小賢しミラ子の借り物競走【完結】   作:帝都造営

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やよいちゃん「執行!」

ミラ「URA特殊部隊とか笑」
ロン「自衛隊や警察じゃあるまいし」

矯正局特別機動警備隊「やあ、法務省の特殊部隊だよ」
海上保安庁特別警備隊「やあ、国交省の特殊部隊だよ」
漁業監督官「やあ、農林水産省の実力部隊だよ。普通に臨検するし相手は抵抗してくるから防刃チョッキは欠かせないよ」


カレンブーケドールサポカ実装ありがとう!


第33R URA特殊部隊ってなに?!

⑪ちゃんがあと何億か計算しようぜ3R

 

1:名無しの軸流士

 

前→httu.mmm.aaa……

ここではウマチューバー「生涯収支ぷらす11億円チャンネル」の主にして「さすらいの軸流士(師)」こと⑪ちゃんがいくら稼げたかを計算するスレです。

野心的な⑪ちゃんの夢を応援しよう!

・⑪ちゃんは覆面系ウマチューバー。被り物はUMA。

・動画はレース予想が中心。レース場に住んでいるらしい(本人談)

・被り物の動きからウマ耳あり、コミュ限配信ではみ出した芦毛まではほぼ確定。

・トレセン関係者である可能性高(チーム「クエーサー」所属?)

・本名はヒシミラクル?(状況証拠のみ)

・ユーイチはユーイチです!

 

 


 

 

 

「……」

「……」

「……」

「……」

 

 

 き、きまずい……。

 

 

 い、いやほら。こういうのってあるよね?

 なんていうの? テストで0点取ったのを隠そうとしたらトンデモないタイミングでバレちゃったーみたいなヤツ?

 

 あ~違うかな。

 友達の家に遊びに行ったら友達が隠してた0点のテストをお母さんに見つかって怒られていたみたいな感じかな。

 

 うん。なんというかこう、他人事なんだよね。

 大変なことになっているのは分かるんだけれど。

 だって私なんも悪くないし……。

 

「あの」

 

 口を開いたのはチーム〈クエーサー〉に所属する芦毛のウマ娘。

 レースが大好きで、レースの予想が得意なクロノちゃん。

 

「その」

 

 それでたぶん、暫定「ぷらす11億円」さん。

 

 

 ……あーいやまあね?

 言われてみればそうかもー? ってのはチラホラあったよね。

 

 予想動画投稿してるって話はしてたし。

 妙に11億円さんの動向に詳しかったし。

 

 でもそれが本人だった! てなるかなぁ普通?

 

「えっと」

「クロノちゃん」

 

 すとんと血の抜け落ちた顔でブーケさんに首根っこを捕まれているクロノちゃん。

 私はそんな彼女の肩にポンと手を置く。

 

「こっから言い逃れるのは、さすがにムリだと思うなぁ」

「はい…………」

 

 クロノちゃんはガックリ項垂れる。

 

「私が11億円です。そして万券の創世者(クロノジェネシス)です」

「その異名はなに?」

 

 もしかしてクロノちゃんって変な子なのかな?

 ……そうじゃなきゃUMA被ってあんな語りしないか。

 

「クロノジェネシス学生。なにか言うべきことは?」

「ごめんなさい」

「少なくとも俺に対して言うことではないな」

 

 うわトレーナーさん対応が塩!

 もうクロノちゃんのライフはゼロだよ!

 

「ブーケ、降ろしてやってくれ」

「はぁい♪」

 

 ニコニコブーケさんがクロノちゃんを床に降ろす。その見下ろす眼と来たら!

 この人も大概、なんというか……かんというか……。

 

「ミラクルさん」

 

 溶けたバターみたいに床に崩れるクロノちゃん。

 そのまま腕を前に、上半身を折り曲げて土下座の体勢に。

 

「この度は大変なご迷惑をおかけし……」

「う、ううん! 全然気にしないで!」

「ですが!」

「気にしてないきにしてない。じっさい実害(ダメージ)はなんにもないから!」

 

 まあ巻き込まないでよ! とは思ってるけれどさ。

 このタイミングで追い詰めるようなことは言いません。ええ。

 

「その通り。ヒシミラクル学生はなんのダメージも受けていない」

 

 そんな私に便乗するトレーナーさん。

 いや、流石になんのダメージも受けていないって他人に言われると「ん?」ってなるんですが。いや私もそうは言ったけれどさぁ……。

 

「ヒシミラクルは11億円じゃないんだぞ?」

 

 え? だからなに?

 

「『11億円ではない』と否定すればそれでコトは済む」

 

 あー……。

 いやまー、それはそうなんだけど。

 

 ……というか、さ。

 

「トレーナーさん、知ってたんですか?」

「なにをかな?」

「クロノちゃんが11億円さんだって」

 

 そう。

 単に(ヒシミラクル)を11億円さんと勘違いした花束が贈られてくるだけなら無視すればいい。さっきトレーナーさんが言ったとおりのこと。

 

 それなのに、トレーナーさんは一芝居打った。

 わざとらしーく11億円チャンネルのことを口にして、クロノちゃんに尻尾を出させた。

 

「鋭いなヒシミラクル学生」

 

 うわー嬉しくない。

 褒められても全然嬉しくないことってあるんだね。

 

「俺はトレーナーだ。届いた花束をウマ娘にそのまま渡すとでも?」

「妙な言い方しますね……中抜きでもするんですか?」

 

 その言葉を聞いたチームリーダーがトレーナーさんの隣にスッと寄る。

 

「トレーナーさんには可憐(カレン)な花束がありますからね?」

「ブーケ。話が逸れるからやめような?」

 

 そうじゃなくて、ファンレター含めて全部検査するんだよとトレーナーさん。

 

「爆弾とかだったら困るしな」

「困るってレベルじゃない!」

 

 急に怖いこと言うね!

 え? ちゃんと検査済みだから大丈夫?

 そういうこと言ってないんだよ分かんないかなぁ!?

 

「しかし爆弾は出てこなかったし、単にクロノジェネシス学生が匿名でウマチューバーをやっていたことが発覚しただけで済んだ」

 

 大山鳴動して鼠一匹とはまさにこのことだが、良かったじゃないかとトレーナーさん。

 まあ、隣で溶けているクロノちゃんには何一ついいことありませんけれどね。

 

「じゃあ、俺はちょっと野暮用を片付けてくるから。ブーケはトレーニング監督頼むぞ」

「はぁい」

「それとクロノジェネシス学生。今日はもう休みなさい。対応は明日からな」

「はい……」

「くれぐれもSNSに下手な投稿するなよ? 俺は言ったからな?」

「…………はい」

 

 それだけ言って、トレーナーさんは書類棚の鍵を開けていくつかファイルを取り出すと鞄に詰め込んで部屋を出て行く。

 

「トレーナーさんは、怒ってないですよ」

 

 溶けてドロドロになったクロノちゃんに手を置くブーケさん。

 

「今回は、別に投票券の代理購入(クロノさんスキーム)が発覚した訳でもありませんし」

 

 それになにより、花束を凶器(爆弾)として使うヒドいヒトもいませんでしたから。

 ブーケさんは顔色ひとつ変えずにそう言う。

 

「……ま、またまたブーケさんてば。アレはトレーナーさんの冗談でしょ?」

「もちろん。そこまでリスクのある行為(URA特殊部隊を敵に回すようなこと)をするヒトはいません」

「そ、そういう言い方やめてくれませんかね……?」

 

 まるでリスクが低ければOK! みたいな……。

 

「お手紙に()()()()カミソリが入るなんてことなら、昔はあったそうですよ?」

「え、こわ……」

 

 うっかりで手とか怪我したら本当に冗談じゃすまないんですけど。

 

「お花は悪意のある誰かに手折られぬよう、自らにトゲや毒を持つ。それと、同じことですから」

 

 うーん。そういうことがあったのならゴリゴリに警戒するのも分かるけれどさぁ……。

 でも、カミソリとか爆弾とか。そこまでするかなぁ普通……。

 

「110億円です」

「ちゃうちゃう、11億円さんですよブーケさん」

「いいえ。110億円なんです」

 

 えっなにが?

 

「この間の菊花賞、ノーリーズンさんの勝ちウマ投票券の合計購入金額が、おおよそ110億円」

「…………は?」

 

 えそんなに?

 

「G1レースというのは、それだけのお金が動くんです」

 

 そ、そんなにたくさん?

 しかも、それってノーリーズンちゃん()()でその額なんだよね?

 じゃあじゃあ他の子のとか全部合計したら、いったいどれほどに……。

 

「ミラクルさん。あなたはそれだけ大きなレースを勝ったんです」

 

 ブーケさんが私のことを真正面から見て、言う。

 

「だから、あなたは胸を張ってくださいね?」

「あ……どうも」

「クロノさんは反省してくださいね???」

「…………はい」

 

 そうして、ブーケさんもチーム部屋から出て行って。

 残されたのは、私とクロノちゃんだけ。

 

 ふ~~~……。

 

「クロノちゃん、さぁ」

「!」

 

 ビクッ!? と分かりやすーく全身を強ばらせるクロノちゃん。

 

「水くさいじゃんか。言ってよ」

「……それは」

 

 まあ分かるよ?

 隠しておきたい秘密のひとつやふたつ、誰だってあるもんね?

 

「私たちにも知られたくなかった?」

「……動画配信のこと、知ってるのミラクルさんだけで」

 

 でしょうねぇ。

 だってあの時、流れでやってるって言ってただけだもんね。

 もちろん。それを分かってたから、私も詳しくは聞かなかったけれどさ。

 

「んで、どうするの?」

「かくなるうえはアカウントを削除して……」

「極端だねぇ」

 

 まあ、そんな生真面目さがクロノちゃんなのかもだけれどさ。

 

「いいえそんな! 11億円チャンネル(ギャンブル系ウマチューバー)やってる私が真面目だなんてこと……」

「いやいやいや、真面目だって」

 

 だって〈クエーサー〉のレース予想全部飛ばしてたんでしょ?

 

「よーするに、私たちに迷惑がかからないようにしてくれてたってことじゃん」

 

 レースの予想をするために、クロノちゃんはあらゆる情報をかき集める。

 そしてもちろん、所属チームである〈クエーサー〉のウマ娘の情報は手に入りやすい。

 

 ……たぶんこういうの、内部(インサイダー)情報ってヤツになるんだよね?

 

「私たちの大事な情報は漏れないようにしてくれていたワケだから、やっぱ真面目だよ」

 

 まあ。そのせいで「クエーサーの絡む予想『だけ』しない→クエーサー関係者に違いない!」になっちゃったワケだけれど。

 

「それは、違います」

「あれそうなの?」

 

 まさかの否定。

 首を傾げる私に、クロノちゃんはぽつぽつ語り出す。

 

「ミラクルさんが初めて勝った未勝利戦。あの時の予想(メソッド)を覚えていますか?」

 

 それは今年の初めにあった未勝利戦。小倉2000メートル。

 

「あの時、私は4番が暴走すると予想しました。それは彼女の奨学金を提供していた奨学金組合(シンジケート)が、年度会計を意識している(3月で奨学金を打ち切る)ことを知っていたからです」

 

 クロノちゃんが語る予想(メソッド)の裏側は、お金の話。

 

「まだクラシック期です。未勝利戦が終わるまでには時間もある……けれどあの奨学金組合(シンジケート)はクラシックG1に参加できないウマ娘に対する奨学金をすぐに打ち切る傾向があって……だから彼女は勝利を焦っていた」

 

 じゃあ、その子は私と同じだ。

 

「彼女はミラクルさんと同じ長距離走者(ステイヤー)でした。だから数少ないチャンスをどうにかモノにするため、スタミナ任せの爆走を選んだ」

 

 あの未勝利戦。芝2000メートルの未勝利戦は本当に数が少なくて。

 私にとっても抽選落ちした後になんとか当たった未勝利戦だった。

 

「ミラクルさん。私はあの時、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()しか考えていませんでした。レースの予想は、していなかったんです」

「それは違うと思うけれどなぁ」

「いいえ!」

 

 強い口調で否定するクロノちゃん。ぶんぶんと振られた芦毛が揺れる。

 

「だって私は、競走ウマ娘の才能とは関係ない場所に理由を見つけて、それをどうやって利用してやろうかって考えたんですよ? そんなのレースに対する冒涜だと思いませんか!?」

「思わないよ」

 

 うん。思わない。

 まったく思わない。

 

「私、あの時も言わなかったっけ? 私は勝つために〈クエーサー〉(名義貸しチーム)に入ったんだって」

 

 スカウトされないから名義を借りる。

 マグレ勝ちだって、盤外戦術での勝利だって構わない!

 

「私さ、本当に感謝してるんだよ?」

 

 きっと、名義を貸してもらうだけじゃ勝てなかった。

 クロノちゃんの予想があったから勝ち上がれた。

 

「だから私は、クロノちゃんに感謝してる」

「……ミラクルさんは、ずるいです」

「ずるいのはクロノちゃんだよ」

 

 あの時クロノちゃん、陣営のドラマに寄り添うんですーとか言ってなかったっけ?

 

「それをいまさら、レースに対する冒涜(ボートク)とか言っちゃってさ。ウソじゃん」

「それはウソでは……!」

「いやだからさ、ウソじゃないんじゃないのって話」

「どっちですか!」

「ボートクも含めて、ぜんぶレースってこと!」

 

 そりゃそうだよ。

 だって私は進学のためにレースに出たかったし。ブーケさんはチーム運営費のために走ってるし。アイちゃんは負けず嫌いってだけでメチャクチャなローテーション組むし。クロノちゃんは変なチャンネル運営してるし。観客は何百億円もレースに賭けちゃうし。

 

「それがレースなんでしょ? 別にいいじゃん胸張ろうよ!」

「でも」

「でもじゃない! クロノちゃんはレースが好きなんでしょ?」

 

 じっと見つめる。クロノちゃんは目を逸らさない。

 

「好きです。私はレースが好き」

「じゃ、それでいいの!」

 

 好きなことをやって、なんで怒られなきゃいけないの?

 

「あーもう、なんかそんなこと言ってたら腹立ってきた。というかトレーナーさんもおかしくない? なんでクロノちゃん公開処刑みたいなことするワケ???」

「それはミラクルさんに迷惑をかけたからで……」

「迷惑なんて思ってないから。トレーナーが勝手に『ヒシミラクル学生が迷惑するから~~~』とか言ってるだけだから」

 

 うん。よし。

 やっぱりトレーナーが悪いねこれは。

 

「クロノちゃん」

「……な、なんでしょうミラクルさん」

「トレーナー言ってたよね。私が11億円じゃないって否定すればいいって」

「えっと、それは言っていましたけれど……あの……?」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「……という事情でね。ぜひ助言をいただきたい」

 

 

 トレセン学園のとある場所。

 ウマ娘たちを様々な形で支える業者――――ウマナリ建設をはじめとする建設業者、カフェテリアを運営する給食業者――――の出張所がおかれる事務室エリア。

 

 そこにある面談ブースで、チーム〈クエーサー〉のトレーナーはスーツ姿の男性と話をしていた。

 自由で個性豊かなウマ娘とトレーナーが集う学園内ではむしろ浮くぐらいに身なりの整ったスーツ姿の男性は、トレーナーの話をひとしきり聞いてから深く頷く。

 

「状況は理解しました。それで、具体的に私はどういったお手伝いをすればよいのでしょうか?」

「俺はネットに疎い。だからコレをどう着地させればいいのか分からない」

「なるほど」

 

 トレーナーが男性を頼ったのは、彼がさまざまなウマ娘と関わり案件を解決してきたコンサルタントだからであった。

 ちなみに彼もネットの専門家ではないのだが、ウマ娘のためなら何でもやる外部業者がひしめいているのがここトレセン学園なのである。

 

「では、まずは『生涯収支ぷらす11億円チャンネル』の状況を確認しましょう」

 

 話はそれからと、彼は鞄から端末を取り出してカタカタと操作。

 そして画面を覗き込んで――――固まる。

 

「…………あの、金本トレーナー? ちょっといいですか?」

 

 コンサルをしている男は、やや青くなった顔つきのまま〈クエーサー〉の金本トレーナーへと端末の画面を見せた。

 

 それをみた金本トレーナーは、唖然。

 

 

「あ、あのばか……!」

 

 

 

【緊急配信】11億円の正体を発表するよ!

 

 

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