幻想郷を支配?…いや無理だろ   作:KAGENARI

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第6話 護るべき仲間

「悪いがもう少し休ませてもらっていいか?俺たちは強襲される可能性がある以上、移動は態勢を整えてからにしたい…火傷の鈍痛は引いたが全力で戦闘できるかと言うとまだ怪しくてな」

「大丈夫です、それこそわたし一人じゃ対応できないことの方が多いので…頼りにしてしまうと思います。すみません…」

「謝罪する必要はないさ。休む間にお互いの情報を整理しておこう」

「あっ、そうですね!」

 

騎兵ちゃんは戦闘を静観していたことから受ける印象通り慎重派らしく、行動を焦らないでくれた。安心して背中を任せられる仲間がいる、これは何をするにしても非常に大きい。そして戦闘力は俺の方が上である以上、俺のコンディションは優先すべきだと理解してくれたということだ。

―――魔理沙とアリスですら完全な味方とは言い切れないのだから、この娘はしっかり護ってやらないとな。

 

「まず確認したいんだが、騎兵ちゃんの馬はどうした?」

「あ、戦闘以外では目立ってしまうので休んでもらってます。あの子はわたしが使役する召喚獣と思ってもらえますと」

「そういうことか、今の状況では好都合だな。

次は俺のことを中佐と言い切れる判断材料はなんだった?いくらなんでも屋根の上から階級章を視認できたとは思えないし、会話を拾うのも難しいだろう。

君も、一目で俺を【中佐】だと()()()()()()()のか?」

「そ、そうです。もしかして中佐さんも?」

「俺もそうだ。一つ俺らの能力がハッキリしたな」

 

これは市場で連中を見つけた時点で理解させられたんだが、騎兵ちゃんも同様だということで裏付けが取れた形になる。

 

「俺らは同僚(お仲間)を無条件に判別できるらしいな、少なくとも階級までは」

「そうみたいですね…中佐さんと魔法使いさんが殲滅していたのは、少将・中佐・大尉・少尉・工兵・スパイで間違いないですよね?」

「俺もそう判断した、バッチリ合ってる」

 

階級章を見る前から理解できていたのだ。そして工兵は装備から察することが出来ても、同じ制服を着た個人を無条件に【スパイ】と断定できたのは明らかに不自然。それも俺と騎兵ちゃん揃ってだ。

本来は遭遇戦による同士討ちを避けるために与えられた能力だろう。もっとも、早々に仲間割れとフレンドリーファイアで少なくない人数がくたばってるんだが。

 

「そうだ、女の中佐は俺ごと燃やされてたが、逃亡を図った工兵はどうなった?俺は撃つ前に焼け死にかけたから確認できなかったんだが」

「彼女は中佐さんと一緒だった魔法使いさんが追撃してました。位置的に私には追い付けないと判断したみたいです。少尉に突撃したときの速度から考えれば、彼女じゃ逃げ切れないと思います。ただとどめを刺したかまではわたしも確認できてないんです…情報源として命は助けてる可能性はあります」

「そう簡単に解放されるとは思わないが、脱走されてると面倒なことになるな。魔理沙がしっかり始末してくれてれば助かるんだが…」

「あの魔法使いさん、魔理沙さんっていうんですね。

…うらやましいなぁ

「ん?魔理沙がどうかしたか?」

「な、何でもないです!強くてうらやましいな、って」

「ああ…そうだな。俺も魔理沙にはとてもかなわない」

 

少なくともまだ完全に敵視はされていないはずだ。騎兵ちゃんが命蓮寺に保護されてたってことを俺から伝えれば見逃してくれると思いたい。

…先制攻撃だけはされないように、警戒を怠らないようにしねえとな。

 

「それで、俺たちにとっては一番重要だろう件だ。

…騎兵ちゃんは、いつ目覚めた?」

「昨日のお昼過ぎです。運が良かったみたいで、命蓮寺の近くで目を覚ましました。遠目に炊事らしい煙が見えたのであの子に乗って近付いたら、お寺の用心棒らしい妖怪さんに捕まっちゃいまして…そのまま命蓮寺に連れていかれて、一晩お世話になりました」

「俺より早く目覚めてたんだな。

…少将が漏らした情報からすると、俺はかなり目覚めるのが遅い方だったっぽいな」

「え、そうなんですか!?」

「ああ、俺が目覚めたのは今朝だ。俺も運が良かったらしく、目覚めてすぐ魔理沙に発見されてな。色々情報を集めるために魔理沙が案内してくれてたんだよ」

「そんな短時間で、あんなに息の合った共闘が出来るんですね…すごいです」

 

凄いのは俺じゃなく魔理沙なんだけどな。俺を囮に完璧な動きをしてくれた。

…敵に回しちまった時の怖さをあらためて思い知ったとも言うんだが。

 

「時間のほかにもう一点。騎兵ちゃんの記憶はどんな感じだ?

俺はどうも【人間関係】と【地理関係】だけ意図的に消されてるように感じるんだが」

「す、すごいわかりやすい言い方ですね!そのとおりです!

わたしじゃそんな風に上手く言葉にできなくて、白蓮さんたちを困らせちゃったのに…」

「そうか、となると目覚めるタイミングはバラバラでも、初期に与えられた記憶は一律ってことか…?」

 

俺と騎兵ちゃんの二人だけでこのあたりを判断するのは早計かもしれないが、手駒として創造されたのであればこの可能性が高いだろう。なにしろ俺が視認できただけでも8人、少将の言葉からすればさらに2名加わり二桁に乗る数だ。これだけの戦力を創造するのであれば、少しでも魔力消費を抑えるべく単一化できる部分はそうするはず。各人の記憶は【人間関係】と【地理関係】を削除するという条件で創造したって予測だ。

 

だがこうなると、同僚(なかま)も俺らの裏にいる存在についての情報は持っていない可能性の方が高くなる。それは黒幕への手がかりが途絶えてしまったと同義だ。ただ一人、司令官として現地に派遣されている者なら何か知っているかもしれないが。

 

(そうなると、大将以外と接触するのはあまり意味がないか。俺と騎兵ちゃんに共感してくれる同志がいれば無駄ではないんだが、6人も略奪に参加してたからには望み薄だ)

 

階級がある以上、少なくとも俺らのモデルに軍人要素は入っているはずだ。だというのにこれだけの人数が略奪の命令に従ったとなると、司令官である大将は圧倒的な戦闘力で有無を言わせなかったか、非道な命令も受け入れるほど人望が厚いかのどちらかだ。どちらだろうと俺と騎兵ちゃんに助力する気は起きないだろう。そして俺は目覚めるタイミング自体が遅めだったらしい以上、すでに多数が大将の指揮下にいると見るべき…中将はまだ合流できていないようだったが、明らかに住民を敵に回す作戦で顔を隠しもしなかった点から同程度の戦力は大将の手元に残してるはずだ。

 

住民反乱を起こされても鎮圧できるだけの戦力がなきゃ、報復される可能性を低くするために仮面・覆面ぐらいは装備するだろうからな。

 

「その、中佐さんはわたしのほかに会えた仲間っていますか?」

「いや、さっきの連中以外だと地雷に引っ掛かった少佐の亡骸を見つけたぐらいだ。つまり最低でももう6人は死んでる…ただ、さっき俺と同格の中佐がいたってことは各階級が一人だけってことはない。つまり俺らの仲間が総勢何人いるのかの予測はできなくなった。各階級一人ずつって考えは甘かった」

「…中佐さんは、自分が人間じゃないかもしれないことに、気付いてます?」

「っ!?すごいな、そこに辿り着けたのか」

 

騎兵ちゃんがそこまで気付いてたのは驚きだが、乗馬を召喚獣の様に扱えるのであれば不思議でもないか。

集めた情報からすると俺らは創造された可能性が高いが、軍人としてのモデルがいるのであればそれを再生して召喚されたという可能性もある。こちらの場合だと騎兵ちゃんの得意魔術として察せた可能性が出てくる。どちらにしてもこれを自覚できているのは説明の観点で助かる…己が人間だと思い込んでいた場合、ショッキングな真実に違いはないのだから。

 

「中佐さんも気付いてたんですか?」

「魔理沙たちと情報を整理したら、俺が人間の魔法使いじゃない可能性の方が高いって結論に落ち着いてな。明らかに不自然な記憶の欠落があったから、すんなり受け入れられた」

「…中佐さんはやっぱりすごいです。わたしはショックでしばらく声も出せなくなっちゃいましたから」

「その言い方だと、騎兵ちゃんにそれを教えた相手がいるのか?」

「はい…命蓮寺の住職の、聖白蓮さんが迷った上で教えてくれました。

…わたしがショック受けるの、わかってたみたいです」

「…軽く話に聞いた通り、その住職はお人好しらしいな」

「そうですね、わたしみたいな素性の知れない存在でも信じて一泊させてくれるとてもやさしい方です。

中佐さんは、誰から白蓮さんのことを?」

「魔理沙が人里の名家にコンタクトを取ってくれてな、その当主の稗田阿求という少女から聞いた。彼女は記憶を忘れない能力持ちだそうで、情報の正確さに定評があるそうだ。

…もっとも、俺らを見たのは俺が最初だったようだが」

「そうだったんですね…でもやっぱりわたしたちの目撃情報は少ない、ですか。

その、他にここ…幻想郷の住民で交流できた方はいらっしゃいます?」

「魔理沙の紹介で今の阿求に会う前に、人形遣いのアリスって美少女と接触出来てる。好意的に見てくれてはいるが、『状況次第では庇えない』とハッキリ伝えてくれる程度にはリアリストだ。

連中が暴れた以上、見逃してはくれても協力はしてくれないかもしれない」

 

少なくとも俺の同僚(お仲間)が連中と同じノリならアリスも魔理沙同様に、容赦なく排除にかかるだろう。しかも報告に向かった霊夢なる者は強硬的らしいからな…あまり期待はしない方がいいってことだ。騎兵ちゃんだけでなくアリスのためにも。

 

「美少女、かぁ…」

「ん?すまない、聞き取れなかった」

「な、なんでもないです!

アリスさんに関してはわかりました、残りの魔理沙さんと阿求さんはどうなんでしょう?」

「阿求は名家の当主とはいえ、戦闘力は皆無だそうでな。そういう意味で保護はしてくれないだろう…俺らを匿ったことでターゲットにされるリスクは負えない。当主として部下を守るためにもな。

魔理沙はまだ手を貸してくれるかもしれないが…直接話さねえとわからない。命蓮寺はどうだろうか?俺が騎兵ちゃんについて行っても受け入れてくれるだろうか」

「白蓮さんは受け入れてくれると思いますが、他の皆さんは難色を示すかもしれません…

その、命蓮寺の実力者はみんな女性だったので、男性の中佐さんだと」

「拒否反応を起こすかもしれない、か。まあ阿求から男の強者は稀少と聞かされてるからそこは不思議じゃない。

だがそうなると…やっぱ一度大将の指揮下に入るのも選択肢に入ってくるな」

「…やっぱり、そうなっちゃいますよね」

「上手く情報だけ抜いて有力勢力に亡命ってのが理想的だが、少将でさえ俺じゃ太刀打ちできそうになかったからな…騎兵ちゃんの援護があっても逃げ切れるかどうか」

「はい…やっぱり中佐さんも理解できちゃうんですね。

 階級が上の相手には勝てない、って」

 

そう、ここが問題になる。同僚(仲間)を無条件に判別できると同時に、階級が上の相手には勝てないのも理解させられるのだ。さっきも魔理沙がいなかったら殲滅なんてできなかった…大尉以下4名なら俺一人でも問題ないが、中佐とは互角だったろうし少将には勝てない。結果的に魔理沙に伏兵役を担ってもらったのは大正解だったわけだ。まあ、魔理沙なら少将も中佐も一人で一蹴できたんだろうが…

 

となるとやはり、連中に勝てる相手の援護が欲しい。魔理沙と命蓮寺に接触を図るのが最優先か。

 

「…時間を取り過ぎるわけにもいかないな。騎兵ちゃん、聞いた限りだと魔理沙も命蓮寺と多少の接点はあるそうでな…まず魔理沙に接触を図ってから命蓮寺に向かう。これでいいだろうか?」

「はいっ、わたしは中佐さんに頼りっきりになってしまうと思いますので、お任せします!」

「了解だ、ならひとまず人里に戻ろう」

 

そう騎兵ちゃんに声をかけて立ち上がる、その時だった。

 

「っ!?」

「あっ…!?」

 

仲間の、気配。

それも、上官の気配だった。

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