INFINITE STRATOS-SEED-盾無き勇者 作:INUv3
通称、IS
その兵器は、突如、世界に現れた
約十年前に起こった、白騎士事件。
その事件を初めとし、世界に変革が訪れた
唯一ISを操縦できる女性優位の世界になってから
早数年となった頃、世界を震撼させるNEWSが飛び込んだ
[速報です!たった今、世界初、ISを起動させた男性操縦者として日本在住の日本人である、織斑一夏君がIS国際委員会から発表されました!]
そう、世界初の男性操縦者である、
日本に…いや、世界という大きな大海から発見されたのだ
幸いな事に、彼には世界で1番強い、最強の操縦者として
名実共に認められており、MONDO GROSSO*1を
制した存在である、
姉として、保護者として、そして後ろ盾として存在し
ISの生みの親であり、現在でも消息が分からない
まさに、日本国にとっては最高の人材が
彼は、すぐ様、学園に入学が決定となった…
その結果を受け、世界では彼と同年代の15〜16歳の青少年を
対象とした、IS検査が一斉に行われたのだ
しかし、結果として1人も反応する者は現れなかった。
このまま時間だけが過ぎていった…
〜日本・INFINITE STRATOS学園〜
そんな、世界最高の兵器を学び
ISの乗り手を育てるための学園が
太平洋の人工島に存在している。
世界で唯一ISを専門的に学ぶ高等学校だ。
いわば、名門中の名門。全女性の憧れである。
公共の移動手段は日本本土を学園と結ぶモノレールのみ
島全てが、学園であり、広大な敷地がある。
そんな学園の外側にある海岸を
黒長髪の一人の大人の女性が歩いていた。
名を織斑 千冬。ISの世界大会 モンドグロッソの
第一回大会で優勝し、ブリュンヒルデの称号を持つIS乗りだ。
そんな、女性は、少々やりきれない思いを胸に
気晴らしの散歩をしていたのだ。
やりきれない思いと言うのは、彼女の弟
織斑 一夏、彼が男性として
史上初となるISを動かしたことだ。
しかも、己の志望校とIS学園の試験会場を間違え
試験会場に迷い込んだ挙句、展示されていた
ISに勝手に触れ、起動させたのだから苛立つのは当然。
とはいえ、彼女は、唯一の肉親である弟を実験台として
様々な国家に奪い合われたりしないために
彼をIS学園に入学するための手続きを行わされたりと
それはもう寝る間も惜しむ程に、大変な仕事に追われていた
そんな、気分を変える為に歩いていると
海岸に行きたくなった為、来た訳だ
だが、彼女の視線の先にはクレーターがあったが
飛翔物体が海岸に落ちたとしても
ここまで小さくない、何より、学園のレーダーが
すぐ様、感知し、通報するはずなのだ。
「…ISにしては小さいな、危険だが、見ないことには分かるまい」
ISか、そう思ったが、正規のISならば
事前に連絡がある筈、ならばマフィア等か?
そう思っていたのだが、それでもISにして小さい
今彼女はISは疎か、武装等を持っていないため
警戒しながら、その後を辿って行った。
その先に居た存在は…
俯せになり、流されてきた様に倒れている人間であった
「全身装甲か。少なくとも専用機と考えた方が良さそうだな…。しかし、これは本当にISか?」
倒れているISの姿に怪訝な視線を向ける。
全身装甲が別に珍しいというわけではないのだが
ISの特徴的な一部である
装甲は色合いが抜け落ちたかのようなメタリックグレー
だが、先程専用機と口にしたものの
少なくとも私の知っている限り
このISを所有していると思われる国
そして人物、全て心当たりがないのだ
「反応がないということは…はぁ…やれやれ……事情聴取は暫く後になりそうだ」
なぜこのIS学園の海岸へ墜落したのか
話を聞けるような状況でないことにため息を吐く
少なくとも目を覚ますまでは拘束する必要があるのだが
…意識を失ってることを配慮しなければならない。
とりあえずは、目を覚ますまで私が監視していれば
上も文句は言わないから、いいだろうと結論付けていると
ISが遂にエネルギー切れでも起こしていたのか
半強制的に解除された為、近付くいた所
私は姿を見せたISの操縦者に唖然とする。
「……これはとんだ空からの祝福だな。まさかーーーー第2の男性操縦者とは」
ISの中から現れたのは、赤を基調に薄めの黒を配し
厚めの装甲板が貼られたISスーツの様な物を着込んだ
黒と白が混じる髪色の少年だったのだが、頭からは血を流し
グッタリとした様子で血色が悪いところを見ると
この少年が、死にかけている事が分かった
とりあえずこの、死にかけで気絶している少年を
治療出来る場所に連れて行く事にした
数分歩き、彼女がたどり着いたのは簡素な部屋。
扉を開くとベッドがあり、治療器具が視界に入る。
この場所は、学園には大体ある、保健室
この学校の特性上、保健室というものは
とても重要な役割を負っている。
将来世界に羽ばたいていくであろう
若き少女たちのケアはとても大事なのだ。
それも、恋する乙女の思春期と言えば尚更の事。
そんな彼女たちが相談しやすいためにも
普通の学校でもある集団で使う保健室とは
別に、ここのような個室が作られた。
保険医に、怪我の具合等を見てもらい
適切な処置をしてもらった後、背負い直し
個室のベットに寝かした訳だが
「さて、こやつをどうするか、だな」
少年をベッドに横たえた千冬は
前傾姿勢となった時に顔にかかった
髪を背中に払い、椅子に座る。
無理やり起こすことも考えたが
相手の感情と怪我の状況を鑑みて
この案は、却下した。
とりあえずは、起きるまで放置する事にした
「……こ、こは…?」
意識を失っていた俺が目を覚まして
最初に視界に入ったのは見たこともない
知らない部屋の天井だった
母艦に設置されている、自室の天井では無い
見知らぬ天井に困惑しながら
上半身を起こして周りを見渡せば
艦内の個室というよりも一軒家の個室の様だ
だが、寝ているベットの近くに一つの椅子があった
この少ない情報ではなんとも言えないが…
誰かが看病してくれていたというのはわかった。
「くっ…だが、俺はヤキンで…ヤキンで…何だ…?記憶が…あやふやだ…!」
何だ?ソレに、母艦…?何だ…記憶がおかしい…!
思考が纏まらない事にイラつき
髪を無視し、頭を掴むと
違和感があった…
頭に包帯が巻いてあったのだ
いや、そんな事よりも…
「目線が…低い…?」
自身の目線が低いのだ、ベットに座っていると
言っても、自身は以前まで180越えの身長だった
だが、今では170あるかないか程度である
更に困惑する事が自身から出てきた
「俺の声は…こんなに高くない…いや、俺の声が…変わった…?」
元々は、おっさんボイスだったのが
今では、何故か、エントリーっ!と叫びたい声が
自身の喉から出ている…海に飛び込みたいなぁ〜!
「ほぅ、どうやら無事に目を覚ましたようだな」
何もない天井をぼうっと見ていると
出入口の扉が開き、オーブ国の言語が聞こえた。
そこには知らないスーツ姿の女性が立っていた。
習ってて良かった、オーブの言語…とりあえず
どうやって話しかければいいのか戸惑っていると
ベットの近くにいる椅子に座り
俺の顔を確認するように見てくる
「顔色は拾った時よりはマシになったようだな。身体に痛みなどは感じるか?」
「は、はい、とりあえず、身体に痛み等はありませんが…もしかして、貴方が俺を看病してくださった方でしょうか…?」
「私ともう1人の2人がかりではあるがな。気絶して2時間ほど経っていたからそれ以上目を覚まさないのならば、街にある病院にでも連れて行こうとしていたが…身体にも支障がないのならその必要もないだろう」
気絶していた…2時間も…?
だが、それより、街の方の病院?
ココは孤島とでも言うのだろうか?
というか、俺は宇宙空間に居たはずなのだが?
と、とりあえず、感謝を伝えよう
「わざわざ、見ず知らずの男である、俺を看病して下さるとは、大変、お手数お掛けしました」
「礼を言われるほどのことをしていない。そもそも、お前を助けることになったのは、結果的にそうする必要があっただけだ、それで?お前はいったいなぜ、ここIS学園の森に墜落したのだ?貴様のISを見るからに専用機クラスだと思うんだが」
「I…S……?…MSの事ではなく…?」
「…モビルスーツ?それこそいったいなんの話だ。少なくとも私はそんなものは知らないが」
お互いの何かがズレているかのように
俺と女性の会話は不自然に止まった。
俺がISという意味を理解していなければ
女性もMSという意味を理解できていないからだ。
『アイエス』
そんな言葉に、ただ困惑してしまう…
そして、この重力は知っているから分かる、ココは地球だ
だが、待って欲しい幾ら、宇宙空間に居たとしても
イキナリ、地球に居るか?
それに俺はナチュラルでは無く、第2世代のコーディネーターだ
なのに、彼女は俺を嫌悪していない、だから、俺は仮説を立てた
それを今から、実行して行く…
「済まない、図々しいが、織斑千冬、確認したい事がある、IS学園と言ったが、この場所は何処に属しているんだ?」
「日本だ、それがどうした?」
「日本…だと…?」
日本とは、地球に俺が生きるよりも
もっと昔に存在していた、極東の島国の筈だ
それが、存在している時点でおかしいが
確証を得られる訳ではない…
更に聞いてみるしかあるまい
頭痛がした為、頭を抑えた所、大丈夫か?っと
心配されたが、平気だと返す
「いや、大丈夫だ、次に、俺が今から言う単語に心当たりがある物があった場合、教えて欲しい…再構築戦争、ジョージ・グレンの告白、「人類の遺伝子改変に関する議定書」採択、「エヴィデンス01」発見、「パレスティナ公会議」開催、コロニー、黄道同盟 結党、コーディネーター、ナチュラル、プラント、地球連合、オーブ連合首長国…この中に、心当たりは無いか…?」
「いや、残念ながら、その言葉も今、お前の口から聞いたのが初めてだ」
「…成程…」
まさかだ…まさかなのだ…
俺が言った言葉は、ナチュラルもコーディネーターも
どちらも学ぶであろう内容なのだ
それが、全て無いだと…?
ならば、ココは…
「異なる世界では無いか…?」
「異なる世界?」
「コレは仮説だ、俺は、君達、現代を生きる人間より先を生きている可能性が出てきた、織斑千冬、今の年代を教えて欲しい」
「20 年だが…それが、どうした?」
「…ふぅ…クソ、仮説が現実味を帯びてきた…!」
現実味を帯びた所ではない!
完全に、決まってしまった!
ココは、過去のIF、別の可能性によって
生み出された、未知の世界…!
分岐点の先だ…!SF小説を読んでいたから
こういう展開を読めてしまう自分の脳を呪いたい…!
「訳ありといったところか。お前が私に聞いてきたその質問の意図に理由があるのは間違いなさそうだ……。それで、貴様は何者だ?悪いが何者か分かるまで拘束する必要がある」
覚悟を決めろ…
俺は軍人だ…そうだろう?
そうだ…誇り高きザフトレッドなのだ
「…分かりました、まず、俺の名前ですが…ハッキリ言います、ありません…と言うより、記憶に無いのです。」
「…記憶喪失ということか?」
「恐らく…ですが、ここから先の話は現実味が無い事ですが…俺が体験してきた事…俺が生きていた世界の話です。」
「…そうだとしても私はお前が誰なのかを知る必要がある、その話がどのようなものであれな。その話が嘘か本当かはお前の表情などで判断するつもりだ」
「まず、俺は、織斑千冬、貴方が生きる、この世界とは違う世界の出身です。」
「…その理由は?」
「はい、俺の世界では、中国・韓国・北朝鮮・モンゴル・台湾、そして日本の6ヶ国が統合された東アジア共和国として、西暦後のC.E.09年に国家成立しています。」
「…何…?」
「理解が出来なくても構わない、話を続ける、それから先…俺が生まれた時代に第1次連合・プラント大戦という戦争が起こった、詳細は省くが、ナチュラル、今を生きる人間と大差なく、地球に住み続ける人種、地球連合、対、コーディネーター、遺伝子調整によって産まれ、宇宙にあるコロニー群に住む人類、プラントの戦争が起こった、俺はコーディネーター…プラント側だ」
「…それで?」
「…俺はザフト軍という、プラントの軍人としてプラント大戦をMSという、全長18mを超える人型機動兵器を使用し、戦った」
「つまり、貴様は異世界の軍人なのだな?」
「そうだ、だが、その後の記憶は…ほぼ無いと言っていい、宇宙で戦っていたのが最後だ…」
「それ以外は無いのか?」
「これ以上は長くなる…コーディネーターとナチュラルの格差、第一次ヤキン・ドゥーエ、
震え続ける手を握り込む、血が出ようと…
思い出す光景は、目の前で散っていく戦友達
どんどんと迫り来る、兵器群
後ろには、自身が護る婿の民達
そして…自身の手には、条約違反の兵器…
「…
「…その戦争は、まだ続いている可能性が高いが…総て、俺が生きていた世界ならば、誰でも知っている知識だ」
「遺伝子調整により生まれた存在がコーディネイターと呼ばれ、それをせずに生まれた者をナチュラルと呼ぶ。少なくとも私たちの世界はそのような存在はいない…。そして、お前の世界では地球の外、つまり宇宙で生活しているものもいるというのは本当なのか?」
「はい、C.E.の世界ではコロニー群である、プラントや、群ではなく単独で存在してあるコロニー、宇宙で生活していました。俺も、プラントのアプリリウスで生活をしていました。」
「ふむ…私たちの世界では到底考えられないな。地球の外、つまり成層圏の向こう側にある、宇宙に行く技術こそ持っているが、宇宙に移り住む技術という物は私たちはまだ持っていない…。この話をアイツが聞いたら、お前に興味を持つだろう…厄介なこと、この上ないな」
「え、っと、それ…は?」
「最後の言葉は気にするな、私のちょっとした独り言にすぎない」
「お前がこの世界の人間ではないということは私には理解できた。お前の表情や説明を見た限り、嘘や作り話ではないのだろう」
「嘘は吐きませんよ、俺は…そんな事をしていい程、許された存在ではないですから。」
「信じられる材料がそこにあるのならば疑いはしても否定をするつもりはない。だが、これは確認だ、お前はなぜ、ここに来てしまったのか、それだけでも、わからないのか?」
「分からないですね…俺が乗っていたMS、リジェネレイトガンダムでヤキン・ドゥーエ宙域を飛び回り、迫り来る核ミサイルを破壊した記憶が最後です。」
「…なんと言うか、聞いていた限りでも、凄まじい戦争を生き抜いたのだな…」
「…ただ、運が良かっただけですよ…ただ運良く生きて、ただ運良く味方が犠牲になる中生きて、ただ運良く機体を使える…それだけです。」
「…そうか」
「あの、それで、俺が使っていたMS、リジェネレイトガンダムはどうなりましたか…?出来る事ならば、俺の命に変えてでも宇宙域で自爆させないと駄目な代物なのですか…」
「お前の世界のいうMSとやらは少なくとも私の視界に入るかぎり存在はなかった。お前が説明したMSのサイズを考えるかぎり近くにあればすぐに気づく」
「そう、ですか…コレは…何としても、探しださなければ駄目か…?」
俺は相棒を失った喪失感等ではなく
確実に、この世界ではオーバースペックな
リジェネレイトを、見つけ出し、自爆することを
最優先に考えてしまっていると女性…
織斑千冬は、ふっ と笑うと口にし始めた
「これは伝えそびれていたんだが、私がお前を初めて視界に入れた時、お前の姿は私のよく知るもの、ISに身体を包まれている状態で発見した、これは勝手な私の推測ではあるが、搭乗していたMSという物はISへと姿を変えたのではないか?あくまで推測ではあるし、到底考えられないものであるがな」
「そんな…いや…平行世界、それも未知の世界の過去に飛ばされたんだ…それくらいはあるのか…?…そして、ISとは何だ…?」
「すまない、お前の話ばかりを聞いていて、こちら側の世界の情報を教えることを失念していた。次はこちら側の世界について話そう。お互いの情報共有をすることに、損はないはずだ」
女性から僕は今いる世界についての説明が始まる。
インフニット・ストラトス…通称:ISという名の持つ兵器
それが原因でのこの世界で起こっている
女尊男卑が蔓延る、負の世界になっていることに
「これが私たちの世界で基本的な情報だろうな。より詳しく話すとなると更に時間がかかると思うが」
「何と言うか…人類は何処に行っても変わらないというか…はぁ…とはいえ、女性限定だとしても、MSを人間2人分並みのサイズにし、運用可能にする技術は凄まじいな」
「だがそれが原因で女尊男卑社会が生まれてしまったがな…」
「ははっ…それを言ったら、俺が居た世界はどうする…世界を巻き込む大戦争を起こしたのだ…コチラの方がよっぽどマシと言うものだ」
自嘲気味に自分の世界のことを振り返った。
人類の存続までの危機に陥った世界の方が
差別という意味を考えればもっと酷いだろうに
…いや、やめよう、もう過去なのだから
あの世界に未練は無い…
もう、家族は居ないのだから
「これで一先ずは、お互いの世界の違いをわかることができた。とはいえ今からが本題だ、話を進めるがいいか?」
「はい、大丈夫です。俺をどうするかですよね?覚悟は出来ています。」
「理解が早くて助かるよ…あの馬鹿もコレくらい…いや、よそう、お前を発見した時はISに身を包まれた状態だった。つまりお前は、この世界ではISを動かした世界で、二番目の男性操縦者ということになっている。そして世界でISを動かした男はお前を含めて2人しかいない。その1人である、お前は別世界の人間であり、証明人も居なければ、お前を匿える後ろ盾もいない。今のところ、お前の情報が外部に漏れてはいないが、IS学園に何かが侵入したという事については、既に学園から世界に広まっている」
「…つまり、俺は学園に所属しなければ生きていけない、そういう事ですね?」
「ああ、お前が選ばなければならない選択肢は1つだけだ。IS学園に入学すること、そうすれば少なくとも3年間は生活することには、それ程、苦労しないだろう」
「…保護がない場合…良くてモルモット…悪くて解剖…っか…俺は別世界の男だからな、更に欲されるだろう」
俺は最悪の未来を想像して
自傷気味に笑う…
「分かりました…ただ、俺が学園に入学する場合、条件があります。」
「言ってみろ、私達は脅しのようなもので、お前を入学させようとしているのだからな」
「俺を…ISに乗せること、コレは俺の意思以外で乗らない様に出来ませんか?そして、もし、俺が乗っていたMSがISになっていた場合…俺は自身の意識以外で絶対に乗りません。それだけです。」
「…それは難しいな、授業の一環でISを動かすことが多数ある。学校行事についてならある程度ならば、フォローはできるが」
「…了解しました…ですが、先程の事が起こった場合、俺は授業以外では乗りません」
「あぁ、分かった、さて、後はお前の名前を決めるとするか…さて、どうしたものか…」
難しい顔をしていたけど授業の時は
乗るように努力をすると言えば
織斑千冬さん、は静かに首を縦に頷いてくれた。
条件を飲んでくれたことに安堵する。
こんな自分勝手な条件を飲んでくれた…
この人はきっと優しい人なんだろう。
あ、一応…俺の今の姿を確認したい
「…すみません、鏡等、俺の顔が分かる物はありませんか?」
「む?顔を確認したいのか?…ほれっ、手鏡だが」
「ありがとうございます…は…?」
快く渡してくれた手鏡を受け取り
俺の今の姿を確認すると、驚愕し
危うく、手鏡を落としそうになった…
その姿が…
「むっ、危ないな…どうした?自身の顔を押さえて…」
「…な、何故だ!?何故なんだ…!?何故…俺が…"コノ"の姿になっているんだ!?」
それは、俺の負の遺産であり
助けたかった存在で…
俺を捕らえ続ける呪縛で
俺の…最初の…親友…
「何で…!何で、"彼奴"に、なっているんだ…ッ!?」
俺は、ショックでベットから
落ちそうになったが
それを織斑千冬が受け止めてくれた為
何とか、地面にぶつからなかった…
「落ち着け!一体、何がどうした…!」
落ち着け…よしっ…そうだな…あぁ、こうしよう
今では自身の名は分からないんだ
そしてココは別世界なのだ
折角だ、お前を忘れない為に
その名を…使わせてもらうよ…
「…す、すみません…いや…何でも、ありません、それと…先程、考えて下さっていた、俺の名前ですが、思い付きました。」
「ふむ…それで、なんという?」
「ザフト軍所属、階級:黒服、アーラン・ドノミコスと呼んでください。」
「アーラン・ドノミコス…ドノミコス…よし、覚えた、では、今後よろしく頼むぞ、ドノミコス」
「はい、こちらこそよろしくお願いします、織斑千冬さん」
俺は、差し出された手を握った…
コレから、俺は名無しの赤服では無い
ザフトレッドのアーラン・ドノミコスとして生きていく
だから…アスラン、お前があっちで生きてるなら
そのまま、生き続けてくれよ…?
「さて、今日はもう、色々あって心身共に疲れただろう?今日は休め、お前のこの世界の戸籍については、私が後で用意しておこう」
「えっと…はい、よろしく、お願いします?」
「ではな、また明日に、様子を観に来るぞ」
織斑さんは、そう言ってこの部屋から退出していった。
俺は、そのまま、ベットに身体を預けて天井を見上げ
目元を左腕で隠し、思いに耽ける…
自分が異なる世界にいるという実感はまだ湧かないが
生き残っているということに関してだけは真実で
それが堪らなく嫌になってしまうな…
「ピュール…アルフ…センシ…カルサ…アンプ…フィスト…何で…皆、俺だけ、置いていってしまったんだ…」
…考えるのは疲れたな、頭を使い過ぎた
織斑さんの言葉に従おう…
この世界に来て数日が経過した。
この世界の情報について与えられた情報端末を使い
取捨選択しながら、調べ続けていたが
やはり、ここは俺が生きていた世界では無く
ISという、特殊な兵器が造られた世界
つまり、技術発展の方向性が変わった世界なのだろう
「はぁ…未練は無いし、あんな世界だと言うのに、俺はそれでも帰りたく思ってしまうのは、父と母が眠る、ユニウスセブンを思い出すからなのかもしれんな…」
そんな自傷気味に
想いを呟いていると、扉からノック音が聞こえる。
この部屋に俺がいることは2人しか知らないため
入室許可の返事を返す。
それを合図に扉が開くと
俺を助け出してくれた織斑さんと
俺の世話を良くしてくれる、山田さんが入室してくる。
「どうやら、今日もまた、想いに耽っていたようだな?」
「ドノミコス君!今日は特に元気が良さそうで良かったです!」
厳しそうな雰囲気を纏った織斑さんとは
正反対で柔らかい雰囲気を纏い
俺を観て微笑んでくれている女性は
彼女に、俺が別世界の人間だと伝えたのは
織斑さんなのだ、最初は驚いていたが
その後は普通に接してくれる、優しい人間だ
「すみません、俺がこんな事を起こさなければ…」
「いえいえっ、気にしないで大丈夫ですよ!生徒を助けるのは教師として当たり前のことですからっ!」
「お前の知識を、そのまま放置するということにはいかないからな。別世界の人間であるならば、ISの知識は無いのだ、学園に入学する以上はその辺の基礎的なものを、身につけていないと困るだろう。…まぁ、男で操縦者なのだ、仮に別世界の人間ではないにしろ、ISを動かせる時点でIS学園に入学するのは、強制だからな、どちらにしろ変わらないさ」
ISの基礎的な知識を覚えてないと
入学した後に覚えることが多く
更に、授業に置いていかれるという
理由で、こうやって時間がある時にISを含め
世界の情報について色々と教えてもらっている
だが、俺は元とはいえ首席で卒業したからな
1も知らない事でも教えられれば、総て覚えていく
とはいえ、俺が専攻するだろう科は
整備科になるだろう…MSにはもう…
「さて、ドノミコス、実はお前に相談があってな。コレはお前に関することだから、私や山田先生の独断で決めるわけにはいかない。こればかりは、お前の許可…意思が必要だ」
「俺の許可…?俺に許可を取るような物はなかったと思うが…」
この世界に来て日が浅い俺に対して
織斑さんと山田さんから、俺の了承が必要と
言われたけれど心当たりは一つもない。
いったいどんなことなのだろうと
疑問に思っていると落ち着いた声で
山田さんがゆっくりと説明を始めた。
「このことはドノミコス君にとっても大切なことでして、IS学園に入学するには適性検査というものをする必要があるんです。詳しくは長くなるから今日は省きますが、実は今日、その適性検査を受けてもらいたいって思っているんですけど……どうでしょう?」
「適性検査…MSパイロットとして必要な検査にもあったな…そんなの」
「ああ、お前にはISに触れるーーーいや、お前に伝わりやすく言うならば、ISに搭乗してもらうことになる。適性検査をする際に、ISに搭乗することは避けられない道だ、悪いがこればかりは私も山田先生もどうすることもできん」
適性検査をする条件を聞いた時
俺の左手は無意識に強く握られた
俺のような存在が…乗っていいのだろうか…?
この世界に…紛争の火種を撒き散らすのでは…?
そう考えた時に、俺を激昂した後輩達の顔が思い浮かんだ…
…あぁ、俺は…逃げないよ…
「…っ…分かりました、それが必要ならば、俺は乗ります。」
「あぁ、分かった、お前がどんな状況なのか、それは私達には分かからん…だが、無理するなよ。ドノミコス」
「ドノミコス君、辛かったら直ぐに言ってくださいね…?」
「いえ、いつまでもお二人に甘えている状況では、俺は軍人として、人として駄目になってしまう…だから、俺はやります。ははっ、山田さん、安心してください…俺は、コレでも元は軍人ですから」
俺は精一杯の笑顔をしながら伝えると
織斑さんは、険しい顔をしながら
俺を見据えて、溜息を吐いてから話し出した
「はぁ…これは最終確認だが本当にいいんだな?一度やると言った以上は確実に、達成してもらうぞ」
「はい、ソレに…俺が乗ってきたMS…いやISが、リジェネレイトなのか、別の機体なのか…それだけでも、確認したいんです。」
意思が硬い事を伝えた
それを、分かった織斑さんは
山田さんに指示を出すと
山田さんは先に部屋を出て行った
「山田先生には、先に向かってもらって準備してもらうことにした。とりあえず、私についてこい。お前にも準備してもらう必要がある。それに渡さないといけないものもあるしな」
「俺が、部屋から出て大丈夫なのですか…?」
「その点については心配するな。生徒には秘密にしているが教員全体にはお前の存在は話してある。というか、学園の砂浜にクレーターを作りながら墜落した時点で隠蔽などできるものか。恐らくだが勘のいい生徒も何かがあったというのはわかっているだろう。しかし、その原因が男性操縦者であり、異世界からの訪問者とは、微塵も想像はできないだろうがな」
「は、ははっ…」
織斑さんの言葉にただ乾いた笑顔で
応えるので精一杯だった。
変な汗が吹き出してしまったが
織斑さんは気にするな、と言うと
移動するらしく、歩き出した為
俺は、後ろを着いて行く事にした
見慣れない風景なため様々なところに
視線を移して、観察していく…
「俺が居た場所…船とはまるで違う」
「私にとっては、とうに見慣れた風景の一つだがな。だが、ドノミコス、お前にとっては新鮮なもののようだな。…元の世界が恋しいか?」
「…恋しく無いと言えば嘘になりますね。確かに俺は恋しく思います…父と母の墓すら作れず、戦友の墓すら見に行けなかったですから…」
「…私はお前が、どのような未来を歩み続け、先の光景を見たのか…それは想像はできん。しかし、今、お前に必要な事が、休息という事は間違いない。ここ数日間しか付き合いがない私でもわかるほどに、だ」
そう言うと、織斑さんは一度止まり
後ろに着いてきた俺を見る…
その目は、まるで憐れんでいる様に…
「さて、先を急ぐぞ。この場で立ち止まっていれば誰かに見られる可能性が更に高くなるからな」
「(そうなのだろうか…俺は…休んでいて良いのだろうか…?友の仇も取れず、父と母の無念も晴らせずプラントという国家だけを守っただけなのに…?)」
伝えたいことは伝えたと言うと
織斑さんは前を向き再度、歩く。
俺は頷くと、先ほどと同じように
後ろをついていく…すると
目的地らしき扉が、視界に入り
織斑さんが入った為、俺も続く
「すまない、遅くなってしまったな、山田先生」
「いえいえっ!こちらもつい先ほど準備が終わりましたので、ちょうどいいタイミングでしたよ!」
山田さんと織斑さんの話を聞きながら周囲を見渡す。
2人以外にも、この学園の教員がいる…全員女性だ
だが、特に俺のことを気にしている様子もなく
作業に取り掛かっているようだった。
前の世界では考えられない光景だ…
コーディネーターだからと嫌がられずに
普通に接され、嫌な視線を向けられない事に
内心では驚いていると、会話が終わったのか
山田さんが、声をかけてくれた。
「ドノミコス君、本当にコレが最後の確認です…本当に、本当に良いんですね…?今なら、まだ引き返せますよ…?」
「…大丈夫です。コレは俺がやらなければならない…やらなければ、俺は進めないんです。」
「分かりました…なら、私からは何も言う事はありません。はい、コレがドノミコス君のISスーツです。更衣室に行く前に渡しておきますね。これはドノミコス君のものでもありますから!」
「俺の…ですか…?」
俺のだと、山田さんに言われるけれど
全くといっていいほど、心当たりがないが
丁寧に畳まれているモノを受け取ってみると
どこか見たことあるカラーリングだ。
いったいっと思っていれば、一つだけ
思い当たる節があるが、それを着たのは…
とりあえず、案内される更衣室にたどり着いて
確認した方が良さそうだな…
山田先生に教えられた道を歩いて更衣室に着いた為
そのまま、中に入り、着替えたが…
「…やはり、コレはザフトレッドの時に着ていた物だが…俺の身長に合わせてあるな…もしや、あの時の物か…?…いや、気にしないでおこう」
出来れば、黒のパイロットスーツの方が
階級を示せる事もあり、良かったが
贅沢なことは言ってられない。
急いでパイロットスーツに着替えてから
一度鏡の前に立ち変なところがないか確認する。
ヘルメットが無い以外は、本当にザフトレッドだ…
特に変なところはない事を確認してから
俺は、更衣室から出て先程の部屋に戻る。
すると、織斑先生が話し始めた
「来たか、ドノミコス、お前にもう一つ渡さないといけないものがある、山田先生、この場は、お願いします。」
「はい!任せてください!ドノミコス君も、頑張ってくださいね!」
山田さんから声援を受けながら
織斑さんの後に続き、目的の場所まで向かう。
織斑さんに案内された場所は、勿論、俺にとっては
見覚えがある場所なことはなく初めてみる景色だ…
だが、感覚で分かる、ISのカタパルトだ
「カタパルト…もしかして、ISの?」
「あぁ、ここは第3アリーナのピットだ。まぁ、今後使う可能性があるかも知れない場所と覚えていてくれれば構わん」
「分かりました。」
「アリーナを貸し切りにできるのも、時間の問題のためさっさと本題に入らせてもらうぞ。お前には、"これ"を渡すためにここに来た」
そう言った、織斑さんの手元には
俺に見覚えがある物があったが…
知らない物も一緒に付いていた
だが、コレは紛れもなく、俺のドックタグ…
「…もしかして、これが、俺のISなんですか……?」
「ああ、それが、お前のISだ。今は待機状態になっていて、ドックタグに見えるが正真正銘のISだ、調べたわけではないが、おそらくお前のISは既に
「了解しました」
とは言ったが、装着するという感覚が分からない為
MSに乗る時を想像しながら瞼を閉じれば
何かに包まれる感覚…初めから
この身体の一部のような錯覚に襲われる…
嫌な感覚だ…そのまま、目を開けた時には
俺は、ISを身にまとっていた
「改めて見ればISというには些か異質だな。背にはカスタム・ウィングらしきものは見当たらないし、変な突起物がある…さて、ドノミコス、何かしらの違和感を感じるか?」
「いえ、大丈夫です、MSとは違い、コックピットじゃない事には戸惑いますが…それにしても、この機体は、まさかとは思ってはいたが…」
織斑さんの言葉で今纏っているISの正体が分かった。
後輩の搭乗機であり、後輩が消息を絶った時の機体
連合から強奪してきた4機の内の1機体…
俺にとっても因縁深い機体だ…リジェネレイトの元
その事に、俺は何とも言えない感情に侵されるが
「アリーナに行くのなら、そこのピットゲートに進め。そうすれば出撃できる」
「わかりました。ここまで案内してくださって、ありがとうございます」
「気にするな。後に生徒の1人となるのならば、当然のことをしているまでだ。今回は戦闘する事は無い、ISに身体を慣らしてみろ」
そう言うと、織斑さんは、ピットから出て行った
戦闘をする気がないと言われたが、本来は違うのだろう…
きっと、お二方が色々と気を使って
今日の適性検査を準備してくださったんだ…
本当にこんな俺に対して、気を遣ってくれて
申し訳なさしかない…
だが、気遣いを無駄にするわけいかない
今だけは余分なことを考えず
ISを操縦することだけに意識を向けるんだ…!
「(…やはり、コックピットで操作する感覚では動かないだろう…どちらかと言うと、人体の延長線上と言った所だろうな…だが、そうなるとスラスター等には気を付けなければならない、戦闘中にそこを狙われたら終わってしまう。)」
僅片足を前に出せば違和感を感じることなく一歩進む。
そのことを考えながら、いつものように
歩き急ぐことなく着実に、ピットゲートを目指す。
ISを纏った印象は搭乗よりも、何らかの衣服類を
纏っているという感覚に近い。
自分の身体の一部だと思った方がきっといいのだろう。
一呼吸を置き、PS装甲に電力を回すと
鮮やかな赤色が発生した事を確認した後に
戦艦から発進する時にしていた口上を述べる
「アーラン・ドノミコス、イージス、出るぞ!」
一気に、スラスターを吹かし、アリーナへと出撃する
何時もならば、宇宙空間を見渡すが、今回は違う…
MSとは違う感覚に戸惑いはあるものの
危なげなく着地を成功してから
まずはISとMSの違いを冷静に分析する
「コックピットに搭乗した時の感覚と全然違うな、それにこのハイパーセンサー…これがメインカメラと同じ役割と考えると今後は自身の目で補う必要もあるのか…だが、有視界戦闘が常だったからな、あまり変わらない…か?」
すると、通信が入り
山田さんの声が聞こえてきた
[ドノミコス君、聞こえていたら返事をしてもらって良いですか?]
「此方、、通信状況良好です。山田さん」
[それなら良かったです!ドノミコス君の様子は私達の方でも見ていますから、武装確認をしちゃいましょうか!武装は口に出すか、想像するかで確認出来ますよ!]
「了解しました」
俺は、イージスの資料から何の武装を使っていたかを
思い出しながら、武装を確認していく
最悪、両手足の先に存在してあるビームサーベルだけでも
十分なのだが、予想外に、全てが揃っていた為、安心した
左腕部に装着する形で取り出したのは、対ビームシールドである。
コレは戦闘する時、相手の攻撃を大抵防げる防御兵装だ
次に取りだしたのは、高エネルギービームライフルだが
MSの時は60mm高エネルギービームライフルだった筈だ…
だが、サイズダウンしたとはいえ、元は兵器なのだ
[ドノミコス、武装の確認は済んだか?]
「はい、ですが、最後のひとつは、撃ってみなければ分からない武装なので、今は大丈夫です。」
[よし、ならば、次に移る…今から空間に投影する的を撃ち抜いてもらう、ハイパーセンサーで見えるだろう?…やれそうか?]
「…はい、問題ありません。」
[では、射撃のタイミングは、お前に任せる…無理はするなよ]
「了解…」
高エネルギービームライフルを構え
的を狙っていく…大丈夫だ、俺は命を奪う訳では無い
そのまま、落ち着いた右手の引き金を引いていく
「1つ…2つ…3つ…4つ…5つ…」
どんどん撃ち抜いていく…嫌な事に外さない
この身体もあるが…俺という戦士の経験は
的を外す事を許さず、全てが真ん中を…
コックピットを撃ち抜いていく…!
「はぁ…はぁ…はぁ…っ…!」
そうして、全て撃ち抜いた時には
精神的疲労からか、息を切らしていた…
[ドノミコス、コレで試験は終わりにするが…]
「…少し…待ってください、一つだけ、確認したい事があります。」
[…言ってみろ]
息を整えてから、俺は言葉を繋ぐ
「はい、このISは、可変機構という物が採用されていました…だから、それを使用し、武装を確認します。」
[…分かった、お前が言うならば、私達は何も言わん…だが、無理はするな]
「了解…」
俺は、スラスターを吹かしISを浮かすと
そのまま、可変機構によりMA形態に
対称の形状となる手足を前面へ伸ばした
イージス巡航形態となったまま宙を飛ぶ
長座体前屈の様な形になりながらだが
不思議と、苦痛感は無い…
そのまま地面に向けて、射角を取り
巡航形態から、手足を伸ばした強襲形態となる
すると、複列位相エネルギー砲[スキュラ]が
使用可能とログに表示された為
そのまま、MA形態からMS形態に戻る
「(使えてしまうのか…コレも…スキュラを使わない様にしなければ…俺は…もう、人を殺したくない…!)…コチラ、アーラン・ドノミコス、すみません。これで適性検査は終わりにしても、大丈夫ですか?」
[此方、織斑、大丈夫だ、ドノミコス、あとは部屋に戻り、休んでいてくれ。]
「了解しました…」
スラスターを吹かし、ピットに戻ってから
イージスを解除し、ISから出てから
更衣室を目指し歩いていく
…途中に女生徒たちが居たが、全て回避し
更衣室に着いてから、直ぐに着替え
さっさと、その場から撤収し、部屋に戻ってから
ベットに倒れる様に仰向けになり
天井に向けた右手を見る…ドックタグと一緒に
そこから垂れる血を無視しながら…
「…俺は…どうすればいいんだ…俺が望んだのは、こんな力なのか…!?ッ…!」
そのまま、俺の力ない拳はベットに落ちた
それから数日が更に経った頃
入学式が終わった為、1年1組の教室に入ったのだが
皆の視線が一斉に、俺を突き刺した…
コレは…キツいものがあるぞ…?
「(…コレは…嫌な視線ではなく、好奇心や興味本位な視線が多い?とはいえ、居心地がいいってことではないが、コレではまるで珍獣では…?)」
俺は、そんな事を考えながら
自分の名札がある席に座る
タ行の為、左側の列だが最後尾だ
確か、ザフトのアカデミーでも
最後尾だったな…宿命なのだろうか?
そして、俺は最前線に居る、男性を見る
「(彼が、織斑一夏…織斑さんの弟で、世界初の男性操縦者…それにしても…顔色が悪過ぎないか?)」
俺がそんな事を考えていると山田さん…
いや、山田先生が教室に入ってきた。
「皆さん揃ってますね~?それじゃあ、SHRを始めますね。最初にまずは自己紹介を、私はこのクラスの副担任である山田真耶です。よろしくお願いしますね。」
「よろしくお願いします。」
俺は山田先生の挨拶に挨拶を返すが
他のクラスメイトは無視して、織斑一夏を見る
そして、挨拶を返した俺を山田先生は
救われた様に満面で笑いかけてくる…
その笑顔が辛い…ッ!
山田先生副担任だったのか
それにしても、俺に対してもだったが
彼女は、あれが普通なのだろうか?
アレでは、生徒に舐めた態度を取られないだろうか?
…男子が少ないから、そう言う事は無いのだろうか?
「では、自己紹介をしていきたいと、出席番号順でお願いします!」
出席番号順ということは、俺よりも
この世界で初の男性操縦者である彼の方が早いだろう。
彼の席は運悪く最前列でしかも真ん中といった
一番注目が集まりやすい場所だから同情してしまう。
彼の顔は遠目から見ても余裕がないのがわかる。
「(後で、彼には話しかけてあげた方が良いかもしれないな…まぁ、彼の自己紹介後に、コレからの関わり方を探ろう)」
次々と自己紹介が進んでいく中
いよいよ彼の番となり名前を
山田先生から呼ばれているけど
中々気付いておらず数回呼ばれた時に
自身が名前を呼ばれていることに気付いて
慌てて立つと、上擦った声で返事をする。
「は、はいッ!!」
「え、えっと、織斑君、自己紹介をしてもらって大丈夫ですか…?今織斑君まで順番が回ってきたから…だ、駄目でしょうか?」チラッ
そこで、俺を見ないでください山田先生!
俺は、この通り、最後尾なんです…!
助けてあげたいけど、無理なんです!
「い、いえ、大丈夫です。…え、えっと、織斑一夏です。よろしくお願いしますっ!」
緊張した様子で立ち上がり一度呼吸を整えて
彼…織斑一夏くん、は自己紹介をして頭を下げる。
今このクラスにいる皆んなの視線は全て
彼へと向けられている。
俺も自己紹介する時の参考にしようと見る
「(とはいえ、彼は織斑先生の弟だからという色眼鏡で見られているから、ここまで注目されているのだろうか?)」
教室の空気は何というか別の緊張感…圧迫感?
に包まれていて、自己紹介をした彼、へと圧を感じる。
同じ男子としてこの圧を、何の軽減無しに
一身に浴びさせられているのは同情してしまう。
「えっと…、以上ですっ!」
その一言に、クラス全体からの圧が強まった気がする
自己紹介としては普通に終えたと思うけれど
多分名前を知れた程度では物足りないのだろう…
そして、山田先生…俺を見ないでください
幾ら、アカデミー卒で、ザフトレッドで
元、黒服とはいえ、この圧を落ち着かせるのは
彼、本人の努力でしか無いんです…!
…とりあえず、助言は出しておこう
「あ〜、織斑一夏?他に、趣味や特技などは無いのか?それくらいは言っても大丈夫だと思うぞ…?」チラッ
「そ、そうですね!織斑君!何か、特技や趣味等はありませんか?」
「え?えぇっと…突然言われても…や、やっぱり、以上です!」
その瞬間…教室の空気は文字通り死んだ…
山田先生は、驚いた顔のまま固まり
クラスの女生徒は、全員、崩れ
俺は顔に手をやり、天を仰いだ…
コレは…別に後で話しかけなくとも良いな…
彼は、良い意味で、お馬鹿なのだろう。
「(さて…彼の自己紹介は当てにならないということが分かった…どうするべきか)」
自己紹介について悩んでいるとスパーン!と
誰かが叩かれたような音が聞こえたので
前を向くと、彼の背後には織斑先生がいた。
「げぇっ!?信長!?」
「誰が、第六天魔王だ!この、うつけものが!」
振り向いて実の姉である、織斑先生に対しての
第一声は、良く分からないが、何となく
女性に対してもだが、人に向かって言う言葉では
無いということが分かった…
なんせ、織斑先生の右手には、未だに叩いたであろう
出席簿が握られており、それが天を向いたと思ったら
再度、彼の頭に振り下ろされたのだから
周りも、その光景を見て、少しだけ引いている気は
するけれどこの光景を見た以上
皆は織斑先生を怒らせない方が身のためと思っただろう
優しい先生なんだけどな…
「織斑先生、会議は終わられたんですか?」
「ああ、先ほど終わった所さ。クラスへの挨拶を押し付けてしまってすまなかったな」
「いえいえ、こういう時のための副担任ですから!」
織斑先生が来たことに対して
嬉しそうに声を弾ませる山田先生
保護されていた数日間とはいえ
2人を見てきた訳だが、本当に仲が良いと思う。
恋愛ではなく、友愛としてだろう
理想の先輩後輩コンビでは無いだろうか?
すると、織斑先生が此方を向く
「諸君、私が担任の織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが、私たち、教師の仕事だ。だから、私たち、教師陣の言うことは、よく聴き、理解しろ。出来ないものには、出来るようになるまで、きちんと指導してやる。私の仕事は弱冠15才を16才までに、一人前の人間として鍛え抜くことだ、もし分からないことが、あったら分からないままで終わらせず、きちんと、私たちに聞きに来るように。いいな?」
場の空気は、先ほどまでが嘘のようにかき消え
凛とした声が静かな教室に響く…
確かに、織斑先生の言い方は、未だに若い
少女達にとっては厳しいものだろう
だが、大人となり荒波に揉まれた後に思えば
相当、優しく気を使ってくれている事が分かる
そう1人でウンウンっ!っと、納得していると
次の瞬間にこの静寂を破ったのは予想外の声だった。
「「「「「キャァァァァーーーーーー!!!!!!!」」」」」
「本物よ!本物の千冬様よ!!」
「現役の頃から、ずっとファンでした!」
「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです!」
「あのブリュンヒルデ様にご指導いただけるなんて、私とても感激です!嬉しいです!」
「私、貴方様の為ならば、身も心も捧げます!」
静寂を破ったのは織斑先生や、山田先生…
ましては先ほどまで、自己紹介をしていた
世界で初めての男性操縦者、織斑一夏君、ではなく
このクラスの女子だった。
完全に他のことに対して意識を向けていたこともあって
この突然の黄色い声援は、本来以上に煩く感じてしまい
咄嗟に、耳を塞いでしまった…パイロットとして情けないが
俺は…この先、3年間を上手く過ごせるだろうか…
とてつもない不安に駆られていると
織斑先生が深い溜息の後に、話し始めた
「…はぁ、毎年思うのだが、何故、私のクラスには、馬鹿者が集まるんだ…?それとも私のところに集められているのか?」
黄色い歓声を上げられた織斑先生といえば
心底嫌そうに表情を歪めていた。
毎年と本人の口から出た言葉から
織斑先生もこの黄色い歓声は
うんざりしてるんだなと密かに同情する。
だからと言って、世界最強の肩書きを手に入れたのだ
そうなるのも仕方ないのだろう…
「ああ、罵ってくださいまし千冬お姉様!!…アッでも…放置プレイも…!!!」
「千冬様に躾をされたいっ!」
「でもたまには優しく……いえ、更に厳しくしてっ!!」
俺は、この絶望的な光景に目を殺し
上を向いておいた…
今、ザラ議長並の眼力を出せている気がする
こう、なんというか女子の知ってはいけない
深い欲望を知ったときは、どうすればいいのか
それが…分からない…アスラン…教えてくれ
「それで?お前は挨拶も満足にできないのか?」
「いや、千冬姉、俺は――――(スバンッ!)」
「織斑先生と呼べ、馬鹿者」
「……は、はい、織斑先生」
本日3回目の頭を叩かれる音は割と遠慮を感じない。
やっぱりその辺は姉弟だからなのだろうか…?
弟妹が居ない、俺にとっては良く分からないが
羨ましいとは思ってしまうな…
2人のやりとりを、羨ましそうに思っていると
クラスの女子はヒソヒソと小声で何かを話している
「あれ、もしかして織斑君って千冬様と家族なのかな?」
「織斑君は千冬様の弟さん……?」
ヒソヒソと周りの会話を盗み聞きするが
どうやら織斑先生と家族であるのは知らなかったようだ。
直接教えてもらった事もあるが、ちゃんと見れば
2人とも似てると思うのだが…
よくよく、考えれば彼は織斑先生の弟と
知られてないで、あれ程の圧をかけられていたのか?
「織斑先生質問でーす!織斑君は織斑先生の弟さんなんですかー!」
「ああ、そうだが。それがなんだ?つまらないことを聞きたいのならそれを聞くつもりはないぞ。そんなことよりもさっさと自己紹介を再開しろ」
一応生徒からの質問は答えてるけど
有無も言わせない迫力がある。
けれど質問した女子は、それだけで満足したようだ。
どういう感性なのだろうか?…考えたが、分からない…
そんなことをぼうっと考えていたら
いよいよ、次は自分の番となるが
クラスの視線は俺一点に集まっているのは
自意識過剰じゃなくてもわかる。胃が痛い…
「それでは、ドノミコス君、お願いしますね!」
「はい、皆さん、初めまして、俺の名前はアーラン・ドノミコスと言う、趣味は電子工作、特技は無い、不得意な物は歌だ、面白味の無い男だろうが、よろしく頼む」
先ほどの織斑一夏君と同様、他になにかないかと
圧をかけられる前に頭を下げすぐに椅子へと座る…
しょうがないだろう!?俺は別世界の住人なんだぞ!
特技はMS操縦で、前職がザフト軍の軍人なのだ!?
下手な事は言えない…
山田先生は笑顔のままだが
織斑先生は溜息を吐いた、それと同時にチャイムが鳴る
「はぁ…全く、男共はろくな自己紹介もできんのか…まあいい。SHRはこれで終わりだ。他の者の自己紹介は1限目の時間を使うことにする。さて、諸君らには、この半月でISの基礎知識を覚えてもらうぞ。そのあとは実習だが、基礎動作も半月で体に覚えさせる。ここに入学した以上はISの基礎知識を知らないで済むことは昨日までと思え!」
コレは、想像より遥かに気を付けなければ
…まずはIS基礎学だってことだから
先に予習を始めておくとしよう。
「(…やはりと言うべきか、当然と言うべきか…MSの基礎や、MAの操縦方法等は、完全に当てにならなくなったな…コレはMAの整備方法はイージスの可変時に使えるだろうが、こうも中身が違うと…MS基礎学は捨てた方が良いな)」
1限目による、自己紹介とIS基礎知識理論授業が終わり
休み時間に入った後、再度ISとMSの違いについて
認識を改めるていく、ISには乗る気がないとしても
整備員としての道を歩こうと決めているからな。
知識をアップデートしていかなければ…
今後のことを頭の中で整理していると
男性の声に話しかけられる。
といってもこの教室の何とも言えん空気内で
俺という男に話しかけられる存在は、彼1人だと思うが…
「なぁ、ちょっといいか?」
「…君か、どうかしたか?」
「いやぁ、数少ない男同士仲良くできたらなと思って声かけたんだが…」
「そうか、だが、君は、この空気感で話し掛けに来たのは、ある意味、凄いな、織斑一夏君」
「お…おぉ…よろしくな。俺のことは、一夏って呼んでくれ。えーっと…」
「まぁ、あの緊張状態では、俺の名前を覚えれないのも仕方がないか…つい最近発見された、世界で二番目の男性操縦者である、アーラン・ドノミコスだ、アーランと呼んでくれ、宜しくするもしないも君の勝手だが、俺は出来る限り、仲良くしようと思っている。」
「そうかっ!それじゃあ、よろしくなアーラン!」
「あぁ、よろしく頼む、一夏」
話しかけてきたのは
このクラスで唯一の同性である織斑一夏だ。
屈託なく笑顔を浮かべて手を差し伸べてきた為
その手を取り、握り返した。
お互いに簡単に自己紹介を終えたら
一夏は緊張していたのか安堵する。
「いやー、本当にアーランが、この教室に居てくれてよかったぜ!男性操縦者が、俺だけだと思っていたからさ、正直やってらない!って思っててさ、本当にアーランが居てくれてよかったぜ!!」
「そうか、とはいえ、握手だけに留めておいてくれ、今は休み時間だから、廊下には俺達を見に来た観客で賑わっている。要らぬ誤解を招かれたら困るだろう?」
俺は、廊下の方を見ながら、肩を落とした
もはや、扉に張り付いているのでは?っと錯覚する程に
廊下は圧迫されているのだろう。
あそこだけ人口密度が凄そうだ
それから、色々と雑談をしていれば
1人の少女に声をかけられる。
「すまない、少しいいだろうか」
「んっ?…おぉ、箒!」
「確か、篠ノ之 箒だったな、どうかしたのか?」
「あぁ、アーラン・ドノミコス、悪いが、一夏を借りて行くぞ」
「あぁ、気にしなくていい、ほら、一夏、友達なのだ、何かと話す事があるんだろう?行ってこい」
「お、おう、それじゃあ、ドノミコス、またな!」
一夏の後ろに立っていたのは
篠ノ之 箒という少女だ、一夏を呼び捨てにしてたのだ
何らかの縁があるのだろう。俺が気にする事では無い
「(まぁ、今は勉学に励むとするか)」
俺は、参考書を読みながら、オーブの言語…
日本語を、英語に書き直していく。
此方の方が慣れ親しんだ文字だからな
それに、2つの文字を使えた方が便利だ
そうして、翻訳し書き直しをしていると
唐突に声を掛けられた為、答える事にした
「ねぇねぇ〜!ラミノは何してるの〜?」
横を向くと、ちんまい…失礼、小柄な少女が居た
いや、うん、その異様に長い袖は何だ?
更に、ラミノとは何なんだ…?
とはいえ、無言は駄目だろうと思い
とりあえず、返事を返そう
「確か君は、布仏 本音だっただろうか?まぁ見ての通り、参考書の内容を英語に翻訳し直してから、書き直しているだけさ」
「わ〜!私の覚えてくれたんだね〜、ありがとうね、ラミノ〜、参考書の内容を英語に翻訳し直すって、すごい事してるね〜」
「そうだろうか?大体の外国籍の子達ならば、やると思うぞ?何せ、慣れ親しんだ母国の言語だからな」
「そっか〜」
「ふむ…初対面の女性に聞くのはナンセンスだろうが、君は菓子類は好きだろうか?」
俺は彼女のポケットに入っている
棒の飴を見てから、彼女に問いかける
もし、好きならば、朝に軽食にと持ってきた後
一向に食べていない、菓子類があるのだ
「うん〜!私、お菓子好きだよぉ!」
「そうか、良かったらで良いのだが、コレを貰ってはくれないかな?食べようと思っていたが、食欲が湧かなくてね」
俺が取り出したのは、チョコクッキーである
ザフト軍のレーションにも良く入れられてあり
緊急用の保存食として重宝されていた代物だ
まぁ、メーカーが違うから、味も違うだろうがな
…懐かしいな、自然保護プラントに訓練に行き
そこに再現されていた森林を駆け回り
蛇やネズミ等を捕まえては、捌いてから
焼いて食べていた、サバイバル訓練を思い出す…
「わ〜い!こんなに良いの〜?ありがとう〜、ラミノ〜!」
「あぁ、喜んで貰って、俺も嬉しいよ。ほら、本音さん、君の御友人達が手を振っている、俺に気にせず、行ってくるといい。」
「うん!ありがとうね〜、またね〜!ラミノ〜!」
そうして、俺から菓子類を受け取った後
両手…両腕?に抱え、ポテポテと歩いて行った
彼女を見送った後に、また翻訳を再開した
「ーーーー・・・で、あるからしてISの基本的な運用は現段階では重力下が多く…ーーーー」
山田先生の言葉に耳を傾けながら5冊の中の一冊
IS運用基礎教科書のページをめくりながら
先程、翻訳した内容に修正点を加えていく
修正点というか、補足修正だが…
「(…とはいえ、今の俺と同年代の少女達が、兵器の勉強をしている事には正直に言えば、複雑な感情を持ってしまうものだな…)」
やはりと言うべきなのか
この世界でのISの立ち位置は兵器そのものと
見た方が良いな、まぁ女性しか乗れない時点で
欠陥はあるのだが、それを考えなければMS以上だな
流石にノートを取っている周りの少女達が
懸命に学んでいるのを邪魔する訳にもいかない為
チラリと見る…ISはこの世界の女性にとっては
当たり前なものと聞かされた時は
そこまで戦争が普通なのかと驚愕したのは記憶に新しいが
この世界で戦争が起きるというわけではないっと聞いて
更に驚愕したな…
とはいえ、率先して兵器と同等…または
それ以上のISの扱い方を習おうとしている姿を
実際に見て分かるが、軍のアカデミーと違い
ここは、本当に唯の学校という点だ…
彼女たちが過ちを犯し、取り返しがつかない状況に
ならない事を祈らずにはいられないな…
「織斑君、ドノミコス君。何かわからないところはありますか?」
「はい、此方は大丈夫です。」
「………(顔面蒼白)」
…一夏は大丈夫なのだろうか…?
気分が悪いのならば、無理をせずに早退し
明日に備えるのも、手段の一つだと思うが…
山田先生が俺たち2人が授業についてこられているかを
確認することも含めてかはわからないが、
俺は現状の範囲ならば、わかっていることを伝えると
【えっ、マジで…?】っと一夏がギョとした様子で
俺を見てくるが…そんな、顔で見られてもな…
それに、参考書は一夏も、もらったはずなのだ
ならば、予習しておけば、全てとは言わなくとも
読んでおけば専門用語はともかくとして、
内容は、少しだけでも、分かると思うが…
終始無言だった一夏は、何かしらの覚悟を決めたのか
山田先生の言葉に口を開いた。
「すぅ…ほとんど全部わかりませんっ!」
はっきりと堂々とした物言いには
一種の清々しさを感じるものだが
一夏の一言で教室内の空気は固まってしまった
とはいえ、一夏も俺もISの事は何も知らないのだ
無知である事は当然と言えるだろう。
それが、参考書を渡されただけで
この内容を覚えてないのは当然と言える
「…はぁっ…織斑、入学前に渡された参考書は読まなかったのか、うん?」
「はいっ!古い電話帳と間違え、ゴミ収集の日に捨てましたっ!」
一種の覚悟を決めた一夏の頭に
容赦なく本日で4度目の鉄槌が振り落とされる
あんなに落とされては、脳細胞が死滅するのでは?
いや、とはいえ、俺もMS操縦での戦闘では
何度もコックピット内で頭を打ち付けていたからな
それを考えれば、さしたる問題では無いのだろうか?
「後日、参考書を発行して持ってきてやる。それを受け取ってから、1週間で覚えろ。いいな?出来ないとは言わせんぞ?」
「は、はい……喜んでそうさせてもらいます」
自身の落ち度ということもあるからか
それとも織斑先生に睨まれたからか
参考書を捨ててしまった罰に
一夏は大袈裟に首を縦に振っている…
だが、あの量を1週間で覚えるのは相当大変だろうな
その光景を見て、苦笑いを浮かべていたが、そうだな
後で手伝ってやるか…
そう考えていると、緩んだ空気を引き締めるために
織斑先生は咳払いをしてから、そのまま話を続ける。
「いいか、諸君らは知っていると思うが、ISは機動性、攻撃力、制圧力と過去の主力兵器を遥かに凌ぐ。そういった【兵器】を深くも知らずに軽い気持ちで扱えば必ず事故は起こる。そういったことにならないように、事前に防ぐのが基礎知識と訓練だ。理解ができなかろうが、全力で脳を動かし覚えろ、そして、教訓として守れ。それが規則だ、それを守れない奴がISを扱えると思うな!」
「(事件…っか、確かにユニウスセブンが崩壊したのは、地球連合の核爆弾だった…とはいえ、確かに停められた行為だったな…アレは、相互理解が足りなかったでは済まされない、大きな事件…大戦の引き金となった…そんな事、もう起こさせない為には、どうするべきか…)」
「望む望まざるにかかわらず、人は集団の中で生きなくては、ならない。それすらも放棄するならば、まずは人であることを辞めるんだな」
「(人である事を辞める…か、確かに生体CPUという単語がある程に、人間という存在に、C.Eでの人権は無かったな…ザフトも似たような物か、人を人だと思わない、ナチュラルは人間では無い…か…本当、愚かな思考だ…)」
その後は、再開された授業を受けながら
俺は、戦争とはなんなのか、それを考え続けた
だが、そんな事で正解が出ているならば
既に、過去の人物が正解を出していただろう
チャイムが鳴っても、その思考は…止まらなかった
「…やべぇ、本当に授業の内容がわからねえよ。アーランは、やっぱりさっきの授業内容は理解してたりするのか…?」
「大体はな、とはいえ、細部まで分かる程、俺は学べていない、俺が知らないだけで、過ぎていった言葉も多数あるだろうさ、とはいえ、一夏は一週間以内に色々と覚えることができるんじゃないか?」
授業が終わったと同時に、一夏は頭を抱えて居た為
近付いてから、話し掛けると、絶望した顔で見てきた
そして、話すと、一週間以内にあの分厚い参考書の内容を
暗記しないといけない、現実を思い出した一夏は
悲鳴に近い声を上げて、再度、頭を抱えていた
知らない事を調べる勉強ならば、手伝えるが
暗記は自身の努力でしか、結果は出ないからな
頑張れとしか言えない為、苦笑していると
すると、また、知らぬ少女から話しかけられる。
「━━━━━━少し、宜しくて?」
声の方へと振り返れば腰に手を当てて
綺麗な金髪で蒼い瞳がつり上がっている少女
彼女はそんな目で一夏を見ていた…俺は無視か
すると、一夏は少しだけ嫌そうな表情を浮かべていた。
「あー、俺たちになんか用でもあるのか?」
「いえ、其方の方には用はありませんわ、それと、そのお返事に些か不満はありますが…まぁ、いいでしょう。ですが、この、わたくしに、話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるのではないかしら?」
彼女の言葉に更に一夏の表情が険しくなって行く
さて、これが織斑先生が言っていた
女尊男卑の社会の一つなのだろうな。
事前に、口頭では説明があったが
実際に目の当たりすると、この平和な世界でさえ
そういったことが、もう、あるのだと虚しく感じる。
「悪いな……俺、君の事知らないし…アーラン、知ってるか?」
「あぁ、彼女はセシリア・オルコット、イギリスの代表候補生…「?」…よく分かってなさそうだな、一夏、補足しよう。代表候補生っと言うのは、簡単に言えば、IS操縦に精通している人間の1人って事だ、詳しく補足すると、各国のIS操縦者の候補生として選出される者達で、国家やスポンサーたる企業から専用ISを与えられる可能性が極めて高く、その国の代表選抜に参加することができる者達の事だ。当然、ISはコアが限られているから、その席も少ないんだ、その狭き門を通りぬけた者達、それが、オルコットさんだ、それと彼女は、今年の入試首席で、学園に入学した生徒だ、コレは凄い事なんだぞ?」
俺は、よく分かってなさそうな
一夏に補足しながら、教えていくが
へ〜っと言うだけだ…俺は教えているんだよな…?
そう言うと、彼女は機嫌良さそうに高笑いしながら
話し始めた…
「そう!! 限られた、一握りのエリートですわ!!」
…なんと言うか…今まで会ったことが無い
高飛車系のお嬢様なのだろうか…
いや、まだ決まった訳では無いからな。
余り、変な先入観を持つのはよそう
とはいえ、代表候補生だ、代表では無い
赤服と緑服くらいには違うと言っていいだろう。
まぁ、それでも、狭き門を通ったのだ
凄い存在ではあるな。
そうしていると、オルコットさんは
機嫌良く、また、話し始めた…
出来ることならば、俺を解放して欲しい
「まぁ?わたくしは入試で唯一、教官を倒した!エリート中のエリートですからぁ?もし、ISのことでわからないことが、あれば泣いて頼まれたならば、教えて差し上げることを、考えなくはなくってよ?」
「んっ、入試ってアレか?IS動かして戦うってやつ?俺も勝てたぞ?ドノミコスは?」
「…俺は、見つかるのが遅かったからな、入国手続きとかでバタバタしていて、アリーナで軽く動かして終わったさ」
一夏の衝撃発言によりフリーズしていた
オルコットさんは再起動してから
呆然とした様子で一夏に聞いていた。
「きょ、教官を倒したのですか……?わたくしだけと聞いたのですが…!?」
「それって女子ではってオチじゃないのか?」
「…一夏、ノンデリカシー発言も、そこまで行けば、唯の暴言だぞ…それに、言わないのが花と言うやつだ…」
「えっ?そうか?でも、アレって倒したって、言っていいのかが、わかんないんだよなぁ…」
「ちょっ、それってどう言う―――」
一夏の言葉に誰よりも反応したオルコットさんが
一夏へと凄い剣幕で詰め寄る前に
ちょうど、タイミングよくチャイムが鳴る。
すると、オルコットさんは、何が言おうとするのを
辞めてから、セリフを吐き捨てて席に戻った
「〜っ!また来ますからね!逃げないでくださいましっ!」
「…一夏、最後の言葉は、どういう事なんだ?」
「いや、何か、知らないんだけど、相手が勝手に転んだんだよ、それで勢いが良かったから、壁に激突して終わった。」
「…それは、倒したとは…言わないんじゃ…あ、いや、自滅だから倒したとは言えるか…勝てば官軍だからな。まぁ、その事はオルコットさんには告げない方が良いだろう。俺は戻るとするよ」
「あ、あぁ、わかったよ、アーラン」
とりあえず、一夏には釘を刺してから
自身の席に戻っていく…
まぁ、戦場ならば勝てば官軍だからな。
自滅も立派な戦績だ
「このまま三限目の授業を開始する…っと言いたいところだが、先に決めなければならん事がある、クラス代表だ。さて、クラス代表者は再来週に行われる、クラス対抗戦や、これからの委員会などに出席する…まぁクラス委員長みたいなものだ。」
教壇に立つ織斑先生は
面倒だと思っているのかため息を吐き
山田先生の両手には箱があり
何に使うのかと不思議に思っていると
織斑先生の説明は続いていく。
「今の時点では、全員、大した差はないが、競争というものは、一種の向上心を生む。ああ、あとこれは注意点だが一度決まったクラス代表者は、一年間変更はできないからそのつもりで」
これは、かなり大事なことだな。
教室がざわついているところを見ると
慎重に考えるべきことだ。
対抗戦は間違いなくISに乗ることは
確定的で間違いないだろう…
まず誰かの上に立つことは
幾らコーディネーターの身体とはいえ
俺には、そんな才能は無い為、到底できる気はしないので
クラス代表者と言うのは遠慮したいな。
「今回は不正を防ぐこともあり投票形式にすることにした。今から渡す紙に代表者にしたい者の名前を紙に書いていけ……後々文句を言われるのも面倒なため、先に伝えておくが、対抗戦で優勝をした場合はクラス全体に褒美が出る。そのことをふまえてか。誰を代表者にするかを、しっかりと考え、記入するんだな。制限時間は5分だ、その間に書かなかったものの票は無効とさせてもらう」
箱の中身はその票で使う予定だろう紙であり
少しの相談もさせないためか一人一人
織斑先生と山田先生が手分けして
全員の席を回り、机の上に置いていく。
全員に紙が配られたことを
確認してから、織斑先生の合図で開始される。
「(さて、とは言ったものの、俺は論外として候補は2人だけだろう。)」
視線の先には、一夏とオルコットさんの2人
一夏は言わずもがな、織斑先生の弟として
潜在能力が高い可能性がある。
それを加味し、後々の成長も考えると
彼がなるのも、一興と言えるだろう。
それに対し、オルコットさんは既に実績を持つ
代表候補生として、入試首席入学生徒として
その事から、彼女に入れるのが得策だろう。
一夏は、まぁ、織斑先生が居るからな
彼女に教えを乞えば、自ずと成長するだろう。
さて、オルコットさんの名を書いから半分に折り
先程、板書した日本語のノートを見ていると
時間制限である3分が経過したため
織斑先生と山田先生が手分けして紙を箱の中に
回収をして教壇に立つと
織斑先生が、それを読み上げて行き
山田先生が黒板へと記入していくが
「…はぁ、お前たちは私が先ほど言った言葉は覚えていないのか?」
頭を抱えてため息を吐く織斑先生と
山田先生は、あははっと、苦笑いを浮かべ
俺は天を仰いで、虚無を見つめていた…
この結果は相当なのだろうな…
「はぁ…最も多く投票されていたのは織斑一夏、そしてその次にセシリア・オルコット、アーラン・ドノミコス…だけか…オルコットは確かに、わかる…だが、なぜ新米にもなっていない、男共、2人にこうも票が入っている?」
「だって男性操縦者がいるのは私たちのクラスだけじゃないですかー!」
「ですからそれを有効に活用しない手はないと思うんですっ!」
「…もう何も言わん…これでいいのならば最も票が多い、織斑一夏が、代表となるが構わないな?」
「いや、ちょっと待ってくれよ、千冬ねぇ!俺は代表なんかーーーー…!」
「なっとくが行きませんわ!」
そう言うと、机を強く叩き、オルコットさんは
立ち上がる…やめてくれ…俺の胃が痛くなる…
抗議しないでくれ…織斑で良いじゃないか
コレで巻き込まれてみろ…俺は引きこもるぞ?
「まだ、IS基礎を分かっていらっしゃる、彼ならば、千歩譲って分かりますわ!ですが!ISの基礎知識の基礎すらも知らない彼が代表者になるというのは納得がいきませんっ!それに、なんなのですかっ!わたくしの票が4票って!わたくしは、この結果には、絶対に納得できませんわっ!」
「我儘のつもりなら話を聞くつもりはない、これは公平なルールで決まった投票なのだ、それに、イギリス代表候補生であるオルコット、お前が率先してルールを破ってどうする」
「っ!ですがクラス代表者として彼が相応しいかと問われれば、わたくしとしては相応しくないと断言させていただきますっ!いくら彼が織斑先生の弟であろうと簡単には認められませんわっ!」
「なっ…!?俺は千冬ねぇと関係ねぇ!俺は、俺と言う個人だ!」
「ならば、この様な屈辱をこのセシリア・オルコットに1年間味わえとおっしゃるのですか!?」
「…ようするに俺が、お前の言うクラス代表者に相応しければいいんだろう?」
「ええ、そうですわっ!貴方が、この、わたくしを差し置いて、1組のクラス代表者に相応しいのかを、示してご覧なさいっ!今ここに宣言します!セシリア・オルコットは織斑一夏、貴方個人に決闘を申し込みますっ!織斑先生の弟君であろうと手加減をするつもりはありませんわ!!」
「ふんっ、その決闘受けて立つぜ。」
お互いに睨み合う中で
織斑先生が手を叩き2人の仲裁に入る。
っというか入らなければ、
このまま更にヒートアップして
お互いになにを口走るのかがわからない…
国際問題とか本当に不味いぞ?
「はぁ…何故こうも、新入生は血の気が多いんだ…わかった。ならお前たちの要望通り、その決闘は一週間後に行うことにする。いいな?その間に余計なことをすれば即座に、お前達ではなく、ドノミコスを代表とする、異論はないな?」
「わたくしは構いません」
「俺もそれでいい」
「…ドノミコス、お前はどうだ?」
「そのどうだに、様々な意味が込められていますが、俺が決闘に出ない事が条件ならば、その提案は受け入れます。」
「よし、決まりだな、では、授業を始める!」
一夏とオルコットさんは視線を外すことなく
織斑先生の言葉に頷いている。
その2人の姿を見て織斑先生は肩を竦める。
織斑先生の言葉で2人は椅子へと
座りそのまま授業へと入っていったーーーー
国際問題だけは、回避出来た。
今日の授業は終わり放課後に入った。
一夏は机の上に広げている参考書と教科書を
何度も往復して読んだりしているが
その成果はいいとは言いにくい為
俺が対面しながら、教えていく
「一夏、ココは、先程、教えた事を活かせ、そうすれば分かるだろう?」
「お!サンキュー、アーラン!いや〜本当に、アーランが居てくれて助かるぜ!」
「そう思うなら、最初から参考書を捨てるなどの暴挙に出るな…確認は大切なんだ、分かったか?」
「うっ…は、反省してます…」
「ふっ、ならば良いさ、それで?一夏、お前はオルコットさんに勝つつもりなのか?」
「ん、そうだな、男に二言はねぇ、ぜってぇ勝つぜ!」
「そうか…とはいえ、今のお前では9割負けるだろう、勝てても、それは運による奇跡だろうな。」
「そ、そこまでなのか…?」
「あぁ、代表候補生とは、それ程なのだ、だからこそ、お前に今、教えていると言っても過言では無いからな。」
俺はそう言って、一夏に取り出した
とある物を書いてある、ノートを渡す
「?コレは、なんだ?」
「お前が勝てるかどうか、それは分からないが、とりあえず、この先を見据えて考えた時に、何が必要なのかと言ったら、知識だろう、それには参考書の内容を、噛み砕きながら簡単に解説しながら書いてある。それを見ながら、勉学に励め」
「お、おう!本当にありがとうな、アーラン!」
「気にするな、もし気にするならば、励んで結果を示してみろ」
爽やかに笑顔で感謝を伝えてくる一夏に
俺も軽く笑いながら、話していく、すると
すっかり聞き慣れたが、少し焦った声で
山田先生が声をかけてくる。
「よかったぁ!2人ともまだ教室にいたんですね!」
「ん?山田先生、どうしたのですか?」
「お2人にはこれを渡さないといけなかったので。はいっ!これが一夏君とドミノコス君、別々ですが、お部屋の鍵です」
ニッコリと微笑みながら
俺と一夏に部屋の鍵を渡される。
そうか、IS学園は寮生活なんだったな。
俺にとっては、この寮が、この世界の自宅になるが…
そうして、考えていると、一夏が疑問を浮かべていた
「あれっ、でも俺って、この一週間は自宅から通うってことに、なってたと思うんですけど……」
「えっと、それについてなんですけど事情が事情なので部屋割りを一時的な処理として無理矢理変更したそうです。」
その辺りは色々とありましてっと
山田先生は申し訳なさそうに表情を暗くする。
俺たちが過去に前例のない男性操縦者として
この学園に入学したこともあり
学園側としてもかなり苦労しているんだろう
そこら辺は本当に申し訳ないと思う。
更に俺の場合は異なる世界の人間だし……。
…あれ?この鍵、何か見た事あるんだが…?
「一夏君は、同年代の女の子との同室で、ドノミコス君は申し訳ないのですが、外のプレハブ小屋になります…本当にごめんなさいね…?織斑君は、一ヶ月間は相部屋で我慢してください。お2人には、一ヶ月後ぐらいには個室も用意できますので」
「えっと、それはいいんですけど…俺、一度家に戻らないと荷物が…」
「荷物については私が先に手配しておいた。生活必需品だけになるがな。着替えと、携帯電話の充電器……あとは暇つぶし物として、ゲーム機をつめておいた。他に必要なものがあれば、後で私に言え、時間がある時に取りに行っておいてやる」
「いや、千冬姉は、結構、大雑把だし、探してる間にーーーーあ、いえ、ナンデモナイデス……」
何かを言おうとすれば、一夏は織斑先生に睨まれた
すると、片言になり目を伏せ、落ち込んでいる。
多分、あの様子だと織斑先生は大雑把なんだろう…
そんなことを考えている時に
ふと、視線を感じた為、見ると、織斑先生から
視線を向けられていた…
背筋に変で嫌な汗が出たが気にしない
「ドノミコス、お前は、一人で生活することになる。ある程度ならば、自由には生活はしていいが、お前の現状は忘れるなよ、わかったか?」
「はい、分かっております。織斑先生」
俺は、ザフト式の敬礼をしながら答える
「わかったのならばいい。お前も生活必需品は部屋に置いてある」
「はっ!ありがとうございます!」
「え?相部屋って、俺とアーラン、じゃないのか…?」
一夏はそう言った…織斑先生は頭を抑え
山田先生は苦笑し、俺は呆れた顔で見る*2
まさか、聞いていなかったとはな…
「織斑、貴様、聞いていなかったのか…」
「あ、あぁ…いや、寮に住むのが衝撃的でさ…」
「はぁ…まぁいい、私たちも、お前達を同室にする為に、どうにかしたかったが、上の決定だ。…一夏、お前にはなるべく、負担がかからない相手を選んだつもりだ。それについては謝罪する」
「い、いや、別にいいって…、それに、一ヶ月なら多分大丈夫だと思うからさ?」
「一夏君、ドノミコス君、夕食は6時から8時の間です!寮の一年生用食堂で取ってくださいね!それで、大浴場もあるんですけど、学年ごとに使える時間は違います。ですが…その、織斑君とドノミコス君は今のところ使えません。その、まだ織斑君とドノミコス君が大浴場を使えるように時間調整ができていなくて……当分シャワーになります。ごめんなさい!」
「この短時間でプレハブ小屋にシャワーを付けれたのですか?」
「あぁ、業者に頼んだ所、2日で出来た、凄まじい速さだったぞ」
「成程、まぁ、風呂にゆっくりと浸かる文化では無かったので、俺は、気にしませんよ。一夏はどうだ?」
「ん〜まぁ、シャワーがあるんだったら、困ることはないかな」
一夏は残念そうに肩を落とす。
それ程までに、大浴場に入りたかったのだろうか?
「私たちは、今から会議がある、用があるならば、その後に職員室へ来い」
伝えることは終わったようで
織斑先生と山田先生は教室を後にする。
その背中を見送ってから
一夏は、大変なことになりそうだと
話しかけてやると、そうだな〜って返ってきた
一夏…コイツ、何も考えていないな
とりあえず、部屋に行ってみるかと提案してから
自身の荷物を持ち、教室を後にする
一夏と寮の前で別れた後
俺はプレハブ小屋を目指し歩いて行くが…
「…まさか、寮の隣にポツンとあるとはな…まるで警備員みたいだな」
まぁ、愚痴を言ってもしょうがないと思い
鍵を開けて入るが、内装は整っているとはいえ
地面は土足で歩かなければならないが
元々、土足の環境で育ったからな
余り変わらないっと言った所だろう。
ベットは組立式だが、結構しっかりしている。
とはいえ、野戦病院の様な物だ
…まぁ、無重力下のコックピットで
座りながら、寝るよりはマシだな
そのまま、水場の確認や衣服類を確認すると
クローゼットの中に、俺のヘルメットがあった
「(…これも、この世界に流れ着いたんだな…)」
俺は、ヘルメットを持ったまま、靴を脱いでから
ベットに横になると、ヘルメットを抱えながら
眠りに着くことにした…戦友を思い出しながら…
『もう辞めろ!退くんだ!もう、戦局は変わらない!ここに居たら、お前まで死んでしまう!これ以上、何になると言うんだ!』
『それでも!それでも、私達ナチュラルは、貴方達コーディネーターを全員、抹殺しなければ、明日の朝日を拝めない!生きていけないのよォ!』
『くっ…!それでも、逃げるんだ!お前だけでも助かるのだぞ!?』
『もう、私には帰る場所はない…!お願い…!私の為にも死んで…!』
『…くっ…この、…馬鹿、野郎ォォォォォォォ!!!!』
この記憶は…何の記憶だ…?
通信回線…?だが、こんな物は知らないぞ…?
いや、違うな…これは、忘れていた記憶だろう…
俺が扱っているのは…シグー…ザフトレッドの時か…
という事は、オペレーション・スピットブレイクか
…あの時に、俺の同期で、仲間達はほぼ、死んだ…
全員が、光に飲まれて行った…
「…酷い…夢だ…っ…!あぁ、そうだ…あの時、分かり合えた筈だ…もっと、言葉を選んで…話せたら…!」
夢の影響で大量に汗をかいたのだろう…
その汗を吸っただろう服が気持ち悪い為
タオルと着替えと制服を持ち
フラフラしてしまう足取りでシャワー室へ向かう
シャワー室に入り蛇口をひねり冷水を頭から浴びる。
シャワーが冷たいが、今の落ち着かない思考を
1回消し去る為にもだが、汗による体のベタつきを
なくすのにちょうどいい為、コレは割り切る。
「…アスラン…ディアッカ…イザーク…クルーゼさん…彼等は生きているのか…?」
俺は、唯一生存を確認できていた
人物達を思い出しながら、身体に湯をかけ
身体を洗い始めた…その後、タオルを取り
シャワー室で体を拭き制服へと着替える。
…髪はまだ、少し拭き足りないが…
今だけは、どうでもいい…
食事を取るために、食堂に向かう…
俺の目は…死人と同じだった為、部屋にあった
度は入っていないサングラスをかけている
「(…食堂に居たんだな、一夏は)」
食堂にへと行けば一夏は先に居て
そんな彼の隣には篠ノ之さんもいた。
一夏と篠ノ之さんの前の席は空いていたが
そんな気分でも無いため
小さな器のスープのみを食堂の女性から受け取り
1人用の誰も座っていない席で食事をする…
「(…思えば、あの数年で、食事量は激減しているな…ハハッ…アカデミー1の大食漢が、今では、こんなものか…)」
さっさと"味のしない"スープを喉の
奥に流し込んでから、席を立つ
そのまま、食器を返してから
先程の席でボンヤリと外を眺める…
「(…味のある食事をしたのは…何時だったかな…ふっ…クルーゼさんに比べればマシか…彼は味処か、食事すら受け付けなくなったのだから…)」
そうして、数十分、その場で外を眺めていると
食堂に織斑先生の声が響き渡る。
「貴様ら!サッサっと朝食をすませろ!遅刻した者は、問答無用で校庭を5周走らせる!そして、アーラン・ドノミコスはいるかっ!いるのならば、返事をしろっ!」
「はいっ!」
織斑先生から名前を呼ばれた為
サングラスを取ってから、立ち上がると
食堂にいる人たち、全員から視線を向けられる。
…とりあえず、織斑先生に呼び出されたということは
何かしら理由があるのだろうが
…俺は何かしたのだろうか?
「よし、ドノミコス、今からお前は私と職員室へと来い、拒否権はなしだ」
「わかりました」
俺は、サングラスを隠し
織斑先生の元へ行く、姿を確認した織斑先生は
ついてこいと短く会話をすませて職員室へと向かう。
職員室へと向かう途中で、話はない
とはいえ、先程と同じ、この静かな空気は
嫌いではなく、今の俺にとっては、むしろ好きな方だ。
職員室へと辿り着き、織斑先生が事前に
用意していたであろう椅子へと座り向かい合う。
「そう身構えなくてもいい。コーヒーは飲めるか?」
「はい、ミルクもシュガーもシロップも要りません。」
「そうか…ほれ」
「すみません、いただきます。それで、どうして、俺を職員室に呼んだんですか?」
「お前に関することではあるからな、念のために職員室へと来ただけだ……まぁ、個人面談だと思え」
そうして、俺は受け取った珈琲を飲む
味は勿論、ブラックだが、感じない
味は…無い、水を飲んでいるのと変わらないな
「さて、時間もないため本題へと入るが、ドノミコス、昨日の夜はどうしていた?夜の食堂の時間の時、お前の姿が見えなかったが」
「小屋に着いた後、荷物整理をし終わったと同時に、眠気に晒され、そのまま仮眠を取ろうと、横になった後、気が付いたら、今日の朝になっていました。」
「つまり、ただ寝過ごしただけだということか。…ドノミコス、お前は人よりも痩せている、キチンと3食取るんだ、元は軍人であろうと人なのだ、食べねば死んでしまうぞ」
「…はい、分かりました。」
…言えないよな、味がしないなんて事は
病室の時も、あまり食べなかった事を
不審に思われ、質問されたが、少食だと通したしな…
とはいえ、食事をしなければ、身体は戻らないな…
「…ドノミコス、お前は私達に何かを隠しているのは分かる…それを言えない事も、何となくだが、勘づいている…だが、もう少し、私達にも心を開いてくれないか…?私達、大人は、それ程までに信用出来ないか…?」
「…っ!いえ…これは、俺が乗り越えなければならない"過去"なんです…俺が知らなければならない…俺以外には知られてはならない、負の遺産なんです…この世界には劇物過ぎる、だから、大丈夫です。」
「…そうか…話せる時が来たならば、私か山田先生の元へと来い。……お前の根の深い因縁の解決にはならないだろうが、誰にも話をしないよりかはマシだろう」
「…はい、ありがとう、ございます。」
期待して待っておくと織斑先生は言葉にするが
俺の様子を見て相談をすることがないのは
なんとなく察しがついていると思われる…
見た現実は、安易に吐き出せるものでは無いのだから…
「私からの話は以上だ。事前に山田先生には、お前に、朝、話すことがあると伝えておいた、だから、遅刻扱いにはならないはずだ」
「分かりました。」
「…無理はするなよ、ドノミコス」
「はい、そろそろ教室に戻ります。珈琲、美味しかったです。」
「ああ、わかった。そして最後に念を押しておくが…何でもいい、困ったら、私の元へ相談しにこい、話ぐらいならば、いくらでも聞いてやる」
「…はい、その時は、よろしく、お願いします」
最後に、そう返してから、笑う…
俺は…笑えた…だろうか?
歩きながら、ガラスを見ると
また目が、戻っていた…
はぁ…サングラスをしておこう
教室に辿り着いた為、その前にある鏡で
サングラスを外した目を見ておく…
ちゃんと戻っているな…よし
扉を開けると、全員の視線が向くが
俺は、山田先生の元まで歩いていく
遅れてくる理由を知っている為
山田先生は穏やかに微笑みながら話す。
「ドミノコス君、事前に織斑先生から聞いてるので遅刻にはなってないから安心してくださいね!それでは、みなさん授業再開しますよー。ドミノコス君も、何かわからなかったら遠慮なく先生に言ってくださいね!」
「はい、わかりました。その時はよろしくお願いします。山田先生」
俺は、頭を下げてから、さっさと席に着くが…
何だろうか、物凄く、クラス全体が静かだ…
とりあえず、授業に集中できるからありがたいが
この空気感は…なんと言うか…死んでいる
先程までの、俺の目の方が生きてたぞ
あれから、特に変わりなく…とは言えず
俺が、余り食事を取っていない事に対し
織斑先生や、山田先生、果てには一夏にまで
怒られてしまったな…とはいえ、味が無いと
栄養補給の為だけにする行為と思ってしまう
とは言え、とうとう来てしまったな
「…とうとう、来ちゃったな…」
「ああ、そうだな。だが、この日までに一夏、お前は一週間できる限りのことをしたはずだ。あとは自信を持ってやるだけだろう」
一夏は緊張して表情が硬っていて
その緊張をほぐすようにいつも通り
落ち着いた声で箒さんは話している。
実際彼女の言う通りこの一週間の間は
一夏が、できることをずっと頑張ってきたんだ。
あとは一夏自身が自信を持って行うだけだな
「箒さんの言う通りだ、一夏、箒さんには剣道で、俺からは勉学を教え込んだ、付け焼き刃だがISの操作感は教えた、後はお前のアドリブ力と、潜在能力を使い、勝利の道筋を見失わず、掴み取れ」
俺は、右腕を突き出し、開いた手を握る
必ず、勝てという意思表示だ
「箒…アーラン…あぁ、そうだな!今日まで、2人は俺のために手伝ってくれたもんなっ!よしっ、どんだけやれるかは、わからねえけど、やれる分はやってやるさ!」
緊張をほぐすように自身の両頬をたたき
一夏は気持ちを入れ替える。
少し意気込みすぎているが
緊張が和らいだのなら大丈夫なのか…?
まぁ、この日になるまで一夏は
できる範囲の努力をしたのは確かだ。
痛手なのはISに乗ることができなかったことだ
予約制だったようだから、しょうがないと言える
「さて、一夏、箒さん、俺は一足先に観客室に行くとするよ。」
「お、分かったぜ!アーラン、本当にありがとうな!」
「うむ、了解した」
ではな、と伝えてから歩いていく
目指す場所は、人の少ない観客席
そうして歩いていると、管制室から連絡が来た
「此方、アーラン・ドミノコス、通信状態良好」
[ドノミコス、此方、管制室だ、ドノミコス、お前は近いうちに”専用機”持ちになるだろう。一夏は理由は巫山戯ているが、こうやってISで2度目の戦闘となるが、お前は、そうじゃない。ISの戦闘は0であり、搭乗は一度しか経験がないからな、そう考えれば少しばかり、フェアではないと思ってな、管制室ならば、映像を詳しく見れる為、見て学ばせようと思った訳だが……お前からすれば少し──いや、かなりお節介かも知れないが、どうだ?]
それを聞いた時、脳裏に
戦友が堕ちていく光景が浮かぶが
それを振り払ってから、応える
「(そうだ…これは、戦争じゃない…命のやり取りではない…これはスポーツなのだから…)…その提案を受け入れます。今から向かいます。」
[そうか…無理はするな]
「えぇ、無理はしません…」
通信を切った俺は、重い足取りだが
一歩一歩、管制室に向かって歩いていく…
そうして、着いた管制室の扉を開け
中に入ってから、ザフト式の敬礼をする
「アーラン・ドノミコス、ただいま到着しました。」
「来たか、そこに立って見てみろ、試合は今から始まるぞ」
「了解しました。」
俺は、一夏の勇姿を見る為、モニターの元へと向かう。
モニター画面には一夏とオルコットさんが
お互いに顔を合わせて佇んでいる状態だ。
オルコットさんは、一夏へと砲身を向けてから
引き金を引きレーザーが発射されるが
着弾したのは一夏ではなく
そのすぐ横を通り越しアリーナの壁だ。
だが、アレは外れたんじゃない、ワザと外したな
…一夏に降参するようにだろう。
だが、一夏にとっては、それは逆効果だな
闘争本能に火がついた、一夏は刀剣の形をした
接近武装を展開してオルコットに向ける…
一夏の選んだ答えはその姿でわかる。
だが、オルコットさんがISから射出した
とある兵器に、俺は寒気を感じた…
「…ッ!…アレは…ドラグーン…?…いや、違う、ミラージュコロイドは見えない、それに、ビームではなく、レーザーか…制御している間は動けていないな、アレでは機動兵器として欠点でしか無い…」
止まってドラグーンを撃つなど
殺してくださいと言ってる様な物だぞ!?
いや…空間把握能力が足りていないのか…?
確かに、ドラグーンを巧みに扱えた存在は
連合所属のエンデュミオンの鷹と
プロヴィデンスを扱えた、クルーゼさんだけだ…
とは言え、アスランが元はプロヴィデンスの
パイロット候補だったからな、使えるのだろう。
…クルーゼさんから教えられた時は近接機体だったのが
何故、無理やり増設した様なドラグーンなのだろうか…
そこは、ブースターを強化してやるとかあっただろうに
そう要らない、考察をしていると
一夏がミサイルに直撃した…大丈夫なのか?
「ふっ…機体に救われたな、バカ者めが」
「え?」
「成程…
攻撃をせずに、向かい合っているな
これは、話しているのか?
…この光景を見れば、スポーツだと思うな
すると、一夏は刀の刀身から
ビームのようなものを出してから
オルコットさんに切りかかるが…
【白式、シールドエネルギーempty。勝者、セシリア・オルコット】
…負けてる…あ、語彙力死んだ…
と、とりあえず、言える事は…
「あの近接ビーム兵器…まさか、シールドエネルギーを多量に消費する武装か…?」
「そうだ、というより、
「成程…近接戦闘特化のISという事か…実力が身に付いたら、手が付けられないな。」
「…とは言え、自身のシールドエネルギーを攻撃に変換する、当たれば勝てるが、当たらなければ、ただの自滅だ、所詮は諸刃の剣だな。」
「俺が扱っていた、リジェネレイトよりはマシに感じるな…」
「そこまでなのか?」
「…リジェネレイトガンダムは、このイージスガンダムの発展型ですが、普通ならば何人かでの操縦が求められるMA形態を単独で扱いながら、大型の武装を振り回すMSとしても戦わなければならない…つまり、どちらにも適性が無ければ使えず、脳の処理能力が低ければマトモに扱えない機体って言った所でしょう。」
「…聞いている限りでは、なんと言うか、ゲテモノとしか言えんな」
「その通りですよ。ゲテモノもゲテモノ…俺以外にも扱えたコーディネーターは居ましたが、さて…あの馬鹿野郎はどうしているんでしょうね」
俺は軽く、リジェネレイトガンダムを話してから
あの馬鹿野郎を思い出す…快楽狂者だったからな〜
まぁ、俺よりは長生きするだろう多分…
「さて、機体の能力も知らずに扱った、馬鹿者の所に行くとするか」
「健闘はしたんです。労ってやりましょう。」
「負けは負けだがな」
織斑先生は、結構な辛口評価だった…
俺は、それを軽く苦笑しながら
織斑先生の右後ろ側3歩後を着いて行く
山田先生は俺の一歩前を、織斑先生の
左後ろ側を歩いている。
こう見ると、思い出すな…
クルーゼさんの後ろを追いかけ続けた
俺という存在を…
その後は、一夏に同じ説明をし
労ってやってから、プレハブ小屋で
イージスのOSをザフトOSに書き換えていた
その夜、1年1組が食堂を貸し切り
1組代表決定パーティーを開いていた為
俺も出席する事にしたが
目がまた死んだ為、サングラスをしてから
さっさと、1人用の席に座っておく
そして、一夏を観察していると
「ーーー…という事で!1組ので代表は織斑 一夏君に決定しました!」
「へ?何で俺がクラス代表なんだよ?」
状況を呑み込めていない
一夏は頭に疑問符が氾濫しているようだった。
外側から見たら、面白いな
「ちょ、ちょっと待ってくれよ!何で、勝った、セシリアじゃないんだ!?」
周りの女子たちは一夏をヨイショしているが
とうの一夏本人は、オルコットが
まさかの代表ではないことに焦っていた。
「それは、わたくしが辞退したからですわ!勝負はわたくしが勝ちましたが、一夏さんは、代表候補生である、この、わたくしを追い詰めたのです、コレからの成長を考えた場合、わたくしより一夏さんの方が代表に向いていると思い、一夏さんに譲りましたの!」
「いや〜!セシリア分かってるね〜!」
「だよね〜!せっかく男子が居るんだから、持ち上げないとね〜!」
その光景を遠目に見ながら
俺は1人用の席で完全栄養補給食を摂取する
食べているという事実があれば良いからな
何でも良いだろう…
そうしている内にカメラを持った
二年のネクタイをした女子が一夏に話しかけた
「はいはーい!新聞部の黛 薫子で~す。取材に来ました!」
なんと言うか有無を言わさず取材し
捏造記事を錬成するパパラッチ気質のある
そんな少女だな…いや、そんな気配がするだけだぞ?
「それじゃあ、代表になった織斑君から一言!」
あ、現実になるかもしれない
…極限まで気配を殺しながら
会話を聞いておくか…
「え、あ、その、が、頑張ります?」
何とも、内容が無い事に対して
黛先輩は、捏造するねーと言っていた
それでいいのか、新聞部
というか、正々堂々、公で捏造宣言
オルコットにも話を振られたが
話が長い事から適当に書いておくそうだ…
大丈夫か、この学園
その後は、写真撮影をしていたが
俺は端の席で、更に気配を殺していたからな
全くといっていいほど、気付かれなかった
案外、俺には隠密の才能があったのかもな
次の日の朝の一年一組は
とある話題で賑わいを見せていた。
「もうすぐクラス代表戦だね」
「そう言えば、二組のクラス代表変わったらしいよ」
「ああ、中国からの転校生に変わったのよね」
「…転校生?今の時期に?」
一夏はこんな学園にも転校があるのだと
意外と普通な面もあるなあと思った。
しかし、こんな中途半端な時期に来る
転校生とは誰なのだろう?
「うん、中国から来た子だって」
「私の存在を危ぶんでの、転入かしら?」
「へぇ〜、どんな奴なんだろ?強いのかな?」
「今の所、専用機を持ってるのは一組と四組だけだから余裕だよ〜!」
その言葉を、とある少女が遮った。
「その情報古いよ!」
一組に馴染みのない声が響く。
「二組も専用機持ちになったから、そう簡単に優勝出来ないから!!」
「鈴?お前……鈴なのか?」
「そうよ!中国代表候補生、
ほぉ…あれが、新入生か…
アカデミーでは、そんな奴は居なかったから
新鮮だな…とは言え、一夏とは親しそうだし
彼女は、一夏との幼馴染なのだろうか?
「鈴…何カッコつけてるんだ?まったく似合わないぞ」
「はぁ!?なんてこと言うのよ、アンタは!!」
「――…おい」
「なにすんのっ!!アタシは今からあの馬鹿を…」
「ほう?あの馬鹿を…なんだ?言ってみろ、凰」
「ち、千冬さん……え、えっと、そのぉ……」
「はぁ、織斑先生と呼べ。SHRの時間だ、さっさと自分の教室に戻れ。いいな?」
「は、はい!わかりました!し、失礼しました!」
何だか、また新しい風が吹く気がする
…IS訓練には付き合えないが
勉強程度なら、まだ教えてやれるな。
新しい風が吹くと思ったが
特にそんなことは無く
プレハブ小屋で、一夏に勉強を教えては
自身の勉強をしてから、寝る生活を続けるだけ
…食事を抜いている事を怒られるのは変わらないが
とは言え、余り、食べたくないのは変わらない…
味も無い、何だか食感のする物だ…うん不味い
「はぁ…ドノミコス、お前はまた食事をしなかったな?」
「食欲が湧かなかったので…」
「…とりあえず、何度目の注意かは分からんが、食事は取れ、でなければ倒れてしまうぞ?」
「分かっています。」
今、俺が居る場所は管制室である。
未だにISを展開した回数が合計1回を加味し
また、観察する為に呼ばれたのだ…
「ドノミコス、お前は凰と織斑、どちらが勝つと思っている?」
「6割は凰鈴音でしょう。代表候補生は、ただの飾りではありませんから。とは言え、雪片弐型の零落白夜が当たれば勝てるっと言う特性を上手く扱った場合、一夏は勝てるでしょうが…まぁ、9割は凰でしょう。」
「そうか…オルコット、篠ノ之、お前達はどう思う?」
「勿論!一夏さんが勝つと言いたいですが…凰さんもわたくしと同じ、代表候補生ですわ、正直、厳しいと思われますわね。」
「私は…それでも、一夏が勝つと信じています…!」
「そうか」
前回は同じ代表候補生のオルコットさんに
一夏は勝ったが、ブルー・ティアーズは
完全に射撃特化の機体で
かつ格闘戦を不得手とした事
一夏の戦闘中での伸び代が
オルコットさんには予想外だった事
零落白夜というIS戦における
ジョーカーがあった事などが挙げられる。
対して、甲龍は近接戦用…白式と同じだ
雄々しい青龍刀に当たれば
一瞬でシールドエネルギーを狩られてしまう
それに、一夏は未だに戦闘中の柔軟性が無い
だからこそ、今回は厳しいものになる
「…足掻いて見せろ、一夏、お前は戦士になるんだろう?」
俺は、アリーナを移すモニターを見ながら
ポツリと呟いた…俺が諦めた先を夢見る
少年が、何処まで飛ぶのかを期待しながら
試合開始と同時に何度か交錯した後
凰は上空から青龍刀で斬りかかる。
一夏は、雪片弐型でつば競り合う。
一夏は零落白夜という切り札があれど
凰の防御戦術に攻めあぐねているな
何度も斬り合っているが、手数はあちらが多く
経験の差もあるし、エネルギー効率はあちらが上だ
凰は双剣を連結させてから
手慣れたように自由自在に振り回してから切り掛る
一夏は仕切り直しに距離を取ろうとするが
勿論それを彼女が許す筈もなく
推力差を技量でカバーし、追撃が行われる
消耗戦に持ち込まれると
圧倒的に不利なのは白式を扱う一夏の方だ
「マズイな…」
そして、砲台から収束された
全力の重い一撃が放たれるが
その砲弾は見えない…なんだアレ
[グワァァァァァッ!?]
一夏は、まともに喰らってしまい
体勢を大きく崩した。
もう一撃、何らかの攻撃が直撃して
今度こそ墜落して地面へと叩きつけられる。
既に白式にはまともにエネルギーなんて
ほぼ、残っていないだろう。
なぶるように甲龍の衝撃砲を
紙一重で回避し続けるが、白式の動きは鈍くなる
じわじわとエネルギー残量は追い詰められてゆく。
「…(不可視の攻撃…ミラージュコロイドステルスみたいだな…)アレは、空気を圧縮し打ち出しているのだろうか?」
砲身も砲弾も目に見えないということは
一夏が頼りにできるのはISによる
ハイパーセンサーと空間の歪みによって感じる
自身の感覚だけだな、戦況はあまりにも
絶望的で、この試合を見ている人は
多分、誰が勝つのか予測は付いている。
「(とは言え…一夏は諦める事が無いだろうな。彼奴は心が強い、だから、勝てる筈だ…強さとは、生きる意思なのだから)」
一夏は、きっとどんなことでも諦めることなく
何度でも、立ち上がる強さを持っている。
一夏の心がまだ諦めていないのは目を見れば分かる
すると、何か思いついた一夏は武器を構えて
迷うことなくただ一直線に突っ込む。
凰さんも何かがあると武器を構え、迎撃体勢に移行する
そして、2人がぶつかる
その瞬間に大きな衝撃がアリーナ全体に走った
「な、何が起きましたの!?」
「いったい、何が!?」
突然襲ってきた衝撃に、管制室全体に動揺が現れる。
それは織斑先生の近くに居た2人も
同様で突然のことに混乱していた。
だが、俺は見えた、一体、何が降りてきたのか
だが、それではない…その上を見た時に
その姿を一瞬だけこの目で捉えることができた。
「いや…そんな訳が無い…あの機体は、俺が破壊し尽くした筈だ…そんな訳が…ッ…!」
俺は、その存在…その、"機体"を
見た瞬間に、管制室から飛び出てしまった
後ろから、呼び掛けられた声すら聞こえず…
外に飛び出した俺は、走り続ける
第3アリーナを目指して、走り続けると
突然アラートが鳴った為
その場から回避すると、上空からエネルギー…
ビームの光が、先程まで俺が居た場所消し去った
「…やはりか…やはり、お前らか…ッ!お前らがァ!」
俺は、すぐ様、イージスを展開する
これが初戦闘だろうが、知った事ではない…!
「貴様ら、連合を許しては返さん!」
俺を見下す、謎の機体…
GAT-01A1 105ダガーが居たのだ
奴は…民間人を楽しんで殺していた!
それを許してはおけない…!
数は6…!ゲイツで勝てたんだ!
イージスなら、必ず、勝てる…勝ってみせる!
「アーラン・ドノミコス、イージス、出る!」
まずは目の前に降りてきた
ビームサーベルを持って突っ込んできた
105ダガーを、横に回避しながら
脚のビームサーベルで胴体ごと切り飛ばす
人を殺した事に酷い吐き気を覚えるが
今は…それよりも…っ!
「ギザマラ、…ヲ、ユルッ…ズワゲガ…ッナイ!」
無我夢中でイージスを動かし
空中を飛び続けている、エールダガーに
右手に持つ、高エネルギービームライフルを撃ち
撃墜する
「2機めぇぇぇぇぇ!…ッ!?ランチャーァァァァ!!!!!」
隣から警告が出た為
回避をすると、地上にランチャーダガーが
此方に向けて、アグニを向けてきた為
射出される前に、左手の盾をダガーの顔に向けて
投げ付けると、そのまま刺さり、破壊した
「お前達を…お前達をぉぉ!許す事は出来ない!」
またもや、警告が出た為、振り向くと
ソードダガーがビームブーメランを投げ付けてきたが
ソレを脚で、蹴り上げ、吹き飛ばしてから突撃すると
奴もシュベルトゲベールを持ち、迎撃に来たが
大振りの一撃を回避し、腹に蹴りを入れると
体制を崩した為、腹に向けてビームライフルを撃ち込む
「はぁ…はぁ…はぁ…ッ!まだ…まだ居るかぁ!」
地上にランチャーダガーと共に刺さっている
対ビームシールドを抜き取ってから
可変し、MA形態に移行した瞬間にスラスターを
全力で吹かし、巡航形態のまま
アリーナ内部に侵入してから、スキュラを放つと
謎のISの右腕に軽く当たり武装を破壊した
[な!?だ、誰だ!]
[―――そこの身元不詳のISっ!アンタは敵と味方どっちっ!?というか!誰が乗ってんのよ!サッサっと答えなさいっ!!]
初めはプライベートチャンネルで送られてきた
通信に答えるか悩んだが、誤射されたくない為
俺である事を伝える事にしたが…
今は、目の前に敵が居る為、長く話してられん!
「一夏、俺だ、アーランだ」
[な!?アーラン!?お前、専用機なんて持っているのかよ!というか、なんでこんな危険な場所に居るんだよ!]
[アーランって…2人目の男性操縦者!?それじゃあ、実戦経験0じゃない!そんな奴に任せられる訳ないわ!心配してIS乗って来ても、アンタは、ド素人なのよ!?アンタは早く離脱しなさい!!死にたくないんならサッサっと――]
「大丈夫だ、足手まといにはならない…!お前達も敵に集中しろ!」
[あぁもう!勝手に怪我しても、私は知らないわよ!]
それにしても不可解なのは、あの謎のISだ。
プライベート・チャンネルで会話をしている時でも
警戒はしていたのに攻撃してくる気配が全くない…
それにビームライフルで武装を狙撃した後
反撃してこなかったことも気になるな…
先程のダガーは人間的な動きがあったが
こっちのISは…
「…やけに機械的過ぎる…それに、武装を破壊されたんだ、交換するか、もしくは誘爆を防ぐ為、切り離す筈…何故しない?」
[ちょ!あんたもそれ言う訳!?]
[アーランも、やっぱり、そう思ったのか?]
「あぁ、人が乗っているにしては、反応が薄過ぎる…ISが動いている事から違うと思うが…」
[だ〜な〜ら〜!一夏にもさっき説明したけどISが無人機なのはあり得ないのよ?ISは人が乗らないと絶対に動かないわ!]
確かに、ISは人間が操作しなければ
動かない存在だ…だが、俺の感は
ISから敵意や殺意を感じない以上は
人が乗っていないと伝えてきている…
「…俺が、確認を取る、お前達は迎撃準備をしてくれ」
[え?どうやるつもりだよ?]
「…スゥーーー…此方はIS学園所属、ISパイロットのアーラン・ドノミコス、こちらは、貴殿と戦闘をする意思はありません、武器を下ろし、戦闘行為を放棄してください!…繰り返します。こちらIS学園所属ーーーーーー…」
プライベート・チャンネルから
オープン・チャンネルに切り替え
応答を呼び掛けるが、反応は無いが
破損していない方の片手で先ほどのように
収束したレーザーを発射してくる。
それをジャンプして回避するが…これで決まった
「貴殿を学園を襲撃した、テロリストと判断、コレより謎のISを敵性存在と断定し、撃墜する!」
[何してんだよ、アーラン!自分を撃たせて判断するなんて、危な過ぎる!]
[本当に馬鹿なのっ!?アレが無人機かどうかの確認をするなら、それ以外にも方法があるでしょうがっ!!]
「これが1番早く、1番分かりやすい、そして間違いない、アレには操縦者は居ない、居るならば害意を感じれるハズだ、それが無かった」
とは言え、先程の戦闘を行った時点で
この世界に来てから一度も充電をしていない中
使用したスキュラは不味かったな…電力が無い
そして、イージスのスキュラは当てずらい…
俺では決定打に欠けてしまうな…
[なぁ、鈴。相手が無人機ならあの作戦でやっぱりいいんじゃないか…?]
[一夏の雪片弐型でアレをぶった斬るって案?そりゃ、当たれば確実なのはわかるけど…アンタ、失敗したら本当に危ないわよ?]
「そんな危険な事をする理由は無い、俺が斬り飛ばせば…」
[このメンツの中じゃ、アンタが一番、経験不足でしょうがっ!!]
「…スゥーーー…そうだな」
戦闘ですっかりトップシークレットだって事を
完全に忘れていた…また、戦場の空気を味わったからか…
あぁ、もう、本当に俺は無鉄砲がすぎる…
だが、ただ指を加えて2人が戦闘しているのを
見ている事なんて、出来るわけがない!
「…その作戦を完璧に成功させる為に、俺が隙を作る、それくらいはやってみせるさ」
[だ〜か〜ら〜!アンタが1番弱いの理解してる!?そんな奴に前線を任せてられないわよ!]
[待て、鈴…やれるんだな、アーラン]
「やれない事は言わない…俺を信じろとは言わない、だが、今は学園の危機だ、やるしかないだろ?」
[…分かった、アーラン、俺は信じるよ]
[…そこまで言うなら、必ず成功させなさいよね!]
「あぁ…合図は、俺が奴の武装を破壊、もしくは腕を斬り飛ばした時だ、2人は、その作戦を実行してくれ…では、作戦開始!」
目の前の無人機に意識を集中させるため
プライベート・チャンネルすら閉じ
対ビームシールドを拡張領域内に戻し
スラスターを使い一直線に突っ込び
四肢のビームサーベルを展開する
無人機はそれに反応して
容赦なくレーザーを射ってくるが
全てをサーベルで併せて、斬り飛ばしていく
そのまま、どんどん接近し肉薄してから
とっておきの武装を腰から取り出すが
その時点でイージスはディアクティブモードになり
無人機はエネルギーの充電が溜まったのか
そのエネルギーの塊を射とうとしているが
もう遅い!
「その、瞬間を待っていたんだ!」
取り出したのは、ES01ビームサーベル
倒してきたダガーの腕から拝借した武装を
腕の発射口に突き刺してから横に飛び退くと
「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
一夏が咆哮をしながら今までとは違い
圧倒的な速度で肉薄してから、無人機に
『雪片弐型』を使用したビーム刃で
右斜めから一刀両断する。
機械特有の火花を散らしながら
襲撃者はモノアイを点滅させ崩れていく。
おとずれた静寂の中、膝立ちから直り
そのまま俺はゆっくりと、一夏達に近付く
「一夏!アーラン!良くやったわね!アンタ達!」
凰さんも無人機を撃墜したのを
確認して駆け寄ってくる。
誰も怪我なく、無事に終わったことにより
一息着こうとした時に嫌な予感がした後
脳裏に、サイクロプスの…あの景色が浮かんだ
対ビームシールドを出し、無人機を見ると
エネルギーを充填し終わった砲身が見えた
その砲身を向けている相手は
武装を破壊した俺でもなく、倒した一夏でもない
そうなれば、1人しか居ない…!
「ーーーーーーあっ…」
「りぃぃぃぃぃぃんッッッッ!!!!!」
「さぁぁぁぁせるかぁぁぁ!!!!!」
「(もう喪って溜まるか!もう、喪わない!俺はぁ…!俺はァ!!!)」
全力でフェイズシフトダウンをした
イージスを動かし、凰の前に立つと
対ビームシールド前に突き出してから
レーザーを遮るが、IS学園の遮断シールドを
突破したレーザーなのだ、盾で受けたとしても
受け止められていない箇所は焼かれ
フェイズシフトダウンを起こしてしまった
イージスのシールドエネルギーはすぐ様
無くなり、機体に警告音が鳴り響いている
数秒もすると、レーザーは止まった為
後ろを向くと状況に困惑したまま
その場に、立ち尽くしている
少女の無事を確認できた安堵からか
意識が堕ちていき、その場に崩れ落ちた
「(あぁ…だが…今度こそ…誰かを護れた…後は任せたぞ…)」
止めれ
それが、全てを狂わせた…
呪縛から解き放つ事すら出来なかった…
友を…助ける事すら…出来なかった…
『お前が、全てを殺した』
「やぁめろぉぉぉぉぉぉおおおおッッッッ!?…はぁ…はぁ…はぁっ…ゆ、め…か」
目を覚まして視界に入ったのは見慣れた天井だった。
何も映さない、この目でその天井を見上げた…
さっきのは夢であると言う事実に安堵してしまった
自分を、とてつもなく…殺したくなった…
同時に、自身がまた生き残ってしまった
この現実に虚無感に脳が支配される
「なん…で…なん、で…なんでなんでなんでなんで!なんで俺が生きているんだよ…ッ!なんで…俺が…また…生きているんだ…」
自身の頭を抑え続ける、脳が揺れる
涙は…とうの昔…戦場を生き続けた
その時に、枯れてしまった…涙は…出ない
「あぁ…また…生き残ってしまったな…まだ…行けないって言うのか…ッ!」
涙が出てくれたなら…どれだけ楽なのか…
枯れてしまった井戸に…何を求める…?
もう…良いじゃないか…
俺を…俺を…
「…楽に…してくれ…」
誰も居ない、ベットひとつしか無い
個人病棟に…死人の声は霧散した…
すると、病室の扉が空いた
「…ドノミコス…お前は…」
「…織斑、先生…」
織斑先生が顔を苦く歪めた理由は…
今の俺には…わからなかった。
だが、彼女が、ここにいる、ならば
みんなは大丈夫なはずなのだろう?
それなのに、なぜ、歪めるんだ?
「ドノミコス、何故、あの様な無茶をした…?」
「…一夏達には、感じてほしくなかったんだ…こんな苦痛を…こんな呪縛を…大切な人達を失った哀しみを…、俺は…もう、誰も…失いたくなかった…もう、嫌なんだ…手の届く範囲にあった花が、軽々しく…摘み取られ…焼かれ…崩れ…消え落ちるのが…俺は…もう嫌なんだっ…!」
「…そう、か…だが、無断でのIS使用、それには厳罰が下る、一週間の自室での謹慎処分だ…しばらく、自室で絶対安静だ…それと、お前が起きたら、会いたいと言う奴らが何人かいるが、どうする?」
「…今は…1人にさせてください…その人達の顔を見た時…俺は彼らに笑顔を見せれる自信が無い…」
「…わかった。お前が話しても大丈夫だと思ったのならば、私でも山田先生でもいい、プライベート・チャンネルを使い呼んでくれ。そして、お前にとっては、この言葉は棘になるかもしれない…だが、言わせてくれ、学園の危機を、そして、1人の希望ある生徒を護り、生き残らせてくれた事…本当にありがとう…そして、これは私、個人としてだ…帰ってきてくれて…ありがとう、お前が目を覚まし、少しでも私に話してくれた事を嬉しく思う…無事で…良かった…」
それが、良くお世話になっている
千冬さん個人からだからなのか
その言葉はストンっと俺の中に入った…
俺は…生きてはいけない存在だというのに…
誰かの言葉に、流されては駄目なのに…
そんな俺を心配してくれる人がいる。
その事実に対し、どう受け止めればいいのか
答えを得ることはできなかった。
俺は…生きていて…良いのだろうか…?
窓の外を見ると…1羽の蒼い鳥が空を飛びたった
「…答えてくれ…"マリィ"…君は…空を羽ばたけたかい…?」
結局…俺が、誰かに会えると判断したのは
織斑先生が出て行ってから6時間後だった
目を覚ましてから、次に会ったのは
見知らぬ女生徒だった…
「はーい♪こんな形で初邂逅とは、少し残念な事ね〜、さて、ドノミコス君、どう?身体の方は大丈夫かしら?あ、そう言えば自己紹介が、まだだったわね!私はIS学園の生徒会長、更識楯無よ。気軽に楯無先輩って呼んでいいのよ?」
「はい、よろしく、お願いします。…怪我の方は特に問題はありませんよ。」
「まぁそうね〜、軽傷とは言え、全身火傷に打撲箇所多数、左腕は重めの火傷に骨には亀裂が入ってるのよ?一歩でも間違えてたら死んでいたかもしれないのよ?…さて、ココからは、学園の生徒代表としてお礼を言います。アーラン・ドノミコス君、学園に突然と現れた複数の襲撃者の撃墜に尽力してくれてありがとう。貴方のおかげで、こちらの被害は最小限に収まったわ」
「…俺以外に、負傷者は…居ましたか?」
「パニックになった時に、ちょっと脚を挫いちゃった子とかはいるけれど、君のような重傷者は、出ていないから安心して♪」
「そうですか…それなら…良かった」
俺は笑みを浮かべながら、そう言う…
内心では、良かった…なんて思っていない癖に
それでも、外見を取り繕う、俺自身に嫌気がさす…
この魂に、こびり付いた、罪は消えない…
こういう時、クルーゼさんなら、なんて言うかな…
「…本当は君には聞きたいことが沢山あるんだけど今は身体を治すことに専念すること。その後、2人でお茶をしながら、お姉さんに教えてくれると嬉しいわ〜♪」
それは、俺という異分子の確認だろう
こればかりはしょうがないと言える…
アンナ、オーバーテクノロジーを使ったんだ
その事に対して、無意識に目を伏せてしまえば
あらら…っと残念そうにしている声が聞こえたが
言葉を選べず、上手く返す事は出来なかった…
「あ、済まない…今のは違うんだ…」
「ふふっ♪冗談よ〜、貴方が私に警戒心を持っているのを、知っていてわざと言っただけだから。だけど、これだけは信じてちょうだい…君がIS学園の生徒であり、危害を加えないのなら私は貴方の味方だって事」
「更識、時間だ、出ろ」
「わかっていますよ、織斑先生♪それじゃあ、近いうちにお話しをしましょう?お姉さんはいつでも待ってるからね〜」
そう言って、更識生徒会長は出ていった
…何だか、総てを見透かしてくる様な…
ギルバートさんみたいな人だったな
「ドノミコス、更識のことを疑ってはいるだろうが、彼奴は悪い奴ではないことは確かだ。性格に難はあるがな…それでも、更識の、IS学園を思う気持ちについてだけでも、疑わないでやれ。」
「…えぇ、わかりました。」
「このIS学園で生徒会長という役職に就くということは、そういうことなんだ。詳しくはアイツの口から直接問い質してみろ。」
「いえ、大丈夫です。更識生徒会長と初めて会ったからこその警戒が、俺の中で強いと思うので…」
「さて、他にも並んで居るが…呼ぶか?」
「いえ…今日はもう精神的に疲れました…少し、寝ます。」
「そうか…ならば、後は任せろ…市の病院に移ることも可能だ…どうする?」
「…いえ、俺は下手に注目されては駄目な存在です…身体には異常はありません。学園で治しますよ。」
「…分かった、お前の意志を尊重しよう。」
そう言うと、織斑先生は部屋を出た…
俺は、そのまま、身体を後ろに倒し
横になってから、先程の少女の事を考える
…IS学園では、生徒会長と言う存在は
高めの権力を持っているのだろうか?
まぁ、俺にとっては余り関与したくない事だ
はぁ…とはいえ、初対面の人物に対して
警戒してしまうのは、悪い癖だな…
「(…最後、俺が警戒を解かずに、死亡確認をしていたならば、こんな事はならなかった…俺のミスだ…)」
…今回の事は…俺のミス…敗北だ
…次は、迷わない…そうしなければ…
「織斑先生、本当によかったんですか?彼を、このままにして。本当なら病院に入院させないといけない位の、怪我だと思いますよ」
「…分かっているさ、だが、入院させようにも、彼奴が拒んだのだ、ならば、私達は、その意志を尊重しなければならない…そうだろう?」
更識楯無は目が覚めた少年…ドノミコスの状態を
知っているからこそなのだろう。
織斑千冬に提案を出すが表情を歪め彼女は首を横に振る。
更識楯無の言っていることはこの場では正論だが
織斑千冬は、彼女以上に、ソレを感じている。
クラス代表戦の最中に突如と現れた
無人機による、決死の全力攻撃により、全身負傷
普通のISならば、全身の装甲が融解しているが
少年の専用機…イージスは原型を留めたまま
彼を護りきった…普通ならば、大火傷だったのだ
とはいえ、全身に多数の火傷に打撲
左腕の骨には亀裂が入り、心臓部付近から腕にかけては
大火傷まじかの、重めの火傷を負ったのだ…
本来ならば入院しなければならない
大怪我なのだが本人はそれを拒絶
今は意識を回復したため、彼がIS学園に入学する前に
使用していた、個人病室で療養中なのだ。
「怪我については当然ですけど……彼、精神的にもだいぶ瀬戸際じゃないですか?…よく今の生活ができてるんだって、あの子には感心しますが…表面上は当たり前のように、織斑一夏君に勉強を教えたりして、青春を謳歌してますけど、その裏ではかなり追い詰められてるっぽいですよ?彼の部屋から、呻き声や叫んだ様な声があるって苦情が出てますし…本来なら無理矢理にでも、カウンセラーを付けて、精神カウンセリングをさせなければいけない、そんな精神状態では?」
「…ドノミコスは、PTSDを患っている…これは確定的だ」
織斑千冬は目を閉じてから、思い出していく
意識を取り戻したドノミコスが、叫びながら
飛び起き…そのまま、自身の頭を頭を抑え
何故、生きているかを叫び続け…
最後には、楽にしてくれと言った事を…
彼の世界が大規模な戦争をしていて
その戦争へと自身から身を投げたというのは
彼の口振りから察することはできた…
そして彼にとって大切な人達を
目の前で亡くしたということも…
…彼が精神的にも不安定な事に
気づいていないわけではなかった
それを侮っていたわけでもない。
ただ、彼女の想像以上に
彼の心は壊れ…悲鳴を上げていたのだ。
「…それは重症にも程があります。尚更、彼を入院させないと本当に不味いではありませんか。…精神が壊れた後だと、本当に手遅れになりますよ?」
「そんな事は、初めて会った時から分かっている…だが、彼奴は孤児だったのだ…既に、学園以外には拠り所が無い、そんな奴を、また1人の世界に送り込んでみろ、崩れかけていた心は完全に崩壊し、廃人となる…そして、カウンセリングを受けさせたところでアイツが他者に対し、自身の総てを打ち明けることは到底考えられん」
ドノミコスの世界の事情を詳しくとは言えないが
あらかた知っている人物は織斑 千冬しか知らない
山田 真耶ですら、彼が別世界の住人であり
元々は軍人として働き、その時に使っていた物が
ISとなった程度しか知らないのだ…
そして、ドノミコスは、1番親しいと言えるであろう
織斑 一夏にすら、自身のことは話していない…
つまり、未だに、完全には信用していないのだ
「(更に言えば、彼奴はコーディネーター…遺伝子操作をされた人間なのだ、今の人間にとってはIS以上のお宝だろう…)」
この世界でアーラン・ドノミコスを
一番知っているのは織斑 千冬ではあるが
それですら、ほんの一端に過ぎない…
だが、織斑千冬にとっては
そんなことは些細な問題ではない。
アーラン・ドノミコスがどのような人生を歩み
どのような過去を持っていたとしても
彼女は、弟の様に思っている存在を
…彼を拒絶する気はなかった。
既に崩壊寸前の身体を動かしてでも
更に傷つきながら誰かを守るために戦いに
再度、身を投げた少年を拒絶する事など出来ない
「織斑先生が、彼に対して、凄ーく過保護になってる事は、よーくわかりました…私に理由も聞かせないで貸しを作る程ですからね。突然、彼の戸籍を作ってくれだなんて言われた時には驚きましたよ。それで?…あの襲撃者は誰によって引き起こされたのかわかったんですか?」
「…更識、あの無人機による襲撃が、誰の手によるものかは薄々わかっているだろう?所属不明でありながら、無人で更に新たなる武装、ビームを扱うIS、そして…そのコアは登録不明ときた。この2つが揃った時点で誰の手によって引き起こされたかは、既に明白だろう…頭痛がする…胃も痛いな…」
胃と頭を抑えながら、織斑千冬は
溜息を吐く…彼以上に存在が面倒な親友を
思い出した瞬間に、痛みに悩まされる
「…現在消息不明のISの生みの親である、篠ノ之束博士ですか…IS学園のセキリティをなんの下準備もなく掌握できるのは"天災"と呼ばれた彼女ぐらいですものね…ですが、どうして彼女が襲撃を企てたんですか?大切な妹さんがいたはずなのに」
「さてな、私もアイツとは腐れ縁にも等しいが、考えていることを、完全に把握しているわけじゃない。それに箒の行動については、束も完全に想定外だっただろう。そして、無人機は音に反応するように優先的に設定されていたのだろう。その結果、箒がスピーカーを使ってしまったことにより、其方を向いたが、ドノミコスの一撃で止められた…とはいえ、あのままならば撃たれていただろう…天才の癖に、詰めが甘いんだよ…アイツは」
「どうにしろ私には、天災と呼ばれている人の考えは理解できませんよ。ただ、個人としては、大切な妹さんがいる学園に、襲撃したことについては、本当にお馬鹿さん、そうなんじゃないかと思いますけどねぇ?」
消息不明をいいことに
更識楯無は広げた扇子に達筆な文字で
「お馬鹿」
と書かれており、織斑千冬は
彼女の胆力に呆れを通り越して感心するが
仮に本人がこの場に居たならば
喧嘩程度ではすまなかっただろうっと思う…
まぁ、彼女がなぜ今回こうも
かの天災に辛辣である理由に対しては
大方は察している…が!
織斑千冬は全力で無視を決め込むことにした。
面倒事には関わりたくないのは人間の生存本能だ
「まぁ、襲撃者については推測で語っても意味はありませんものね♪…問題は、彼、アーラン・ドノミコス…織斑千冬さん、彼はいったい何者なんですか?私の記憶が正しければ、適性検査を除き、ISの搭乗はアレが初めてなはずですよね?なのに彼は"初心者"としてはあるまじき行動を幾つかしているんですよ。未確認IS…いえ、コアが無いのでモドキですね、ソレを4機、通りざまに破壊してから、すぐ様、アリーナに突入、その後は上空から侵入した瞬間に、アリーナ中央で佇んでいた敵無人機の武装を破壊、その後は自身が戦闘を行うのはさも当たり前のように介入。さらに足手まといになるどころか、無人機の撃墜に至り、戦闘が終わるまでは、冷静に最後まで戦ってみせた」
「…………」
「無人機による被害を必要最小限までに、抑えてくれたのは、生徒会長としても、本当に感謝しています…けれど、彼、個人のことを警戒することについては別です。やけに戦い対して迷う事は無く、戦闘馴れしていたように感じたのは私の勘違い…って思えない程にですよ?」
先ほどとはまるで別人のように
冷たい声で更識楯無は赤い瞳を細める。
彼女としては、生徒会長としても
彼がこの学園に害をなすものなのかを
知る権利があるのだ…
一部ではあるが、彼女の裏の顔を知っている
織斑千冬は、少し考えてから、はっきりと口にする。
「その違和感は自分で直接確かめろ。私の口からは、プライバシーもだが、彼奴の事に対して、答えられることは何もない。…だが、これだけは先に念を押しておく…無理に深淵を覗こうとすれば、私は貴様をどんな手を使ってでも止めよう。」
「…それは、一教師としてですか?…それとも、1人の大人として…ですか?」
「それについて、私に答える義務はない。…アイツを警戒するなとは言わない、それがお前にとって、必要なことだと理解しているからな。だが、彼奴は少し、心に病を持っている、1人の普通の少年だと言うことを忘れるな…、いいな?」
「…口は硬そうですね…ええ、わかりました、その事、心に留めておきます。さて!私はこれで失礼させてもらいますね♪あっ、その前に一つ。新しく転校生が2人、来るらしいですけど…それについては、もちろんご存知ですよね?」
「あぁ、分かっている…私が関与できる範囲ならば、総てカバーするさ、何せ担任だからな…とはいえ、ドノミコスは怪我が酷いからな…1人は織斑に任せる方が良いだろう。」
織斑千冬の言葉を聞き、満足したのか
更識楯無は笑顔を見せながら、退出する。
元より、その転入生の1人とは彼女にとって
縁が深い1人でもあるのだ。
一年といった短い期間ではあるものの
彼女達を導く、新米教官として…
1人の大人として接したのをよく覚えていた。
……だからなのだろうか
彼女はどうしようもなく
一抹の不安に駆られるのだったーーーーーー
更に増加した、胃の痛みと共に…
アレから、1週間経った頃…
「やっと、身体が動く様になった」
アーラン・ドミノコスは久方振りの
教室に向けて、歩いているのだが
イージスを使用したのが、自身である事に
クラスメイト達の前で、激情に駆られたとはいえ
この力を使い戦闘を行ってしまったのだ
その後、クラスに行った時…
どんな風に思われているのかと想像すると
足が竦んでしまう…軍人の癖に情けない事だが
とはいえ、教室に入らない訳には行かない
既に物凄く授業に遅れているのだから
追い付かなければならない。
「…入るか…」
意を決してから、教室に入ると
その瞬間に、その場にいるクラスメイトから
一斉に視線が集まった…無言のまま
……これ、帰っていいかな?
「あ!アーラン君だ!おはよう!」
「アーラン君、久しぶり〜!身体は元気になったぁ?」
「アーラン君が、帰ってきたぞ〜!!!」
「ラミノ〜!おかえり〜、心配したよ〜!」
その後に、皆から暖かい、声で迎えられた…
「…心配をかけてしまったな、とはいえ、左腕の骨以外の怪我は完治したからな、授業には復帰出来るさ。」
俺は、左腕を軽く上げる
亀裂はほぼ、治ってあるとはいえ
完全に結合した訳では無いため
ISの授業には出ない事にしている
本音さんの表情は僅かに曇るが
すぐにいつものように表情を和らげ
その手に持っているモノを
俺に向けて、渡してくれた。
「はいー!これは私からの退院、お祝いなのだー!後で時間がある時に、ゆっくり食べてねー!」
「あぁ、ありがとう、本音さん」
本音さんの言葉から察するに
食べ物であるのは間違い無いだろう。
…味はしないが、その想いはありがたい
後で、美味しく頂こう…
さて、SHRホームが始まるチャイムが鳴った為
集まっていたクラスメイトは自分の席に戻っていく。
まぁ、席についていないと織斑先生の出席簿で
頭を叩かれちゃうからな…
そして織斑先生が、入室してきて教室全体を
見渡せば、表情は全然、変わらないものの
満足気なのは気のせいでは無いだろう…多分?
「どうやら今日は久しぶりに全員揃ったようだな。さてドノミコスは見てわかる通り、まだ怪我が完治しているわけでは無い。もし困っているところを見かけたら全員、手を貸してやれ、わかったな?」
「「はーいっ!!」」
「よろしい。ならば今からSHRを始めるーーーーーー」
…そう言えば、あの金髪男子は誰だ…?
…いや、アレ…女か…?
そして、あの1人だけ怖い顔してる
銀髪少女は…何と言うか…怖いな
ISの前半を一気に終わらせました。
君たち…どれに乗りたい?
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