私の生徒解釈   作:ブルアカ二次創作@本拠地はpixiv

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お互い渇愛。
⚠最後まで読んでね!


寝ている先生がキサキによしよしされる話

 

 

 

「妾との約束を忘れてしまったのかえ?先生」

「ごめん、キサキ……」

 そう言いながらも、キサキは膝枕しながら優しく頬を撫でてくれる。ひとつ撫でられるごとに、不安や恐れや疲労がどんどん追い払われていく。

「くふふ、構わぬ。先生と、一緒にいろんなものを見に行く約束……そう。一緒に、な。お互いに万全でなければどの道、楽しめぬ。それでは何にもならん」

「はは……キサキは本当に優しいな」

「其方には負ける」

「そうかな」

「そうじゃ」

「ふふ、じゃあ強さは?」

「……その有り様で何を強がっておる。大人しく、そのまま楽にするとよい」

「キサキはいつも、ブレないね」

「肝は据わっておる方じゃ」

「全くだね……私のほうが、大人なのに。これじゃ形無しだ」

 キサキはいつも以上にゆっくりと話してくれる。

 とても、とても安心する。

「よい。先生は、成すべきことを精一杯成した結果、いまこうして横になっておるからの。妾は其方のそういうところを信じておるのじゃ。だから構わぬ……と言いたいところじゃが」

 キサキはため息をついた。

「今、たった一つだけ、受け入れられぬ事ができてしもうた」

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の足と胴体には、いくつもの穴が空いていた。

 大きな血管をやられてしまったらしく、血が容赦なく出ていく。もう助からないのは誰が見てもわかるだろう。

 ……目の前が白くなってきている。

「今其方の考えていることではない。それは、よいのじゃ。妾より先生の方がずっと辛いはずじゃ」

 キサキは私に見られないよう、天を仰いでいる。

「……キサキも、泣」「泣いておらん」

 遮られた。

「其方の前でだけは、泣きたくない。ほれ、もう抑え込んだ。見るのじゃ」

「……はは、ごめん。どのみちもう、見えないや……」

「……先生。妾が受け入れられぬ事と言うのはな、先生がいなくなることではない。悲しみのあまり妾が折れたら、其方もまた悲しむ。だから、折れん。妾が死ぬまで、もう決して折れんと決めた」

「……キサ、キ」

「山海經ではの。命尽きたものは、生前に積んだ徳に応じた、別の命に生まれ変わっていくのだと信じられておる」

「……」

「いつだって力を尽くすのが大事だと、先生が教えてくれたからの。だから、妾は其方と、『今生では』ここで別れたのだと思うことにする。いや、思うのではない。そうなのじゃ」

 ……温かい。キサキは、とても温かい。

 自分の世界がどんどん狭まっていくのを感じるのに、怖くなかった。

 むしろ、胸がぽかぽかしてきて、心地よい。

「……また、あいにきて、くれるの?」

「話が早いのは其方の美徳じゃの。そうじゃ。しかし今の妾ではとても、其方のいる来世に行けそうにない。先生と並んだところに妾が居るとは、とても思えん。第一、すぐにそなたを追ったりはできない。玄龍門を、山海經を見捨てるなど、有り得ぬ」

「……」

 とうとう、声も出せなくなった。

 でも、やっぱり怖くない。

 キサキは全部、受け入れてくれるから。

「妾は、これからも玄龍門の門主じゃ。もう誰にも、この志は折れぬじゃろう。先生の想いが、ずっと妾と共にいてくれるのだから。先生がこの世にいなくとも、これからは一人で色んな世界を見て回る。もっと門主として、人として、大きくなる。そして卒業しても、妾は長生きする。今世でできることをすべてやり尽くして、精一杯生きて、そうすれば、其方にやっと並べるかもしれぬからの」

 自分の鼓動が、弱まってくる。

 でも、怖くない。

 今までの人生で一番、満たされた心地だ。

 

「だから、先生。先に行っていてくれ。そして……妾が其方に追い付くまでは、決して。…………誰も、娶らずにいてくれ」

 

 

 

 

 

「玄龍門の名において、約束じゃ。破ったら、承知せぬぞ?くふふ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あぁ、よしよし。本当に疲れたのじゃな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……これぐらいの前借りは、構わぬよな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 唇に温かい、とても温かい感触がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それが、私の最期。

 

 

 幸せに満ちた、この世とのさいごの感触。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……くふふ。必ず、追い付くからの?先生。その時こそ、妾のそばに其方を置くことができようぞ。永劫に。……とても、楽しみな未来じゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」

 ベッドから跳ね起きる。

 いつものシャーレ。いつもの休憩室。いつもの天井。いつもの窓からのいつもの景色。

 いつもの私の身体。

 私は死んでいない。撃たれていない。

 生きている。全身脂汗まみれで、元気に生きている。

「………………夢…………あぁ、本当によかった……これまでで二番目に最悪の夢だ……」

 頭が夢から現実へと切り替わる。

 今日はキサキが当番だ。

 キサキが。

 ……胡蝶の夢の話をしてくれた、キサキが。

「…………胡蝶の、夢」

 現実と夢との、区別がつかなくなる夢。自分が蝶だったか人間だったか分からなくなる話。……でも。

 蝶でいる間は心地よいのだと、キサキは言っていた。

「……私は今、蝶じゃない、よね?今は人間の側で……さっきまでのが蝶。そうだ。そのはず……」

 わからない。

 考えてみれば、ここが現実なんて、誰が保証してくれるのか。

 気付けば、キサキに電話をかけていた。

 

『先生?今はシャーレに向かって歩いておった。何かあったか?』

 いつも通りの、キサキ。

「ごめんよ、キサキの声がどうしても聞きたくてね」

『くふふ、待ち切れなかったか?いや、その声の荒れ具合からして……悪夢を見たのかの?』

 なんでわかるんだ。

「……ううん」

『嘘じゃな。して、どんな夢だったのじゃ?』

「……い、言えない……」

『ほう。さては、妾が出てくる悪夢だったのかえ?』

 ……なんでそこまでわかるんだ。

「……まあ、その。これまでの人生で二番目に酷い夢だったよ……あ、夢のキサキの部分は、癒しだったからね!?私がキサキに苦しめられるとか、そんな感じじゃなかったから」

『わかっておる。そうでなければ妾に電話してこないはずじゃ……まあ言いたくないなら聞かんでおく。代わりに、一番の悪夢について話すのじゃ。気になる分を埋め合わせよ』

「ええ…………い、いいけど……すっごい、怖いかもよ?私はその夢を見て起きた時、ベッドから転げ落ちて暴れてたもの」

『構わぬ。先生のことはなんでも知りたいからの』

「そっか。じゃあ覚悟して聞いてね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………私がキヴォトスに来て、シャーレの先生になって、みんなのために働くこの生活が……ぜーんぶ夢でした、っていう夢なんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……』

 長いことキサキは黙った。

『……先生。妾は、肝は据わっている方だと自負している』

 デジャヴを感じた。

「うん」

『その妾が今、心の底から、こわくて震えた』

「そんなに?」

『そんなに、じゃ。その夢のことはもう、妾以外に話すでない。というか、話すな。他の学園の重役が聞いたりすれば、失神しかねん』

「心得たよ」

「うむ」

 声は電話口からでなく、部屋の入り口から聞こえた。

「来たぞ。酷い寝癖だの。妾をそんな姿で迎えようとは。もしここにミナがいたら大事じゃ」

「ごめんよ」

 キサキは歩み寄ってくる。

「面白いからいい……くふふ。先生。こうしてシャーレで一緒にいるのも、夢かの?」

「そうであってほしくないな。これが夢よりは、現実のほうが嬉しいよ」

「……そうだの。ただ、妾はどの道、嬉しい」

 キサキは良い笑顔を見せる。

「……と言うと?」

「先生は、妾のいる夢を見たのじゃろう?つまり、夢の中だろうと現実だろうと、先生と妾は共に居ることになるからの。良い心地じゃ」

「……これは一本取られたな」

 顔が赤くなってくる。

「くふふ……ほれ、着替えを手伝ってやろうか?」

「え、遠慮するね……身支度するから、ちょっと待っててね」

「よいぞ。……あぁ、楽しみじゃ。今日はどんなものを一緒に見られるかの?」

 

 

 

寝ている先生がキサキによしよしされる話   完

だれのお話が好きですか?

  • コユキちゃんが私を泣かせた
  • ミサキ「先生が高熱だって」〜
  • ミユとの絆レベルが100の状態で〜
  • 二年生コユキは諦めない
  • シャーレに来たシグレが多忙で〜
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