chapter:その一 出会い
「へえー。逆位置使う派かあ」
「……は、はいっ!!」
「君のカードの絵柄は……お、見たことない!」
「せ、先生はどのような……カードを?」
「ほら、これこれ。いつも持ち歩いてるよ!ベタだけど、ウェイト版さ。マルセイユとトートも気になるんだけどねぇ」
「わ、わぁっ……!!」
「あーでも、魔法まわりのことは私ノーマークだったなぁ。心理学との繋がりとか、あとカバラあたりを齧った程度で……エリ、そのうちちょっと教えてよ」
「は、はい!喜んで、マスター!」
「こちらこそマスターと呼ばせて」
あ、ああっ。
なんだか、その、胸が高鳴って止まらない……!あのシャーレの先生が、同好の士だったなんて……。
「…………魂で繋がりあってるねぇ……」
「ふふ。……ソウルメイト、でしょうか?」
「……先生も、先輩たちと同類だ……」
「あ、ごめんねみんな!」
先生は、会のみんなに向き直る。
「自己紹介するね。私はシャーレの先生。タロット占いに多少の造詣がある、普通の大人だよ!よろしくね」
chapter:その二 エリの占い
「ううう…………っ」
どうしよう、どうしよう。
この間からマスターが気になって、なんにも手につかないよお。
今だってスケッチブックに向かったまま、描きだせないでいるぐらいだ。
出てこない。なーんにも出てこない。愚者の逆位置の暗示よろしく、頭の中はグルグルしている。
魔法にも集中できない。魔方陣を描こうとしても、
ワイルドハント生と、発想の枯渇……水と油、トリニティとゲヘナぐらいに相反する概念のはずだ。
なのに。それなのに。
できない。
「……ああーっ!こ、こんなときはっ……」
そう、占い。
道を示してくれるもの。
人生の迷い子の葛藤を砕いてくれる、天、地、水、その他から来るマナの導き!
「……え、えいっ!」
引いた。
……『法王』。
椅子に座り、二人の人に何かを語りかけている、冠を被った人物。
暗示は……。
「暗示は『規範、教え』。一番『先生』っぽいカードだね?」
「にゅふーーーーーっ!!?」
いた。後ろにいた。
マスターがいた。
「マッ、マママママスター!!?」
「やあエリ。今日も芸術してる?」
「できてませんっ!」
「そりゃ大変だ。疲れてるときは寝るのもいいよ。ユン何とか先生も夢を重視してるでしょ」
あ、あ、ああっ。
話題振ってくれてる、話題振ってくれてる、話題話題話題。
「……エリ?帽子を貫通して湯気出てるよ?頭から」
「はははははい!嬉しいです!」
「あはは、どんな返事さ。まあまあおちついて。ほら、マナを補給して」
先生はなんと、クッキーを出してくれた。
またこっそり持ち込んでくれたんだ。
「ほら、あーん」
「あ、あ、あーん!ぱくっ!……」
「落ち着いた?」
「は、はい!」
「よかった」
「はい。……」
「……あ、そうだエリ」
「ハイなんでしょうっ!!」
「いつものように一枚引いてみてよ。私が来たのはどういう意味か気になるな」
「……お、お任せください。では……」
ぺらり。
「……お、『恋人』!はは、そっかそっか。……あれ?あ、エリがオーバーヒートした……。戻っておいでー?大丈夫、恋人のカードは普通に人との絆とかも指すでしょ。……うむむ、帰ってこない。どうしよ。部室に運ぶか。いや保健室かな……?」
chapter:その三 先生の占い
「あ、おはようエリ」
目覚めると同時に絶叫してしまった。
私は、マスターに膝枕されていた。
いやそれはまだいい。問題は、私に帽子がない事だ。
「ははは、若くて元気で良いなあ」
「や、だって、え、え、わ、私の、ぼ、ぼ、帽子、帽子がっ」
「あ、ごめん。流石に寝てる時にまでかぶってたらくっしゃくしゃになっちゃうからね。ほら、テーブルの上にあるよ」
すぐ帽子を取った。かぶった。
そして俯いた。
「……うう、マ、マスター……」
「ごめんごめん。寝顔可愛かったよ」
「……うううううー!!」
「そんなに恥ずかしかった?そろそろ私に慣れる頃じゃないー?ふふ」
「そ、その……しゅ、趣味が合う人相手だと……逆になんだか」
「あー、そういう。なんかわかる気がする」
「うう……」
「どれ。気分転換に、私が一枚引いてあげよう」
「あ、お、お願いします」
りょうかーい、とマスターは軽く言い、カバンからカードの束入りの布袋を取り出した。
「……よし。いくよー?」
「はい!ごくり……」
小気味よいシャッフル音の後、先生は一枚を手に取った。
「……お。タロティスト泣かせの『節制』だね」
「ああ……」
節制。
翼を持つ天使が、片足を水辺に、もう片足を地べたに置いて立ち、手には二つの金の杯。片方からもう片方へと、中身である水を移している……という図。背景には長い道のある山がある。
とても解釈に困るとされることの多いカードだ。
『節制』、つまり節度を持って生きるべきだと読むこともできるけど、それだと寓画にいまひとつ合わない。
まるでカノエ先輩のような、どこか掴みどころのないカードだ。
「ど、どうでしょうかマスター……?」
「うーん。私の持論だけど……これは十四番目のアルカナだからねえ。一つ前が十三番、死神。一つ後は十五番、悪魔。……死神は『人はいつか死ぬけど、そうして世の中は動いていく』。悪魔が『欲望、執着などのありふれた誘惑に気を付けろ』。……その間の節制だから、『危ないことをするなよ、そうすれば安全だ』みたいなイメージがあるね。右に寄っても左に寄っても危ない、中庸が大事……っていう」
「ふ、ふむ……では、今回の場合は?」
「うーん……未来の事かな?」
がちゃり。
部屋のドアが、突然開かれた。
「……おや。これはこれは」
「あ」「あっ……」
我らが副会長、椎名ツムギが帰ってきた。
「……ふむ。安心してください、我らが会長……いえ、女帝よ。この眠れる森の美女は全て見通していますよ」
「やっ、え、その」
「『人間の死は社会の福祉』……そっか。死神が来てしまったね」
「おっと、なるほど。……ええ。この死神は全て理解していますよ、女帝よ」
副会長はにっこりと笑う。
「ええ。大丈夫です。男女が二人。そして、女性の方には、大きな帽子の下からもなお、はみ出して主張する寝グセ……」
「やっ、えっと、これはですね、違……」
「ふむ。我々四人が住まうこの
私は記憶消去魔法を行使するため、銃を構えた。
死神は「そう来るのは分かり切っていた」と言いたげに、踊るように回避して語り続ける。
「ふ、は、ふっ。……誰にも口外はしませんよ、1の魔術師から2の女教皇へ、そして3の女帝へと歩みを進めたことは……誰にも言いません。そう……『リビドー』は芸術と切っても切れませんからね」
「今日も語りがキレてるね、ツムギ」
「言の葉を紡ぐ。まさに私の名通りでしょう?ふふふ。では、お邪魔な死神はこれで……」
「待って、後生ですから待ってください……!!」
全弾撃ち尽くしてしまった。命中したのは壁ばかりだった。
死神としか言いようがない副会長は手を振る。
「では、女帝よ、また」
死神は廊下へ出て行ってしまった。
私はリロードしながら、おそらく涙目でマスターを見た。
マスターは一枚引く。そして、私に優しく笑いかける。
「『運命の輪』。運は車輪のように回る……安心して。最悪が過ぎればあとは上がるだけさ」
タロットカードに造詣があるタイプの先生と出会ってだいぶ恋煩いになるエリちゃん 完
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コユキちゃんが私を泣かせた
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ミサキ「先生が高熱だって」〜
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ミユとの絆レベルが100の状態で〜
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二年生コユキは諦めない
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シャーレに来たシグレが多忙で〜