ソシャゲで一向に出番の来ない恒常キャラ   作:栗原ァッ!出番ねぇぞぉ!!

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ソシャゲで一向に出番の来ない恒常キャラ

 

 その世界は、広かった。

 しかし同時に、その世界は狭かった。

 

 その世界は広大だった、海も山も空も街並みも人々も全てがその世界にはあった。

 だが、それほど広大な世界で人が暮らせる場所は島国一つ分に収まるほど狭かった。

 

 そんなキャッチコピーを持ったゲームがこの世には存在する。ゲーム名は『オープンシティ・クローズライフ』

 

 スマホで無料で配信された、所謂ソシャゲと言う物だ。

 

 ゲーム内容はキャラクターをコマのようにして動かしてバトルする、時にはスキルを使って危機を打ち破る……と、変わった所ないソシャゲだ。

 

 世界観的には、ポストアポカリプス気味な世界で、『ガイジュウ』と呼ばれるクリーチャーを倒し、地球を取り戻すための特別組織『ハローズ』のオーナーとなったあなたが、個性豊かなキャラクターと共に戦い抜くという王道なストーリーだ。

 

 課金要素も満載、ガチャは天井まで回してこそ……そんなゲームだ。キャラ数も豊富で、珍しく男女人外共にキャラ数が豊富なので、どんな趣味趣向の方でも必ず推しが見つかるとされるゲームでもある。二次創作もわんさかだ。

 

 しかし、そんなキャラ数の豊富なゲームだからこそ、ある問題が現れることがある。出番だ。

 

 ADVのゲームだからこそ、一度に多くのキャラは出せない。それ故、どうしても割を食って出番がなくなってしまうキャラがいる。

 

 酷ければ、初期から恒常のレアキャラとして鎮座して居るのにもかかわらず、メインストーリーの出番が殆どないキャラクター……とか。

 


 

 

 

 

 この世界は、常に崖っぷちだ。

 治安はゴミカス、街から一歩外に出れば『ガイジュウ』と呼ばれる化物がはびこっている。政府はあるが、ろくに機能はしていない。

 

 実に退廃的な世界だ……この世界が変わったのは20年前……とある隕石が地球に落下した。始めに落下してきたそれは、ただの惑星か何かの残骸かと思われていた。

 

 だが、実際にはそれは宇宙生物の卵……それは、地表に激突し砕け散ると同時に羽化し、ネズミ算式に増える、人よりも圧倒的なフィジカルと、人智を超えた能力を持つガイジュウが地球と言う星に解き放たれた。

 

 各国の軍が総力を上げようともガイジュウは駆除しきれず、結局人々は狭い狭い都市をつなげて生活するしかなくなっていたのだ。

 

 そんな世界だから、貧困の差なんて圧倒的だ……この街にも至る所にホームレスや物乞いが居た。

 

 だが、そんな物乞いの一人に近づく妙な長身の男が居た。男は目の焦点は定まっておらず、完全にキマっているのが分かる。

 

 男は、地面に座り込んで物乞いの為の加護を持った、ボロい布切れを纏った男に話しかけた。

 

「お、おい!……アイツを……アイツをよこせ!」

「……アイツ?何の話だ。」

 

 明らかに正気ではない男の問いかけにも、布切れの男は冷静に答えた。だが、そのしらばっくれる態度に苛つきを覚えたのか、男は激昂して叫ぶ。

 

「馬鹿野郎!アイツだよ!あのヤバいジュースだ!アレをよこせ!なぁっ!?」

「……。」

 

 布切れの男は暫く黙っていると、口角を鋭く上げてニッと笑う。布切れの男は立ち上がり、懐から一つの液体の入った小瓶を取り出す。

 

「コイツかい?欲しいのは。」

「あぁ!アァあぁ!そいつだよ!それが欲しい!くれぇ!!」

 

 布切れの男はキマってる男の恫喝には目もくれず、手元の小瓶を眺める。すると、男はさらに激昂した……

 

「て、てめぇ!ま、まさかそいつを取ろうってこんたんだな!そうはいかねぇ!いかねぇぞこのクソカス野郎が!」

「いや、要らねぇな。俺これ、そもそも俺のじゃねぇし……んなもんより欲しいのは……!!!」

 

 次の瞬間、布切れの男は派手に小瓶を上空にぶん投げる。ヤク中の男はその薬に気を取られ顔を上に上げる……そして、布切れの男は次の瞬間その布を脱ぎ捨て……一瞬でヤク中の男へと距離を詰めた。

 

「へへっ!」

「がはっ!!」

 

 ヤク中の男は、脇腹を鉄の筒に殴られつばを吐きながら姿勢を歪める。

 

 そして布切れを羽織っていた男は一瞬のうちに男を地面に組み伏せ、手にしていたそのL字の武器――トンファーを使い頭を地面へと押し付けた。そしてもう片方の手で、投げ捨てた小瓶をキャッチする。

 

「ジル・グーグロ……32歳ヤク中、薬代の為の強盗、強姦62件以上……お前さんの首にゃあ112万の賞金が掛かってんだ。大人しくしてもらうぜ。」

「しょしょ、賞金稼ぎか!?お前!?薬売りは?」

「とっくにお巡りさんに突き出していたよ、因みに薬はそいつからパクった。いい釣り餌だったぜ。」

 

 そう言って男はトンファーを地面に落いた小瓶に向ける。次の瞬間、トンファーからは鉛玉が飛び出し薬を粉々に砕いてしまう。

 

「くそぉ!くそぉ!テメェテメェ!何者なんだよぉ!なんなんだよぉ!おまええぇ!!!」

「俺は『ライオット』。賞金稼ぎやってる。愛武器はトンファーガン、好きな食べ物はイカのカラスミパスタ。嫌いな物は規則とオートミール。好きなネットサイトは――――」

 

 そう、無限に近いほど喋り続ける彼、ライオット。彼は賞金稼ぎ……街の悪事を働く人間をとっ捕まえて、お巡りさんに渡すという。シビアでやる気のそがれる仕事だ。

 

 その分、稼げる金額も多い……命を懸けて得る金にしては安すぎるような金ばっかだが。しかし、世の中には外に出てガイジュウを狩って金を稼ぐような奴らも居るらしい。

 

 ライオットにとっては、いくら金払いが良くてもそんな話には乗りたくない。最近、政府がガイジュウ狩りの対策部……ハローズとやらを設立し、あちこち構わずスカウトに行っているようだが、そんな物を受ける気がしれない。

 

 そこの隊長は相当なカリスマなのか、数々の名に売れた腕利きの用人がハローズに加入していっている。

 

 だが、ライオットは未だにお呼ばれされず……まぁ、犯罪者相手にセコい稼ぎをやっているただの賞金稼ぎに、お呼びがかかる可能性のほうが少ないだろう。

 

 それに、ライオットはガイジュウ相手にごめん被りたい理由は他にもある。

 

 彼がたった一人で賞金稼ぎを続ける理由もそれだ、ただ金を独り占めしたいわけじゃない。嘘だ、この気持ちも本当はあるが、そうじゃない、彼自身のもっと本音の部分だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もう、誰一人仲間を失いたくない。背負ったものを落っことしたくない。ならば、いっそ何も背負わないほうが自分にも、他人の為になるでは無いか。

 

 

 

 

 退廃した世界で停滞した思いを持ったライオット。

 そんな彼を救えるのは、この世界の『切り札』であり……ハローズの『オーナー』であり、『プレイヤー』である、『あなた』しか居ないのだろう。

 

 もっとも出会えれば(ガチャで出れば)の話だが。

 

 

 

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