幻想郷を支配?…いや無理だろ   作:KAGENARI

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第4話 必要な情報

博麗神社に向かう途中で、事態はもう大きく動いてることを察したわ。霊夢と萃香が肩を並べて博麗神社の外に出ていて、その地点から派手な打撃音が響いてる…余程のことじゃ無いと有り得ない光景。霊夢はともかく萃香が自発的に動くことは稀、それもお互いに単独行動じゃなく同行してるなんて、少なくとも異変と判断して動いてるってことだわ。

 

だから私も途中で進路を変えて、霊夢と萃香の居場所に向かうことにした。もっとも、位置的には人里から博麗神社へ向かう最短ルート上だったから急カーブするような進路変更にはならなかったけど。

 

そして私も合流したとき…すでに処理は済んでいたとはいえ、本当に大事になってることを実感することになった。

 

「―――アリスじゃない。なに、お賽銭を入れに来たの?」

「残念だけどそのつもりは無いわよ。もっとも、私が忠告するまでもなかったようだけれど」

「ん~?その言い方だとそっちでも見つかったってことかい?」

 

霊夢と萃香は戦車(タンク)を破壊して足蹴にしてたわ。拳銃や地雷どころかもっと幻想郷に存在しないはずの兵器を発見した以上、迅速に破壊したってことね。

 

とりあえず萃香に絡まれると後が面倒(主に絡み酒で)だから、聞かれたことに答えてさっさと退散しましょうか。

 

「そういうことよ。もっとも、そこの戦車に比べれば大したモノじゃないでしょうけど…一応まだ幻想郷には無いはずよね、これ」

 

そう言ってところどころ汚れた拳銃を霊夢と萃香に差し出す。こびりついてた肉片は中佐が掃除してくれたから不快感はだいぶ抑えられたわ。

 

「面倒なことになってるわね…それ、回収するわ。紫に見せた方がいいでしょ」

「そのあたりは任せるわ、私は率先して解決に向かう気にはならないから」

「それじゃ、コレは私が神社まで運ぼうかねえ」

 

そう言って霊夢に拳銃を手渡し、萃香が外装がボコボコになった戦車(タンク)を持ち上げようとしたときだったわ。

 

「「えっ…!?」」

「んー?どうしたのさ…って」

 

霊夢に手渡した拳銃が、突然魔力化してそのまま霧散した…!

つまり、あの拳銃は魔力で構成されていた物質で、たった今残留魔力が尽きて消失したということ。そして、霊夢どころか()()使()()()()でさえ消失の瞬間まで【魔法物質】と認識できていなかった。

本当に、禁呪クラスの魔法が行使されている可能性が高くなったわ…!

 

「ちょ…!?アリスどういうことよ!?」

「私も驚いてるわよ…!ここまで魔力を感じさせない魔力物質だったなんて!

まさかそっちの戦車も!?戦車長はどうしたのよ!?」

「へ、戦車長?

…あー、もしかしてこの中に動かしてる奴がいるの?」

 

そこからなの…!霊夢も萃香も戦車をゴーレムか何かと勘違いしてるのかしら。

とりあえず、情報を得るために口を割らせないと。

 

「萃香、搭乗口をこじ開けてちょうだい。少なくとも敵ではあるでしょうし、尋問すればいいわ」

「搭乗口ってどこだい?そもそも搭乗口って何だい?」

 

駄目ねこれ。仕方ない、私が調査しましょうか…

 

「上海、蓬莱。頼むわ」

\シャンハーイ/\ホラーイ/

 

即座に上海と蓬莱が戦車上部に向かい、それらしきハッチを持ち上げようとしたのだけど。

 

\…シャンハーイ/\…ホラーイ/

「おっ?そこを引っ張ればいいのかい」

「萃香、頼むわ」

 

持ち上がらないようで私に振り返った。それを見て萃香が代わりに飛び上がり、霊夢も賛同する。そして萃香がハッチを軽く開くと…

 

「ありゃ?」

「…これも魔力物質。とんでもない造形魔法ね…」

 

萃香が掴んで引っ張った部位だけ音もなく魔力光に変わり霧散したわ。つまりこの戦車(タンク)も魔力で創造された兵器…こんな大型兵器を魔力だけで模すなんて、本当に中佐の裏には最上位の魔法使いがいるようね。

そしてその萃香の膂力が決定打になったのか、そのまま全体が魔力光化し消失する。

 

「ととっ!」

「まったく…まあこれなら慌てて紫に伝えるほどじゃないかしらね。

―――うん?」

 

消失したことで足場を失った萃香が着地すると同時に、霊夢が何かに気付いたようで地面に落ちていた小さいモノを拾い上げる。私と萃香、私の後ろに戻った上海と蓬莱も霊夢が手にしたモノを覗き込んだ。

 

「…これ、ボードゲームの駒かしら?」

「そうなのアリス?私は見たことないんだけど」

「私もないねえ。形自体はたしかに将棋の駒に似てるけどさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「待たせたな中佐。付いてきてくれ」

「ああ」

 

魔理沙を待つこと少々、呼び戻しに来てくれた魔理沙と共に屋敷の中庭に着地する。そこから縁側に視線を向けると、着物を着た少女が腰掛けていた。

 

「ええと、あなたが中佐さんでしょうか?」

「ああ、おそらく厄介事に関わってる不審者だ。君は?」

「稗田阿求と申します。若年ですが、ここ稗田家の当主を務めています」

「阿求は一度見たものを忘れない程度の能力を持ってる。情報に関して速度はともかく、精度はかなり高いんだぜ」

「そうなのか…本来なら知っていたのかもしれんが、やっぱ思い当たらない。顔見知りだったならすまない」

「いいえ、中佐さんとは間違いなく初対面ですよ。私の記憶にありませんので間違いないです」

 

少なくとも人里の名家に入れるような立場じゃないってことは確定だな。中佐である俺でこの対応なのだから、尉官は当然で佐官も怪しいだろう。可能性があるとすれば、将官か。

 

「それじゃ初対面ついでにもう一つ聞きたいんだが、この階級章を身に着けた奴に心当たりはないか?」

「階級章、ですか。

そうですね、それも初めて見ます。そもそも階級という概念自体が幻想郷には無縁なものですし」

「無縁?そうなのか魔理沙?」

「ああ、私は中佐ってのは組織のコードネームか何かだと思ってたんだよ。でも中佐からすると違うんだよな?」

「魔理沙さんが知らないのも無理はありません、私も丸暗記した知識でしか理解していませんから。

外界の軍で使用される上下関係と私は結論付けましたが、合っていますか?」

「外界というのが俺にはわからないが、階級に関してはその理解で問題ない。

 しかし、俺以外の情報は無しか…」

 

まあ、単独行動では人里に入れないことを察した以上予想はしてたが。こうも同僚の情報が無いのは面倒だな…

だが逆に言えば、この稗田阿求という少女から得られるだけの情報を貰っておく時間はあるということだ。次に接触すべき相手の情報がない以上、この後即座に動くことは難しい。それならば精度の高い情報を持っているというこの少女から、聞けるべきことは聞き出しておくべきだろう。

 

「魔理沙、ここで俺が理解してないことを聞いていく時間はもらえるか?」

「大丈夫だぜ。それこそ中佐が情報を持つことで正解ルートが見つかる可能性が高くなるだろうしな」

「ありがとな。

それじゃ当主サン、色々聞かせてもらっていいだろうか?」

「阿求で構いませんよ。魔理沙さんのご友人のようですし。

そのかわり、私からもいくつか質問させてください!」

「了解だ、もっとも記憶の欠落で答えられん問いも出てくるだろうがな」

 

 

 

 

 

―――と、いうわけで時間を取って阿求から俺に不足している情報を貰った。具体的に言えば地理関係と有力勢力に、危険視すべき存在だ。俺がここ…いま阿求から教えてもらった地名・幻想郷の敵である存在の手駒である以上、問答無用で叩き潰される可能性がある。それを避けるために必要な情報…どこへ逃げればいいのか、誰を頼ればいいのか、警戒しなければならないのは誰か―――生き延びるために必要な情報だ。

その対価として、俺の持つ装備や魔法などの説明をしたが…同席して何度か補足してくれた魔理沙はともかく、阿求は名家の当主と言えども勢力拡張を狙うような立場ではないらしいので問題はないはずだ。

 

「…駄目だな。欠落してるらしい情報を聞いても、『思い出した』と感じない。初めて知る知識に思える…やはり俺は【人間の魔法使い】ではなさそうだ」

「そうですね…魔理沙さんのお話を合わせても、その可能性の方が高いと私も思います。

ですが、幻想郷で過ごすのであれば種族はあまり気にしないで平気ですよ。先ほど軽くお伝えしましたが、命蓮寺では人間と妖怪が共に過ごしていますから」

「むしろ中佐なら興味を持って保護してくれそうな奴も阿求が説明した中にいるしな。中佐が大人しくしてればそこまで心配しなくてもいいと思うぜ?」

 

俺の果たすべき目標―――支配を知らない魔理沙と阿求が軽い気持ちで声をかけてくれている。そんな状況じゃないんだが、下手に深刻な雰囲気を出すと怪しまれるよな…特に能力として記憶を失わない阿求にそこを見られるわけにはいかない。

なら、話に乗って誤魔化すか。

 

「魔理沙と阿求から見て、俺を保護してくれそうな有力勢力は今は教えてくれた中で何処になる?」

「そうですね、今お話しした命蓮寺は確実に保護してくれると思いますよ。ただ、宗教を押し付けられてしまいますが…それも強制的とまでは行かないので、安全な勢力なのは断言できます」

「レミリアも中佐なら保護してくれると思うぜ。なにしろ面白そうなことにはすぐ飛びつくお子様だからな、傍目から見ても異変に関わってそうで、オマケにある程度冷静に話が出来る中佐は間違いなく興味の対象になる。

それこそ中佐の裏にいる相手にレミリアから喧嘩を売るぐらいはやる奴だぜ」

「そこまで目立つのも避けたくはあるが。ちなみにその命蓮寺と…レミリアなる者の拠点は紅魔館と言ってたか。魔理沙はこの2勢力に伝手はあるのか?」

「紹介ぐらいならしてやってもいいけど、中佐一人で行っても命蓮寺と紅魔館なら大丈夫だと思うぜ」

「そうか…一日二日ならともかく、一週間単位で野宿は避けたいからな。頼ることも考えておくか」

「なんなら私の家に泊めてやろうか?変な気起こしたら魔法で追い出すけどな?」

 

ニヤニヤしながら魔理沙が提案してくる。どうもアリスの家で平然と返したのが悔しかったらしいな。なら…逆に引いておいた方が後腐れないか。

 

「割と本気で性欲に負けかねんから遠慮しておく。魔理沙は自分が美少女だってことに対してもう少し危機感を持っておきな」

「―――っ!?

……いや、やっぱ中佐は女の敵だな?」

「なんでそうなる…別におかしなことを言っちゃいないだろ」

「あはは…私もちょっと同意できそうですから、中佐さんは控えた方がいいと思いますよ?」

「そうなのか?

…いや、そういうことか?阿求、もしかして幻想郷の有力者は…圧倒的に女性の方が多かったりするのか?」

「はい、それこそ男性の実力者は稀少ですね。少なくとも人里に関わる方々だと、女性の方が圧倒的に多数になります」

「なるほどな…レミリアなる強者が興味を持つって魔理沙が言い切るのはここもあるのか」

「そうだぜ、だからこそ私も【中佐は面白そう】って思ったんだからな」

 

割と重要な情報を聞きそびれてたらしい。これは下手に俺が独力で戦うと余計目立つってことだ。本当に慎重に立ち回らねえとな…!

 

―――そして、そんなこと言ってられない方向に、事態は動く。

 

「阿求様!よろしいでしょうか!?」

「はい、そんなに慌ててどうしましたか?」

 

使用人らしき女性が駆け込んできて、凶報を伝えてくる。

 

「所属不明の武装集団が、南の市場で略奪を行っているそうです!

その場にいた自警団が止めようとしたのですが、歯が立たずに負傷者も出ていると!!」

「「「っ!?」」」

 

武装集団という表現で、俺の中では確定した。

俺の同僚か、存在するなら俺たちの敵だ…!

 

「魔理沙!力を貸してくれるか!?」

「任せな!行くぜ中佐!!」

「すみません…!魔理沙さん、中佐さん、お願いします!!」

 

同僚と合流は出来るかもしれんが、状況は最悪になりそうだな…!

これは、魔理沙を()()()()()()()()()()も考えねえと!

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