私の生徒解釈   作:ブルアカ二次創作@本拠地はpixiv

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『本日午後七時二十五分、コユキちゃんが私を泣かせた』

 本日の記録は散文小説形式です。

 今日あった出来事には、それが一番相応しいですから。

 不慣れで少し、気恥ずかしいですが……まだ誰に見せるものでもないので。

 しかし、とても大切で特別な記録です。

 

 

 

 

 

 人間の直感とは不思議なものです。例えば朝起きて鏡に向かった時、突然「ああ、今日はきっと悪い日だ」などという考えが、すっと通りすがることがあります。これは当たることもあれば大外れなこともあり、実に奇妙な現象です。

 

 今朝の私もそうでした。一月の寒さを感じながら顔を洗い、寝癖を直しているうちに、どんどん暗い予感が増していきました。今日は年に一度の、外部企業の視察の日。それも、後輩である黒崎コユキちゃんを連れていく手筈です。

 

 私は、この子が好きです。

 

 セミナーの会計であるユウカちゃんは、ゲーム開発部をはじめとする大勢の生徒から好かれています。それに対して私は、皆さんからは好かれても嫌われてもいない、あくまで特許の管理をする裏方寄りの人だと認識されていることでしょう。

 

 そんな私にとってのコユキちゃんは、数少ない身近な後輩なのです。この条件下で、コユキちゃんを可愛いと思わない方が不自然ですよね?

 

 ですが、なかなか困った子でもあります。気を抜くとすぐに脱走し、持ち前の暗号解読の特殊能力を悪用して、債権を無断で発行したり、横領を働いたり……。これらは本人の自己認識と、実際の能力の高さの乖離によるものなので、先輩として気長に向き合ってあげようと思っています。

 

 そんなコユキちゃんにも弱点はあり、確実に言うことを聞いてもらう方法が二通りあります。一つは、シャーレの先生にお願いすること。元より人懐っこい子ではありますが、先生には特にそうみたいです。先生はとても優しく根気よくコユキちゃんに向き合っていますから、嬉しいのでしょう。

 

 もう一つの方法は、この私、生塩ノアによる脅嚇です。

 コユキちゃんは私の、『迫る』感じがとても苦手なようで、私がゆっくりと名前を呼んであげるだけで、竦み上がって動きが止まります。

 

 ……私としては、これはあまり良くないやり方だと思っています。セミナーの先輩としては、コユキちゃんには安心感や信頼感を持って欲しいところです。毎日一緒にいる相手からストレスを与えられるというのは、耐えがたい事ですから。

 

 それはそれとして、コユキちゃんの反応は可愛いんですけどね。

 

 そんなわけで私は今回も、先生に助力をお願いしました……が。

「コユキは私がついていなくても、そろそろ大丈夫だと思うな」と、先生は仰りました。「私がついていくべきかどうか、ノアに判断してみてほしい」とも。

 

 私は迷いました。先輩としてはやっぱり、コユキちゃんの成長を信じてあげたいところです。しかし、万一取引先でトラブルが起こってしまっては、私一人の責任では済みません。それに、コユキちゃんとはあまり二人きりで行動したことがなく、基本、ユウカちゃんも加えての三人一緒でした。

 果たして私一人で、面倒を見切れるかどうか……。

 コユキちゃんとは関係なく、気がかりな話もありますし。

 

 考えに考えて、私は先生にお願いをしました。「先生は近くのどこかに待機していただいて、トラブルが起こったら来ていただけませんか?」と。快諾していただき、さらに先生は、私に三種類の「技」を教えてくれました。

 

 

 

 そして今日の朝。私は相変わらず嫌な予感に苛まれながらも、反省室のコユキちゃんを迎えに行き、取引先へと向かいました。先生には、企業ビル付近の、娯楽街エリアで待機していただいています。「わあい、ほぼ休日だあ!」と子供のように喜んでいました。

 

 そして、会社の、エントランス前。数百人が日々働いている、大きな四階建てのビルは厳めしい雰囲気です。

「うぅ、珍しく外出できると思ったら、ノア先輩と二人でなんて……しかも寒いしぃ」などと失礼なことをこぼす可愛いコユキちゃんのネクタイを直してあげてから、私は早速「技」を一つ使いました。

 

 取り出したのは、ぐるぐる丸眼鏡。コユキちゃんは目を輝かせました。

「視察中はこれをかけて、『寡黙かつ有能な、生塩ノアの助手』として活躍してほしいです」とお願いをすると、コユキちゃんは飛び跳ねて喜び、了解してくれました。「ちゃんと最後まで終わったら、その眼鏡はあげます」と言うと、ますますテンションを上げました。

 丸眼鏡をかけたコユキちゃんは新鮮で、普段とまた別種の可愛さがありました。彼女はこほん、と一つ咳払いし、柄にもなく声を潜めて「ノア先輩、いやノア社長。行きましょう」と言い、思わず私は素で笑いそうになりました。

 

 この時の私は、夢にも思っていませんでした。この小さな助手のコユキちゃんが今日、どれほど助けてくれるのか。

 

 

 

「本日はよろしくお願いします」「よろしくお願いします!」

 私達が挨拶をすると、本日案内してくださる専務さんも、丁寧に挨拶を返してくれました。

 

 ちなみに、去年は社長さんに案内していただいて、とても親切に社内のことを説明してくださいました。

 去年の視察はリオ会長と私とで訪問しましたから、しっかりと記憶しています。なんでも専務さん曰く、社長さんは半年ほど前に、ご勇退されたとのことでした。

 ……不思議です。だって、会社のトップが変わったのに、大きな取引先であるミレニアムには、なんの知らせも来ていませんでしたから。

 容赦なく言うと、なかなかのマナー違反です。なんでも、社長の席は未だ空席とのこと。となると実質、現在のこの会社のリーダーは、この専務さんでしょう。

 私は心の中で、ここに関する記録を大きく書き換えました。

「午前中は、一階と二階を案内しますね」

 

 視察が始まるとすぐに、私は驚かされました。コユキちゃんは本当に大人しくしていてくれたからです。社内のいろんな部署を順に案内してもらうだけなので、記録をする私はともかく、コユキちゃんは退屈に思っても仕方がないはずなのに、一つも不平不満をこぼさずについてきてくれました。

 

 すいすいと何事もなく午前の部が終わり、社内のカフェテリアで昼食を食べているとき、コユキちゃんは得意げに言いました。

「私、偉いでしょ?」と。

「ほんの数カ月で見違えたようですね」と思わず素直に伝えると、コユキちゃんは照れてしまいました。これは記録するしかないと思い、スマホを向けると「やー!やーです!やめてー!」と眼鏡ごと顔を隠します。とても、和みました。

 

 私はなんとなく、コユキちゃんと先生が一緒に仕事をしているところを想像していました。きっと先生は、コユキちゃんが新しいことを出来るようになるたび、沢山沢山褒めてあげたのでしょう。そしてコユキちゃんはまた応えたくなる、という好循環を繰り返しているはず。先生が教えてくださった「技」も、その中で自然と発見したのでしょう。やっぱり大人には敵わないなあ、などとしみじみ思う私なのでした。

 

 そして午後の部。あと四時間で終わりです。

 このあたりから、社内の様子に違和感を覚え始めていました。一階と二階の方は、昨年とそこまで変わっていませんでしたが、ここからは随分、空気が変わっていたのです。

 社員の皆様方が、どことなく緊張しているというか、落ち着きなく働いているような印象を受けました。

 

 それぞれの部署のメンバー構成の法則性も、随分と不自然に変わっていたように思えます。

 これらの違和感は、厳密な記録に基づいたそれではないのですが、それでもとても引っかかりました。

 その上、明確な記録との違いも一つありました。そもそも去年の視察とは、案内のルートがまるっきり変わっていたのです。社内の部署の位置が移動したような様子はなかったのに、なぜ順序を変える必要があったのでしょう?

 それも、上の階から下の階へ下っていった昨年から、今年は下の階から上の階へと、綺麗に逆転した順序でした。

 この会社は主に、特許関係の売買に携わっています。上から下へと案内される方が、仕事の流れ方が直感的でわかりやすいはずなのに、わざわざそこを遡って案内されています。

 まるで、大きく変わった箇所を、後回しにしたいかのようです。

 

 ……極めつけに。案内していただいている専務さんの様子が、午後に入ってから少し変わりました。言葉を選ばず言うと、挙動不審です。瞬き、息遣い、歩く速さ。微かな変化であり、私でなければ気付くことは無いでしょう。ですが私の前で人がしっくりこない振る舞いを見せれば、完全記憶のライブラリーに自動的に引っかかるのです。しかし、この様子の変化が、私とコユキちゃんに起因するものとも限りません。

 でも、いくら楽観視しようと努めても、胸騒ぎは増すばかりです。

 

 

 

 ……一週間前の、ヴェリタスのチヒロ先輩からの定期報告にあった追伸。コユキちゃんは関係なしに気がかりだったこと。

 

 「ほぼ風説だけど念のため。カイザーによる大規模な企業買収の噂がある。カイザーのどの部署がどこの企業を、みたいな肝心な情報は無いけれど、そこそこ信頼できる筋はどこも騒いでる感じ。何かキャッチしたらすぐに連絡する」

 

 ……アリスちゃんの事件や、虚妄のサンクトゥム、そしてアトラ・ハシースの箱舟のことを共に乗り越えた、今や同胞と称して差し支えない、ヴェリタス。その代表からの警告が、私の胸の内に、大きく波紋しました。 

 

 

 

 四階、案内もそろそろ終わりの頃。突然、専務さんに声をかけられました。

「失礼ですが、そちらのピンクの髪のお嬢さんのお名前は?」と。

「はい、セミナーの黒崎コユキと申します!」と、コユキちゃんは元気に答えます。

 専務さんは頷き、「少し外します」と。私たちは、待たされる形になりました。

「…………」

 ぞわぞわと、背筋に嫌なものを感じます。

私は壁の、電光表示板を見ました。ミレニアム製のものでしたから、取り扱い方はすべて頭の中にありました。この会社の取引先の宣伝が、何種類か代わる代わる流れています。

 

 私は表示板の傍に寄り、モニターに触りました。『ディスプレイに表示するセットを選択してください』と出て、二種類の画像セットが表示されます。

 

 身の毛がよだちました。

 

 今日だけ変えていたのでしょう。

 隠された普段のレイアウトは、大きな黒いタコのマーク。

 カイザーコーポレーションの証。

 私の頭の中の天秤の均衡が、ついに崩れました。

 天秤に乗る片方は、ミレニアムの外部企業との全取引のうち、大きな割合を占めているこの社との信頼関係。今日ここに視察に来た私の責任は、それは大きなものです。決して粗相の無いようにしなければなりません。

 途中で放棄して出ていくだなんて、以ての外。

 もう片方の皿に乗っているのは、私の記録と今日見たものに基づいて生まれた、総合的なロジック。

 

 そして。

「ノア社長?難しい顔をしてどうしたんですか?」

 不思議そうな顔で私を見ている、眼鏡をかけた私の助手。

 大切な、後輩。

 

 私は決断しました。

 先生に素早くモモトークを入れました。『ここを出ます。エントランス前にお願いします』と。

 

「コユキちゃん。帰りましょう。今すぐに」

「えっ」

 あれほど『重要だ』『粗相はいけない』と言われていた視察先。そこから無断で出ていこうなどと急に言い出した先輩に、コユキちゃんは困惑した目を向けました。

「だ、ダメじゃないですか?だって、そんなことしたら」

 私は膝を曲げ、目線の高さを合わせました。コユキちゃんの両肩に手を置き、ゆっくりと言います。

「……恐らく、今、私たちは安全ではありません。よく聞いてください。私と手を繋いで、エレベーターではなく階段を使って一階まで降りて、エントランスから出て行きます」

「でも……」

「コユキちゃん。お願いです。私を信じてください」

 あの人からの受け売りを、付け加えます。

「責任は、私が負いますから」

 

 

 

 先生は今朝、こう言っていました。

「どうしても言うことを聞いてほしいときは、必殺技を使うといいよ。変に理屈で話さず、目を合わせて誠実にお願いするんだ。するとコユキは必ず応えてくれるよ。コユキは『私はこの人から本当に信頼されている』って感じると、とても安心してくれるから。そういう子さ。あっ、頻繁にやるのは勿論ダメだよ?だからこその必殺技なんだからね」

 

 

 

「……わかりました」

 コユキちゃんは力強く頷いてくれました。

「ありがとうございます。コユキちゃん、決して傍を離れないでくださいね」

「はい」

 

 それと同時に、事は起こりました。

 背後から放たれた銃弾が、私の頬を掠めました。振り向けば、そこには大勢の、ハンドガンやロープを手にした、スーツの大人たち。

 完全に多勢に無勢。装備を見るに、私達を捕縛するつもりでしょう。

「わっ……」

「コユキちゃん、走って!」

 コユキちゃんの手を取り、近くのドアを素早く開けて入りました。

 フロアの反対側の階段を目指して、最短ルートのオフィスを突っ切り走ります。普段通りに仕事をしていた会社員の方々は皆驚愕します。突然銃声が響いたと思ったら、場違いな生徒二人が駆け込んできたのですから無理もありません。

 大人や機械やデスクの合間を縫い縫い、出せる限りの速力で駆け抜けます。

 

 オフィスの出口のドアに体当たりし、廊下の階段前に出ると、大人が二人立ち塞がっていました。すぐさま書記の採決を抜き、右の大人を狙います。

「左を撃ってください!」

 生徒としての身体能力アドバンテージにより、こちら側の射撃が先手でした。右は私に頭を撃たれて倒れ、左はコユキちゃんのライトマシンガンの弾幕に打ちのめされました。

 

 すぐにまた手を繋ぎます。コユキちゃんは、少しも慌てていませんでした。急に、取引先で修羅場になってしまったというのに。

 シャーレの任務にたびたび参加して戦闘慣れしてきていたのもあるでしょうが、それに加えて、私のことをとても信じてくれているようでした。彼女は力強い目をしています。

 絶対にこの子を守らないと、と改めて決意し、また走り出して階段を駆け下ります。

 

 四階から三階へ、そして二階へ。……さらに降りようとして、何発か銃弾を受けました。一階への階段のところで、別の大人たち八名ほどに遭遇し、出会い頭に攻撃されたのです。

 受けた箇所がひりひりします。

「っ、コユキちゃん!こっちです!」

 踵を返し、二階のオフィスへ。ドアを肩で押し開いて入ると同時に。

 世界の時間が、ゆっくりになりました。

 

 広いオフィスは人払いが済んでおり、私が開けたのと反対側のドアを塞ぐように、大勢の大人が並んで立っていました。

 待ち伏せです。

 何人かはグレネードをすでに投擲していました。その上、壁から大きなミニガンタレットが三つ。セキュリティシステムでしょう。

 廊下に戻ることはできません。階段の大人たちがすでに詰めてきていましたから。

 私は繋いだ手を離し、横にいたコユキちゃんを力いっぱい突き飛ばし。

 ……直後、いくつもの爆風に飲み込まれました。

 

 飛びそうな意識を懸命に繋ぎ止め、目を開きます。私は倒れており、何人もの大人に銃を向けられ、囲まれていました。

 目の前には……専務。

「済まないね、生塩ノアさん。四階で捕まえられなくても、こうして追い詰める手筈だったんだ」

 ……コユキちゃんはまだ捕まっていません。しかし、逃げることはできていないでしょう。恐らくどこかのデスクの下にしゃがんで隠れているだけです。探されれば、すぐに見つかってしまうはず。

 この部屋の出入口は三つ。そのうち二つは大人たちに塞がれており、もう一つは塞がれてはいませんが、私がコユキちゃんを突き飛ばしたのとは反対側の方向。見つからずに脱出することは不可能です。

 

「君に提案があるんだ」

 私が睨むのも気にせず、彼は続けます。

「黒崎コユキを私たちに引き渡して欲しい。それから、ミレニアムの書記として、卒業まで我々のスパイとして働いてもらいたい。代価として、卒業後はわが社に来ると良い。好待遇を約束しよう。どうかな?」

 やはり、狙いはコユキちゃんだったようです。

 暗号解読の才能については、情報漏洩のないように特に気を使っていたのですが……これまでに何度も脱走して事件を起こしていたので、カイザーには気取られてしまっていたのでしょう。

 私は馬鹿げた提案を鼻で笑い、言い返しました。アドレナリンが出ているせいか、私らしくない物言いだったことを憶えています。

「お金には困ってません。やはり、カイザーの傘下に入っていたんですね。穏健派の社長さんが勇退されたのをいいことに……いえ、恐らくは後ろ暗い手段でもって追放したのでしょうね?社のトップの代替わりが、大きな取引先である私達に知らされないわけがありませんからね」

「流石だな。君は有能だ。特別な才能があるのだよ。是非、相応しい場所で活かすべきだ!わが社は君のような人材が欲しいのだ」

 逆説的に、彼らはコユキちゃんを人材として見ていないことがはっきりしました。

「わかっていませんね。私に特別な才能など、何一つありません」

「君がそう思っていたとしても関係ない。この取引に乗れば、欲しいものがいくらでも手に入るぞ。どうかね」

 

 私は、このあまりに下手くそな勧誘に呆れてしまいました。

「私は……」

 

 アドレナリンに浮かされた私の脳裏にあるのは、二つの記憶した。

 一つは、いつかみんなで撮った、セミナー四人の集合写真。そしてもうひとつ。雨の日の窓に、先生と二人で並んだ時の映像。

 もう人数差なんて知ったことではありませんでした。

 ホルスターの書記の採決へと手を伸ばします。

 

 

 

「……欲しいものは既に、全部持っています!」

 

 

 

 その瞬間。私が銃を抜くより早く、勢い良くドアが開かれました。封鎖されていないドアです。

 

「全員止まれ!」

 

 先生でした。タブレットを手に持ち、一人きりです。大人たち全員の目が先生に注がれました。私の記録にないほどに、先生は気迫に満ちていました。

「既にヴァルキューレに通報した。観念しろ。私の生徒に手を出すな」

 大人たちは少しどよめきますが、専務は高らかに笑います。

「おや、貴方は!シャーレの先生ともあろう方が、あの警察学校の腐敗ぶりをご存じないとは!来るだけ来て、袖の下を渡してそれで終わりだよ。やつらは何の役にも立たない!」

「おやおや。知らないのはそちらですよ?ヴァルキューレはこの数カ月でどんどん変わってきている。彼女らは、悪い大人に打ちのめされっぱなしじゃない、強い子たちだよ。良い方向に変わろうと日々努力し続ける、芯のある子たちさ。……あなたがたと違ってね。それに」

 

 先生は私を見て、ウィンクしました。そして、にやりと笑い、大人たちを見回します。

「……もうすでに、そちらは負けているよ?」

 

「にははははは……」

 部屋の隅から、コユキちゃんの不穏な笑い声。

 そちら側を向くと、コユキちゃんは大きなパソコンの前に立ちながら、不敵な笑みを浮かべます。眼鏡はもう外して、ポケットにしまっていました。メガネの弦が少しだけポケットからはみ出していましたから。

 コユキちゃんは、先生が注意を引いている隙にこのパソコンで「何か」をしたようです。パスワードなんて、コユキちゃんにとってはあってないようなものですから、難なく掌握したことでしょう。

 左手にはスマホ。先生からモモトークで指示を受けていたようです。

 ……私の後輩の目は、記録にないほどに冷たく澄んでいました。口は笑ってはいますが、とても……感情を感じさせる笑みです。

 彼女は私の記録に存在しない、黒崎コユキでした。

 

「……コユキちゃん?」

「ノア先輩、ごめんなさい。私、約束を破ります。いい子で大人しくしてるって約束だったけど……本当にごめんなさい。メガネも返します。……でも、仕方ないですよね?許してくれますよね?だって、先に仕掛けてきたのは向こうですし。それよりも……なによりも…………」

 彼女は声を、とても低くし。右手を少し上げて、エンターキーの真上で握りこぶしを作り。

「私を本気で信じてくれたノア先輩を、傷つけられたんだから」

 ドンと勢いよく、キーを叩きました。

 

『警備システム、モード変更。非ヘイロー保持ターゲットを排除』

 

 音声案内が響きました。先生は「おっといけない」と言い、素早く部屋から出て、ドアを閉めました。巨大な三つのタレットは私を狙うのをやめ、ゆっくりと、それぞれ一番近い大人に狙いを定めます。彼らの表情が恐怖に歪み……。

 

 コユキちゃんによる饗宴が、始まりました。

 

 すさまじい連射音が部屋を支配しました。三つの大口径の兵器が、大人たちを容赦なくダウンさせていきます。彼らは大混乱し、みっともなく必死に逃げ出していました。我先にと部屋から出ようとして、ドアに詰まって誰も出られなくなって次々撃たれる様子は、芥川龍之介の蜘蛛の糸の寓話を思い起こさせました。

 コユキちゃんの大笑いと銃声は三十五秒の間、タレットの撃つ対象が全員気絶するまで続きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 事態はひとまず収束しました。

 簡単な事情聴取は済んで、続きはまた後日、となりました。私も大した怪我はなく、顔に絆創膏を貼った程度です。服はボロボロだったので、ヴァルキューレが貸してくれた冬服に着替えました。

 

 無数のパトカーのサイレンが響く中、もうすっかり暗くなり、雪も降りだしたエントランス付近にて、私とコユキちゃんと先生は立っていました。

「ノア。本当にごめんよ。こんな怪我をさせてしまって……私も行くべきだった」

「いえ、待機していただくようお願いしたのは私ですから。私の責任です」

「いや。私がどこかに依頼して、下調べしておけば良かったんだ……本当にすまなかった」

 私と先生が謝り合う間で、コユキちゃんは寒さで小さく震えていました。

「うー、寒い……それにお腹空いた……先生、ノア先輩、もう帰りましょうよー」

「あ、ごめんコユキ」「ごめんなさいコユキちゃん」

 心配する声が私と先生とで不意に重なり、少しの間の後、思わず全員で笑ってしまいました。

 

 気を取り直して、先生は言います。

「二人とも本当にお疲れ様。災難だったね」

「……はい」

「ふふん!ノア先輩がいたから怖くありませんでした!……ノア先輩。ありがとうございました。守ってくれて」

「……コユキちゃんも、ありがとう。あっ、眼鏡は返さなくていいですからね。あげます」

「え、いいんですか?」

「ええ。約束よりも、私を守ってくれたことの方が嬉しいんです」

「…………」

 コユキちゃんは、キラキラした目をまん丸くして黙りました。

「どうしたのコユキ?」

「いや……ノア先輩にこんなにストレートに感謝されるって、なんか不思議というか……」

 先生は笑います。

「そうだね。言われてみれば私でも、今みたいなノアを見たことがないかも」

「えっ、先生でも!?じゃあ今のノア先輩、ちょーレア!?にはは、これは帰ったら、ユウカ先輩に自慢しないと……」

「コ~ユ~キ~ちゃ~ん?」

 決して、決して照れ隠しではありませんが。私はコユキちゃんをいつものように威圧しました。

「うあぁああああーーコモンのノア先輩なんでーー!」

「あ、私はもう少しだけ事後対応があるから、二人で先にどこかでご飯でも食べてて。終わったら一緒に電車で帰ろう」

「わかりました」

「……はーい。さっさとこんなところ離れましょうノア先輩!こんな呪われたところにいたら、人生の幸がどんどん吸い取られますよ!」

「ふふ、そうですね」

 コユキちゃんの言動はやや乱暴で子供っぽいのですが、この台詞には全くもって同意でした。こんな目に遭うなんて、この場所が呪われているとしか思えません。

 

 二人で正門を抜け、町を歩きます。

「もーお腹ペコペコですよー。あ、あそこに見えるコンビニでいいですよね?イートインスペースあります、って看板にありますし」

「そうしましょうか」

 その瞬間。

 不意に風が強くなりました。

 微かに振る雪の粒子がみるみるうちに大きくなり、数も増してきます。

「……ノア先輩。私、嫌な予感がしてきました」

「……私もです」

 私達がコンビニを見据えて駆けだすと同時に、天候は強い吹雪に変わりました。

「うあぁああああーー!今日本当についてないーー!!」

「本当にそうですね……」

 

およそ三百メートルを駆け、どうにかコンビニの屋根の下に入ることができました。私達二人は疲労した体に鞭打って走ったために、もうへとへと。

 

「うぅ、二人揃って、筋肉痛確定ですね……」

「そうですね……ふふ」

 私はなぜか、今こうして二人並んで息を切らしている状況を楽しんでいました。

 こういうのはとても、青春らしいというか、なんというか……。充実していると思えました。今日は、コユキちゃんと随分と打ち解けたと言うか、とても心の距離が縮まったということを、改めて実感できたような気持ちだったと思います。いつもはこんなに、感情で物事を感じることはないのですが……すっかり疲れ切っていたので、理性が弱っていたのかもしれません。今夜は変な夢でも見そうだな、なんて考えていました。

 

 これを書いている今はそうでもないんですけどね。

 

 とにかく、私とコユキちゃんはお互い、肩や背中や頭に付着した雪を落とし合い、コンビニに入りました。温かい空気と音楽に迎えられます。カゴを手に持ち、食料品コーナーへ二人で向かいました。

 

「コユキちゃん。今日だけは、好きなものを好きなだけ選んでいいですからね」

「えっ!いいんですか!?」

「頑張りましたからね。それに、先生に来ていただいていますから、シャーレの経費です♪」

「うわぁーい!ぶれいこー!」

 コユキちゃんはカゴに、ハンバーガーをどんどん入れていきました。二人分にしてもちょっと多いですよ?と聞くと、ユウカ先輩へのお土産です!とコユキちゃんは言います。魅惑的なハンバーガーの味と、恐るべきカロリー数値に挟まれて煩悶する可愛いユウカちゃんを想像した私は、迷わず許可しました。

 そして、そのまま店の奥のショーケースから、二人で飲み物を選び取り。

 ……なんの気なしに、左の方を見ると、書籍コーナーのとある棚が、目に入りました。

 

「……あぁ、まだまだ売れているんですね」

『ミレニアムプライス受賞』『重版出来』『不眠症治療の常識を変えた』などという宣伝文句が帯に貼られた、『思い出の詩集』。

 私の、作品。

 その小さな特設コーナーには、元々は十冊は同じ本が詰め込まれていたのでしょうが、今ではぽつんと一冊が残っているばかりでした。このコンビニで一日に九冊売れる程度には、大好評のようです。

 

「……ノア先輩?」

 コユキちゃんは、急に立ち止まった私を見て心配そうにしています。

「あら、ごめんなさいコユキちゃん。お会計して、食事にしましょう」

 私は努めて明るく、そう言ってレジへ促しました。

 

 二人でイートインスペースに並んで座り、食事をします。

コユキちゃんはよほどお腹が空いていたようで、まるでキャベツにがっつくハムスターのように、ハンバーガーにぱくぱく齧りついていました。

 私はゆっくりとサンドイッチを食べながら、そんなコユキちゃんを横目で観察していましたが……。

 色々あったからか、普段は平気なのに今日に限って、あの『思い出の詩集』の事がいやに思い起こされました。

 ミレニアムプライス発表会から、一年も経つというのに。

 

 当時から、私は私でした。大きく性格が変わったわけでもなければ、何かミレニアム生らしい成果を上げたわけでもなく、向いていることを向いているなりに努力していました。

 そんな私の趣味といえば、やはり読書。セミナー室での休み時間で『パリの憂鬱』を読んでいる時、ユウカちゃんの言ってくれた一言が、全ての始まりでした。

 

「もしノアがなにか書いたりしたなら、私は絶対読みたいわ」と。

 

 それまで私は、殆ど創作ということをしたことがありませんでした。精々、BDの授業で、簡単な作文をする程度。ユウカちゃんは、誰にも知られていなかった私の心の竈に、火種をくれました。

 

 私はどんなものを読みたいのか。私だけのために誰かが本を書いてくれるのだとしたら、一番うまく書けるのは当然私です。私のことを本当に理解しているのは、結局のところ、自分自身だけでしょうから。そう思い立ち、私は書き始めました。

 

 来る日も、来る日も。経過は決して誰にも見せずに。完成させるまでは決して誰にも見せないと誓っていましたから。

 身の丈を知らぬ一年生なりの、チャレンジだったのです。

 

 そして、書き上がった頃には、丁度ミレニアムプライスの募集期間でした。私はユウカちゃんにまたしても背中を押され、応募。

 結果は、まさかの優勝。一年生の作品では前例のない快挙でした。

 

 ……ただし、文学としてではなく、ミレニアム最高の不眠症治療法として。

 

 誰が見ても、華々しい結果そのものでした。私と、ユウカちゃん以外から見れば。

 

 一般向けに出版された『思い出の詩集』は、世の多くの人々の役に立ちました。長年、不眠症に苦しんできた多くの人を救い、感謝の手紙が何十通も届きました。それらは封を開けないまま、私の部屋の引き出しにしまわれ続けています。どういう気持ちで読めばいいか、わからないのです。

 

 ……そうして私は、創作をしなくなりました。

 残酷な話だけど、頑張っていることと、向いていることは違う。それを思い知り、私は以前の生塩ノアに戻りました。

 

 私は滅多に感情的にはなりませんが、イートインスペースで食事をしていたこの時は、実に珍しく、感傷に支配されていました。隣で黙々と食べるコユキちゃん。今日見せてくれた、記録にない新しい姿が、なんだか一年生の頃の私と重なって見えたのです。

 

 ……不安が過ります。

 コユキちゃんは、幸せに生きていくことができるのでしょうか?

 少なくとも、カイザーには身柄を狙われているということが今日、わかりました。もう、今回のように外に連れ出してあげることは叶わないかもしれません。

 ……ミレニアムは大きな学校ですから、そう簡単に在校者を拉致されてしまうことはないでしょう。リソースはゲヘナやトリニティに匹敵するほど豊富であり、もしコユキちゃんに万一の事態が起こっても、対抗策はいくらでも取れます。先生だって味方してくださるでしょう。

 ……それでも。

 今後、コユキちゃんが、多くの大人の悪意に曝され続けてしまうとしたら?

 高校生である今はよくても、卒業したその後は?

 コユキちゃんがいつか夢を見つけても、自分の望まぬ才能に邪魔されて、叶わないのだとしたら?

 いつか、この快活なコユキちゃんの光が、陰ってしまう運命なのだとしたら?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ノアせんぱーい。なんか辛気臭いですよ。せっかくのご飯なのにー」

 

 

 

 

声に出てしまっていたのかと一瞬焦りました。しかしそんなことはなく、あくまで私の雰囲気に突っ込んできたようです。

「にはは。ノア先輩、ほんとにお疲れですね。ユウカ先輩がもしここにいたら、『日頃の仕返しよー!』なんて、色々からかわれたりして」

「……いえ、私はいつも通りですよ?」

「んもう。私も少しは成長してるんですよー?先生に色々教わったりしてますし。それで……もしかして、『思い出の詩集』のことが気になっているんですか?あそこに一冊残ってますけど」

 コユキちゃんは肩越しに、背後の書籍コーナーの方を指差します。

「いえ」

「には、返事が普段と比べてコンマ三秒ぐらい早いですよー?……なんちゃって。んもー、しょうがないですねぇ。寡黙で有能な後輩が、一肌脱ぐとしましょうか。ちょっと待っててください」

「えっ?」

 コユキちゃんは席を立ち、何かを買いに行きました。追おうと思いましたが、なぜか体を動かすことができませんでした。

 

 すぐに戻ってきて、「じゃーん」と言いながら、買ってきた『思い出の詩集』を見せてきます。

「……コユキちゃん?なぜそれをわざわざ買うんですか?出版社から貰ったものが沢山ありますから、ミレニアムに帰ったらプレゼントできたのに」

「そんなこと知ってますよ!セミナー室に置いてますもん。でも気持ちというか、せっかくだから自腹で……みたいな?といっても先輩方からのお小遣いで買ったので、元は先輩方のお金ですけどね、まあ」

 コユキちゃんはごほん、と、どこか照れくさそうに咳払いします。

「聞いてくださいノア先輩。私、今日から毎日、寝る前にこれを読みます。眠れないからじゃなくて、読みたいから読むんです」

 コユキちゃんはつらつらと続けます。

「きっと、すぐに眠ってしまうでしょう。私は詩なんて読んだことないですから、内容を理解できるかどうかもわかりません。……でも、毎晩毎晩読みます。そうすれば、一日に一行、いや何文字かずつだとしても、読み進めることができるでしょうから」

「コユキちゃん……」

「全部読み切る頃には、ひょっとしたらノア先輩は卒業してしまっているかもしれませんね。でも、必ず連絡して、感想を伝えます。この部分はこんな事を考えて書いたんですか?みたいな答え合わせもしたいです。だから、今日から私はこれを毎晩読みます」

「……」

 コユキちゃんは私に目を合わせず、聞いてきました。

「どうです?元気、出ましたか?」

「……はい。信じられないぐらい」

 私は内心、泣きそうでした。

「良かったぁ。……これ、先生の受け売りなんですけどね?先生が教えてくれたことの中で、二番目に印象に残ってるんですけど……『大事な人にはいつも、思いやりを持って接してあげて』って。『ごく当たり前な事ではあるけど、多くの人には恥ずかしくて照れくさくて、難しいことだから。特に、落ち込んでる人に対してはね』……どうです?声真似、似てます?」

 

 あぁ。

 なんということでしょうか。

 思いやりを持って接すること。

 ……それは、先生が今朝教えてくれた、三つの技の、最後の一つなのです。コユキは特にそれを喜ぶからね、と。

 しかし、私がコユキちゃんに使うはずのその技は、まったく反対の構図で使われることとなりました。

 そして、その技は……あまりにも、あまりにも、私に効果てきめんでした。

「……あ、雪がだいぶ止んでますね。もう駅に行きましょう。先生もそろそろ来る頃合いですし」

 コユキちゃんはまだ照れ臭いのか、私の方を見ようとしません。

「……そうですね」

 コユキちゃんは言うが早いか、もうドアの方へ歩いていました。私は奇妙な、感情の疼きのようなものを胸に、コユキちゃんに着いて歩き出しました。

 

 外に出ると、辺りは信じがたい景色が広がっていました。

 新月の暗い夜。そして遥か高くから降ってくる、粉雪。舞い降る白い粒子が、ビル群の窓や街灯の光により、物凄く照らされていたのです。

「わぁ!」

 コユキちゃんは駆け出しました。

 私は、またしてもなぜか動けません。

 

「すごい!夜だけど、テレビで見たダイヤモンドダストみたい!にははー!早速いいことありましたね、先輩!こりゃもう明日からは二人揃ってバカヅキ……ノア先輩?ノア先輩!?」

 

 文章で書き記す上では、あってほしくないことではあるのですが。……私の心境は、まさに筆舌に尽くしがたいほどの、感動に満ちていたのでした。

 

 照らされる雪達。人工の黄色い光。空に浮かぶ、殆ど隠れた月。地上を楽しそうに駆けて行き、白い息を吐き、こちらに手を振るコユキちゃん。 

 

 この情景を見た私は、どういうわけか、これまでユウカちゃんが、リオ会長が、先生が、そしてコユキちゃんが私に注いでくれた思いやりと優しさとが一つ残らず想起されて混ざり合い、説明不可能な巨大な波動が、胸の奥に形作られていくように感じられました。

 

 気付けば私は膝を折って立ち膝で座り込み、顔を覆って、わあわあと子どものように泣いていました。コユキちゃんは大慌てで近寄ってきます。

 

「ちょっと!?先輩!?え、なんで!?ノア先輩!?わ、私何かしましたか!?」

 

 そうです。コユキちゃんがしたのです。

 

 一年生のあのミレニアムプライス発表の日に、私が失ったもの。

 心の何処かで探し続けていた、灯火。創作をする人であれば理解できるであろう、ちりちりと胸の奥で燃え続けるもの。

 コユキちゃんは、それを見事に探し当て、こうして私に届けてくれたのです。今それは、さかんに胸の奥で燃え盛っています。二度と、失われることはないと言わんばかりに。

 

 私はコユキちゃんを抱きしめました。化粧が崩れるのも気にせずにますます泣き、あれこれ言葉を投げつけました。あまり覚えていませんが、「ありがとう」とか「ずっとずっと大好き」とか「あなたをずっと守ってあげる」とか、平時では言えないことをたくさん言っていた気がします。

 

 コユキちゃんは状況を処理できないのか、フリーズしました。そのうちに先生と、連絡を受けて迎えに来てくれたのであろうユウカちゃんが来て、二人とも、様子のおかしい私の傍に駆け寄ってきて。私はその二人もまとめて抱きしめました。

 

 ありがとう、ありがとう、と、私は泣き疲れるまで繰り返し続けました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、泣いていたわけは無理矢理誤魔化して、帰ってきてすぐに自分の部屋に閉じこもり。……とりあえず詩ではなく、小説に挑戦してみようと思い立ち、こうしてここまで書き上げました。

 

 ……私にこれからどんな未来が待っているのかは、わかりません。

 コユキちゃんにどんな未来が待っているかも、やはりわかりません。

 

 でも、私にもコユキちゃんにも、味方がいてくれます。

 困ったなら、助けてもらうことができます。

 今日、コユキちゃんが私を助けてくれたように。

 ……この小説は習作として、大事にしまっておこうと思います。

 でもいつか、「そろそろ見せてもいいな」と思う日が来たら、この小説を取り出してみんなに読んでもらって、今日私が大泣きしたわけの、答え合わせをしようと思います。

 今は恥ずかしいけれど、そんな日が来るのが、とても楽しみです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 終わりに。

 先生。ユウカちゃん。コユキちゃん。それから、今は失踪中ですが、リオ会長。

 いつも、ありがとうございます。

 私はみんなが、大好きです。

 

 

 

『本日午後七時二十五分、コユキちゃんが私を泣かせた』完

だれのお話が好きですか?

  • コユキちゃんが私を泣かせた
  • ミサキ「先生が高熱だって」〜
  • ミユとの絆レベルが100の状態で〜
  • 二年生コユキは諦めない
  • シャーレに来たシグレが多忙で〜
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