普通に叡智でズボラで普通に強いお姉さんがプロガンのパイロットは駄目ですか? 作:単眼駄猪介
モブにしろ、主役にしろ、名ありにしろ色んな可能性があるから二次創作はやめられない
「諸君らの愛してくれたガルマ・ザビは死んだ!それは何故だ!」
「坊やだからさ」
戦場から離れた、地球のとあるバーでグラスに注がれたカクテルを手にそう答える金髪のサングラスの男。
その名はシャア・アズナブルその人である。
しかし、自信満々な姿から打って変わって萎れた草のように覇気を感じないその姿は、先の復讐から彼を後悔の念を引きずり、苛まれている事が伺える。
そんな彼のもとに、一人の男がやってくる。
「探しましたよ、シャア・アズナブル少佐」
「今の私は軍人ではない。シャアで良い。それで何か要件かな?」
ーーー
同じ頃、連戦につぐ連戦でエンジンの調子が少し悪いホワイトベースはニューヤークで損耗の激しい部分をメインに整備を開始していた。
その最中、ジオンのガルマを弔う国葬が地球圏全てに向けて発信されていた。
それを見ていたホワイトベースのクルーは、ジオンの総帥であるギレン・ザビの演説に厳しい表情を浮かべつつそれを聞いていた。
「あれが、我々の敵なのだ…」
そうブライトは言う。
先程まで演説に対してキレたような様子から一転しているが、ブライトもまた疲れているのだ。
「あれが、敵…」
艦橋の小さなモニターに映る、大量の人々。
ガルマの遺影を背景に戦意高揚とばかりに、ギレンは「ジークジオン!」と声をあげ、民衆や国葬に出席している軍人達も「ジークジオン!」と声をあげる。
熱狂ともいうべき、いや熱狂そのものがモニターの向こう側にあった。
それを見るアムロはこれまで相対してきた者達が、モニターにいる者達の手先という現実を知る。
一方、レナは国葬の為に用意されただろう巨大なガルマ・ザビの遺影に憐れみを抱く。
「お偉いさんは死んでも道具、か…」
ギレンたちの真意*1はともあれ、レナにとっては憐れみを感じた。
ただそれだけである。
そんな国葬の最中、ニューヤークの駐屯基地で三隻のガウがガルマの仇討ちの為に出撃準備を行なっていた。
残存部隊を取り仕切るのはダロタ中尉。
そんな彼の元に仇討ちに参加させて欲しいと、ガルマの恋人であるイセリナ・エッシェンバッハがやって来ていた。
しかし、ダロタとしてはそんな彼女の願いは拒否しなければならない。
なにせイセリナの父はニューヤークの市長なのだ。
爆撃で廃墟と瓦礫と化した街から投げ出された市民たちを守るためにジオンと交流していた彼からすれば、ガルマに惚れて恋仲になろうとは思いもよらなかっただろう。
ダロタとて、ジオンがしでかしたコロニー落としという行為の結果を自分の目で見て恐怖し二度とない事を祈ったくらいの非道な行為をしたジオンを取り仕切るザビ家の末っ子とはいえ、その一員に好意を抱くなど上司として慕っているガルマの手前、言うことはなかったが正気の沙汰ではないと感じていた。
だがしかし、イセリナの気迫に押されダロタは乗艦を許してしまった。
「報われぬものですな、エッシェンバッハ市長…」
この親不孝者の娘の父である市長に、ダロタはこの後知ることになるだろう彼に同情するのだった。
そして時は進み、ガウはホワイトベースに追いついていた。
この際、シャアがルッグン*2でガルマの仇討ちの助力という形で現在、ガウを追いかけて上空を飛んでいるのだがそれはさておき。
「木馬を発見!」
「砲撃開始だ!奴らに先手を取らせるな!」
ホワイトベースの後ろを取ったガウは出し惜しみなくメガ粒子砲やミサイルを放つ。
「総員戦闘配置につけ!うおっ!?」
先の戦闘で艦長室で休んでいるブライトに代わり、CIC担当者が代理に艦内に指示を出す。
が、その直後にミサイルが至近で爆発しホワイトベースが揺れる。
「ブライト艦長!至急艦橋に!」
「索敵!ホワイトベースのエンジンが不調なんだ!ここで当てられたら落ちるぞ!」
艦橋が喧騒に満ちる中、レナはパイロットスーツに着替えてプロトタイプに乗り込んでいた。
「敵は?」
艦橋に通信を繋ぎ、オペレーターに問う。
普段は幼い子供*3の世話を焼いている少女、フラウ・ボゥが今回セイラの代わりにオペレーター席についていた。
「え、えっと…」
「分かる範囲で良い。落ち着いて、な?」
「は、はい!て、敵はガウ三隻、モビルスーツは見当たりません!」
「OK。ガンキャノンはホワイトベースで対空監視!アタシとアムロでガウを墜とす!」
「ええ!?敵の空母に乗り込むってのか!?」
追いついたのか、カイがガンキャノンのコクピットに収まっている様子が通信が繋がると同時に機内モニターが開く。
カイが驚きの声をあげているが、ホワイトベースの現状を考えれば無茶でもやるしかないのである。
「また前みたいに特攻されちゃ困るだろ。ホワイトベースはエンジンが不調でスピードが上げられないし」
「か、帰りはどうするんです…?」
流石にアムロも動揺を隠せないようで、レナに質問する。
まあ、普通に考えれば適当に撃ち合ってれば良いのだが……
「ガウに乗って落下するギリギリで飛び降りる。後はホワイトベースに回収してもらうだけだ」
「かなりリスキーだ…ゴホン、ですね…」
「だがここで叩き潰さなきゃホワイトベースは安心して太平洋に出られねぇ。ただでさえ不調なのにな。あとタメ口で良いぞ。中尉つったって本当は歩兵科か砲兵にいるような人間だからな」
そう言いながらレナはプロトタイプをホワイトベースから飛び立てさせる。
「いぃぃぃぃはあぁぁぁぁ!!」
地上からそこそこ離れている高度での半ばスカイダイビングに恐怖を誤魔化す為に奇声をあげるレナ。
モビルスーツは空を飛行することはできないが、スラスターによる推力で極短時間なら無理矢理飛ばす事はできる。
モビルスーツが擬似的にながら、普遍的に空を飛ぶようになるのは七年後程に普及したベースジャバーやド・ダイ改*4の登場を待つことになる。
それはさておき、滑空とも呼べるプロトタイプの飛行はなんとかスラスターのオーバーヒート前にガウの甲板に乗ることができた。
勿論、ガウとて抵抗はする。
メガ粒子砲やミサイルがプロトタイプに向けて放たれたが、ミサイルはバルカン、メガ粒子砲はシールドで迎撃・防御され回避運動しようにも既に時は遅い。
続くガンダムもガウに乗り込み、ランドセルに装備されていたビームサーベルの柄を取る。
プロトタイプはガンダムの攻撃の邪魔をされないよう、ハイパーバズーカを乗っているガウの機銃やメガ粒子砲に向けて発射する。
「バズーカの破壊力はたまらねぇな」
そんな感想を抱きつつ、間は空いているものの、隣り合うようにいるガウのメガ粒子砲にバズーカの弾を撃ち込む。
被弾した直後、ガウの翼が大爆発を起こし明らかに飛行スピードが下がっていく。
翼部はガウの命綱となるスラスターが密集しており、またそこにメガ粒子砲があるのだ。
誘爆してもおかしくない配置である。
「でやぁっ!」
一方、ガンダムはビームサーベルに見せかけたビームジャベリンという、槍を使ってガウの翼に突き刺し後ろに足を擦って下がりながら割いていく。
その姿はギャグじみた光景だが、やられる側にとっては恐怖でしかない*5。
「次のガウに飛び移るぞ!」
「はい!」
ガウを飛行不可能なまでに破壊したガンダムは、プロトタイプに引き連れられ最後のガウに飛び移る。
が、間一髪でガンダムに機銃から放たれた弾丸の雨が降り注ぎ、ガンダムが竦んで飛び移れず地上にへと落下していく。
「ダロタ中尉!」
「ガンダムに集中砲火!乗らせる――ぐわっ!?」
イセリナが叫び、ダロタが指示を出すがプロトタイプの着地にガウが揺れる。
もうこれまでか、そう思った矢先にシャアの乗るルッグンがホワイトベースの機関部に爆弾を叩き込み元々不調だったホワイトベースのエンジンを停止させる。
「くっ…!ホワイトベースを着艦させるんだ!対空防御は何やってんの!」
揺れる艦橋でブライトが即座に指示を出す間に、シャアは次の獲物であるプロトタイプを狙う。
「私にもメンツというものがあるのでな…!」
そんな事を独りごちりながら、ルッグンの機銃と機首にある小型ミサイルを一斉射。
翼の端になんとか乗っていたプロトタイプがバランスを崩し、ガウから転げ落ちるように翼の甲板から足を踏み外す。
「こなくそぉぉぉぉぉ!!」
ガウから落ちる際、レナはバズーカの残弾を全て機関部に撃ち込みバズーカ自体も投げつける。
最後には効果があったのかは疑問だが、バズーカの弾頭はしっかりガウに着弾。
爆炎をあげながらイセリナの乗るガウが緩やかな墜落を開始する。
「せ、せめて…!せめてあの白い奴だけでも!」
翼をやられれば墜落する、素人のイセリナにも分かる現象にイセリナは一矢報いなければという思いでダロタやガウの操艦を任されている操舵士に訴えかける。
「た、体当たりをしかけてくるのか!」
それを見ていたガンダムはガウの体当たりを避けるべく移動するがそちらにガウも向かう。
落下スピードも相まって、アムロは回避困難と悟ると受け止めるように盾を前に押し出して構えを取る。
「うわああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」
ガウとの衝突の衝撃はアムロの予想以上のもので、激しくアムロの体がシートから離れては伸縮性のシートベルトによってシートに背中を叩き付けられる。
だが、体当たりを受けてもアムロは死なずガンダムもその形を保っていた。
だがしかし、ガンダムとて流石に無傷ではない。
ガウという巨体を真っ向から受け止めれば、動力部や機体の関節部、フレームに大きな損傷を与える。
結果としてガンダムは故障した。
アムロは直接的な原因を探るべくコクピットから這い出て、機体各所を点検する。
が、そんな彼はふと不時着したガウの上で自分に銃を向ける女性の姿に気づく。
「ガルマ様の仇!!」
「えっ…?」
金髪の綺麗な若い女性は、アムロに殺意を持って銃を向けていた。
だが、すぐに彼女は意識を失う。
それはそうだ。
墜落した機体の中にいるのだから、頭を打っていたりそうでなくても痛みのショック等で気を失う原因は幾らでもある。
それが結果として、ガウから落下し意識を失ったまま死ぬことになったのは運が良いのか。
きっと運は良かったのだろう。
死の恐怖に怯えることなくあの世に行けるのだから。
だが、感情のままに父に最後の挨拶することもなく仇討ちに参加した彼女は誰から見ても親不孝者だろう。
だが、アムロにとっては不幸でもあり幸運でもあった。
レナとブライトに打たれ、気合を入れられてからは戦闘に対する姿勢は前向きになったものの、戦争で敵を倒すという事がどういう事なのかハッキリと認識していなかった。
いや、無自覚に考えないようにしていたとも言えるだろう。
それが、今目の前で現実として突きつけられたのだ。
その後、一部のクルーと共に名も知らぬ綺麗な女性を土に埋め、申し訳程度に枯れ木で組んだ十字架を用意する。
「なんていう名前の人なんだろう?僕を仇と言ったんだ」
あと少しでイセリナを埋め終わる時、アムロは改めて綺麗な人だと思いながら彼女の名前を想像する。
ガルマの仇、つまりは彼女は自分達が倒したガルマ・ザビと近しい関係の人間である事には間違いない。
そんな彼女から仇と言われ銃を向けられた。
これが戦争なんだ、とアムロは改めて現実を突きつけられたのだった。
ーーー
一方、ホワイトベース艦内にいる民間人達はブライト達と対立していた。
その場面に出くわしてしまったレナは苦虫を噛み潰したような顔を浮かべる。
民間人で対立の主導を担っているのはほとんどが老人だった。
「なんでみすみす殺したんじゃ!ジオン兵が撃ってくるなら守れ!」
「だから危険だと言ったんですよ!我々の忠告を無視して出ていったのが悪いとしか言いようがありません!」
話の内容はほぼ老人達側の自業自得であるが、それでも不満は不満である。
ずっと肩の狭い上にあまり満足した量の飯を食えない生活は、老人達には大きなストレスとなっていた。
まあ、だからといって横暴な態度や行動が許されるわけではない。
「なんじゃと!?軍人は民間人を守るのが仕事じゃろうが!」
ギャーギャー喚く老人達に、レナは近くにいたホワイトベースの操舵手であるミライに話を聞く。
「ミライさん、アタシには脈絡が分かんねぇんだが…」
そう聞くレナにミライは丁寧に教える。
「ホワイトベースが不時着した時に、ホワイトベースから脱走した避難民の方々がいたんです。でもジオンの兵士に見つかって撃たれたようで…」
「あー、なるほどな」
普通に考えれば、軍事機密のホワイトベースから出てきた人間など怪しい人物でしかない。
見逃せば連邦の連絡員と連絡を取られ何かしらの策でホワイトベースの追撃が難しくなったり、工作員を忍ばせて内部から破壊したりというジオンが被害を被る可能性は多くある。
そういった者は総じて民間人に扮するのだから、件の民間人を射殺したシャアの判断は全く間違っていはいない。
本当に民間人であった場合にしたって、そう誤認されるような状況下である為に仮に裁判を起こしても精々謹慎処分が関の山だろう。
まあ、そもそも人材が常に不足しているジオンなのでシャアのような大物のエースを遊ばせておく余裕はないのだが。
「…後でブライトにはなんか差し入れでも持ってかねぇとな」
ブライトの苦労を考え、差し入れを持っていくことにしたレナ。
とは言っても、ホワイトベースが不時着した場所は荒野の砂漠。
その差し入れはだいぶ先になりそうだと想像が追いつくまであと3秒だった。
イセリナの回は劇場版ではカットされてるせいで初期のアムロが熱血感が足りないとかナイーブ過ぎるとかの印象を受けがちだけど、アムロがそうなる故の経緯があるイセリナの回は入れときたいなという個人的な感傷。
まあ、そもそも第一話からずっと戦い続けてたしむしろPTSDにならない方がおかしいわけだけども(兜甲児やジーグ等の永井豪作品を見つつ)