになるが」

「まあそこは任せるわ、私と魔理沙にとって直接は関係ないから。

…それで、わざわざ私の家まで出向いた理由は何かしら?」

「中佐と行動を共にしていた二人に情報提供してもらいたい」

 

中佐たちの博麗神社襲撃からすでに3日。紫によって捕縛された大将は翌日に処刑されたってことだけは先に伝えられてたんだが、結局中佐の駒だけが見つからなかったんだぜ。昨日一日は橙やあうんだけじゃなくナズーリンにも手伝わせて博麗神社境内を大探ししても結局見つからなかったから、相方だった馬の女が散り際に放った風魔法で吹き飛ばされたんじゃねえかって結論に落ち着いて後は藍と橙の式神に捜索させるってことになったんだが。

 

昼過ぎになって藍が直接私の家に来たんだよな。用件は今言った通りで、ついでだからとスキマでアリスの家まで連れてこられたぜ。まあ同じこと何度も話すのも面倒だしそれはいいんだが…

 

「藍から見て中佐は異常だったのか?」

「戦闘力自体は軍人将棋の駒に準じていただろう。だが創造されて一日すら経っていないモノとしては意志が強すぎると感じてな…戦闘中に口説かれるような言葉を交わせたこと自体が、彼らの出自を考えると不自然だ」

「口説かれるって…藍にも言ってたのかよ。やっぱ女の敵だったんだな中佐」

「にも?私の他にもあのような言葉をかけていたのか?」

「まあ、口説かれたと言うほどではないけれど。女性として素直に喜べる言葉は私も貰ったわ。魔理沙はからかおうとして反撃されてたけど」

「アリス、余計なことは言わなくていいんだぜ!」

「ふっ…そういうことか」

「藍もなんだよその笑いは!?」

 

くそー、お前らはいいよな発育が良くてよ!まあ藍は年齢の差があるからともかく、アリスは魔界で初めて会った時に比べてなんでこんなスタイル良くなってんだ。不公平だぜ…

 

「だが、中佐が我々の予測しているような存在であると仮定するなら…これは不自然だと感じないか?」

「…そうね。言われてみれば、もし中佐が目覚めた時間こそ中佐が創造されたときだと考えると…女性に対する態度に余裕があり過ぎるわね。それこそ魔理沙が言うように【女性相手の経験が豊富】なように感じるけれど、そんな時間を中佐が過ごしていたはずがない。それこそ魔理沙が初めて対応した女性なんて可能性すらある」

「それもそうだぜ…」

 

たしかにアリスと藍の言う通りなんだよな。もし中佐があの時生まれたっていうのなら、あんな女の敵みてえなこと言えるはずがないんだぜ。そこを考えると、中佐には【そういう経験の記憶があった】かもしれないってことだ。

 

「そしてもう一点私が違和感を覚えたのが、彼が行使していた回復魔法。魔理沙とアリスは彼らの中で、中佐以外に回復魔法を行使していた者を確認できているか?」

「そういえば霊夢にも聞いてたわねそれ。私は中佐以外が戦闘に参加してるところに居合わせていないのよ。魔理沙は?」

「…少なくとも私と中佐で片付けた市場の連中にはいなかったぜ。それが何かあるのかよ?」

「中佐である彼だけが回復魔法を行使できる。もし私が彼らを創造する立場なら、中佐に固有の回復魔法を備えさせる創り方はしない。何故なら軍人将棋の駒において、中佐は決して強い駒ではないからだ。回復魔法は戦線の立て直しに有用、故にそう簡単に失うわけにはいかない駒。

私が固有能力として持たせるなら、大将か少将…もしくは騎兵か工兵。もっと強い駒か、危機に陥っても逃がすことが出来る移動力に長けた駒に持たせるだろう」

「たしかにそうね…悪く言ってしまえば、中佐の駒は平凡…司令部を制圧できるとはいえ、駒の強さではほぼ真ん中。他の駒にも回復魔法を持たせているならまだしも、駒固有の能力として持たせるのであれば中佐という選択はもったいなく感じるわ」

 

藍とアリスは軍人将棋をやったことがあるみたいで納得できてるみたいだな。私は正直ピンと来ないんだが…藍の例えならなんとなくわかる。回復魔法を一つの駒にしか持たせられないなら、ど真ん中な強さの駒に持たせるのはもったいないもんな。

 

「そしていまだ発見できていない、核となったはずの中佐の駒。この3点から、私が情報を引き出す前に討ち果たしてしまった中佐こそ重要な情報を持っていたという可能性が高くなったということだ。駒の強さに関しても【中央の強さ】という観点で見れば佐官・尉官の中では特別と言えなくもない」

「そういえば、中佐と魔理沙で始末した中にもう一人の中佐がいたのよね?それはどんな奴だったの?」

「へ?

…えーっと、消去法で考えると女のアイツか。別に変なところはなかったはずだぜ、たぶん」

「たぶんって…なんでそんなあやふやな表現なのよ」

「それがよ、中佐が上手く会話で隙を作ってたところに妹紅が同じ服だからって中佐ごと燃やしちまったんだよ。その直後に突っ込んできた馬の女に攫われた中佐と違って、容赦する必要が無い女の方は妹紅がそのまま灰にしちまったからな。中佐と同じ拳銃を何発か撃ってたぐらいしか確認できなかったぜ」

「そうか。なら後で私が藤原妹紅に確認を取っておく。

とりあえず、彼がお前たちとどのように交友したのかも詳しく話してくれ」

「…まあいいか。中佐を真っ先に見つけたのは私だぜ」

 

中佐をやった本人だとしても、藍は中佐に関して調べるのに手を貸してくれそうだし。何も隠さず話すべきだよな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…まだ、使い切れない」

 

持たされてしまった大きな力。ボク側の駒がすべて失われても、弱まることは無く。

新しく【手駒】を創造する時にしか、消費されないみたいだった。

―――だから、新しく創造したのに。まだ力が残っている。

 

「いっそのこと、見つかってしまう方がいいのでしょうか」

 

間違いなくボクは殺されてしまう。でも、こんな勝てっこない遊戯(ゲーム)で人里を荒らしてしまうぐらいなら…

 

「でも、怖い」

 

死にたくなんてない。だから新しく創造した。

でも、力を使い切ることが出来たとしても…元凶がボクだと広まってしまったら。

 

人里から追い出されてしまうでしょう。

そうなってしまえば…弱いボクが辿る末路なんてわかりきっています。

 

 

 

「どうすれば、ボクは生き延びることができるのでしょう」

 

 

 




メッセージボックス宛に前作のリクエストをいただいたため、一度こちらは休載扱いにします。楽しんでいただいている皆様、申し訳ありません。ただしっかり切り替えないとこちらと設定が混同する可能性がありますので…(作者の能力不足)
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