普通に叡智でズボラで普通に強いお姉さんがプロガンのパイロットは駄目ですか? 作:単眼駄猪介
TV版8話の【戦場は荒野】はカット。
でもジオン軍もいるのは人だという少し心に来る話なので、割と自分は好きです。
そしてプロトタイプ参入でとある部隊が2つ参戦するけど、まあ天パが戦士として覚醒する回だからどっちかはお察しの展開()
アムロを殴ってからしばらくの間、レナはプロトタイプガンダムだけでなくガンタンクやコア・ファイターの習熟に努めていた。
勿論、それらのパイロット(候補生とは付くが)であるリュウ・ホセイやハヤト・コバヤシ、カイ・シデンらとの交友も築いていた。
予備パイロットのジョブ・ジョンともしっかり関係を築いているが、今日は用事がありいない。
ジョンだけを抜いたとある一室では、マットを敷いた上で柔道の技を皆で学んでいた。
元々は生身での白兵戦になった際に、殴り合いの間合いになった場合の対処としてレナがCQCを教えようとしたのがそもそもの始まりだったのだが、ハヤトが柔道をやっているという自己申告にレナはCQCと一緒に柔道もやってみよう、と思い付きで始めたのである。
自衛手段は多いに越した事はない。
流石に柔道服がホワイトベースにあるわけがないので、軍服での訓練となった。
ちなみにカイはレナに引きずられて無理矢理参加させられている。
「それっ!」
「おわ!?」
小柄なハヤトに大柄なレナが背負い投げでマットに叩きつけられる。
勿論、ハヤトは怪我をしないよう加減はしているが痛いものは痛いらしい。
レナが「いてて…」と呻いていた。
「受け身はしっかり取らないと駄目ですよ。さっき教えたじゃないですか」
「あはは…それが中々難しいなって。型に嵌めたような動きが苦手でさ…」
「CQCはできて受け身は取れないのはなんなんだ…」
注意するハヤトにレナは弁解するものの、ツッコむリュウの言う通り軍で教えられたCQCはできるのに受け身が取れないのはおかしいのは至極当然である。
さらなる弁解を……というところで、艦内に警報が鳴り響く。
「総員戦闘配置!パイロットはただちに出撃しろ!ミノフスキー粒子*1も散布しろ!」
艦橋からそう叫ぶブライトの声に、レナ達は大慌てでパイロットスーツのある更衣室へ足を運ぶ。
その道中、爆発の振動がホワイトベースを揺らす。
ホワイトベースが進んでいる場所は峡谷であるため、例え直撃弾でなくとも近くの崖で爆発すれば船体を揺らすには十分であるし、そうでなくともジオンの監視を逃れるべく低空飛行で進んでいたのだ。
まず身動きが取れないのだ。
「うわわっ!?」
「あっぶね!?」
振動に足を取られて手をつくハヤトとカイ。
そんな二人にリュウが引っ張り上げるが、レナは着替える余裕はないと判断し、軍服のままで格納庫に走る。
「中尉!パイロットスーツは!?」
「んな時間ねぇ!プロトタイプをさっさと出せ!」
「りょ、了解!
出撃準備が整うまでの間に、レナはプロトタイプに持たせる武装を選び機体のハードポイントに懸架させる。
後腰部に専用ビームライフル*2をマウントさせ、メインにハイパーバズーカ、サブに試作兵器であるガンダムハンマー*3をランドセルの側面に懸架させた。
「ハッチ開放完了。カタパルト、準備OK!」
「プロトタイプが出る!足元にいる奴はさっさと退避しろ!」
メカニック達の逐次報告と怒号が飛び通う中、プロトタイプは歩を進め、カタパルトの射出装置の上に足を載せる。
固定装置がロックされ、プロトタイプは軽く屈む姿勢を取る。
「レナ中尉、カイ達は遅れてくるそうだが耐えきれるか?」
出撃直前に、ブライトからの通信。
しかも心配の声をあげる彼にレナはサムズアップで答える。
「アンタが見てきたアタシが簡単に死ぬと思うか?」
その問いにブライトは思い出したのか、ちょっと引き攣った笑みで答える。
「おい、なんだよそれは…」
ブライトの反応にレナはしょぼくれるが、それを無視してセイラはキッチリと業務を果たす。
「プロトタイプ、発進どうぞ」
「おっと。レナ・ウルレド、プロトタイプガンダムで出る!」
しょぼくれるのは一瞬。
発進時には戦士の顔となって、戦場に舞い降りる。
ーーー
一方、ジオンは2度目の攻撃の為にザクを多数、マゼラ・アタックやドップも近くにいる、もしくは待機していた部隊を呼んで戦力を補充し再度攻撃を仕掛けていた。
「これで駄目では姉上に申し訳が立たないな」
「確か、サザンクロス隊*4とノイジーフェアリー隊*5だったか?まさか、女性だけの部隊があるとは驚きだったが……」
そうシャアがガルマに言うのも仕方ないだろう。
女性が軍に入ること自体は珍しいことでは無いが、ノイジーフェアリー隊のような徹底して女性のみを集めた部隊で戦地に立たされるなど、何かしらの策謀でもなければプロパガンダ部隊としての側面が強いはずだ。
偶然なのか、それともあえてなのか彼女らは総じて顔が良い。
美人から可憐まで、まるで高級娼館からやって来たのかと錯覚してしまう程の別嬪ばかりである。
とはいえ彼女らは軍隊の中でありがちな男尊女卑の中で確かな成果を挙げているとシャアとガルマは聞き及んでいる。
まあ、そうでなければこうして派遣される事もなかっただろう。
「サザンクロス隊もヨーロッパ戦線からやって来たんだ。無事に返してやりたいが…」
「私の追撃を耐え抜いた部隊だ。そう簡単にはいかないだろうな」
ガンダムが2機、ザク・マシンガンを受け付けない装甲はたった2機で、たった2機の為にシャアの部下や先の戦闘で多くの命を散らせた。
ここで地上戦でのエース部隊もやられるようでは、木馬の危険度は桁違いになる。
ガルマが勝利を祈る一方で、件の木馬もといホワイトベースの部隊はというと、
「遅い!」
「うわぁぁぁ!!??」
ガンダムに効果があると思わしき武装【マゼラ・トップ砲*6】を持ったザクを守るべく、マシンガンを撃ちながらガンダムに肉薄するザクを、プロトタイプはハイパーバズーカで仕留める。
「クソッ」
「おっとぉ!」
マゼラ・トップ砲を持ったザクは焦りと死への恐怖から狙いをつけずに銃爪を引く。
運が良いのか悪いのか、適当に放った弾はプロトタイプの右足に飛んでいったが軽い跳躍で避けられる。
「だ、駄目か…!」
それがザクのパイロットの最期の言葉となった。
胴体にバズーカが直撃し、爆散したのを確認するとすぐに次の敵へと向かう。
それを見ていたサザンクロス隊とガルマ麾下の1小隊が、ホワイトベースからモビルスーツが発進する所を確認する。
「キャノンとタンクもどきが出てきたぞ!」
「白い奴は!?」
「黒い奴しかいねぇ!」
「ならまずは黒い奴からだ!」
ホワイトベースから準備を終えたガンキャノンとガンタンクが出撃するが、サザンクロス隊はその2機をガルマ麾下の部隊に任せ、サザンクロス隊はプロトタイプに向かう。
彼らが乗る高機動型ザクには脚部にホバーユニットが追加されており、クセはあるものの機動力に優れている。
サザンクロス隊は四人で編成されたエース部隊。
対して才能あれど一人だけのレナ。
「チッ、ドップもはたき落とさなきゃならんのに…!」
近づいてくる高機動型ザク達にバルカンで牽制しながら岩に隠れて射線を切る。
「へっ、クラッカー*7を投げ込んでやれ!」
「あいよ!」
そう言って岩の後ろ側、つまりプロトタイプが身を隠す場所に投げ込んだ1機の高機動型ザク。
それに対して、レナは冷静にその場から退避し編隊を組むサザンクロス隊に真っ向から挑む。
「まずは…!」
「お前だッ!」
地面を滑るように進む高機動型ザク達は真っ向から突っ込んできたプロトタイプに勝ちを確信しながらザク・マシンガンやヒート・ホーク等の各々の武器を向ける。
だが次の瞬間、プロトタイプがバズーカを1機の高機動型ザクに向けて投げた。
武器を捨てるような行為に一瞬、動揺が走るサザンクロス隊。
だがすぐにその動揺も収まるのは熟練の兵士故だろう。
1機がマシンガンで迎撃を試みるが…既にレナの策略にハマっていた。
「あ――」
迎撃を判断したサザンクロス隊の紅一点がザク・マシンガンごと、鉄球によってコクピットを潰される。
一瞬の出来事で、後方で爆発する味方に思わず残りの3機は足を止めてしまう。
「なんだ!?何が起きた!?」
「ど、どういう――」
今度はヒートダガーを構えていた角付き*8の高機動型ザクにピンクの光で胴体に穴を開けられる。
「なっ…!?」
機体内を巡るオイルに引火し、数瞬置いて爆発する味方に残りの2機は言葉を交わすことも無く散開し身を隠す。
二人には何が起きたのか分からず、状況を飲み込むのに数秒の時を要した。
レナがやったことと言うと、バズーカを投げて気を取らせている内にガンダムハンマーを掴んで投擲しただけである。
そしてビームライフルで動揺で動きを止めた隊長機を撃墜。
ほんの数秒の間で2機も撃破したレナは、油断無く残った2機に詰め寄っていた。
「クソッ、隊長とセルマーがやられた…!」
「…新入り*9を連れてこなくて良かったのかもな」
「んな弱気なことを――」
「来るぞ!」
副隊長の弱気の言葉に、もう一人が苛立たしげに喝を入れようとするが既にプロトタイプは二人のすぐそばに来ていた。
「こなくそ!」
「待て!ここは…ぐっ!?」
ヒート・ホークを赤熱化させ、プロトタイプと斬り合おうとする仲間に副隊長が止めに入るが近くに着弾したホワイトベースの主砲*10に副隊長は回避に専念せざるを得なくなる。
結果として仲間と分断され、崖に身を隠さざるを得なくなる。
「ちぇあぁぁぁ!」
そんな雄叫びが副隊長の耳朶を打つが、直後に沈黙する。
味方の信号を受信していた計器も【Signal Lost】と表示され、その末路を察する。
「連邦の新型艦とモビルスーツがこんなに手強い存在とは……放置すれば、必ずジオンに牙を剥くだろう。ならば…っ!」
副隊長機が抱えている対艦ライフル*11が火を吹く。
そこにプロトタイプはいなかったが、姿は捉えていた。
「墜ちろ!」
「狩人気分のつもりか!」
高機動型ザクは銃口を即座にプロトタイプへ向けるが、プロトタイプが空に跳ねる。
「飛んだ!?」
「ウグググッ…!!」
ガタガタと揺れるコクピット内で、レナは体にかかるGに耐えながらトリガーを引く。
「チッ」
「避けられたか!」
前に構えられたビームライフルからピンクの光線が飛び出るが、ザクは横に軽くステップして避ける。
「だが、目が良いのはエース共通だな!」
「ええい、狙いが定められん…!」
スラスターによる跳躍を終え、地面に着陸するプロトタイプ。
だが、その際にバルカンでザクに撃たせる暇を与えさせない。
さて次はどうするか……そう思考を開始しようとした矢先に、レナの耳に少年の声が走る。
「レナさん!」
「アムロ!?」
「白い奴だと!?ぐぉ!?」
岩山を飛び越えてガンダムがビームライフルを放ち、最後の高機動型ザクの頭部を破壊する。
頭部を失い、倒れるザクは少し間を置いて爆発。
サザンクロス隊は全滅するのだった。
突如として現れた救援にレナは喜ぶが、同時にアムロの事を心配する。
殴った手前、どう話したら良いかとレナは気まずさを感じるが、アムロは察したのかそれとも最初からそうするつもりだったのか、アムロから話し始める。
「レナ中尉、すみません。迷惑をかけました」
謝罪の言葉だが、しかし前のような気の抜けた感じではない。
レナは微笑む。
「誰かに喝を入れられたんだろ?ブライトか?」
「はい。悔しいけど、僕は男なんだなって」
「へへっ……本当はこんな事はいけないんだが、お前ならシャアにも勝てるんじゃないかって、思ってるんだ。戦う意味なんて後から探せば良い。巻き込まれのお前はまず生き残るっていう道を進めば良い」
「……はい!」
「よぉーし、さっさと敵を片付けるぞ!」
2機のガンダムが、二人の気合に呼応するかのようにデュアルアイ*12に力強い光が灯った。
ーーー
一方、サザンクロス隊の全滅の一報を知らされた残存部隊はというと、ガルマも含め一同、戦慄していた。
最近はヨーロッパ戦線で連邦のモビルスーツの目撃情報が入る中、そのモビルスーツを撃破したりそうでなくともジオンが地球に侵攻した頃から活躍している部隊だ。
隊長が軍を脱走という不祥事はあれど、確かにエース部隊だった。
そんな彼らが全滅である。
「黒い奴め…着実に強くなっている…」
そうこぼすシャアに、先程ドップのほとんどが撃墜されたガンダムの記録映像を見返すガルマは叩き付けたくなる拳を抑える。
「この戦力でも木馬は耐え、こちらの戦力は削られるばかり……姉上の部隊も一つ潰してしまった…各員、撤退の用意をしろ」
「いいのか、ガルマ?」
「ここまでやってタンクもどきさえ破壊できなかった。ここで全ての戦力を損耗させる方がジオンにとって不利益だ。悔しいがここは引くしかあるまい」
エース部隊の壊滅。
もし、脱走兵のククルス・ドアンがいれば……等とガルマはIFを考えるがすぐに切り替える。
いつまでも女々しいようでは、姉のキシリアや恋人のイセリナに叱咤されてしまうだろうと。
そんな彼を後ろで無表情に見つめるシャアは、密かに自分の計画の遂行を考え始めるのだった。
ガルマからの撤退の指示に、前線にいる兵士達は多少の動揺はあれどガンダムの出現の情報がある以上、進んで死神に飛び込みたい奴はいない。
背を向けて間抜けな死に方をしないよう、ゆっくり前線を下げながら撤退を開始するジオンにガンキャノンのキャノン砲で敵機を追い散らしていたカイは追撃とばかりに前に出る。
「好き放題やってただで逃げられると思うなよ!」
「あっ、おい待つんだカイ!」
逃げ腰のザク達に、カイは調子に乗る。
コア・ファイターで航空支援をしていたリュウが停止を呼びかけるが、カイは無視する。
すると白と薄紫でペイントされた3機のザクがカイの前に立ちはだかり、内2機が
「わわわっ!?」
弾丸の嵐に思わずカイは操縦桿から手を離して身を守ろうとするが、全くもって無意味なのはお察しだろう。
棒立ちのガンキャノンにガトリングとスナイパーライフルの弾が着弾するが、幸い被弾箇所は分厚い正面装甲。
スナイパーライフルによる攻撃は時折、軽く凹みができるがガトリング砲は全くの無意味だった。
「そんな!?なんて堅牢な装甲…!?」
「連邦はバケモンでも作ったのかよ!」
全く歯が立たない状態にノイジーフェアリーの隊員であるミア・ブリンクマン技術少尉とヘレナ・ヘーゲル曹長は思わずそう零す。
そんな彼女達の前に出て戦うのはアルマ・シュティルナー少尉。
搭乗機である陸戦高機動型ザクに持たせたザク・マシンガンをバラまいて、動き始めたガンキャノンの動きを止める。
が、ザク・マシンガン程度ではやられないとカイが学んだことで被弾に構うことなくビームライフルを撃つ。
「わわっ!?」
高速で飛来するピンクの光線にアルマは直感に従って左にステップを踏んで回避。
追撃のコア・ファイターのミサイルをくらうことなく無被弾に抑える。
「ギャレット少佐からは殿の役目を果たせば良いって言われてる!アルマ、前に出すぎるなよ!」
「うん!」
ヘレナからの助言に返事をするアルマだが、その声に余裕はない。
さっきから嫌な予感が此方へとドンドン近づいてきている感覚がするのだ。
まるで死神が来ていると、警鐘を鳴らすように。
「全隊、撤退完了だそうです!早く私達も撤退しましょう!」
運が良いのか、ここで味方からの撤退完了の報告にアルマは急いで逃げようと二人を急かす。
「そうだな。さっさとズラかるぞ」
「うーん、連邦の新型戦艦にモビルスーツ……鹵獲して調べたかったですが…」
「そんな事言ってないで早く戻ろ!」
「お、おう…」
こうしてガルマの二回目の攻撃は失敗に終わった。
読了ありがとうございます
ちなみに拙作はララァRTA的には赤い方は原作上振れより上振れて、ララァ本人は原作通りの下振れッス。多分
とりあえず赤い方が生き残るのは確定。