幻想郷を支配?…いや無理だろ   作:KAGENARI

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第3話 あってはならぬモノ

「…人里内部で爆発というわけじゃないようだな」

「それは把握できたのね。魔力探査や視力は問題ない、と」

「ただ人里の外だとしてもやり過ぎだぜ、ありゃ」

 

魔理沙とアリスの先導に従い飛行していたが、まだ俺にとって最悪を引いたわけではないようだった。煙の上がる地点はまだ森にほど近い草原で、周囲に人の気配がないのだ。少なくとも人的被害が甚大ということは無いだろう。

だが、そうなると誰が何の目的でこんなド派手な爆発を引き起こしたのかがわからなくなるんだが。

 

そのまま2人と共に爆発地点に降り立つと、魔理沙とアリスが顔をしかめた。

 

「…帰り道で食べないで良かったぜ」

「最低限の調査だけして帰りたいわね…獣や鴉が寄ってきそうだわ」

「あまり女の子に見せるもんじゃないな。魔理沙、アリス。死体や爆発地点の調査は俺がやろう。魔力に関することと周囲の警戒を任せていいか?」

「頼むぜ中佐。正直私はあまり慣れてないんだぜ」

「私もよ。まさかこんな形ですぐ助けられるなんてね」

 

あれだけの爆発音にしては被害は少ないのだろう…だが威力は2人の想像以上だったらしい。人間だったらしき肉片が爆発によって出来たらしい穴の周囲に飛び散っていた。耐性の無い少女なら嘔吐してもおかしくないグロい光景。

だが、その肉片の残り方で俺でも状況は察することができた。

 

「どうやら地雷を踏んだらしいな。下半身は木っ端微塵に吹き飛んだらしい…もっとも上半身がある程度残ったおかげで情報源としては十分すぎるが」

「地雷?なんか聞いたことはあるが…なんだっけ?」

「地中に埋めておくタイプの爆弾よ。トラップ式の爆弾と思えばいいわ。

問題は、幻想郷においてそういった科学兵器はまだ流通していないという点だけど」

「…ああ!里香が研究してるような武器か。思い出したぜ」

「まだ流通していない?

 アリス、だとすると俺がこれを使いこなせたのもおかしいのか?」

 

なるべくアリスの視界に肉片を入れない位置に移動してから、拳銃(ベレッタ)をアリスに見せる。目覚めてすぐ俺はこれで野良妖怪を迎撃したのだが、流通していないとなるとますます俺が厄介者になる。

何故なら、俺が記憶喪失ではなく創造された存在だった場合…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということになるからだ。それはすなわち、俺たちは完全な外敵だと言える状況証拠になる。

 

「…魔力拳銃だったらまだ可能性はあったのだけれど。それ、魔力は全く必要としないわよね?」

「ああ、これが銃弾だ。言い方からすると実弾式の銃って時点で貴重品ってことだな?」

「その通りだぜ。私は里香が使ってた魔力拳銃を見せてもらったことがあるから知ってるけど、人里の奴らだと拳銃なんて知識はあっても現物は見たことが無いのがほとんどだと思う」

「そうか…だとすると、余計面倒になりそうだな。

フレンドリーファイアならまだわかりやすいが。抗争でこうなった場合、俺みたいなのがいる武装勢力が2つあるってことになるぞ」

 

死んだコイツは不運だったが、死体を処理される前に発見できたのは俺にとって幸運だった。

判別できる残骸の中に、階級章が残っていたのだ。ここから推測できる可能性の一つは、俺の同僚が地雷の設置位置を知らされずに引っ掛かった…正直マヌケもマヌケだが、俺も設置位置なんざ記憶にないので下手すると俺がこうなってた可能性もあるわけだ。そして、もう一つの可能性はもっと厄介で。死体の襟から階級章を引き千切り2人に見せながら面倒になる予測を口にする。

 

「見ての通り、この階級章は俺のと同じだ。一階級下だからデザイン的にもわかりやすいだろうよ…つまりこの死体は【俺の同僚だった少佐】の死体ってことになる。

だが、地雷を仕掛けたのが俺の同僚じゃなく()()()()()だった場合…流通が制限されてるような兵器を扱う組織が二つあって、それが敵対抗争を始めたってことになる」

「そうだとすると本当に厄介事ね。霊夢どころか紫が動くレベル…異変じゃ済まないわよ」

「流石に面白そうなんて言ってられなさそうだぜ…中佐、本当に記憶が無いのかよ?」

「悪いが、な。

ちなみに、こういった事件があった場合の報告は必要なのか?放置でいいなら、使えそうなモノは俺が回収したいんだが」

 

少々離れた位置に吹き飛んでいた、俺の持つ鞄と同じものを拾い上げながら魔理沙とアリスに尋ねる。支配なんて無茶な目的だけじゃなく、そこと全く無関係な敵対者すらいる可能性が出てきたわけだ。使えるモノは片っ端から確保しておきたい。

 

「…そうね、霊夢には伝えておくべきでしょう。魔理沙、博麗神社に向かう気はある?」

「嫌だぜ。面白がるのは自重するけどよ、今のところ一番異変解決のヒントになりそうな中佐がいるんだぜ?

余計な時間は取りたくないな」

「でしょうね…

わかった、私が霊夢に伝えに向かうわ。それで中佐、状況が状況だからある程度は見逃してあげる。持っていきたいモノを手早く選べるかしら?」

「助かる。

…ざっと見たところ、大したモノはないんだが。これは持って行っていいか?」

 

アリスに見せたのは多少肉片がこびりついているとはいえ、整備すればまだ使えるだろう拳銃(ベレッタ)と鞄に入っていた予備の銃弾に魔力回復薬。どうやら同僚に支給されているのも同じ最低限のキャンプ用品だったらしく鞄の中身は同じだった。それなら予備として拳銃(ベレッタ)は持っていきたい…アーミーナイフは俺が雷撃魔法を憶えてる以上活用する機会は少ないだろうから1本で十分だろうという判断だ。

だがアリスはそこまで俺を信用しきれなかったようで。

 

「悪いけれど、拳銃本体は遠慮してもらえないかしら。現物のあるなしで霊夢に対しての説得力が違ってくるのよ。それこそ中佐が火事場泥棒したってだけで、霊夢は容赦なく退治しようとするわ」

「霊夢ってのはアリスと魔理沙より強硬派ってことか。それを教えてくれただけでもありがたいさ…後は見逃してくれるんだな」

「ええ、なるべく魔法で対処するようにしなさい。少なくとも実弾射撃よりは幻想郷で一般的だから」

「ご忠告痛み入る。アリスも十分注意してくれ」

「中佐は自分の心配をしなさい。

 それじゃ魔理沙、私は霊夢に話したら好きに動かせてもらうわよ?」

「おう、気が向いたら情報交換はしてくれよ!」

 

それだけ言葉を交わして、アリスは少佐の遺品を持ち飛び立った。好意的に見てくれてはいるが、俺の隠す目的を知られたらアリスは俺を始末する方向に動くだろう…最期まで隠しきれりゃいいんだが。

 

「魔理沙はまだ俺に付き合ってくれるんだな?」

「ああ、少なくとも中佐の仲間がいるってことに嘘はないのがハッキリしたからな。

とりあえず人里までは付き合うぜ。少なくとも私と一緒なら門番に追い返されることは無くなるはずだ」

「そうか、助かる。

…ありがとな」

 

その魔理沙の返しでもう一つ問題点が浮かぶ。それはつまり俺の同僚は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってことになる。とはいえ人里外部で同僚を探す方がずっと困難…なにしろここのような平原ならともかく、森や山を捜索するには人手が足りなさすぎるのだから。

 

「それじゃついてきな!人里までもう少しだぜ」

「アリスの報告で動くより先に死体を食い散らかされるリスクはあるが…持ち歩く気にはなれねえしな。

悪いな少佐。放っておかせてもらう」

 

そのまま箒に跨った魔理沙を追って、俺も再度上空へ飛び上がる。

―――この時、()()()()()を放置して移動したのが、俺にとって致命的なミスだった。

 

…しばらく時間が経て残留魔力が尽きたとき。爆発地点だった平原には…肉片は消え去り、2つの小さなモノだけが残されていた。

 

 

 

 

 

そして魔理沙の案内で人里に向かったのだが、魔理沙も門番に余計な時間を取られるのを嫌ったらしく。

 

「行先は任せてもらっていいか?あまり目立つのも良くなさそうだし」

「むしろお願いしたい。俺は情報どころか判断基準すら持ってないからな」

「OK、ならあいつだな。こっちだ」

 

そう返した魔理沙はさらに高度を上げた。視認される可能性を少しでも下げたいらしい…これは俺も同感だから何も言わずに追随する。そのまま飛行してしばらく、上空から見ても立派な屋敷の上で魔理沙が停止した。

 

「ちょっとこの辺で待っててくれるか?私が事情を話して、中佐は上空からそのままお目当てに降りてもらえるように頼んでくるぜ」

「そこまでやってもらえるのは助かる、魔理沙には足を向けて寝られないな」

「そう思うんならしっかり私の手伝いをしてくれよ?

結構な大事なのは間違いなさそうなんだからな」

「安心しろ、俺は今のところ魔理沙とアリスしか頼れる相手がいない」

「そうだったな。それじゃ、行ってくるぜ!」

 

そう言って魔理沙が地上へ降りていく。

…これだけ高度を取ってれば、地上から視認されることは無いだろうが。一応警戒はするべきだろうな。

 

(とはいっても、索敵魔法の魔力反応を拾われちゃ本末転倒。俺も視認できる範囲を警戒するぐらいしかできないんだが)

 

―――つまり警戒のしようがない。それこそ上空は遮蔽物が無いため、飛行して接近してくる相手は魔力反応と合わせてすぐに見つけられる。地上も同様で、俺に近づこうとすれば飛行魔法を行使する必要がある以上魔力反応を先に拾えるだろう。

 

(…今のうちに俺だけで整理しておくか)

 

魔理沙を待つ間にここまでの状況を整理しておくことにした。

 

まず、俺の目的…いや、目標になるのか。『この理想郷の、支配を』―――思い出したこれは俺の声じゃない、アリスが指摘した通り俺の裏にいる存在の目的だ。つまり俺個人としてはこんな無茶な目標を目指す必要はない。だがこれに従わないことで俺が粛清される可能性は高い。

 

(なにしろ、中途半端に記憶を持たせてる…戦闘力も残してだ。俺らを手駒として支配を目指すってのは本気だろう。用済みだったり反逆するような手駒は邪魔なだけだ)

 

となるとポーズだけでも従っているように見せる必要はある。少なくとも俺の裏にいる存在を突き止めて、そいつを倒しても俺が生き延びることが出来る確証を得られるまでは。

…この時点で、だいぶキツいとしか思えないんだが。

 

(だが何も知らずに捨て駒として散るのも悔しいからな…!とにかく今ならまだ情報不足による行動で済む。理想は同僚と接触するまでに、魔理沙に協力してもらって集められるだけの【今の支配者】の情報を受け取り、それを手土産に同僚と合流して【俺の裏にいる存在】を見つけ出す)

 

まずはそこからだ。そもそも【俺自身】が()()()()()()なのかを知らなければ、俺がこの先どうすれば生き延びることが出来るかすらわからないのだから。

 

前途多難だが、やるしかない。俺が俺という意識を持った以上、少しでも長く生きたいって願望があるんだからな。

 

「…何も知らねえまま、くたばってたまるか」

 

遮蔽物の無い青空の下で、俺なりの決意を口に出す。

力を貸してくれた魔理沙とアリスに報いるためにも、簡単に散る気はない。俺は俺なりに、出来る限り足掻いてやる…!

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