『清廉なる軸流し崇拝者の諸君。ごきげんよう』
こん~
押忍!
⑪⑪⑪⑪⑪⑪⑪⑪⑪⑪⑪⑪
ごきげん10マイル!
師匠!お疲れさまです!
ん?
『まもなく6月。我ら軸流士にとって大事な季節、最大の
押忍!
ダービー
一年の総決算!!
なんか今日の師匠生首じゃない?
ジュニア級メイクデビューすね
『ご明察。我らがレースの祭典・日本ダービー、そしてその後すぐに安田記念にメイクデビュー解禁……』
あーでも安田は予想できんのか
アモアイなんで、そうすね
師匠今日はUMA被ってないんすか?
画面の真ん中にUMAの生首が鎮座してるの普通にホラーだろ
『……と、その前に。ここでいったんコマーシャルだ』
CMあるんだ(困惑)
押忍!
コマイルー!
「こんにちは。生涯収支ぷらす3億5千とんで25万8000円ことクロノジェネシスです」
あっ師匠
押忍!
なんて?
⑪⑪⑪⑪⑪⑪⑪⑪
およそ3.5億円ちゃんチッスチッス
顔出し珍しいっすね
「あっ、その。今日はですね、こちらの11億円さんに紹介していただくことになっておりまして……」
あ、そういう感じね
謎の芦毛ウマ娘枠か
押忍!
『その通り。本チャンネルでは常々レースの魅力と軸流しの魔力を伝えてきたが、ここに至りて我が力を求める、ぽ、
「と、まあ! ここ、こんな感じでですねっ!」
がんばれクロノチャン!
かわいい
がっつりボイチェン使ってるの芝
かわいい
「それで……みなさんに、お願いがあります」
あいわかったアモアイ1点買い!
ユーイチ買います
押忍!
「私を、宝塚記念につれていってください!」
「す、素晴らしいです!!!」
サンキュー系のレース雑誌「月刊トゥインクル」編集部にて。
彼女はいつも通り喝采を挙げていた。ひとりで。
「自ら持てる力を投じての人気投票上位ランクインを目指す姿勢! そして人気投票さえ通れば絶対に勝てるという強い自信! まさに、今年のティアラ路線で最強の名前を得るに相応しいですね!!!」
「ええ。乙名史さんの仰るとおりです。いまのクロノジェネシスは、強いですよ」
そしてそれを否定するどころか肯定するのが、チーム〈クエーサー〉のチーフトレーナーである金本トレーナー(平地・障害)である。
一般的とされるトレーナー育成学校やトレーナー補を経ていない経歴、そのチームの運営形態がいわゆる「名義貸し」であることから世間一般の評判はあまり良くないのだが、強いウマ娘を抱えているのならレースの世界ではそれが正義である。
「とはいえ、これは嫌味なんですが。私としては是非アーモンドアイ選手も取り上げて欲しいものですね」
「ええ。それはもちろん、私どもとしましてもアーモンドアイ選手の
「トゥインクル・シリーズ
「もちろん、海外での成績も含めて評価しておりますとも」
「…………」
そしてその嫌味にド直球で打ち返すのがマスメディアの豪胆さである。
「とりあえず、この対談はお断りします」
「ヒシミラクル、クロノジェネシス両選手にお話しはして頂けましたか?」
「チームトレーナーは小間使いではありません」
ポン、と応接ブースの机に置かれたのは企画書。
表紙には「宝塚記念直前!クエーサー2傑相対する!」と太字ゴシック体。
「乙名史さん。競走ウマ娘は、選手である以前に子供です。もちろん貴女はご存じのはずですが」
「ええ。ひとたび舞台にあがったのなら、それを照らすのがメディアの仕事です」
すれ違っているようで、噛み合った会話。
金本はウマ娘の
「では私も、仕事の話を」
金本チーフは企画書をトン、と叩く。
「私はチームトレーナーとして、チーム〈クエーサー〉に所属する全てのウマ娘の管理を担っています。そしてこれは私個人の意見ではありますが、アーモンドアイはまだピークにない」
「? でしたら、この企画に問題があるとは思えませんが……」
「もちろん。アーモンドアイが出走を表明していなければ、そうです」
宝塚記念直前として月刊トゥインクルが申し込んできた取材企画は、クエーサーの『2傑』……春シニア2冠のヒシミラクルとティアラ2冠のクロノジェネシスという対談内容であった。
2傑というからには当然、そこにアーモンドアイの名前はない。
「金本トレーナー」
乙名史記者の声が、落ちる。
「私たちは
サンキューフガク・グループの傘下として、営利企業の1セクションとしてだけの話ではない。
彼女たちの理念は明確だ。未だ照らされぬ真実に光を当てる。そのためのスポットライトとなる。
「クロノジェネシスを新しい伝説にするために、適切なのは
「アーモンドアイは、過去の最強ですか?」
「もちろん。昨年のジャパンカップの時点では紛れもない最強でした」
過去形だ。
国内産のエンタテイメントに溢れる日本において、国外での活躍は伝え聞く程度。国内G1での勝利が遠ざかれば、読者に視聴者の関心は遠のいていく。
もちろん、そんな事情は金本チーフには関係ない。
「私としてはですね。〈クエーサー〉三本の矢はあくまで三本の矢として推していきたいのですよ」
「理由を伺っても?」
「もちろん、3人が1番高額な契約プランを組んでくれているからです」
あっけらかんと言う金本チーフに、さしもの乙名史記者も口端を引きつらせかける。
「特にアーモンドアイ学生はここ最近
「ヒシミラクルさんとクロノジェネシスさんのみをピックアップするのが、アーモンドアイさんの精神的負荷になるとは思えませんが……」
「トレーナーとは、常に多面的なリスク管理により契約ウマ娘がつつがない競走人生を走れるようサポートするのが仕事ですので」
それに。と金本チームは指を三本。
「三本が二本になると思うと、後々が怖い」
彼の指が、三本から二本になる。
「ウチは強いウマ娘が去ってしまうとすぐに火の車なんでね」
強いウマ娘が去る。
三本から二本になった彼の指。
具体的な言及は避けつつも、態度は雄弁だ。
「…………それは、オフレコですか?」
「おっと。勘違いするのはそちらの勝手ですが、
「ええ。それはもちろん。そうですね」
噛み締めるように、乙名史記者は微笑む。
金本チーフもニッコリと微笑み返した。
「という訳で、学園経由で申し込まれた本件はお断りさせて頂きますので。よろしくお願いしますね。シニア3冠の最強ウマ娘を推したい気持ちは分かりますが、ぶり返しは怖いですよ?」
こうして交渉は成立。
金本チーフはアーモンドアイへのプレッシャーを回避し。
乙名史記者はヒシミラクル引退の可能性というネタを手に入れる。
もちろん学園広報部経由の(比較的断りにくい)依頼は月刊トゥインクル側から撤回され――――おそらくは他業者からも似たような企画が持ち込まれることはなくなる。
「……本当に、お上手になられましたね。金本トレーナー」
「ええ。
『今年前半戦のトゥインクル・シリーズを締めくくる、グランプリレースが今年も阪神レース場にやってまいりました宝塚記念。いよいよ本バ場入場です』
『陣営は自信を滲ませます。ここで魅せたい①ノイジータコス1キロ減13番人気』
『お待たせしました復帰戦。帰還したのは勇者か変態か②アグネスデジタル3キロ減7番人気』
『海外では最強格のウマ娘、国内での実力発揮なるか③アーモンドアイ増減ナシ3番人気』
『今日も今日とて逃げ宣言。京都記念は1着④ユアダークビジョン1キロ減14番人気』
『そろそろ欲しい二個目の冠。シンボリの黒船⑤シンボリクリスエス1キロ減2番人気』
『天皇賞・春の雪辱を晴らしたいこの大一番です⑥ネオユニヴァース1キロ増5番人気』
『クラシック期からの飛び込み参戦となります2冠ウマ娘⑦クロノジェネシス増減ナシ8番人気』
『ここぞの粘り、もう善戦ウマとは言わせない⑧サーベルオレ1キロ減12番人気』
『一度放たれればもう止まらない。前年宝塚記念は2着⑨ボウアンドアロー増減ナシ11番人気』
そして。
『中距離適正は証明済み。これで春シニア3冠だ⑩ヒシミラクル増減ナシ1番人気』
圧倒的1番人気。
誰もが待ちわびた最強のウマ娘にスタンドが沸く。
『直近2戦は掲示板外、今日こそ末脚爆発なるか⑪スローナガシノ増減ナシ16番人気』
『今回は逃げのライバルあり。外枠を活かせるか否か⑫キングオブジェンガ2キロ減15人気』
『新潟大賞典で復活の2年目シニア。貫禄を見せるか⑬ダンツフレーム増減ナシ10番人気』
『前走は降着なるも実力は折り紙付き、ここで本領発揮だ⑭スティルインラブ1キロ増4人気』
『もしもの爆発力に期待したいところ⑮マインスイーパマン2キロ増17人気』
『負けて強しの展開が続きます。あとは強さの証を手に入れるだけ⑯タップダンスシチー増減ナシ6番人気』
『鹿毛の実力者になりたくて、ここで踏ん張れるか⑰ヨイハルバーラト2キロ増9番人気』