普通に叡智でズボラで普通に強いお姉さんがプロガンのパイロットは駄目ですか?   作:単眼駄猪介

5 / 9

まずは感謝をば
誤字報告、お気に入り登録ありがとうございます

それでは本編どうぞ



第5話 復讐鬼と坊っちゃん

 

 

ガルマの包囲網を突破し、ホワイトベースは爆撃で半ば廃墟となったニューヤーク*1へ歩を進めていた。

その道中で、ジオン勢力下で命懸けの補給物資を送りに来たマチルダ隊との交流もあったが、まあ対して史実と大きな違いはない。

アムロはマチルダに初恋を抱き、新たな補給で潤沢になった物資弾薬にマチルダ隊にリード中尉をマチルダ隊に回収されたブライトはようやくやかましい上司の騒音から解放されると内心安堵していた。

 

「やっぱジムより硬いな、ガンキャノン」

 

「相手がまだ対モビルスーツ戦に武装の調整をしていなかったのが幸いです。少なくとも、スナイパーライフル持ちは関節部に撃たれていたらやられていましたよ」

 

傷だらけのガンキャノンをメカニック達がアレコレと修復している中、命令違反の罰として1週間トイレ掃除とガンキャノンの整備への強制参加を言い渡されたカイがメカニック達に言われるがままにあっちこっちに走っていく。

元々、アムロよりもヒョロそうな皮肉屋の少年には丁度いい体力作りになるだろうとレナがブライトに進言しており、その時のカイの恨みがましい視線にレナは満面の笑顔で「頑張れ!」と応援していた。

 

「そういえばジムって…やはり?」

 

レナと駄弁っている数少ないメカニック達の(チーフ)を張っている三十路過ぎたくらいの男性は問う。

まあ気になるよな、とレナはなんてことのないようにその問いに答える。

 

「ガンダムの量産タイプだよ」

 

「やはりですか…」

 

「だがハードは良くても中身がザクにも及ばない。だから、ホワイトベースが運ぶガンダム達は無意味じゃないぜ?」

 

少し落ち込むメカニックに、レナは彼を慰めるように現状のジムについてダメ出しをする。

 

「アタシやアムロのガンダムに教育型コンピューターが付いてんだ。勿論、ガンタンクやキャノンにもな。ブライトは戦線の厳しさから孤立させられてるって思ってるかもしれないが、実際はアタシ達が戦闘を重ねて教育型コンピューターのデータを集める為にアタシ達はこの有様って訳だ」

 

「聞いてて嫌な話ですね……というかそんな話をして大丈夫なんです?」

 

「普通に機密だからな。バレたらバーン、だ」

 

「ヒエッ」

 

手を銃の形にしてメカニックの頭を軽く小突く。

それに対してメカニックはそれを想像して顔が青褪めるが、レナは笑って肩を叩く。

 

「大丈夫大丈夫!とっくにいくつかの戦線で先行量産で陸戦型のジムやガンダムが配置されてるって話だ。これから正式量産機のジムもお出しされるし、ぶっちゃけそん時まで黙ってりゃモーマンタイ!」

 

「半分ぐらい死語でしょそれは…」

 

レナの言葉にメカニックは安心するよりもツッコミを入れる。

まあ、確かに【モーマンタイ】なんて言葉は最近では聞かないが……

 

「アタシは古いのは好きなんだ。言葉にしろ、物にしろな」

 

「壺とか集めていらっしゃるので…?」

 

「いや、流石に近代以前のは逆に古すぎてちょっと…」

 

「古ければ古いほど良い、とか言いそうだったんですが」

 

「アタシにも好みってのがあるんだよ」

 

少し駄弁り始める二人。

そんな彼女らにメカニック達がチーフを呼ぶ。

 

「チーフ!歳下の女の子にデレデレしてないで手伝ってくださいよ!」

 

「だっ、誰が照れてるだ!素直に手伝えと言えんのか!」

 

一人のメカニックの言葉に怒鳴り返すチーフの顔は若干赤くなっており、あながち外れでもないようだ。

そんな彼らを見ながら、ふと自分の好みの男性をこれまでの自分の行動や感情の揺れ動きを客観的に思い返す。

 

「…アタシの好みは、強くて父性のある男ってところかな」

 

そんな寂しそうな呟きは誰にも拾われる事なく、騒音に消えた。

ただ、レナは思う。

二十歳になっても父の面影を追い求めているのか、と少し情けなく感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ガルマの司令部のあるニューヤークでのパーティーで恋人のイセリナ・エッシェンバッハとの逢瀬の後、熱い抱擁をして出撃準備を整えていたガルマは、今回は自分もザクで出ると申し出たシャアとガウの格納庫で対面していた。

 

「あの包囲網、そして分断して戦力の要だろうガンダムタイプの撃破の撃破をできなかった相手だ。私のザクも地上戦用に調整が終わった事だしな。君に任せっぱなしも心が痛む」

 

「ふ、君がいてくれるだけでも助かるよシャア」

 

第三者から見れば、友人同士の至って普通な信頼し合っている会話。

周りで仕事に奔走するメカニックやガウの乗組員もそう思っていたし、ガルマ本人もそうだった。

だが、シャアだけは違う。

彼の仮面の奥底には、復讐心があるのだ。

それを隠し、今目の前の男を、憎い親の血を引いたこの男をどう殺そうかと今も尚考えていた。

無論、そんな考えを誰かに悟らせることなく。

そんな事を露知らず、ガルマは戦闘準備を始める兵士達に激励の言葉をかけていた。

 

「先の戦いで唯一残ったノイジーフェアリー隊は本来の任務に戻る為に本拠地に帰還した。これまでの包囲網を潜り抜けた敵を相手に厳しいとは思うが各員、奮闘を期待している」

 

元々、貸し出されたノイジーフェアリー隊とサザンクロス隊は本来の任務を一時的に停止してキシリアから貸与されていた戦力。

その上で派遣されていたサザンクロス隊が壊滅し、ガルマはまだ少女と呼ばれるよう自分よりも若い者をホワイトベース一隻の為に使い潰す程、非情になれなかった。

恐らく、木馬があの包囲網を打ち破れる時点で各地のエースを集めなければ恐らく落とせない。

そんな存在に少女達に死ねと言うのは、ザビ家の男として許せないものがあったのだ。

それは合理的であり、同時に彼の甘さが出ていたが今回ばかりはその判断は正しいとしか言いようがないだろう。

まあ、とにかくノイジーフェアリー隊はいない中、彼らはホワイトベースに立ち向かう事となった。

 

「勝利の栄光を君に」

 

シャアのそんなガルマへの言葉は、確かに本心であれど、どこか空虚さがあった。

そんなシャアを乗せたガウは、陸から飛び立ちホワイトベースを沈めるべく紫の巨体が空を飛んだ。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

 

「総員戦闘配置!プロトタイプとガンダムを先に発進させろ!」

 

現在のニューヤークは、かつての栄えた街の面影を残すばかりである。

先のコロニー落としの被害とジオンが地球へ侵攻した際の絨毯爆撃もあり、廃墟都市と化したニューヤークに住む人々はいない。

仮にいたとしても、今回の戦いに巻き込まれたならそれは当人の自己責任だ。

さて、ホワイトベースは(ガルマ)の本拠地であるニューヤークに低空飛行で入り、そして現在ガウからの発見を遅らせるために廃墟とかした雨天野球場にホワイトベースは身を隠した。

そしてブライトの指示で出撃していくガンダムとプロトタイプは、囮役として前に出ることになる。

レナはそれに賛成していたが、民間人のアムロには拒否感が強いだろう。

レナはそう思い、囮は自分だけがと言おうとするがアムロは拒否する事なく自分から進んでやると言い放った。

 

「…分かった。無理はするなよ?」

 

「はい」

 

成長したな、と思うと同時にレナはテムがこれを見ていたら悲しんでいただろうなとも思う。

彼の信念の下に作られたガンダムはその信念とは真逆に、子供を戦場に駆り立てる役となってしまったのだ。

 

「ガンダム……どうか、アムロだけは守ってくれよ…」

 

レナはそう願わずはいられなかった。

 

「何か言いましたか、レナさん?」

 

「な、なんでもないさ。んじゃ、行くぞ」

 

プロトタイプとガンダムが二手に分かれ、お互いにスラスターによるジャンプの移動で敵と味方同士の位置を確認する。

ガンダムはトリコロール(青・白・赤)、プロトタイプは黒と白、赤の配色なのでプロトタイプがやや目立ちにくいが、どちらも黒い背景と化した廃墟を背にすれば白が映える。

ミノフスキー粒子散布下による有視界戦闘ともなれば、目の良い人間はすぐに気付くだろう。

 

「前方にガンダム!」

 

「ほう…」

 

上空のガウから降りて大地で木馬(ホワイトベース)を探していたシャアとガルマ麾下の4機のザクのパイロット達は、ガンダムの発見に少しばかり浮足立つ。

一方でシャアは、ふと名案が思いついたと言わんばかりにニヤリと笑う。

とはいえ、呑気にしてはいられない。

こちらが見つけたということは、相手も此方を見つけている可能性があるということ。

事実、シャアより後ろに立ってガンダムを監視していたザクが振り向き際に放たれたビームライフルで胴体を撃ち抜かれて沈黙する。

 

「チィッ!」

 

流石にこのままぼったちで死ぬような真似はシャアはゴメンである。

すぐさま瓦礫に身を隠して射線を切り、他の3機も味方の死に悼む暇もなくそれにならう。

 

「野郎……!」

 

死んだ奴は戦友だったのか、先程の瓦礫の山から廃ビルにポジションを変えた一人がザク・マシンガンを構えてガンダムに向けて発砲する。

 

「待て!奴は――」

 

此方を認識している、という言葉を言い切る前にザクがザク・マシンガンごとビームに貫かれ爆散する。

そして他に隠れていたザクも爆発音と共に鉄塊になっていく。

 

「ええい!黒い奴か!」

 

何処かにいるとは思っていたとはいえ、ガンダムだけに意識を割きすぎたとシャアは自省する。

シャアは挟撃に対してその場の離脱を優先し、物陰に隠れてガンダム2機のキルレンジから離れる。

残る最後のザクもなんとかついて行こうとするが、プロトタイプのバズーカに被弾し脚部が破壊される。

 

「脚部がぁ!?」

 

放り出されるように倒れるザクに、シャアは見向きもせずその場を離脱する。

 

「武器も満足なものではないのに相手は2機、しかも遮蔽の多い場所など冗談ではない…!」

 

そんな焦りに満ちた言葉を漏らしつつ、シャアは安全圏まで離脱する。

しかし、そこで一旦冷静になって周りを見るとちょうどガウの手前の野球場にホワイトベースの白いボディが見えた。

 

「なるほど、ガンダムは囮か」

 

シャアは暗い笑みを浮かべる。

やはり、これはチャンスだとシャアは巡ってきた復讐の機会に喜ぶ。

早速とばかりにシャアはガルマが指揮するガウに向けて、通信を繋げる。

 

「ガルマ、木馬はガンダムが向かう先にいる。追い込め」

 

「分かったシャア!助かる!」

 

ガンダムに向けて艦砲射撃をしつつ木馬の索敵をしていたガウの速度が上がる。

イセリナの為にと功を焦るガルマに、ヤケに冷静なシャアの言葉を疑うという思考はなかった。

 

「アムロ!敵は引っかかったようだぜ!一旦ここで敵を迎え撃つぞ!」

 

「了解です、レナさん!」

 

ガンダムとプロトタイプは合流して降下したザクと艦砲射撃を撃ち続けるガウを相手に立ち向かう。

一方で、頭上を通り過ぎて目の前を飛んでいるガウの後ろ姿(ケツ)を見ていたブライトは出撃したガンタンクとガンキャノン、そして各砲座についたクルー達に一斉攻撃の指示を出す。

 

「各砲座!撃ち方始め!外すなよ!モビルスーツ隊も攻撃を開始!」

 

ホワイトベースの主砲が火を吹き、ガンキャノンとガンタンクのキャノン砲もまた銃身を焼き尽くす勢いで弾を吐き出す。

 

「可愛いお尻が丸出しってね」

 

「カイさん、下品ですよ」

 

キャノン砲だけでなくビームライフルも使い、ガウの警護に付いていたドップを撃ち落とすガンキャノン。

自身の身の丈もありそうな120mmキャノン砲を正確な狙いでピンポイントで当てていくガンタンク。

数少ないドップが花火となり、ガウもまた航行に問題が出る程の損害を被る。

 

「う、後ろだと!?索敵班は何をしていたッ!?」

 

動揺するガルマだったが既に時は遅し。

落下しつつあるガウの艦橋で、ガルマは先程の攻撃の衝撃で気絶した操舵士をどかして自ら舵を取る。

 

「私とてザビ家の男だ…!木馬にガウをぶつけてやる!」

 

恐怖、焦り、不満、怒り、あらゆる負の感情が彼の中を渦巻いているが一人の軍人としての役目を果たそうと操縦桿を握り締めるガルマ。

 

 

 

だが、指揮の為に付けていた軍用ヘッドホンからシャアからの通信をキャッチする。

 

「ガルマ、聞こえていたなら君の生まれの不幸を呪うといい」

 

「しゃ、シャア!?」

 

「君は良い友人だったが、君のお父上がいけないのだよ。フフフ……ハーッハッハッハッ!!」

 

「謀ったな、シャア!謀ったな!」

 

土壇場での裏切りの事実。

しかも唯一家柄に関係なく対等に接してくれていたシャアが、という衝撃。

一方で落ちてくるガウが特攻を仕掛けて来ているのを理解したブライトが操舵士のミライ・ヤシマにホワイトベースを急いで浮上させるよう指示する。

 

「ホワイトベース、離陸急げ!奴は特攻を仕掛けてきている!」

 

しかし、ガルマのプライドと意地が情けなく泣き喚くことを許さない。

ホワイトベースとガンタンク、ガンキャノンからの集中砲火を浴びながらホワイトベースに突き進もうとする燃えるガウの中で、一人の男が叫ぶ。

 

「ジオン公国に栄光あれぇぇぇー!!」

 

そんな彼の最後の雄叫びは、限界を迎えたガウが急激に高度を落とし墜落する事でホワイトベースは生き残り、ガルマは無念の死を遂げたのだった。

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

 

 

先の作戦で「これで勝てねば貴様は無能だ」とガルマに向けて独りごちるように、そしてガルマを完全に下に見るように言い放った事があるが今のシャアはそんな自分に嫌悪感を抱いた。

 

「これでいい。これでいいのだ…」

 

派手に爆発したガウの残骸を遠目に見ながらシャアは自分にそう言い聞かせるように呟く。

だが、心の空虚感は減らない。

ようやく一人目、復讐を果たしたというのに喜びの感情はこれっぽっちも湧き上がらない。

虚しさと欠落しかなかった。

先程の高笑いも通信を切ったあと、すぐにやめた。

何処かおかしいと思いながらもシャアは近場の駐屯基地に帰還すべくザクを動かす。

 

「…………」

 

この後、シャアはドズルからクビを言い渡され軍から一時的に放逐される事となるが、それはアムロ達にとって関係のない話だ。

 

今はただ戦士達に与えられた束の間の安らぎの時間を過ごすのみである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
実はホワイトベースの降下地点からの航路的にニューヤークはシアトル辺りに相当するとかしないとか。各媒体でそもそもニューヤークじゃなかったりするし、ニューヤークという名の元ロサンゼルスやらシアトルやらで色々複雑なので、当時の勢いとノリ的な意味合いが強い都市名だが、気にするだけ無駄である。そんなのよりアニメを楽しむのだ





読了ありがとうございます

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。