【重大告知】新企画「月刊クエーサー」始動!#00「JC直前特集!」
明るいポップな演出。
わくわくするようなBGM。
そして現れる、2人の芦毛ウマ娘。
「しょ諸君……いいいいえみなっ、さん! 皆の衆!!!」
「クロノちゃんブレすぎだよー」
ちょっと前に身バレ騒動をやらかしたクロノちゃんと、その元凶の私。
「く、クロノジェネシスで、です!」
「ヒシミラクルでーす。どうも~」
いきなりすぎてついていけない?
分かるよ。わかります。
えーと、なにから説明したらいいのかな……?
あ、ちょっと待ってねその前に台詞あるから。
「はい。えーとですね。今日は重大発表があるんだよね!」
私の台詞に応じる形でカメラはクロノちゃんにズームイン。
「このたび、予想系ウマチューバーの『生涯収支ぷらす11億円チャンネル』がURAチームの〈クエーサー〉と大規模コラボをすることになりました! その名も~……『月刊クエーサー』!」
クロノちゃんのかけ声と同時に画面上にはタイトルロゴが現れて、なんかいい感じに
……まあ、もう察しのいいみんなは分かるよね?
私とクロノちゃん、身バレ騒動の
あのあと、もちろんトレーナーさんにバレてしこたま怒られたんだけれど……意外と世の中なんとかなるもんだね。
そう――――11億円チャンネルは存続を許されたのです!
ていうかコレに関してはクロノちゃんの真面目さに救われたよね。
チームに迷惑がかからないようにと配慮してくれていたおかげで情報漏洩の類いは一切ナシ。そもそも配信をやってる現役のウマ娘はたくさん居るんだから配信そのものを止める理由にはならないわけで。
……でまあ、唯一最大のネックである「レース予想をしている」ことについては、今後も学園内で直接収集した情報(公開練習をのぞく)は使わないこと、自分の出走レースやチームメンバーに関わる発信は一切しないことを条件に許されまして。
とはいえ、全くそれでノーペナルティとはいきません。
トレーナーさん……というかチーム側が提示した条件はふたつ!
一、ぷらす11億円の名義で活動するウマチューバーが「クロノジェネシス」であることを明示すること。
一、チーム所属中はチーム〈クエーサー〉の広報案件をこなすこと。
トレーナーさんによるとこれは「クロノジェネシス学生の手足を縛らず今回の件に掛かったコストを回収する攻めの一手」らしいんだけれど。
とにかく、なんとかうまいことクロノちゃんの配信が競走活動の一環ということにできたみたいで。よかったねって感じ。
ね。これで一件落着だよね。
チャンチャン♪てことでいいよね? もういいよね??
や、本当に反省はしてるんですよ?
「……という風に、これからはチームの出走計画とメンバーの状況など、チームに関するアレコレをお届け出来ればと思っています」
やっぱり慣れてることもあって、スラスラと原稿を読み上げていくクロノちゃん。
けれど……ああ、やっぱりまだ顔出し動画は恥ずかしそうだねぇ。
「さて、では第0回の今回は、ずばり今週末のジャパンカップについて!」
でもやっぱりレースの話になると目つきが変わるんだよね。
今回のジャパンカップに出走するメンバーがいかに豪勢で歴史的なのかをつらつら解説していくクロノちゃん。
「そして〈クエーサー〉からはアーモンドアイさんが出走予定となっております。そう……そう! アーモンドアイさんです!」
拳をギュッ! と握りしめたクロノちゃん。
あ、これはアイちゃんがいかに素晴らしい競走成績を収めてきたか語るヤツですね間違いない。
「去年、チーム〈クエーサー〉がアーモンドアイさんの長期海外遠征を発表したとき、果たしてそれを気に留めた方はいたでしょうか? きっと
アイちゃんは間違いなく歴史を創るウマ娘、けれど11億円チャンネルとしては内部情報が漏れないようにずっと避けてきた話題だもんね。
身バレの結果、その
ながくなるぞーこれは……。
と、トレーナーさんがカンペをペラリ。
メイドインワイドかな???
ていうか私、
え私のせいでこうなったんだから責任取れ??
もぉーやればいいんでしょやれば!
「クロノちゃんクロノちゃん、それよりアイちゃんに聞きたいことがあるんじゃない?」
「……はっ、そうでした! 私としたことが、熱くなってしまい……」
「うんうん。わかるよーすごくわかる。それじゃ、今週注目のウマ娘アーモンドアイさんに意気込みを聞いてみましょうか!」
よしっ、我ながらミラクル対応でしょこれは!
カメラがぐんと動いて大写しになるのはアイちゃん(決めポーズのすがた)。
彼女はフッと不敵に微笑んで、それから一言。
「わたしが、頂点に立つウマ娘よッ!」
「負けた!!!」
「いや負けてないでしょ」
アイちゃんはまさかの6番人気。
……まあでも、今回ばかりは仕方なくない?
話題沸騰中、天皇賞・秋を制したクリスエスちゃん。
抜群の安定感、キャリア5年目トップロードちゃん。
そして去年のジャパンカップ勝者、ジャングルポケットさん。
この3人は、
そんな簡単に投票で勝てるワケがない。
「あんまり気にしても仕方ないよアイちゃん……」
むぅ! と負けず嫌いを発動しているアイちゃんにどうどう。
クロノちゃんはそうですよと指を立てる。
「海外レースは体重やラップタイム、あがり3Fなどの公開情報がURAと統一されていませんから。単純に優劣を比較するのが難しいんです」
それに……とちょっとアイちゃんの顔色を伺うようにクロノちゃん。
「アイさんに対する認識は『なんか国外にいる日本ウマ娘』くらいだと思いますよ」
「海外G1も勝ってるのに!?」
クロノちゃんの補足に反論(?)してくるアイちゃん。
あいや、アイちゃんがG1ウマ娘なのはそうなんだけれどね?
「名前が知られていないG1じゃあ、勝っててもねぇ……」
「ミラクルさん。ブリティッシュ・チャンピオンズ・シリーズを知らないなんてことは」
でも私は知らなかったし。
「ていうか、雑誌とかみるとアイちゃんの扱いが海外ウマ娘なんだよね」
「うっ……」
「勝ち鞍もほとんど海外レースですからね」
「国内走ったのってメイクデビューだけ?」
「はい。その後すぐに愛英に長期遠征、数々のレースに出走……そして帰国してすぐに国内最高峰G1に挑戦という流れですから……人気薄なのも正直仕方ないといいますか……」
「要するに、国内芝に対する適応能力が疑われてるんだな」
トレーナーさんがため息交じりに言う。
「大前提として、国内の芝と海外の芝は種類が若干違う」
へー、そうなんだ。
トレーナーさんの話によると整備方法、芝をどのくらいの高さで刈り揃えるかも違うらしい。
「だからむしろ、6番人気は誇っていいぞ。すごいすごい」
「…………そうかしら?」
「だろう? クロノジェネシス学生」
「そうですね。ジャパンカップで海外勢がここまで推されるのは久しぶりです」
「ヒシミラクル学生もそう思うか?」
え急にボールなげないでよ。
「まぁ、アイちゃん強いし。勝つと思うけど」
「……いいわ! 1番人気じゃなくて1着をとればいいのよね!」
うーん。アイちゃんらしいね。
その1着が欲しいというガツガツした姿勢。さすが……。
そしてやって来ましたジャパンカップ当日。
あっという間に東京レース場11Rのパドック・アピールの時間が近づいてきまして……。
「なんか、アイちゃんの勝負服を間近でみるの初めてだね」
「そう?」
うん。だって私は愛英トレセンの関係者じゃないから控え室には入れなかったし。
そもそも愛英G1レースを現地観戦したのは一回だけだし、その時はスタンドから観ただけだから。
「それもそうね。でも、これからもっと近くで視ることになるわよ!」
「あー。ウイニングライブとかあるもんねぇ~」
愛英だとあんまりライブ文化って強くないけれど、日本はバリバリファンサとかやるからね。
あ、もちろんウチワとか用意もしてますよ。
「これこれ、何を書くのがいいかなーって迷ったんだけれどさ……」
「ねぇミラクル。有マ記念には出るの?」
え?
「急にどうしたの?」
「約束、あなたは果たしてくれたから」
覚えているかしら? とピシッとこちらを指さすアイちゃん。
あー、それって…………。
「ニューマーケットでの、あれ?」
ここまで上がって来いってヤツ。
分かってたけれど、やっぱり私に向けてたんだね。
「当然でしょ? あなたは私のライバルなんだから」
「……」
「そして貴女は、
だから次こそ勝負よとアイちゃんが言う。
「私は
「それじゃ、決まりねミラクル」
それじゃあ勝ってくるからと、当然のように言ってアイちゃんは控え室を後にする。
……アイちゃんと、勝負?
「い、いやぁ。流石に勝てる気が……」
「そうとは思わないがな」
「うわ出た」
「うわ出たとはなんだ」
トレーナーさんがため息を吐きながら控え室に入ってくる。
「どっから聞いてたんですか」
「もちろん最初からだ」
「うっわ。プライバシーの侵害っていうんですよそーいうの」
「アーモンドアイに頼まれてるんだよ。ヒシミラクルを有マに連れてきてくれって」
え、そうなの?
「もちろん。ヒシミラクルは乗り気じゃないだろうと伝えてあるぞ」
「お、さすがトレーナーさんよく分かってる」
そうそう。菊花賞はマグレですからね。
それに有マ記念は年末の大レース。大晦日の歌合戦みたいなもの。
私みたいなウマ娘が出走していいレースじゃないんですよ。
「とはいえ。菊花賞ウマ娘が有マの人気投票から漏れることはないだろうから、出走するかどうかの意思確認はするからな」
「はいはい、それはいいですけれど」
にしても、なーんでアイちゃんは私をそんなにライバル視するのかなぁ。
「そりゃあ、アーモンドアイはハートリーレターのライバルだったからだろう」
「え?」
そんな話あったっけ……と言われてみれば、そういえばそんなこともあったような。
そうだ、私たちチームの同期組で、最初にメイクデビューを制したのがハートちゃんだったんだっけ。
だからアイちゃんは、ハートちゃんに先を行かれていた時期があったんだ。
「ハートリーレター学生の件は、アーモンドアイ学生も気にしていたからな」
「……」
「だからきっと、その
お返しがレースでボコボコにすることなんですか?
そういうのお礼参りって言いません???
「競走ウマ娘の流儀なんだろ」
「そうなの!?」
「いや知らん」
「知らんのかい!」
はぁ――――……。
にしても、そっかぁ。
どこまでも続いていくんだね。
「はー……なんか、乗せられてる気もしますけれど。やりますよ」
「意外だな。
んまあ、だって。
ライバルって言ってくれてる相手を無視するのも、なんか悪いし?
「でも本当に! 本当に期待しないでくださいよ!?」
「安心しろ。チーム的にはどっちが勝っても
「うわちゃんと期待してないのやめてくださーい」
「ははは」