モモイって多分エニアグラムでいうと7w6で、ムツキとかと同じ部類なんですよね。よく動く活発なタイプであり、仲間が好きで、感情豊か。そして責任感が意外とありながらも軽はずみでもあり、冒険を好むけど喪失は望みません。本人も考えたがらないけど、結構内面は複雑。やや極端かつ依存的かも。でも頼れる明るい人。そんな感じ。
ちなみにリオと同じく思考センターです。考えて考えて、空っぽになることを恐れているから知って動いて蓄えるって感じの行動原理。
……合ってるかは知らぬ。
触覚の全部が、それぞれ独立して感じられた。
とっても近い、先生の顔との触覚が。
先生のまつ毛が、私のおでこに。
先生のほっぺが、私のほっぺに。
先生の肩が、私の胸のあたりに。
……先生の口と、私の口が……。
呼吸をするのも忘れてた。今も忘れっぱなしだ。
私は動けない。脳みそはこれでもかってぐらい働いてるんだけど、神経は働いていない。私は石像状態だ。これはゲームではないので、戦闘が終わったら治るなんてことはない。だから先生に期待するしかないんだけど、先生も石像になっていた。
……幸い、先生は早いうちに石化が解けた。大人だからな。わかんないけど。
私の肩が掴まれる。割れ物に触るみたいにそーっと、私の身体が先生の身体から離される。……その動作自体は優しいのに、肩を掴む力は妙に強い。先生も慌ててるのかなぁ、なんて場違いなことを考える。
「……モモイ」
耳たぶが熱かった。
ヘッドホンでいつも隠れてる、私の耳たぶ。きっと真っ赤っ赤だ。まあ、ほっぺたが隠れてないからそれには何の意味もないんだけどさ。
「…………モモイ。その……大丈夫?」
うん!大丈夫!
そう答えたつもりだった。しかし私は動きやしない。
経年劣化したゲーム機だって、何度も頑張ればやがては動き出す。私は齢十五にして寿命を迎えてしまったのだろうか。
「…………モモイ!モモイ!?そっ、そんなにショックだった!?えっと、大丈夫だよモモイ。ただの事故だ。ノーカン……いや、そういう問題じゃないのかな。……モモイ。ごめんよ。本当にごめん……」
ああ、先生が百面相してる。
いつもゆったりして落ち着いた人だと思ってたから、新鮮だなあ。でもまあ、事故でキスしてしまってもこれぐらいのパニックで済んでる辺り、やっぱり大人だなぁ。
……私はこのざまなのに。すごいなあ、先生。
……さっきから心が脳みその奥に閉じ込められてるような気がする。もしくは、幽体離脱している気がする。ピヨピヨ状態だ。ダメージを食らえば戻るかな。じゃないとクソゲーすぎる。でも先生は私にダメージを与えようとしてくれない。だから動けない。どのみちクソゲーじゃん。信じられない。
「……モモイ、モモイ……ああ、そ、そんなに……本当にごめん、ごめんよモモイ……こんなつもりじゃなかった。本当に、すまない」
ああ先生ったら、何謝ってるの。ピンク玉のデラックスよろしく、衝撃で記憶が飛んだんじゃあるまいし。
私のせいだよー、先生。メイドモモイが元気に先生に飛び込もうとしたら、床に置きっぱにしてたハバネロチップスの袋を踏んづけて、足がもつれて、あなたにダイブしちゃったんだよ。角度がズレて、キス事故が起きたんじゃん。
だから、私のせいなんだよ。
先生が謝ったらおかしいよ。
……それに、今の私の感情パロメーター、めちゃくちゃで分析し辛いんだけど……多分、嫌悪の感じは、ゼロだよ?
こんなにたくさんのことを考えているのに、私の身体は動かない。動いて。うごいてー。先生凄い困ってるー。うごけー。ストライキかー?ハバネロチップス分働けー。
あー駄目だ。なんかもう、考えが溶けてきた。わかんないよ。私、どうしたらいいのか。
「……モモイ」
「…………せん、せ、い」
「うん」
「………………えっと。えっと、ね?…………わっわっ私、きょ、今日は、帰るね!えへへ、ごめん先生、その、わ、わかんないや!私、もうなにがなんだか!……ごめんなさーい!!!」
「えっ、モモイ!?」
さながら、電話の自動応答システム。そんな私になることで、無理やりフリーズから開放された。
私は突っ走る。
メイド服から着替えもせず、制服を置きっぱなしにして、銃だけ持って休憩室から走り出る。
そのまま走りに走った。
駅まで着いた。
電車に乗った。
黙って座った。
静かに待った。
やがて着いた。
私は早く走る。
我が家へ帰る。
妹の横を駆け抜け、ベッドに飛び込む。頭まで布団をおっ被る。ヘッドホンをスマホにBluetooth接続し、爆音で「エンドオブエーテルニティ」の序盤のボス戦曲を流す。激しいロックでどうにか感情を押し流したかった。しかし効果は今ひとつだった。
ミドリがダッシュしてきて布団をひん剥いてきて、私のヘッドホンを奪い、いったい何事かと聞いてきた。こっちが聞きたいと返した。ミドリは困惑していた。
「お姉ちゃん、ほんとにどうしたの。何があったの」
実はね、お姉ちゃん、ミドリの好きな人とキスしちゃったよ!!!!言えるかこんなの!血の海になるよ。
というかそもそも才羽モモイという人間は、こんなふうに帰ってきてそうそう布団をおっ被って隠れるタイプではないんだ。今の私はミドリの知らないモモイであり、そして私自身も知らない私なんだ。
私はとりあえず元気なふりをすることにした。笑顔を作って、立ち上がる。元気は得意分野だ。
「じゃじゃーん!お姉ちゃんもう大丈夫だよ!ラストエリクサーにより完全ふっかーつ!」
「そ、そうなの……?」
「うん!超絶いつも通り!」
「お姉ちゃんの人格に関してエアプな人が作ったお姉ちゃんって感じがするんだけど」
「わっ私は才羽モモイだよ!ほんと!モモイモモイ!モモイモイモイだから!」
「モイモイすぎてわからないけど、まあ、大丈夫なら……」
「うん!」
「とりあえずメイド服から着替えなよ。というか制服は?」
「あっ!なんか置きっぱにしちゃったー、テヘッ!」
「…………は、はあ……そうなの」
……うん。実際、大丈夫そうだ。
私はいつも、自然体でいるようにしている。そして今は自然体とはいえないけれど、いつも通りのフリなら難なくできそうだ。やってるとだんだん普段通りになってきた気もする。やるじゃん才羽モモイ!これでいつもの才羽姉妹だ!
時間はしばらく進む。
いつもの才羽姉妹のまま一緒に晩御飯を食べ、いつもの才羽姉妹のまま一緒に「カシオペアの拳」で真剣勝負し、いつもの才羽家のまま歯を磨いて、消灯して、私は二段ベッドの上の段へ登る。
「妹よ、おやすみ、おやすみ〜♪」
「クローズマイアイズアンドアイルリーブディスドリーム♪お姉ちゃん、おやすみ」
ぱち。
部屋の電気を消した。
寝れない。
知ってたけど。寝れない。
…………うう。
今まで眠れなかったことなんて、ウト何とかの船に乗る前夜と、ミレニアム合格発表の前日と……あれ、結構あるな。
でも、寝れないのは嫌いだ。好きな人なんていないだろうけどさ。
だってシンプルに明日が辛くなるし、なんかお腹空いてくるし……。
うう、アリスが羨ましい。アリスは一秒で寝れるからなあ。
ああ、もう。
私は観念して目を開いた。
どうせ寝れないよ、これ。
「あーあ……」
どうしてくれるんだ、過去の才羽モモイよ。私が寝れないじゃん。あなたのせいだよ。なんで先生とキスなんてしてしまったの、あなたは。
……柔らかかったなぁ、先生の唇。
先生、困ってるかなあ。
それとも大人の対応って感じなのかな。「次会ったらそれとなく気にしてないって伝えないとな」みたいな。
先生はキス、したことあるのかなあ。わかんない。想像もつかない。てか一応私もあるし。事故で。あっというかそれなら必然的に先生もあるじゃん。うん。
…………。
カーテンの隙間から射す月光が微かに明かりをもたらしている。天井が群青色に見える。最近ミドリが凝ってるから知ったのだ。ぐんじょうしょく。
…………夜って、怖いな。
忘れてた感覚だ。オールも頻繁にするようになると、夜の恐怖を忘れてしまう。
夜の街を廻るゲーム、あったなあ。
……『おねえちゃん』を探すゲーム。
「…………怖い、かあ」
ふと、独りごちる。ミドリが起きないといいけど。……うん。この寝息は熟睡してるな。先生の夢でも見てるのかな。
……怖い。
怖い、か。
私は別に今回のことで、不安を抱いたりはしなかった。
感じるのは、先生への申し訳なさと、未知へ踏み込んでしまったことに対する…………。
うん。
前言撤回。不安ではある。
つまり、あれだ。先生との仲に対して不安はない。先生はちゃんと受け止めてくれる。あの事故の直後、先生はこの才羽モモイ100%有責の過失を流すどころか、心配してくれた。
……先生には、なんというか、敵わないなあ。自分が子どもだって気づかされるというか。普段は自分が大人とか子どもとか考えず、好きにしてるからなあ、私。
私は、冒険が好きだ。
だからゲームも好きだ。
私は跳ね起きた。
ヘッドホンを着けてたら、天井に猫耳が掠めていたことだろう。とにかくそれぐらいにバッと起きたのだ。
そう。そうか。
心の奥底にあったドアを開いたみたいな気分だった。
私の、怖いもの。
それは、私が私でなくなることなんだ。
私、才羽モモイはもしかしたら、タフに見えるタイプかもしれない。それは半分は合ってて、半分は違うんだ。
私はいつだって楽しくしている。演技とか闇深いことはしないし、嫌いだ。
楽しくすることこそがアイデンティティだ。
例えばアリスがいなくなるとか、そういう危機のときは、ハッピーエンドのために苦労をする。
ミドリでも、ユズでも、先生でも、ユウカでも、誰かの危機には私は動くだろう。……戦力になるかは置いといて。
だって、私が、楽しくなくなると、それは才羽モモイじゃないから。
そうだ。そうじゃないか。
ウト何とかの船に乗ろうと言い出したのは私じゃない。アルバイトも経験してアバンギャルド君にも二回乗って、そうして努力して勇者にジョブチェンジした、ユズだ。
懐かしい、セミナーの「鏡」を奪う作戦も、私はまず反対した。「みんなの安全が優先だから」って。
私は、パーティーが増えると嬉しいけど、でも絶対欠けてほしくはない。
みっともない言い方をすると、絶対勝てない敵に勇敢に戦ってやられちゃうより、「にげる」派だ。
魔王に立ち向かうなんて危ないことはせず、魔の手の及ばない僻地で暮らそう!……って考え方の人なのかも。私。
…………。
「先生……」
あの人は、どうしてなんだろう。
あんまり強い方とは言えない私やミドリよりも弱いのに、いろんな学園を駆けずっている。空が赤くなった時も、いろんな学園を繋ぎ止めて、仲の悪いゲヘナとトリニティをも連携させた、って聞いた。
どこから、そんな勇気が湧くのだろう。
……こういう夜の時、シャーレに一人で寂しく感じたりするのかな、先生。
するだろうな。
あの人はなにも、人間離れした人とか、そういうのじゃないから。
……あっ、でも……いつも激務だって言ってたけど、丸一日私やゲーム開発部に付き合ってくれたことも、何度もある。業務量のムラが激しいのかなあ。それか……。
それとも……。
今、ぞっとした。
想像してしまった。今もシャーレに一人でいるはずの、先生のこと。
まさか。
……現実の冒険よりかはゲームの冒険を好むこの私とはまるで反対の、あの人。
今まで何度も時間をくれた。
アリスが頻繁にお邪魔しても気にしないでいてくれた。
メイドの私がサボって寝てても怒らないでいてくれた。
寝る時間もないかもしれないのに、何度も私に付き合ってくれた。
あの人の、行動原理。
モモイらしく、完全にモモイでありたいという私とは、反対。あの人の、願い。
それは、「理想の先生になりたい」ではないだろうか?
私は、私が私らしくあるためならなんでもする。
先生は……?
「いやだ」
私はそれだけ言って、着替えて家を飛び出した。
「♪傷つけられたり 傷つけたり……」
シャーレのオフィスで一人、友達の妖怪MAXと踊りながら一人でパソコンと格闘していると、背後で自動ドアが開く音がした。
誰かと思って振り向くと、モモイだった。ちなみにメイドで……なんと、ヘッドホンと尻尾を着けていない。
そしてもっと驚くべきことに、
ああ、そういえばセキュリティシステムかけるの忘れてたな、だから入れたんだ……と思う間もなく耳なしメイドモモイは突っ走り、私に勢いよくがばっちょしてきた。
「ぜんぜいーーー!!!」
「モっ、モモイ!?」
「ぜー、んー、ぜー、いー!!!」
モモイは号泣していた。過去一激しい泣き方だ。
「えっ何!?どうしたの!?ほんの十二時間ぶりでしょ!?何!?私の預かり知らぬところで過ぎ去りし時でも求めたの!?」
「ぢがうー…………うう。うう……よがっだ……なんか
生きてる。
その言葉に、心臓を握られたような心地がした。
平行世界からシロコとともに来た彼のことが、思わずフラッシュバックしたから。
「……ぜんぜい!……先生……よかった。よかった……」
「モモイ?本当にどうしたの」
「……あのね」
「うん」
モモイは私の膝の上で、涙と鼻水を拭かずに話し始めた。
「私ね。先生とキス……しちゃって、帰っちゃったでしょ」
「う、うん」
「……それでさ。ミドリに、何かあったのかって聞かれて。何もないって、答えたよ。……わっ、私ね、も、もどっだ、の……いつも通りっ、に……」
モモイの涙が再発し始めた。
「……うん」
「でもねっ、わっ、私……夜ベッドに入って。寝れなくて。いろんなこと考えて。私らしくないのに考えて。私っ、私ね、誰かいなくなるのが、すっごい嫌なんだなって……」
「モモイは責任感あるものね」
「うんっ……ずずっ。でも、ね。そしたらね。……私、その、誰かに何かが起こるの、すごい嫌なんだ。私自身にも……」
「うん」
「……私自身も、怖いのは、そういうのは……ほんとに、嫌なの。……先生は、ちがう、の?」
泣きながら、無垢な少女は聞いてくる。
なるべく自然になるように、私は返答する。
「まさか。私も……死ぬのは怖い」
「嘘つき」
モモイは顔色一つ変えずにそう言った。
なぜだろう。
追い詰められたように感じるのは……何故だろう。
見ないようにしていた嫌な扉をこじ開けられているような気がするのは、何故だろう。
「嘘じゃないよ、モモイ。私が死にたがりに見えるかい」
「死にたがりじゃないの……そうじゃなくて……必要なら平気で死んじゃいそうに見えるんだよお、先生……」
「そんなことは……」
「ねえ、先生……あの船に乗った時、体調悪そうにしてたよね……?」
「……私は……」
「隠さないで……!」
「モモイ、私は」
モモイに襟首を掴まれる。
くわっと彼女の顔が近くに来る。
「隠さないでよ!私は何も隠してないでしょ!!」
「モモイ」
「私は全部見せたよ!一つも、隠してないよ……!ねえ。おねがい……理不尽な激ムズゲームのラスボスだって、弱点はちゃんと露出してるでしょ……!先生は大人じゃん!いつもみたいに私に、合わせてよ……!」
モモイは本気だった。
私は、観念した。
「ああ、死ぬのなんて怖くないよ。みんなが死ぬほうがずっと怖いさ」
「………………先生……」
「私は少しおかしいのかもしれない。でも、前向きなおかしさだと思ってるんだ」
「……主人公に、なりそうでならないタイプじゃん」
「ふふっ、まあ、私が主人公なら、それなりに尖ったストーリーテリングかもね。そのゲーム」
「……主人公のつもりなの?」
「私としては、脇役だと思ってる。よくてメインキャラの一人かな。そして主役はもちろん、生徒のみんな」
「……私も」
「えっ?」
「……わだじも、ぜんぜいど、おなじだよっ……!しゅ、しゅじんごうじゃ、ないよお……!」
モモイは決壊した。
私の胸に顔を埋めて、わんわん泣き始めてしまった。
「……モモイ……」
モモイの甲高い泣き声に包まれながら、私はぼんやりしていた。
耳も尻尾も銃もないモモイを抱きしめながら、私はただ、この子が明日から元気で過ごせることを祈っていた。
この子が、明日から、元気に。
この子の幸せのピースが、欠けないように。
……幸せのピース。
モモイの、パーティーメンバー。
ミドリに、ユズに、アリスとケイに、ユウカに、トキにリオにヒマリにマキに……まだまだたくさんいるだろう。
私は……どれぐらい大きなピースなのだろう。
私は、この子の幸せの、何割を占めているのだろう。
こんなに泣いてくれるのだから、きっと大きくはあるのだろう。
でも……想像できない。
生徒のみんなを導くのが使命である私が、生徒の幸せを、ちゃんと想像すらできやしない。
……ゲームでない、現実の壁が立ちふさがってきた。あまりにも大きな、私の課題が。
とうとう、この日が来た。
ずっと想像するのを避けてきた一面だ。
他者が私に向けてくれる愛とは即ち、私の自己愛に繋がりかねない。自己愛が膨らめば、シャーレの先生ではいられなくなるだろう。欲に飲まれて、終わる。
だから、このジレンマを、今日まで徹底的に想像しないでいたんだ。
……電車の席に座って私を見る、誰かの姿が脳裏をよぎる。
責任。
私の、責任……。
「モモイ……」
「…………くかー……すやすや……」
「…………あっ、寝てるのか……そうか。……そうか…………」
鳥がぴちゅぴちゅ鳴く声が聞こえる。
日差しが暖かい。
「んー……おはよー……先生」
私の隣で寝ているモモイが目を覚ました。
「……勇者モモイ、おはよう」
「あーよく寝たぁ……!!!???」
モモイは勢いよくベッドから転げ落ちた。どうやらシャーレで目覚めたことに驚いたらしい。
「いだぁっ!!!」
「モモイ!?大丈夫!?」
「……つー、だ、大丈夫……!」
落ちたモモイに手を貸してあげた。ちょうど、ベッドの上から釣り竿を垂らすみたいな構図になる。
モモイは私の手を掴んだ。
「モモイ魚を釣り上げたよ!なんちゃって」
「高く売れるよー、ふふん!……えーと。そうだ。……私昨日、先生に抱っこしてもらったまま寝ちゃってたよね……」
「うん。そうだよ」
モモイは頭を掻いた。
目を逸らしがちに聞いてくる。
「んっとー、もしかして私、お泊りしちゃった感じ?」
「うん」
「銃も持たずに来ちゃった感じ?」
「うん」
「……先生にすごい迷惑かけちゃった感じ?」
「別に何ともないよ」
モモイはつっこんだ。
「あるでしょっ!少なくとも私を運んでくれたじゃん!」
「別に平気だよ!それどころか、気が利かなくてごめん。服がメイドのまんまなんだ、君」
「あっ大丈夫!すごい蒸れただけ!むしろ寝てる間に着替えさせられるのはちょっと……あっ!まずい!」
「どうしたの!?」
「家でミドリが一人だ!やば……」
「ああ、昨日連絡しておいたよ」
「……ごめん。ほんとにごめん、先生」
「いいよ。むしろ、ごめんね」
「…………」
昨日の会話を思い起こしているのだろう。
モモイは、苦い顔をしていた。
「……先生も、仕事着のまんまじゃん」
「うん。君をここまで運んできたら、なんか……燃え尽きちゃって。私、寝ちゃった。君の隣で」
「……う、うん……」
モモイは少し赤くなった。
「……ねえモモイ。私って……どうしたらいいかな?」
「え」
「なんかさ……わかんなくなっちゃった」
「……な、何が?」
「私が……頑張りすぎても、人を傷つけるのかもなって。もう何もわからないや」
「…………えっ。……わっ、私のせい、だよね……」
「ううん。いつかはこうなってた気もする。……だからさ、モモイ。今日、学校休みだよね」
「へ?うん。そうだけど」
「今日一日、一緒に遊ぼう」
「……ごめん待って!私、ついてけてない!嬉しいけど話が見えないや」
「あ、そうだよね。えーと。私、有給取ったんだよ。昨日連邦生徒会に届け出を出した」
「有給!?」
「珍しいでしょ。でも三日間だけね。春休みってやつかな」
「は、はあ」
「それでさ。……うーん。自分を見つめ直そうかなあって。私、思えばずっと突っ走ってきたような気もしてきたからさ。小休止だ」
「宿屋で休むのは大事だって、私も思う!」
「うんうん。でも、やりたいこと何もないんだよね。というか燃え尽き感がすごくてさ。一人じゃご飯も食べないでずっとのびちゃいそう」
「うん……」
「だからさ。モモイ……その。……ああ、子どもにこんな事言う日が来るなんて……」
「………………!」
察したモモイは、目をキラキラさせた。
「えーと。……いつもみんなにやってるみたいに、元気をちょうだい。私のこと、助けて?」
モモイはにいっと笑う。
「……言えたじゃんか!」
「私やっぱ、生徒みんなのこと好きだわ。……へへ。よーし。じゃあモモイ、ついでにもう一つお願い。朝ごはん作ってよ」
「……レトルトでいい?」
「なんなら出前取るかい?好きなの選んでいいよ」
「わあーい!!」
「ふふっ……学校終わったら、みんなにも来てもらおうか?」
「いいねいいねー!ゲームやろゲーム!」
「ゲームがやりたーい!なんつって」
「あははっ」
「ふふっ。……モモイ」
「うん」
「ありがとう」
「どういたしましてっ!」
寝癖ボサボサのモモイは、過去一の笑顔を見せてくれた。
「あっ先生」
「なんだいモモイ」
激辛牛丼を朝から二人で楽しんだあと、シャーレのゲームセンターでガンシューティングゲーム(今のところ私がスコア優勢)で遊んでいた。
「…………キス……またいつかしても、いいよ」
「……えっ?」
「……あーもう!どれだけ哀れっぽく頼まれても二度と言わないから!!おりゃー!!」
「あっ、卑怯だぞモモイ!」
モモイはアイテムの金マガジンを撃ち抜き、パワーアップした銃を乱射した。私は後れを取ってしまった。
二人きりのゲームセンターに、私たちの争う声とゲームの音が響いていた。
もしもモモイが先生と事故キスしたら 完
だれのお話が好きですか?
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コユキちゃんが私を泣かせた
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ミサキ「先生が高熱だって」〜
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ミユとの絆レベルが100の状態で〜
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二年生コユキは諦めない
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シャーレに来たシグレが多忙で〜