小賢しミラ子の借り物競走【完結】   作:帝都造営

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クロノジェネシス実装おめでとう。めちゃくちゃ好き。大好き。ありがとう。


第14R それではよいお年を~!

 年末と言えば……そう!

 

 

「年越しソバ!」

「クリスマス?」

「有マ記念!」

 

 

 言ってから、3人で顔を見合わせるハートちゃん、ロン、クロノちゃん。

 

 

「うふふふふ。定期テストですね?」

 

 

 そしてトドメを刺すのはブーケさん!!

 夏休み前の私ならぎゃ~! と言って赤点を吹き出しながら倒れていたことでしょう。

 

「ですが! いまの私は違うのですっ!」

 

 ドバンとご開帳!

 数学も英語も赤点回避!

 

「「「おお~~~」」」

「ふふん。私にかかればこんなもんですよぉ~」

 

 ほらほら、どうですトレーナーさんとピラピラ。

 

「赤点回避おめでとう」

「でしょう? ……っておわりですか!」

 

 いや他になにかあるのか? みたいな顔やめてもらっていいですかね?

 スゴいじゃないですか。立派じゃないですか!?

 

「ヒシミラクル学生。『井の中の蛙大海を知らず』だぞ」

「なにお~、じゃあみんなの点数教えてよ!」

「え」

「うーん」

「そうですね……」

 

 

 え、なにその反応。

 もしかして、私にすら負けてる感じ~?

 

 

 

 

 

「…………まさかほぼ全部負けてるなんて……」

 

 

 おかしいな。文系科目はフツーに私出来る方なんだけれどな……。

 

「やっぱアイルランドで遊んでたからじゃない?」

「遊んでないもん!」

「プレミアリーグは何戦みた~?」

「ま、まあ……それなりに……」

 

 どうしよう。帰国してからは真面目に勉強してたんだけれど……。

 やっぱりトレーニング時間が長すぎるのかな?

 

「ていうか、ブーケさんのテストみてないです!」

「ミラ子ー、ブーケさんに勝つのは無理だからやめとけー?」

「虎穴にはいってご飯になる、だねぇ」

 

 ハートちゃんとロンが茶化してくるけれど、ブーケさんは微笑みを崩さない。

 

「私、大学部なのでテストは年明けなんですよ」

「えっ大学部???」

 

 ていうかトレセンって大学部あるの??? サポート科とかじゃなくて?

 

「昔から医学部とかありますよ?」

「し、知らなかった……」

 

 で、でも考えてみれば確かに。学園併設の病院が大学部の附属病院なのは納得だよね。

 ……やっぱ生身で全力疾走する以上、怪我のリスクは常にあるし。

 

「おっとぉ? 大学進学ガチ勢らしくないですなぁ~ミラ子学生?」

「帝農工以外眼中にないってやつだねぇ」

「ちょいちょい。流石に全部の大学は知らないって~」

 

 とは言うけれど、実際あんまり、他にどんな大学があるかとかは調べてないなぁ……。

 

「って、ちょっと脱線しすぎた! 私が言いたかったのはそうじゃなくて……」

 

 みんなみて! と私はチラシを掲げる。

 

「……文字が小さくて読めない」

「チラシってか、小テストみたい」

 

 うん。分かるよ。すごーくよく分かる。

 

「『平素よりURA平地・障害競走チームクエーサー(日本トレーナー会加盟)をご利用頂きありがとうございます。さて、年の瀬となりましてクエーサーでは今年の競走を振り返りつつ来年もよき競走を行うために年末の大掃除を実施したく……』ながい割に中身のない文章だねぇ……」

 

 チラシと呼ぶのもはばかられるくらいの小さく統一されたフォント。宣伝する気ゼロの単調な文章。

 それは最初のところだけ読むと自由参加のチーム部屋大掃除への参加呼びかけ文だ。

 

「掃除かぁ……自由参加ってことは、別に参加しなくてもいいんでしょ?」

「まーま。最後まで読んでみなって」

「どれどれぇ、えーと『参加者にはタコパ(たこ焼きパーティー)参加権が与えられます』?」

 

 呼び上げたロンの視線がついとトレーナーさんへ向く。

 もちろんこんな文章を用意するのは、名義貸しチーム〈クエーサー〉ではトレーナーさんだけ。

 

「と、いうわけで~?」

 

 あっ、トレーナーさんたら「バレたか」みたいな顔してる。

 まあもう遅いんですけれどね!

 

 

「「「「ごちになりまーす!」」」」

 

 

 


 

 

 

 そうして掃除が終わったら、いよいよタコパの時間!

 なのですが……。

 

「はい、トレーナーさん!」

「……なにかな、ヒシミラクル学生」

「私、お掃除頑張ったんでお腹空きました!」

「もちろん。そのためのたこ焼き。今から……」

「たこ焼きはおやつです! お好み焼きがたべたいなー?」

 

 ね、みんなもそう思うよね~?

 そーだそーだと合唱すれば、さしものトレーナーさんも抵抗しきれまいってワケ。

 

「言いたいことは分かった。しかしお好み焼きの材料なんて用意してないぞ?」

「もうやだなぁトレーナーさ~ん。そんなの決まってるじゃないですかぁ」

「…………」

 

 そう。私の密かな楽しみ。究極のお好み焼き!

 お小遣い月3000円にされたせいで最近ぜんぜん食べれてなかったんだけれど、トレーナーさんにたかれば無料で出来ちゃうのです!

 

「これ以上は出さないからな」

「やった。それじゃ買い出し隊、しゅっぱーつ!」

「いってらっしゃい」

 

 呆れたトレーナーさんと微笑む(圧なし)ブーケさんに見送られて、私たちは年末の商店街へと繰り出した!

 いやはや、どこもかしこも年末年末……お、もう有マ記念のポスターが謹賀新年ポスターに変わってる。季節モノの移りはめまぐるしいね~。

 

『さて、それでは今年のスポーツハイライト。今年のクラシック路線は三冠を分け合う結果となりましたね!』

『そうですねぇ~、皐月賞のアグネスタキオン、日本ダービーのジャングルポケット、菊花賞のマンハッタンカフェ。すでに彼女らの頭文字をとって『JAM世代』という言葉も登場しているようです』

『ちなみにJAM世代の一角、アグネスタキオン選手について興味深い……』

 

 と、街角の電気屋さんのテレビがレース特集をやっている。

 まあ一応? 私も現役ウマ娘ですからね。ちょいと意識を向けてみるけれど……。

 

「やっぱり、ダンツちゃんはほとんど出ないなぁ」

「ミラ子の同室だっけ」

「うん」

 

 私はテレビで扱われている競走ウマ娘たちのことをあんまり知らない。

 やっぱり、別世界なんだよね。画面の向こうのターフって。

 

「でも。ダンツちゃんがすっごく努力してたのは知ってる」

 

 だって近くで見てたから。

 私がアイちゃんと一緒に早朝のロードワークに行くときですら、私より先に起きて私より先に準備を済ませて……それで、少しなら待ってくれたりして。

 

 ていうか、それでG1の2着とってるんだから普通にスゴいよ。

 ダンツちゃんは、もっと自信を持っていいと本当に思う。けれど。

 

「やっぱりこの放送を見たら、落ち込んじゃうのかな」

 

 せめてひとコマだけでも、一瞬だけでも画面に映ったら報われたりするんだろうか。

 G1どころか重賞にも縁のない私にとって、それはあんまりに別世界の話で。

 

 ……ていうか、うちの家族だったら画面端に映り込んだだけで大騒ぎだろうなぁ。

 

「どしたのミラ子?」

「んー。ダンツちゃん呼んでもいいかな?」

「いいヤツすぎかぁ~? 呼ぼ呼ぼ!」

「ま。いちおう私、先輩ですからねぇ~」

 

 先輩風ふいちゃったり? こうぶおおっと、髪の毛がゆらりと揺れるくらいに?

 

「いやそれは扇風機の風……てかなんで冬の家電屋さんに扇風機?」

「季節感台無しだねぇ~」

 

 

 


 

 

 

 

 そのあとは、みんなで色々好きなモノを買って。

 キャベツを切ったり、ネタを混ぜたり……。

 

「……ふふ」

「どしたんミラ子」

「ううん。なんでもー? やっぱお好み焼き好きだなって」

 

 ホットプレートの上でどんどん豪華になっていく魔法の円盤をみながら思わず笑っちゃう。

 

「ていうかトレーナーさん。やっぱりお好み焼きで正解だったでしょ~?」

 

 紙皿の上に一切れ乗せてトレーナーさんに渡せば、珍しく感心したご様子。

 

「確かに。たこ焼き機だけだと生産が追いつかなかったな」

「普段は私と、トレーナーさんだけでしたからね」

 

 え、毎年2人でタコパしてたの! ずるい!!

 私らなんて「クリスマスだしなんかやりたいね~」「年末だしなんか~」「正月だし~」とか言ってるうちに冬休み終わっちゃうのに!

 

「そうだ。ジュースも買ってあるから飲んでいいぞ」

「え? ホントに?」

 

 やば。今日のトレーナーさん、もしかして超太っ腹!?

 やったと冷蔵庫に向かえば、そこに放り込んである何本かの特大ペットボトル。

 

「?」

 

 そこに張り付いたレシートに、つい手を伸ばしてしまう。

 

「……買ってあるって、今さっき買ってきたんじゃん」

 

 

 ついとみれば、向こうにはチーム〈クエーサー〉の面々。

 

 なんていうか、とんでもない一年だったな。

 スカウトされないまま中等部の日々が終わっちゃって、これじゃいけないとチームの門を叩いて。

 

 それでもまあ、なんとかなっちゃってます。なんて。

 来年もこんな感じだったらいいな、なんて。

 

「ま、それは未勝利脱出してから言えって話だよね~」

「ミラ子ー! 乾杯するから早くジュースもってきてよ!」

「あ、は~い」

 

 

 てなわけで、これで私のデビュー1年目、ジュニア期はおしまい。

 

 次走はクラシック未勝利戦――――小倉2000メートル!

 

 

 

 




もしよかったら記念短編も読んであげてください。公式のクロノちゃんがあまりに直球でよい子なのが辛いのですが、この作品は続けていきます。許してくれとはいいません。
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